「原点回帰」と「挑戦」を目指す50周年記念作! 2021秋アニメ「ルパン三世 PART6」菅沼栄治監督 インタビュー!
2021年に「PART1」放送開始から50周年を迎えた、アニメ「ルパン三世」シリーズ。
2021年10月より放送開始の「ルパン三世 PART6」(以下、「PART6」)には、ルパン三世の永遠のライバル、シャーロック・ホームズのほか、魅力的な新キャラクターが多く登場する。さらにアニメーション作家の押井守さんや、近年は「名探偵コナン」などの脚本を手がける大ベテラン脚本家・辻真先さん、小説家の芦辺拓さんら豪華な顔ぶれが本シリーズの脚本を担当するなど、メモリアルイヤーにふさわしい作品となっている。
そんな本作を手がける菅沼栄治監督にインタビューを敢行。本人の「ルパン三世」愛も交えながら、「PART6」の魅力を語っていただいた。
ルパンたちの「子どもっぽくあり、大人っぽくもあるところ」が作品の最大の魅力
――今回、どのような経緯で監督をされることになったのでしょう?
菅沼 僕は「ルパン三世」のパチスロ(の映像)を手がけているチームの方とは仕事をしたことがあるのですが、演出や絵コンテを描かせていただいたというわけではないので、今回お声がけいただいた理由は、正直わからないんです(笑)。ただ、「声をかけていただいた評価に対しては自信を持っていいのでは?」という気持ちで引き受けさせていただきました。
――「ルパン三世」シリーズについての思い出はありますか?
菅沼 1971年放送の「PART1」からリアルタイムで観ていました。1977~80年にかけて放送された「PART2」のころは思春期まっさかりで、いわゆる「オタク」目線で観るようになってきました。
当時はほかにも魅力的な作品がたくさん放送されていたので、「ルパン三世」から少し離れていた時期もありました。でも、先にお話したとおり、アニメーターとして仕事を始めてから作品に携わる機会がありましたし、「距離を置いていた」という意識はなかったです。
――作品の魅力はどこにあると思いますか?
菅沼 登場人物、特に、ルパン三世、次元大介、石川五ェ門、峰不二子、銭形警部の5人はキャラクターがしっかりしていて、関係性が常に面白くて飽きない。
彼らの「子どもっぽくあり、大人っぽくもあるところ」が、どの時代にも通用すると言いますか。そこには本当に魅力を感じます。
個性豊かな作家陣の脚本をまとめるのが大変だった
――今作は1クールごとに別のテーマが掲げられています。
菅沼 僕は純粋に「演出する人間」として携わっています。アニメ監督の仕事というのは大きく2つに分けられると思うんです。作品の「根幹部分」から考える監督と、純粋にディレクションをする監督で、今回の僕の仕事は後者にあたると思っています。
――具体的に、どのような作業をされたのでしょう?
菅沼 脚本を担当されている作家さんがとにかく粒ぞろいで個性も強いので、いかにオムニバス的な要素を出していけるのかを考えるようにしました。ただ、あまりにもカラーが違いすぎてしまうとまとまりがなくなってしまうので、うまくバランスを取る必要がある。そこが難しかったです。
――作家陣との打ち合わせはどのようにされたのでしょうか?
菅沼 直接お会いして話せる方もいましたし、残念ながらリモートになってしまった方もいました。どちらにしても、基本的には「みなさんにお任せします」というスタンスで臨みました。
一番の懸念材料は「尺に収まるか?」ということでして。1稿目は壮大なものが上がってくるので、そこから30分に収まるように、少しずつ削いでいく作業が、とにかく大変でした……。
緑のジャケットには「原点回帰」の意味が込められているのかも
――ここからは「PART6」の内容について掘り下げていきたいと思います。まずは、主題歌「ルパン三世のテーマ」アレンジバージョンを聴いた感想を教えてください。
菅沼 アフレコ後に楽曲を聴いたのですが、まずアフレコで声優さんたちの演技を体感して「ルパンだ!」と感動し、さらにテーマ曲を聴いて「ルパン作品に携わっているんだなあ……」としみじみ思いました。その後の作業への、いいカンフル剤になりましたね。
――カーチェイスをはじめとした、乗り物によるルパン一味と敵対勢力との立ち回りが「ルパン三世」の華とも言えますが、描くうえでこだわったところは?
菅沼 「ルパン三世 プリズン・オブ・ザ・パスト」で演出を担当させていただき、その時の作画スタッフが「PART6」にも参加しているので、であれば「作画ではここまで描いていこう、コストの関係もあるけど、ここからは3Dでお願いしよう」など各スタッフと相談しながら探っていきつつ、ハイブリッドな(2Dと3Dをかけ合わせた)映像を目指しました。
――こちらもファンから注目が集まるであろう、ルパンのジャケットですが、今作は「緑色」です。
菅沼 野崎プロデューサーが「緑色でいこう」と提案してくださったんです。アニメ化50周年ということもあり、原点回帰の意味も込められているんじゃないかと思います。「PART1」でも緑色を着ていますし、僕としてもうれしかったですね。
それと今回、シリーズ構成を担当されている大倉崇裕さんが手がけた、前作「PART5」のエピソードでもルパンが緑色のジャケットを着ていたので、野崎プロデューサーの中では「大倉作品のルパンは緑色ジャケット」というイメージがあったのかもしれません。
ホームズという人間の奥行きに注目してください
――歴代のシリーズでお気に入りのキャラクターやエピソードはありますか?
菅沼 「PART1」の第2話で登場する「魔術師」パイカルが好きでした。頭がキレるタイプのキャラクターは大好きです。
あとは、ご禁制のお花を栽培している悪党がいて、そこに囚われている女の子をルパンが助けに行く……という話があったんです。敵の首領と囚われの女の子のことがずっと頭に残っていた時期があって。「『ルパン三世』で監督を務めることになれば、参考にしなければならないシーン」と、自分の中で解釈しました。
――最後に改めて、本作の見どころを教えてください。
菅沼 ルパンとホームズの関係だけでなく、ホームズという人間の奥行きを意識して描いていますので、ぜひ注目していただきたいです。
(取材・文/佐伯敦史)
【作品情報】
■ルパン三世PART6
2021年10月より日本テレビ系全国放送開始!
日本テレビでは10/9(土)24時55分より放送開始 ※各局の放送日時は公式HPでご確認ください
・配信:Hulu他配信サイトで配信予定※配信先情報は、公式HPで順次公開
・原作:モンキー・パンチ
©TMS・NTV
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