【本日発売】ゲーム・オブ・ザ・イヤーに輝いた傑作アクションが、4年の時を経てよみがえる! PC版「ゴッド・オブ・ウォー」をレビュー!

2022年1月15日(土)より、アクションゲーム「ゴッド・オブ・ウォー」のPC版が発売された。本作のオリジナルであるPS4版は2018年のゲーム・オブ・ザ・イヤーにも選ばれ、現在までに約1900万本もの売り上げを記録している。今回、そんな傑作のPC版を先行して遊ぶ機会を得たので、本稿ではそのレビューをお届けしよう。

母の遺言をかなえるため、父と子は世界の頂へ向かう

故郷であるギリシャ神話の世界で、かつてクレイトスは軍神アレスと取引を行い、強大な力を持った半神となる。だがアレスの謀略で家族を失うと、アレス本人だけでなく、神そのものを憎むようになり、怒りのままにギリシャの神々を殺し尽くしてきた。そんな過去作の話から時間がたち、北欧神話の世界に流れ着いたクレイトスは、フェイという妻と息子のアトレウスとともに新たな生活を築いていた。

物語は、フェイが病気で亡くなってしまうところから始まる。亡き母の遺言に従い、9つの世界でもっとも高い山の頂から彼女の遺灰をまくため、クレイトスとアトレウスは旅に出る。

とはいえ、クレイトスは息子の面倒を妻に任せっきりだったために、父としてのふるまいに苦悩している。いっぽうのアトレウスは、思い出といえば母のことばかりで父をろくに知らない。「父と子」というテーマのもと、旅の過程ではこの2人の関係がていねいに描写されていく。

物語序盤では、2人には会話らしいものもない。クレイトスにいたっては、「読め」や、「来い」と、文章ではなく単語を発している。さらに、アトレウスを褒めようとするも肩に手をかけるのをためらったり、いっぽうで、彼が怒りにまかせて暴れようとしたら厳しい口調でたしなめたりと、不器用な父としての言動が物語の随所に見られる。

全編を通して見ると、クレイトスは特に、怒りや復讐に対して敏感に反応する。そこにはギリシャ神話の世界で彼がおこなった、凄惨な復讐に対する後悔がある。自分と同じ道をたどってほしくないからこそ、頭で考えて行動するよう、不器用ながらもアトレウスに教え込もうとするわけだが、息子は父のことをほとんど知らないのでなかなか納得しない。過去を忌避するあまり、クレイトスは多くを語らないわけで、せっかく歩み寄ろうとしたアトレウスもすねてしまい、互いにすれ違ってしまう。

考え方の違いから衝突しながらも、2人はさまざまな戦いや出会いを通じて、少しずつ成長していく。その姿は、ゲームとしてだけでなく、ひとつの映画としてみても楽しめる。描写のほとんどがメインストーリーとからめられており、物語としてのテンポを損ねていない点もそうだが、実写さながらのグラフィックによって、表情や動きといった細かな点からも演出ができるようになったのも大きい。写実的なグラフィックを用いるゲームは、もはや映画の要素も含んでいるのだろう。

圧倒的な力で敵をなぎ倒す豪快なバトル

本作のクレイトスは、「リヴァイアサン」という近接武器を中心に使う。リヴァイアサンによる攻撃は、全体的に攻撃範囲こそ狭いものの威力は高く、雑魚敵であればつぎつぎと倒していける。スキルを解放していけばコンボ技も追加され、少しずつだがさまざまな技をくり出せるようになっていく。なかにはリヴァイアサンをブーメランのように投げるスキルもあり、やがては近距離だけでなく遠距離も、リヴァイアサンひとつで対応可能だ。

敵を倒して得た経験値を使えば、さまざまなスキルを解放できる

近接武器には「ルーンアタック」と呼ばれる特殊なスキルを装備させることができる。ルーンアタックには「ノーマル」と「ヘビー」があり、それぞれで習得できる攻撃技の種類が違う。どの技も通常攻撃にからめられるので、コンボの途中に挟み、攻撃の締めとして使ってもいい。ただルーンアタックは、一度使うと再び発動するまでに時間がかかるので、使いどころは考える必要がある。

