【本日公開!】吉浦監督とじっくり話し合い、練り上げていった演技に注目! 映画「アイの歌声を聴かせて」福原遥×工藤阿須加インタビュー

「イヴの時間」「サカサマのパテマ」など、こだわりの映像とSFマインドあふれる作風で知られる吉浦康裕監督が原作・脚本・監督を務める長編映画「アイの歌声を聴かせて」が、2021年10月29日から全国公開される。

劇中、突然ミュージカルのように歌い出す本作の主人公であるシオン役の土屋太鳳さんは、AIという難しい役を見事に演じ切り、歌でも素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。

そんなシオンによって日常が変化していくのが、もうひとりのヒロイン・サトミである。今回、アキバ総研では、物語の中心人物であるサトミを演じた福原遥さんと、サトミの幼なじみで機械マニアのトウマを演じた工藤阿須加さんにインタビュー! 

どのようなアプローチでキャラクターを演じていったのかをうかがった。



工藤阿須加、アニメとの意外な接点

ーー本作への出演が決まった時の気持ちと、実際に演じてみての感想を教えてください。

工藤 アニメ、声優のお仕事はいつかチャレンジしてみたいものだったんです。僕自身、アニメは大好きなので、参加させていただけることにまず感激しました。それに台本を読み終わった時は泣いてしまったんですよね……。そのくらい心に届く作品だと感じたので、すごく気合いが入りました。

ただ自分の声が好きではないので、どういう形になるのか不安の日々が続いたのですが、監督と細かくお話しさせていただきながら最後までやり切ることができました。完成した映像もすごく素敵でしたし、何より福原さんの声が素敵で……。収録は僕がトップバッターで、みんなの声を聞きながらの演技はできなかったので、そこは少し残念でしたね(笑)。

ーー工藤さんは、もともとアニメがお好きだったのですか?

工藤 大好きなんですよ。小さい頃からCSのアニメチャンネルを見られる環境だったので、「じゃりン子チエ」(1981年作品)など、昭和のアニメも見ていました。

ーー意外でした。今後もぜひアニメ作品に携わっていただきたいです。

工藤 それはもう、お話をいただければチャレンジしていきたいです!

ーー福原さんはいかがですか?

福原 私も台本を読んだときに泣いてしまいました。私はオーディションに参加させていただいのですが、その時にいただいた台本を読んで泣いてしまって、心から大好きな作品だと思ったので、その気持ちも監督に伝えました。普段はあまりそういうことはしないんのですが……。絶対にこの役をやりたいと思っていたので、受かったときはめちゃめちゃ嬉しかったですし、不安もあったけどがんばろうと思いました。人と人(AI)との絆や愛の強さを感じる作品でしたので、私もすごく心を動かされました。

ーー工藤さんは、どんなところに心が動きましたか?

工藤 シオンのためにみんなが危険を冒してまで動くところや、シオンのサトミに対してしていた行動が繋がったときに何かが動いたというか……。人と人だからとかではなく、人間とAIの垣根を超えた瞬間に感動しました。

ーーそれぞれ、どのようなアプローチでキャラ作りをしていきましたか?

工藤 僕は地声のキーを上げました。あと音を乗せるときに、ストレートに(マイクに)当てるのではなく、少し拡散させるように、息が抜けるように演じていました。興奮したときは当てに行くんですけど、それだと意思が強くなりすぎてしまうと感じたので、不安な時などは、少し抜き気味で声を震わせるようにしたんです。そうするとやわらかくなって、監督からも「その感じで」と言っていただきました。

ーートウマは基本的に自信がなさげですからね。その演技プランは、自分で考えていったのですか?

工藤 考えていきました。アニメ好きなので、いろいろな声優さんのお芝居を聞いていると、この声はちょっと無理かなとか、この出し方ならできるなとか思うんです。だからいろんなことを家で試しました。それにドラマなどでも役柄によってキーを変えたりしているんですよ。でも、収録で疲れてくると地声に戻ってしまうので、そういう時は監督から「キーを上げて」と言われながらやっていました。

ーー福原さんはいかがでしたか?

福原 私は工藤さんの声が入った状態でアフレコをしたんですけど、最初に聞いたとき、工藤さんの声には聞こえなかったんです。そのくらい別人で驚きました。すごくナチュラルでしたし、かけあいも一緒にお芝居をさせていただいたわけではないんですけど、自然なキャッチボールができてやりやすかったです! 

サトミへのアプローチの仕方としては、私も地声とサトミのイメージは違うのかな?と勝手に感じていたんです。ちょっとクールだったり、心の奥ではいろいろな思いがあるけど表情には出ないような印象だったので、声のトーンを下げてみたり、あまり明るい声に聞こえないよう、気持ちが乗るところ以外は自分の声と少し変えようと意識していました。

ーーどんどん素が出てくるところもいいですよね。

福原 シオンと出会って、サトミの明るい面がどんどん出てくるので、そこはちゃんと変えていきたいという気持ちはありました。

ーーそれぞれ演じたことによって、このキャラクターにはこういう面もあったんだという発見や感じた魅力などはありましたか?

福原 サトミの絵を見たときはクールな印象だったんですけど、台本を読ませていただいたり、お芝居をしていくうちに、こんなにも明るくて、すごくやわらかくて弱い部分もたくさん持っている、普通の女の子だ!と感じました。そのギャップが素敵だなと思いながら演じていました。それにサトミは人への想いや愛情が人一倍ある子なんです。お母さんやシオンに対してもそうだし、みんなに対しても心の底から愛情があって、ただそれを外に出せない。そういうところが魅力なんだなと思います。

工藤 僕の場合は、自分が持っていったイメージと監督のお話から感じたイメージにズレがなかったんです。その意味ではやりやすかったし、新しい発見というよりはどんどん腑に落ちていった、間違えてなかったんだと確信していく感じでした。

説明する用語のところを思ったより速く言わなければいけなかったり、技術面で意識することのほうがアフレコ当日は多かったですね。

福原 楽しそう!(笑) 私もそういう意味では監督から、イメージとズレはなく、オーディションの声のままでいいからと言っていただいたので、あまり作らずに現場に立っていました。

やはり映画は大きなスクリーンで観てこそ!

