ワタル&虎王の最強コンビが世紀を超えて復活! 「魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸 -再会-」上映記念・田中真弓&伊倉一恵インタビュー

2022年1月7日より、全国34館での3週間限定上映とBlu-ray BOXの発売が決定した「魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸 -再会-」。上映を記念して、戦部ワタル役の田中真弓さん、虎王/翔龍子役の伊倉一恵さんにインタビューを行なった。

「魔神英雄伝ワタル」は1988年放送のTVアニメからスタートしたシリーズで、小学四年生の少年・戦部ワタルが、ロボット・龍神丸に乗って異世界“創界山”を救う物語を描いている。2020年には最新シリーズとして「魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸」が配信された。今回上映されるのは配信された9本の映像を1本にまとめ、新作カットを追加した特別編集版となっている。

30年以上ワタルと虎王を演じてきた盟友の2人に、約25年ぶりの新作アニメについて語ってもらった。

──「魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸」、そして特別編集版「魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸 -再会-」を制作すると聞いた時の感想を教えてください。

田中真弓(以下、田中) 実は、新作を作るという話はこれまでも何度もあったんですよ。だから本当にできるのかな、期待しすぎずに待ってるよという感じだったんです。正式に決まって、おお、本当になったね! という感じだったので、最初はあんまり信じてませんでしたね(笑)。

伊倉一恵(以下、伊倉) すごく嬉しかったですけど、私も全く同じで。サンライズさんって「シティーハンター」もそうなんですけど、30周年の区切りのいい時じゃないんですよ。ちょっと半端な年に新作が出るの。「シティーハンター」も「魔神英雄伝ワタル」も32周年で新作(笑)。だから「あらーっ」て驚く気持ちと、すごく嬉しかった気持ちとですね。

田中 劇場で見られるっていうのはまた嬉しいよね。

伊倉 今のきれいな画質で、大スクリーンで見られる機会ってそうないですもんね。とても楽しみです。

田中真弓さん

──ワタルと虎王を本格的に演じるのってどれぐらいぶりでしたか?

田中 もう相当ぶりだよね。

伊倉 「超魔神英雄伝ワタル」が1997年? だからそれ以来20うん年ぶりですね。

──約25年ぶりに少年ワタル、虎王を演じる感覚などはすっと戻ってくるものなのでしょうか。

田中 演じるまでちょっと心配だったのは声ですね。今は声が低くなってるので、昔の映像を見るとこんなに高かったかしらと思います。ワタル小学生か、高くしなきゃいけないかな、とか収録前は考えました。あの高さ、少年の声の勢いは出せるかしら、と。実際に演じると、お芝居に入ってしまうのでそういうことは気にしなくなるんですけど。年を取ると声は低くなるのもあるし、「ONE PIECE」のルフィなんかも大人になっているので、極力低く演じている内にだんだん声が低くなっていくんです。

伊倉 そうなのよね。あと真弓ちゃんは少年声を現役バリバリでやってるじゃない? 私は最近学校の先生なので、ちょっと不安もありました。

田中 あとは(「シティーハンター」の槇村)香だったり、女性だもんね。

伊倉 そうそう、コンスタントに少年をやっているわけではなかったので。でも役者なので、やれるのはやれるんですけど。一番心配だったのはね、ハネる気分。大人になると落ち着いちゃうんですよね。子供って、わけもなくずっと走ってるじゃないですか。歩いていけばいいところをわーっと行くような気持ちのハネている感じを大人になると忘れちゃうんですよね。そういう気持ちになれるのかな、という不安は演じる前にはあるんですけど、みんなで一緒にやりだしちゃうと自然にそうなっちゃう感じで、そんなに心配する必要はなかったなと思いました。