「守護者の盾」を構えているあいだは敵の攻撃を防げる。相手の攻撃に対してタイミングよく防御することで「パリィ」が発生し、即座に反撃することが可能

クレイトスのメイン武器としては、リヴァイアサンだけでなく、「ブレイズ・オブ・カオス」もある。この武器は過去作でクレイトスが使っていた得物で、自在に伸縮する鎖につながれた双剣を振るう。重い一撃で正面の敵を倒すことに適していたリヴァイアサンに対し、こちらは素早い動きで広範囲を攻撃できる。リヴァイアサンとは違った強さを持つ武器で、頼りになる存在だ。ただ、解放されるタイミングがやや遅く、物語の中盤以降でないと使えない。

向き不向きはあるものの、リヴァイアサンとブレイズ・オブ・カオスも基本的に扱いやすい。ひとりを集中して攻撃するときはリヴァイアサン、敵の大群を相手にするときはブレイズ・オブ・カオスといった具合に、状況に応じて使い分けるのが一番だ。それぞれ攻撃技こそ違うが、操作方法は同じという点もいい。どちらかいっぽうの操作さえ覚えてしまえば、その感覚をそのまま片方の武器にも応用できる。メイン武器は瞬時に切り替えられるので、簡潔でわかりやすい操作性なのもありがたかった。

ここまでクレイトスのアクションを解説したが、アトレウスも戦闘に参加してくれる。彼の得物は弓で、リヴァイアサンやブレイズ・オブ・カオスほどの攻撃力はないが、矢の種類に応じた特殊効果が存在し、ヒットさせた敵の弱体化や拘束が可能だ。矢を放つタイミングはプレイヤーが指示できる。特に拘束はかなり有用で、一部の動きが速い敵を一方的に攻撃可能。矢で拘束した相手に近づいてリヴァイアサンの溜め攻撃で一気に決めるというコンボが気持ちよく、最後まで重宝した。

今回のレビューにあたっては本作を最後まで遊んだが、全体的に戦闘の難易度が高い。筆者が選んだノーマルでも中ボス戦などはかなり苦戦した。ひとりの敵に集中しているあいだに別方向から攻撃され、防御や回避をおろそかにした結果いつの間にか体力がギリギリまで減っていることが多かった。

「ゴッド・オブ・ウォー」シリーズと言えば、並みいる雑魚敵を蹴散らして進むというのが基本だったので、これは意外だった。クレイトスも老いとともに衰えていることを表しているのか、グラフィックがリアルになった影響で、過去作のような派手なアクションがしにくくなったのかはわからないが、今回の「ゴッド・オブ・ウォー」ではある程度は慎重な立ち回りが求められる。アクションが苦手な人はイージーがオススメだ。

ほどよい謎解きが楽しいフィールド探索

冒険の拠点となる「ミズガルズ」を中心に、クレイトスとアトレウスは「ヘルヘイム」や、「アルフヘイム」といった複数の世界を冒険する。ミズガルズには山が小さく見えるほどの「ヨルムンガンド」がいて、ヘルヘイムは吹雪が吹き荒れ、「ムスペルヘイム」は火山とマグマに満ちている。実写さながらのグラフィックでファンタジーの世界が表現されており、ただ探検するだけでも楽しい。

ヨルムンガンドと巨人

各世界が余りに広いので勘違いしやすいが、本作は「オープンワールド」ではなく、大小異なる複数の1本道で構成されたオーソドックスな作りのゲームだ。ただ、その1本道の種類が非常に多い。

ミズガルズの中心にある神殿から少し出れば、小さな陸地や洞穴が点在している。そこにはちょっとした謎解きが用意されていて、クリアすると宝箱を見つけられる。クリアしたダンジョンを出て船で移動していると、画面に新たなダンジョンが映る。そこに行って謎を解き、また宝箱を見つける。メインストーリーには関わらないが、挑むと資源やアイテムが手に入るダンジョンが本作には満載で、広大な世界を冒険したくなるよう巧妙に作られている。