ーー工藤さんと福原さんご自身は、お互いにどんな印象がありますか?

福原 初めて出会ったのはこの作品ではなかったんですけど、そこでお話をさせていただきました。めちゃめちゃやさしい方で最初から話しかけてくださりました。とにかく現場のどの方に対してもやさしくて、とても紳士で素敵な方という印象があります。

工藤 (照)。いや、褒められるのは慣れないし、褒められすぎると逆に怖いですね(笑)。福原さんが素敵な女優さんであることは知っていましたし、今回アニメでご一緒できるということで、どういう感じの声でくるんだろうと思っていました。福原さんの声は、アニメのキャラクターを演じたらハマる声質だろうと、アニメ好きだからこそ思っていたんです。でも映像作品のときは、また違う声色を出していて、その引き出しの多さにずっと魅力を感じていたので、アニメでご一緒できたことが嬉しかったんです。ただ、だからこそ声を聞きながらやりたかった(笑)。

ーーでは、土屋太鳳さんが演じるシオンについてはいかがでしたか?

福原 すごく難しい役だと思いました。AIという、あまり気持ちを乗せないところから徐々に気持ちを乗せていくという演技に本当に鳥肌が立ちましたし、何この表現!って感じました。歌もそうなんですけど、ただ歌うではなくAIっぽい歌い方もありつつ気持ちも乗っている。これはどう表現したらいいかわからないんですけど、その言葉ひとつひとつに心を動かされている自分がいたので、ほ本当に素敵でした!

工藤 声がびっくりするほどよく通るんですよね。ダイレクトに耳に入ってくるけど聞き心地もすごくいい。それは歌声にも言えることで、土屋さんの表現がスッと心に入ってくるから、聴いちゃうし見れちゃうんですよ。AIっぽくないなと感じてしまうときがあって、気づくと普通の女の子だと思っている……でもやっぱりAIだよなって思うので、一瞬忘れさせる力があるなと感じていました。

ーー最後に、アニメの見どころを教えてください。

工藤 やはり予告でもあった花火のところですかね!

福原 そのシーンは泣きそうでした。何度見ても感動してしまいます。すごくきれいだし、発想がすごいですよね?

工藤 ソーラーパネルを使った演出ね。

福原 そこがすごく素敵だったし見どころだと思います。あと不思議な世界観だと思ったのが、電子の世界に入るような描写です。大きな画面で見たときに、こんなにキラキラしていて、細かいところまで描いているんだなって思いました。

工藤 僕は試写会に行けなかったので、大きなスクリーンで見たらどれだけの迫力があるんだろうっていう楽しみもあります。みんなで歌う花火のシーンは楽しみですね。やっぱり大きいスクリーンで見てこそだと思うんです。

福原 私も試写室で観させていただいたのですが、それでも鳥肌が立ちました!

ーーぜひ大きなスクリーンで楽しんでほしいですね。ちなみにトウマが歌うところは、下手に歌ってくださいと言われたのですか?

工藤 言われました。普通に歌ったら「下手に歌ってください」と言われ、下手に歌ってみたら、「もっと下手に」と(笑)。でも、すべての音程をずらすと違う曲になっちゃうから、当てるところは当てるというのを監督と相談しながら歌っていました。

福原 でも、そのうまくないところが、すごく素敵でした(笑)!

(取材・文・撮影/塚越淳一)


【作品情報】

■アイの歌声を聴かせて
<STORY>

景部市高等学校に転入してきた謎の美少女、シオン(cv 土屋太鳳)は抜群の運動神経と天真爛漫な性格で学校の人気者になるが…実は試験中の【AI】だった!
シオンはクラスでいつもひとりぼっちのサトミ(cv 福原遥)の前で突然歌い出し、思いもよらない方法でサトミの“幸せ”を叶えようとする。
彼女が AI であることを知ってしまったサトミと、幼馴染で機械マニアのトウマ(cv 工藤阿須加)、人気 NO.1 イケメンのゴッちゃん(cv 興津和幸)、気の強いアヤ(cv 小松未可子)、柔道部員のサンダー(cv 日野聡)たちは、シオンに振り回されながらも、ひたむきな姿とその歌声に心動かされていく。
しかしシオンがサトミのためにとったある行動をきっかけに、大騒動に巻き込まれてしまう――。
ちょっぴりポンコツな AI とクラスメイトが織りなす、ハートフルエンターテイメント!


<CAST>
土屋太鳳、福原 遥、工藤阿須加、興津和幸、小松未可子、日野 聡、大原さやか、浜田賢二、津田健次郎、咲妃みゆ、カズレーザー(メイプル超合金)

<STAFF>
・原作・脚本・監督:吉浦康裕
・共同脚本:大河内一楼
・キャラクター原案:紀伊カンナ
・総作画監督・キャラクターデザイン:島村秀一
・メカデザイン:明貴美加
・プロップデザイン:吉垣 誠、伊東葉子
・色彩設定:店橋真弓
・美術監督:金子雄司〈青写真〉
・撮影監督:大河内喜夫
・音響監督:岩浪美和
・音楽:高橋 諒
・作詞:松井洋平
・アニメーション制作:J.C.STAFF
・配給:松竹
・歌:土屋太鳳

©吉浦康裕・BNArts/アイ歌製作委員会

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