【サンライズフェスティバル2021】綿田慎也監督とシリーズ構成・むとうやすゆきが初めて一緒に舞台裏を語る! 「ガンダムビルドダイバーズRe:RISE」トークショーレポート

アニメ「ガンダムビルドダイバーズRe:RISE」の上映イベントが2021年10月17日、東京・新宿ピカデリーにて開催され、上映後のトークショーに綿田慎也監督、シリーズ構成のむとうやすゆきさん、岡本拓也プロデューサーが登壇した。

本イベントは、2021年10月1日~31日に開催中の上映イベント「サンライズフェスティバル2021 REGENERATION」の一環として行なわれた。

「ガンダムビルドダイバーズRe:RISE」は、ガンプラによる対戦競技“ガンプラバトル”を巡る物語を描く「ガンダムビルド」シリーズの最新作で、ガンダム公式YouTubeチャンネル「ガンダムチャンネル」ほかで、2019年に1st Seasonが、2020年に2nd Seasonが配信された。それまでの「ガンダムビルド」シリーズが現実世界でのガンプラバトルをモチーフにしていたのに対し、「ガンダムビルドダイバーズ」シリーズはネットワークゲーム「ガンプラバトル・ネクサスオンライン=GBN」上でのガンプラバトルを描いている。続編である「Re:RISE」では、舞台として異世界エルドラが登場し、物語と世界観がさらなる広がりを見せた。


今回の上映会では、「ガンダムビルドダイバーズRe:RISE」より第22話「刻限のゼルトザーム」、第24話「ビルドダイバーズ」、第25話「僕が描く未来へ」、第26話「Re:RISE」が上映され、上映後にトークショーが行なわれた。

まず、第22話を振り返った綿田監督は、「重たい話数になると思っていたのですが、パワーのあるシナリオをむとうさんにいただいたので、これが最終話でもいいんじゃないかという気合いを込めて作りました」。むとうさんも「計算していたわけではないのですが、19話、20話を経て22話で、ヒロト個人にとっての最終回を迎えたような感覚でした」と語った。綿田監督は22話で登場したサタニクスガンダムについて、「ドリルというものがガンダムファンにどれぐらい受けるのかと不安もあったんですが、デザインをいただいてから最大限かっこよくしてやろうと思っていました」と語った。

綿田慎也監督

トークでは25話の合体ギミックの話題も。綿田監督は「合体をやってみたいという構想は『ガンダムビルドファイターズトライ』をやっていた頃からあったのですが、座組みにうまく落としこめていなかったんです。だから自分としてはリトライという感覚もありました。キャラクターがバラバラな子どもたちだからこそ、機体の出自もUC系・宇宙世紀系・SD系・アナザー系など別々にしたかった。お話の構成にもうまくハマったし、(メカニックデザインの)海老川さんには感謝しかありません」と語った。岡本プロデューサーによれば、企画のかなり早い段階で綿田監督から合体ギミックをやりたいという提案が出ていたようだ。むとうさんも、ホビーアニメの大人の事情ありきではなく、物語の流れとして自然に合体の流れを作れたと、手応えを語った。

むとうさんは個人的な注目回として第24話をあげ、「前作とのリンクというか、最後のヒロトとリクの対話はものすごく気を使って書きました。リクたちを立てながら、2人ともいい子だなと思えるシーンを目指しました」と語った。キャラクター同士の複雑な人間関係が結実したのが24話だったようだ。「(むとうさんが本格的には関わっていない)前作のキャラクターたちは監督の連れ子のようなものだから、そそうがあってはいけない」という独特な言い回しが印象的だった。

岡本プロデューサーは音楽の面に注目し、「(印象に残ったのは)劇伴もそうなんですが、主題歌の使い方ですね。終盤の主題歌のかけかたは、アーティストの方にも協力していただいて落としこむことができました」と語っていた。

「GBN」にほとんどログインしないヒロインという、特異な立ち位置のムカイ・ヒナタについては、むとうさんが「ヒナタはもともと監督のプランの中にいなかったのを、僕がこんな子どうですか、と要望して入れてもらったんです。だから自分でちゃんと(物語を)落とせないと責任が問われてしまうと思い、悩みながら書きました。新しいオチの形を作れたのではないかと思います」と明かしていた。

「Re:RISE」というタイトルに関するトークでは、初期案である「クロスエッジ」をはじめ「クライ」「リビルド」「アライズ」「ヒーローズ」といったタイトル案があがったという紆余曲折の話も。綿田監督の「ヒーローになるというテーマをあまり明示して立てたくなかったので、ヒーローズはしっくり来なかった」という言葉から、制作中の思考が垣間見えた。「Re:RISE」というタイトルは現場に強いインスピレーションをもたらしたようで、むとうさんは「『Re:RISE』って決まった途端に、どこを目指せばいいのかが見えてきた」と語っていた。

