【サンライズフェスティバル2021】もしフリット編やキオ編を再構成するなら、という夢のプランも! 「機動戦士ガンダムAGE MEMORY OF EDEN」綿田慎也監督トークショーレポート
アニメ「機動戦士ガンダムAGE MEMORY OF EDEN」上映イベントが2021年10月17日、東京・新宿ピカデリーにて開催され、上映後のトークショーに綿田慎也監督が登壇した。
本イベントは、2021年10月1日~31日に開催中の上映イベント「サンライズフェスティバル2021 REGENERATION」の一環として行なわれた。
「機動戦士ガンダムAGE」は2011年~2012年にかけて放送されたTVアニメで、フリット、アセム、キオの3人の主人公、三世代100年の物語を描く壮大な構想が大きな特徴。今回上映された「機動戦士ガンダムAGE MEMORY OF EDEN」は「機動戦士ガンダムAGE」の第2世代であるアセムとゼハートの関係性にフォーカスして再構成し、新規カットを追加したOVA作品だ。
「機動戦士ガンダムAGE」のTVアニメ放送から、今年で10周年を迎えた。TVアニメ本編からOVAへの関わり方を聞かれた綿田監督は、「TVシリーズには各話演出という形で参加していました。ローテーションだったので1クールに1回入るぐらいでしたね。フリット編、アセム編、キオ編、三世代編で各1話ずつやらせてもらいました。「機動戦士ガンダムAGE MEMORY OF EDEN」についてなんですが、当時は「機動戦士ガンダムSEED」や「機動戦士ガンダム00」で、放送後にスペシャルエディションが制作されることが多かったんです。「AGE」に関してはそれに代わる形として、ゼハートとアセム周りを拾い直す形で1本の作品にまとめられないかと提案されました。こうすれば面白くなるんじゃないかというアイデアはあったので、わりと勢いで引き受けさせていただきました」と振り返った。
ゼハートとアセムを題材に選んだことについては、「アセム編を中心にしたのはオーダーでした。これは直接言われたわけではないのですが、ゼハートの最後のあたりを補完することを期待されているのかなと思いました」と語っていた。
今回のイベント前には、Twitterにおいて「#sunfes_age」のタグで綿田監督への質問が募集されていたが、この後、ファンからの質問のコーナーでは濃い質問が相次いだ。
「機動戦士ガンダムAGE MEMORY OF EDEN」で好きなシーンを聞かれた綿田監督は、「やはりラストシーンになりますね。ゼハートとアセムの別れのシーンです。最初に脚本の木村さんと、どう進めましょうかと話した時に、最初に出したのがラストシーンをこうしたいというアイデアだったんです。脚本の前段階のものを木村さんに渡して、調整してもらいました。ラストシーンをスタートラインとして作っていって、そこにどう辿り着くかと考える中で、これは学園生活をきちんと描く必要があるんだなという話の流れと構成が見えてきました」と、まずは作品全体の構成の流れに言及。そのうえで「前編の学生生活はいろいろと面白い楽しいシーンがありましたね。MSクラブのシーンであったり、最初に暴走した機械を止めるシーンだったり、3人で宇宙に出るシーン、卒業式で写真が燃えるシーン。ラストシーンから逆算して必要なシーンを作っていきました」と語っていた。
「もしフラムがゼハートと一緒に入学してMSクラブに入っていたらどうなっていたと思いますか?」という質問には、「先ほどは真面目なシーンのお話をしたんですが、遊びのあるお話のパターンも考えていたんです。MSクラブを主体にしたらどんなお話になるだろうと考えていて、MSクラブにゼハートが入ってそこにデシル兄さんがやってきたら?とか妄想していました。MSクラブ選手権に挑む部活物で、アセムは一般の学校にいるんだけど素質があって、お父さんのフリットは強豪校の監督。その強豪校のエースだったゼハートがアセムの学校に転校してきて……とか。フラムは実はゼハートを慕っているんだけど、なんでいなくなったんですかと言ってくるマネージャー枠でしょうか。『ビルドシリーズ』を作ってもいいような設定ですね(笑)」と、あたためていた妄想プランのひとつを披露していた。
「TVアニメ版では忠実な職業軍人という印象だったダズ・ローデンが、『MEMORY OF EDEN』では民間人への攻撃を避けるように命じたり、学園生活を送るゼハートをほほえましく見つめたりと、理解ある大人・兄貴分という描写を感じました」という感想には、「イゼルカントの意志を継ぐ流れについて、TVシリーズと『MEMORY OF EDEN』では描き方を変えています。ゼハートがなぜああいう風になっていってしまったのかを考えるうえで、父性の欠如があるのかと考えたんです。そこがゼハートとアセムの大きな差だと思うんです。ゼハートにもいた、父性の面を埋めるような人たちが早くに亡くなっていったことが、ゼハートとアセムの運命を分けたというとらえ方で、ダズの面倒を見る人、お父さんのような存在として配置しました」と語ると、「作画さんからここのダズにエプロンをつけていいですか?と提案されて、最高ですねそれ、って返した覚えがあります。お母さんみたいになってますね(笑)」と裏話を明かしていた。
「『MEMORY OF EDEN』で量産機の活躍が多かったり、MSVの機体がちらっと登場したりがありましたが理由はありますか?」という質問には、「量産機やソーディアが出てきたりというのはファンサービス的な意味合いがひとつと、せっかく海老川(兼武)さんがたくさんデザインをしてくれたのにアニメに出ないままなのはもったいないな、個人的にも見てみたいという希望で、出せるものは出しました」と答えていた。
「もしフリット主役のOVAを作るなら?」という質問には、「『MEMORY OF EDEN』で拾いきれない部分もあったので、ほかの世代についてもいろいろ考えました。『MEMORY OF EDEN』はTVシリーズでの展開をすこーし変えて、人間関係を入れ替えることで違う視点を提供できればという作り方なんです。フリット編ならユリンをもう少しディーヴァに乗せていてもいいのかなと思いました。エミリーとユリンの関係性をもうちょっと深めて。自分は14話でユリンの亡くなる回を演出担当していたんですが、そこに至るまでの展開をもう少し積み重ねても面白いのかなと思っていたんです」と語った。また、綿田監督はキオ編のifについても言及し、「宇宙海賊になってしまったアセムのいきさつについてなどが『MEMORY OF EDEN』では拾いきれなかったので、キオ編を再構成するなら、退役したロマリーをディーヴァに乗せていたと思います。エイナス艦長の成長がキオ編から三世代編にかけての大きなポイントだと思っていて、ロマリーが元軍人として、アスノ家の一員としてフリットとエイナス艦長の緩衝材になっていれば、エイナス艦長の成長の仕方も変わってきたんじゃないかと思います。あとはTVシリーズではキオと宇宙海賊になったアセムの再会という形で描かれたんですが、もしできるなら親子3人での再会にできたら新しいドラマが描けるのではないかと考えていました」と語っていた。
最後に綿田監督から、「ガンダムAGE」の15周年、20周年といったさまざまな機会でまたファンの皆さんに会えたら嬉しいという願いが伝えられて、トークショーは終了となった。
(取材・文・写真/中里キリ)
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