田中 今回、虎王がしっかりしてたんだよね。

伊倉 そうでしたね、最後のほうとか。

田中 (過去の作品では)虎王がやんちゃでワタルがちゃんとしてる感じだったじゃないですか。

伊倉 ひょっとしたら翔龍子の性格の要素とか成長が少し入ってるのかな、とか思ったりもするんですけど、ここはもう謎なんですよね。

田中 虎王と翔龍子の関係性は私たちにとってもいまだに謎です(笑)。

伊倉一恵さん

──神志那監督は、元の創界山に戻ると翔龍子に変わっていて、虎王のラストシーンがないと感じて新作カットに虎王のモノローグを入れたとおっしゃっていました。

伊倉 やっぱりさみしくもあるんですよね。新作カットを入れていただいて、虎王がそのさみしさを引き受けて翔龍子に還っていく感じがしました。そのあたりも含めて、「七魂」では虎王の成長を感じました。虎王はワタルが遊園地で遊びたがるのを止めてたけど、シバラク先生やヒミコもいろいろ好きに食べてるし。

──虎王は率先して遊んで食べていそうなイメージはあります。

伊倉 ヒミコよりも食べてやるみたいなね(笑)。

田中 ジャイアン的なね。いたずらっ子って感じだった。

伊倉 だからそのあたりの心の動きとかを、虎王スピンオフで作ってくださいって言ってるんですよ(笑)。

──翔龍子はすごくいい子で魅力的なキャラクターだけど、やっぱり虎王のやんちゃさや自由が好き、というファンもとても多いと思います。

伊倉 翔龍子の籠の鳥みたいな立場って本当に大変だと思うから、虎王ぐらいの感じがいいと思うんですよ。そういう意味では翔龍子は背負うものがあってかわいそうだと思うからこそ、悪を倒しに行くためにという目的ができて、虎王として自由奔放に暴れまわれるのはいいなと思いますね。


──今回は、いつもワタルを導いてくれた龍神丸が迷いや負の感情にとらわれたりします。ワタルにとって演じるのがつらいシーンもあったと思いますが、そのあたりいかがでしょうか。

田中 いつだって助けてくれた龍神丸が最初からいないのは、まず寂しいです。いて当たり前の存在がいないことで、あらためてありがとうって感じるっていうのかな。いつも導いてくれた龍神丸をワタルがしかるような、そういうシーンがありますよね。龍神丸ぐらいになると「龍神丸くん、それは違うよ」ってなかなか言ってもらえないじゃないですか。でも龍神丸はワタルにそう言ってもらえるし、遊園地で遊びたくなっちゃうワタルは虎王に止めてもらえる。しかってくれる人がいるってとても大事なことだと思うんですよね。「魔神英雄伝ワタル」は人生勉強もできる作品です(笑)。

伊倉 ワタルが「龍神丸」って何度も何度も呼びかけるんだよね。その名前を呼ぶだけのフレーズにちょっとキュンとなる切ない感じがあったり、いろんな感情やニュアンスがあるのを聞いてほしいですね。

──たくさん龍神丸の名前を呼んだし、いろんな必殺技を叫びましたね。

田中 いろいろやったね。いろんな魔神もでたしにぎやか。

伊倉 コスプレもしたね。そういう意味でもバラエティ豊かなので、劇場で1本の作品として見られるのは楽しいよね。

──「七魂」ではWi-Fiとかメールサーバーとか、世界を彩る要素もすっかり新しくなっていました。

田中 そういうのもすごく「ワタル」っぽいよね! あの頃だったら公衆電話だったのが、今はスマホになってたり。ワタルが履いてるのも最初はローラースケートだったんだけど、今回はドローンブーツだったり。

伊倉 シバラク先生の電話がバッテリー切れしてたり、LINEでお返事が来てたり。そういうのも楽しいと思います。

──今回はアフレコは揃ってできたんでしょうか?