「Re:RISE」は第26話のタイトルにも使われていることから、各話サブタイトルのネーミングにまつわるトークへ。一番サブタイトル決めが難航したのが、ヤスカワショウゴさんが各話脚本を担当した第21話「もういちど飛ぶために」だったことから、第14話の仮タイトルだった「走れフレディ」(正式タイトルは「めぐりあい、そして」)はよかった、第22話の「刻限のゼルトザーム」は一発で決まった、といった話題でも盛り上がった。第25話「僕が描く未来へ」はむとうさんが「これしかないな」と思って発案したところ、あまりにも自然なタイトルでなんの意見もなくすんなりと決まりすぎて、逆に不安だったそうだ。

ヒロトの主人公像というテーマでは、綿田監督が「最初は何かが欠落している、足りていない子が4人というたたき台があって、むとうさんに肉付けしてもらったんです。モチーフとしてオズの魔法使いがありました。その中でヒロトに欠けているものがなかなか見つからなかったので、実は見切り発車でした」と明かすと、むとうさんも「最初、ヒロトはとりあえずダウナーなキャラということで進めました」とぶっちゃける。

岡本拓也プロデューサー

岡本プロデューサーによれば、5~6話あたりまではヒロトの欠落の中身を模索していたようだ。“ELダイバーを助けられなかったもうひとりのリク”というコンセプトを提案したことについて、むとうさんは「デリケートな設定なので、前作と同じ人が監督でなければ提案できなかった」とした。近いアイデアは綿田監督の中にもあったため、2人が思いついた以上何かその先につながっていく設定なのではないかと感じたそうだ。

その後は正月もゴールデンウィークもなく、毎週集まりながら駆け抜けた制作だったとのことで、むとうさんはシリーズ構成に注力するために、なかなか自分で脚本が書けないのがつらかったと明かしていた。

メインキャラクターの名前の多くは、“別作品で打ち合わせをしていた場所が久我山だったからクガ(ヒロト)”といった感じで、むとうさんが直感とインスピレーションで決めていったそうなのだが、面白かったのがエルドラの住人たちのネーミング法則が明かされたことだ。

エルドラの民で最初に決めた子どもたち3人のアシャ・トワナ・フルンは、シャア、クワトロ、フル・フロンタルという歴代「赤い彗星」の名前をもじったものだった。

同様にマイヤはミライ・ヤシマ、ストラはロックオン・ストラトス、トノイはブライト・ノア、ジリクはバナージ・リンク、ムランはカムラン・ブルーム、聖獣クアドルンはククルス・ドアンと元ネタも多彩だ。

唯一の例外が、むとうさんが映画「ボヘミアン・ラプソディ」を見てなんとなくつけて定着してしまったというフレディ。むとうさんが脚本参加している「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」に“ディレフ”というキャラを追加提案して元ネタを作り出してしまうべきか、といった笑い話でオチがついていた。

それぞれにとっての「Re:RISE」という作品はどんな存在だったかというテーマでは、岡本プロデューサーは「初めてプロデューサーをやらせてもらった作品で、コロナなどいろいろなことがあって制作現場としては大変な作品でした。でもこの作品はあったかいなと感じることがよくあって、それに背中を押されて作っていた気がします。大切な作品です」と語った。

むとうさんは「最近僕のことを“ガンダムの人”と認識している人もいるんですけど、『機動戦士ガンダムUC』にしても『閃光のハサウェイ』にしても、ベースがある作品のアレンジャーとして参加していることが多いんです。この作品でオリジナルの『ガンダム』タイトルの制作にがっつり関われたのはよかったです」と語る。

綿田監督は「自分は『ガンダムビルド』シリーズで3作目の監督で、新しいこと新しくないこと、今まで通りなこと、常々考えながらやってます。その中で集大成という言い方はしたくないんですが、いろいろな要素が求められるシリーズの中でやってみたいこと、狙ったこと、マーチャンダイズ的なことも含めて、いろいろ複合的に積み上げることができた作品になったと思います。ランディングがうまくいったとこれだけ感じられた作品はなかなかないです。(前作の)『ビルドダイバーズ』とは真逆のものを作りながら、本質的には同じものを作れたのは、狙い通りでもありました。自分が作ったというより導かれたような感じがあって、自分だけでなくスタッフや、ご覧になってくれている皆さんも含めた相乗効果があって作品になるような、“縁”を感じる作品です」と語った。

締めの挨拶では、むとうさんが綿田監督と一緒に話せる機会が実は初めてだったことを明かし、またこういう機会があることに期待をにじませた。

最後は綿田監督が「世の中が今まで通りでない中、1年越しでこうした場が持てて、これだけのお客さんに集まっていただけて、スタッフ一同お客さんの顔が見られて嬉しいなと感じています。この場を借りてお礼を言わせてください、ありがとうございました」と締めくくると、劇場は万雷の拍手に包まれた。

(取材・文・撮影/中里キリ)

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