「アニメ版の純夏」として演じることができれば──「マブラヴ オルタネイティヴ」鑑 純夏役・楠木ともりインタビュー
2003年にPCゲームがリリースされ、以後、外伝作品も含めて小説や漫画、アニメなどさまざまなメディアミックス展開を見せる人気シリーズ「マブラヴ」。そのアニメシリーズ最新作「マブラヴ オルタネイティヴ」が、2021年10月より好評放送中だ。
シリーズ第1作「マブラヴ」とともにひとつの物語を成す本作では、ある日突然、主人公・白銀武(しろがねたける)が無数の並行世界ひとつに飛ばされてしまう。そこは「BETA(ベータ)」と呼ばれる地球外起源種に侵略された世界だった。武は国連軍に所属し、訓練小隊の面々とともに戦術歩行戦闘機(戦術機)と呼ばれる人型兵器に乗って戦うことになるのだが……。
今回はメインヒロインのひとりで武の幼なじみ・鑑 純夏(かがみすみか)役を演じる楠木ともりさんにお話をうかがった。
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最初は「アツいロボットアニメ」だと思っていました。
――純夏役が決まったときの率直な感想をお聞かせください。
楠木 原作あっての今回のアニメ展開ですので、まず前任の方の演技を参考にさせていただきました。オーディション時は、自分の演技が彼女にフィットするのかを音響監督さんたちに確認していただく意味も込めて、前任の方を意識しすぎずナチュラルな演技を心がけました。ただ、私の演技は純夏にあまり近くはないかな……と思っていましたので、決定のご報告をいただいた時はうれしさよりもプレッシャーのほうが強かったかもしれません。
――今回演じられている、鑑純夏の紹介をお願いします。
楠木 (白銀)武ちゃんの幼なじみで元気で快活で天真爛漫な子です。ことあるごとに武ちゃんのことを殴っている印象があり(笑)、パワフルなイメージがあったので、アニメの純夏はかわいい部分が多い印象を受けました。ですが、物語が進むにつれて、私が原作をプレイして感じていた「強い純夏」が出てくるようになったと思います。
――「マブラヴ」シリーズはご存じでしたか? 本シリーズへの所感を教えてください。
楠木 JAM Projectさんの歌う主題歌「未来への咆哮」はもちろん存じ上げていたのですが、作品自体はオーデイションまではあまり詳しく知らず……。主題歌の影響もあって「とにかくアツいロボットアニメなのかな」と思っていたら、シリアスなストーリーにとても驚きました。最初は物語の展開についていくのが大変でしたね。ゲームをプレイしていく過程で「私たちがこうして生きていることは当たり前じゃないんだ」と感じました。
武ちゃんのなかにある「純夏像」を意識した回想シーン
――アフレコはいかがでした?
楠木 純夏は第4話からの登場ということで、アフレコも途中からの合流となりました。第2話(※第1話はオリジナルストーリーのため、メインキャスト陣の登場は第2話から)
から登場し、活躍をしているメインキャラクターの演技を聴いて「ファンのみなさんに、私だけ役に合っていないと思われたらどうしよう?」と焦りも正直ありました。ですので、“第一声”はすごく緊張しましたね。
――純夏を演じるうえで意識した点はありますか?
