【インタビュー】TVアニメ「海賊王女」オリジナルサウンドトラックがCD2枚組で発売。梶浦由記が、18世紀の海洋冒険活劇のための音楽を語る!
クライマックスを迎えるTVアニメ「海賊王女」。18世紀×王女×侍×海賊という異色の世界観で打ち出された冒険アニメで、壮大な世界観とProduction I.Gによる精緻な作画が注目を集めている。
そして、梶浦由記による音楽も、この作品の魅力のひとつ。大海原を行く壮大な曲、和風テイストをスパイスにしたバトル曲、物語のキーとなる「vise versa」(ヴァイス・ヴァーサ)を筆頭とした女性ボーカル入りの曲など、多彩な楽曲が物語を盛り上げる。
全40曲のサウンドトラックについて、大いに語ってもらった!
いろいろな文化が入り混じる「海賊王女」の世界を、音楽でも表現しました
──原作、監督、キャラクター原案、さらには音響監督も兼任されて、「海賊王女」の中心クリエーターとなっている中澤一登さんが、梶浦さんのファンで、今回のタッグが実現したとうかがっています。
梶浦 とても光栄なことだと思っています。中澤さんの絵はいたるところで拝見していたんですけど、お仕事でご一緒させていただくのは今回が初めてでした。しかも「海賊王女」は、ほぼおひとりで作品の骨格を作られたんですよね。ストーリー性がありながら、ギャグも交えての会話劇でどんどん話が進んでいく感じが、とても新鮮でした。
──作曲家への楽曲発注のメニューは音響監督が書くのが通例なので、メニューも中澤さんの手によるものだったんですよね。
梶浦 そうですね。中澤さんのメニューは曖昧なところがなく、しっかりした文章で曲のイメージを伝えてくださるものでしたし、作曲に入る前に脚本も最終話までいただけて、途中の話数のこのシーンは後の展開の伏線になっているとか把握することができたので、作曲作業はすごくやりやすかったですね。なによりも、演出や絵作りだけでなく、音関係もすべて中澤さんが担って、疑問点がでてきたとき中澤さんにおうかがいすれば一発で話が通るというのがよかったです。
──「海賊王女」は18世紀の架空のヨーロッパを舞台にした海洋冒険ものと言っていいと思います。ところが、ヒロインの周りには日本人とおぼしきキャラクターが大勢いたりして、面白い世界観を持った作品ですよね。
梶浦 大航海時代を越えて、多くの人が海を渡っていろいろな土地へ行けるようになった時代って、あんなふうにいろいろな文化が一気に入り混じった時代だったんだろうなと想像しました。お互いによくわかってないまま、世界にはこんな人たちもいるんだと受け入れてやっていくような、そんなワクワクした時代が、この作品の舞台なんだと。そのゴチャゴチャ感を音楽でも出していこうと思いました。
──サントラを聴くと、ヨーロッパの上流階級が聴くようなクラシックから、裏街で流れている庶民的な音楽、さらに和のメロディまで入り混じっているように感じました。
梶浦 中澤監督とも打ち合わせでそのあたりの話をしたんですけど、ヨーロッパの特定の国を感じさせたり、和の要素を強く打ち出すのは、この作品には合わないだろうと。それよりも、ここではないどこかをイメージさせる、漠然と異国情緒のある音楽が一番合うのではないかという結論に達しました。物語が進むごとに明らかにイギリス海軍だとわかる人たちには、国がイメージできる音楽を付けてますけど、国籍を限定して作ったのはそれくらいですね。昔の曲で「異邦人」ってあったじゃないですか。あんな感じで、明らかに異国の音楽なんだけど、どこだかはわからないという感じにしていきました。
──フェナや雪丸が巡っている土地も、ヨーロッパのこのあたりかな?と想像はできるんですけど、地図を出したりして明確に描くようなことはされていないですよね。それに明らかに架空の街や土地も出てきますし。
梶浦 それぞれ現実の街をモデルに描いているようなんですけど、やっぱり架空の世界観なんですよね。そこがこの作品の面白さで、昔いだいていた旅への憧れを思い出させてくれますよね。話数ごとにどんどん新しい土地に行って、景色が変わっていきますし。
──まず最初の舞台となった「シャングリラ」が面白い街でした。
梶浦 そうですね。孤島にあって、ヨーロッパの街らしさもあり、バザーの風景などを見るとアジアンな雰囲気もあり。娼館や酒場が描かれるシーンは、土地柄というよりもどことなく怪しい雰囲気を匂わせたかったので、アコーディオンを使って。でも決して品は悪くない歓楽街なので、場末感は出さないように気をつけながら作っていました。
──DISC1から具体的な曲名をあげつつ、解説をおうかがいしたいと思います。まず3曲目の「the red-light district at night」が、今おっしゃった歓楽街の曲ですね。哀愁がありつつ、ガヤガヤとした夜の街の喧騒が感じられます。
梶浦 にぎやかで人の息が感じられるということでは、娼館というよりも酒場感が強い曲になっていますね。
──「the red-light district at night」も含め、サントラの序盤は1話で使われた曲が多い印象でした。
梶浦 曲順はディレクターさんに決めていただいたんですけど、だいたい本編で使われた順番だと思います。特に前のほうの曲はそうですね。
──4曲目の「happy feeling」と次の「noisy times」は明るい曲で、フェナがアンジーに逃亡計画を聞かせているシーンで使われました。「noisy times」は3話の街を散策するシーンなどにも使われていて、陽光の下の健康的な街を連想させる曲でもあります。6曲目の「a small pearl」は一転して切ない曲で、フェナが過去を振り返るシーンで使われていました。
梶浦 今回はオープニングテーマの「海と真珠」も私が作らせていただいたので、そのメロディをサントラにも使っているんです。特にフェナの曲に使うことが多くて、自分の曲なので自由にアレンジしていますね。
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