伊倉 今はやっぱり難しくて、最高で3人ずつかな。

田中 「七魂の龍神丸」はコロナ禍に始まりコロナ禍に終わった感じだね。昔「ワタル」をやってた時は終わったらご飯食べに行くし、花見に行ったり、しょっちゅう集まってたんですよ。あんなに一緒だったのに。

伊倉 今回は飲んでも食べてもいないね。TVシリーズの頃は大体アフレコが終わると昼ごはん食べに行ってたんです。

──エンディングテーマに歌詞テロップが出るのは、本当は会場のお客さんと一緒に歌いたかった演出だと聞きました。

伊倉 コロナが終わったら、みんなで歌いたいですね。

田中 「STEP」を子どもたちと一緒にビクターで歌ったの思い出すなぁ。

伊倉 私たちも(2020年の)声優紅白で「STEP」歌わせてもらって。楽しかったね。

田中 ね。a・chi-a・chiじゃなくて……。

伊倉 ヨボヨボですってね(笑)。

──最後に「魔神英雄伝ワタル」のこれからについてと、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。

伊倉 虎王と翔龍子の関係は謎が残っているので、そこをスピンオフで解明してほしいですね(笑)。みんなに愛されている作品なので、当時見ていた人でそういうものを書いてみたいって人もきっといると思うんですよ。やっぱり役者としてドラマを見たいし、演じたいので。

田中 ドアクダー、ドワルダー、アンコクダーときて今回はドバズダー。「魔神英雄伝ワタル」、いくらでも続けられる気がしてきましたね(笑)。私たちが「ワタル」に続いてほしいと思っているのはもちろんだけど、お客さんが望んでくれないと無理なんだよね。だからみなさんが応援してくれればいくらでもできるよ、伊倉もいるし。

伊倉 いいことも悪いことも広がる(バズる)時代だから、ドバズダーってとっても今らしいと思うけど、これからもいっぱい悪はでてくると思うので。

田中 引き続きね、応援よろしくお願いします。

伊倉 望めば~かなう~。

(取材・文:中里キリ)

【映画情報】

■魔神英雄伝ワタル 七魂の龍神丸 -再会-

・上映劇場:全国34館にて公開中

<キャストクレジット>

 戦部ワタル:田中真弓

 忍部ヒミコ:林原めぐみ

 虎王/翔龍子:伊倉一恵

 剣部シバラク:西村知道

 渡部クラマ:山寺宏一

 海火子:高乃麗

 龍神丸:玄田哲章

・主題歌:STEP/a・chi-a・chi

<スタッフクレジット>

・企画・製作:サンライズ

・原作:矢立肇

・監督:神志那弘志

・脚本:永井真吾

・キャラクターデザイン:牧内ももこ

・メカニカルデザイン:新谷学

・デザインワークス:湯川純

・キーメカアニメーター:重田智、東賢太郎

・美術監督:池田繁美・丸山由紀子

・色彩設計:佐藤美由紀

・撮影監督:長田雄一郎・後藤春陽

・編集:野尻由紀子

・音響監督:藤野貞義

・音楽:兼崎順一、門倉聡、神林早人

・配給:サンライズ

■イントロダクション

株式会社サンライズが制作した冒険ファンタジー作品『魔神英雄伝ワタル』シリーズの最新作。

『魔神英雄伝ワタル』は1988年に放送開始されたのち、1990年の『魔神英雄伝ワタル2』、1997年の『超魔神英雄伝ワタル』と次々に新作が放送され、昭和から平成そして令和へと、まさに時代を超えて愛されるシリーズです。

2020年4月から配信された本作は、主人公の戦部ワタルやその仲間たちの声を、放送当時のキャストが担当することや、当時と変わらぬ楽曲が使用されたオープニング/エンディングなどとともに話題になりました。

■ストーリー

またも訪れた創界山の危機に駆けつけたワタル。しかし、正体不明の敵『ドバズダー』との戦いで、龍神丸がバラバラになってしまった!

絶望するワタルのもとに龍神丸の声が届く。自分はまだ、辛うじてその命を繋いでいる、と。そして夢の中でワタルは、逆さまの創界山を目にする。『無想界山』『龍の見る夢』とも呼ばれるそれは、ここではないどこか、いまではないいつかの世界。龍神丸はそこにいると感じたワタルは、虎王、ヒミコと共に、いま再び冒険に旅立つのだった。


©サンライズ・R

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