楠木 彼女は武ちゃんの回想シーンに出てくることが多く、武役の神木孝一さん以外のほかのキャストさんとのかけ合いがあまりない中で、セリフ量自体も多くないため、集中して演じています。
先ほどもお話ししたように、原作ゲームのプレイを踏まえて、最初、私は純夏に対して「強い女の子」というイメージがありました。ただ、現場で「もっと武ちゃんに対しての、好きな気持ちを全面に出してもらっていいよ」とディレクションをいただきました。それを聴いて、実際に起こったことをリアルに演じるより、武ちゃんの中にある「純夏像」を意識した演じ方をすればいいんだ、と解釈することにしました。
具体的に意識したのは、第4話で武ちゃんに「ゲームガイ」(携帯用ゲーム機)を渡す場面です。原作ですと、普通にふるまうシーンだったのですが、かわいく演じてみたところ「純夏っぽくてよかったよ」と、スタッフさんに言っていただきました。そこで、「アニメの『マヴラヴ』では、武の記憶にある純夏として演じたらいいんだ!」と思えるようになりました。
そして、回想シーンも「武ちゃんが断片的な記憶の中で、なぜそのできごとを思い出したのか?」と考え、多分「そのときの純夏がかわいかったんだろうな」という結論に至りました。つまり回想で純夏が毎回かわいい仕草を見せることに対しても、納得がいくようになり、演じやすくなりました。
原作の演技はもちろん意識させていただきつつ、それのみにとらわれず「アニメ版に出てくる純夏」として演じることが大事なんだな、ということがわかってきましたね。
――ご自身の演じるキャラクター以外で気になっているキャラクターはいますか?
楠木 (鎧衣)美琴です。演習での彼女の凛々しさにすっかりほれ込んでしまいました! 美琴役のLynnさんが、先行上映会の舞台挨拶時におっしゃっていましたが、「緊張感を持ちすぎないよう演じる、でも締めるところはしっかり締める」という演技もとても好きです。
また、先行上映会の日に、初めてBETAが動くところを見たのですが、「要塞級(フォート級)」のデザインがいちばんお気に入りです。無機質でカッコいいんですよね。フィギュア化したらぜひ手元に置いておきたいです!
キャストごとに差が出ていた作品の見方
――先行上映会はいかがでしたか?
楠木 アフレコは、私は途中からの参加で、さらに人数を絞っての収録方法でしたので、ほとんど他のみなさんとご一緒ができませんでした。ですので、まずは、メインキャストのみなさんと会えて楽しかったです。武ちゃん役の神木(孝一)さんをはじめ、みなさんのコメントを聞いて、とても真剣に作品に向き合っていらっしゃり、どういう心持ちで演じられているのかわかりました。上映会の内容は第2話までの上映でしたので、純夏はそもそも出番がなかったということもあり、「もう少しお待ちくださいね!」としか、言えなかったのですが……(笑)。
――楽屋ではどのようなやり取りをされましたか?
楠木 劇場に入る前の楽屋でキャスト陣は初めて第1話と第2話を拝見しました。グラフィニカさんの描く戦術機のすごさに魅了されたいっぽうで、キャラクターの出番がなかった私や(彩峰 慧役の)佐伯伊織さんは壮絶なシーンの連続に、気分が悪くなってしまいまして……(苦笑)。
また、楽屋では、スチール撮影や映像コメント等の収録物があったのですが、神木さんが失敗するたびに笑いが起こったりと、ずっと和気あいあいとした空気感でした。神木さんはいじられキャラでありつつ、今回初めての主役ということで、相当プレッシャーがあったのがわかりました。ですので、同じ作品を盛り上げるパートナーとして、少しでも緊張をやわらげられるように声をかけたのを覚えています。
――もし“並行世界”が存在するとしたら、どんな世界に行きたいですか?
楠木 BETAが闊歩するような世界では生き抜く自信がないです(笑)。ですので、ちょっとした変化として、「マブラヴ」シリーズ内でもあるような、鎧衣尊人→鎧衣美琴のように、「男女が入れ替わった世界」で暮らしてみたいです。男女の価値観の違いを感じてみたり、あとは単純に、かわいい女の子と付き合いたいですね(笑)。
――最後に、メッセージをお願いします。
楠木 今後は戦闘シーンも増えてくると思いますし、武ちゃんたちが未来にどう立ち向かっていくのか?という展開が私も楽しみです。そして、登場人物たちが抱えている心情や背景が、だんだんと明らかになってきますので、そこも楽しんでいただきたいです。ぜひ今後の放送にもご期待ください。
(取材・文/佐伯敦史)
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