なお、謎解き自体は数分もあれば解けるものが大半。ただ、リヴァイアサンの特殊能力である氷を使い、止まらない歯車を凍らせて扉を開けたりするなど、いずれも凝っているのが特徴だ。

各ダンジョンはボリュームこそ控えめだが、そのおかげでかえってテンポがいい。サクッと終わらせて、すぐ次に行けるわけだ。本作のおもな移動手段は舟なので、海を渡っていると少なからず時間がかかるが、さきほど書いたように新たな土地を見つけられることもあるため、景色を眺めているだけでも楽しい。さらに仲間のミーミルが北欧神話にまつわる話を聞かせてくれる。興味を引く要素が次から次へと出てくるおかげで、長い移動も苦にならない。

アトレウスの右に置かれている首がミーミル。「知の巨人」としてあらゆる分野に精通している

本作は北欧神話そのものを題材にしているので、ミーミルの話はなかなかタメになる。アース神族とヴァン神族の関係、ヴァルキュリアたちはなぜ戦士の魂をヴァルハラに送るのか、北欧神話の主神であるオーディンはどのような存在なのか。会話のボリュームはすさまじく、今回の30時間ほどのプレイでは毎回異なる話を聞けた。

物語の途中で、各地を瞬時に行き来できる「ファストトラベル」も解放される

本作にはやり込み要素も用意されている。その一部がムスペルヘイムと「ニヴルヘイム」だ。ムスペルヘイムでは、特定の条件下による敵とのバトルが中心。腕試しに向いているだけでなく、条件をクリアすれば、報酬として武器や装備に使う資源ももらえる。

ニヴルヘイムでは、挑むたびに構造が変化するダンジョンに挑める。ダンジョンにはクレイトスを蝕む霧が立ち込めており、霧の中にいる間は専用のゲージが減少、ゼロになると代わりに体力が減少し、やがてゲームオーバーになる。ここではニヴルヘイム限定の資源が手に入るので、ゲージの残量と相談しながら、奥に進むか入口まで戻るかを決めなくてはならない。

ニヴルヘイムのダンジョンは中毒性がとくに高い。もっと奥に行って宝箱を漁りたい物欲と、死んだら全部やり直しになるリスクのせめぎ合いが楽しく、ここだけで10時間以上遊んだ。

快適に遊ぶために必要なスペックは?

PC版「ゴッド・オブ・ウォー」を遊ぶために必要な性能は、各配信サイトですでに発表されている。最低と推奨、2つの環境で求められるスペックは、まとめると以下の通りだ。

●最低環境

CPU:Intel i5-2500k(クアッドコア3.3GHz)またはAMD Ryzen 3 1200(クアッド3.1 GHz)

GPU:NVIDIA GTX 960(4GB)またはAMD R9 290X(4GB)

メモリ:8GB DDR

●推奨環境

CPU:Intel i5-6600k(クアッドコア3.5 GHz)またはAMD Ryzen 5 2400 G(クアッドコア3.6GHz)

GPU:NVIDIA GTX 1060(6GB)またはAMD RX 570(4GB)

メモリ:8GB DDR

※Epic Gamesのサイトより抜粋。

いっぽう、今回のレビューで筆者が使ったPCの性能は以下の通り。

●筆者のPC環境

CPU:AMD Ryzen 7 3700X 8-Core Processor 3.59 GHz

GPU:GeForce RTX 2060 SUPER

メモリ:16GB

本作のグラフィック設定にはプリセットがあり、「低」、「オリジナル」、「高」、「ウルトラ」の4段階まで用意されている。「カスタマイズ」にすれば、テクスチャや影の項目を個別にいじることも可能だ。

筆者は上記のシステムで解像度を1920×1080のフルHDに、プリセットを「高」にして遊んだが、フレームレートは平均して100~70となった。処理落ちなどはいっさいなく、快適に遊ぶことができた。

試しにプリセットを「ウルトラ」に設定すると、フレームレートは90~70と、「高」のときとあまり変わらない。ただ、筆者のディスプレイでは、ウルトラHDや4Kの解像度までは出せない。もっと上の解像度を設定するとなると、さらに性能がよいPCが必要になりそうだ。

発売当時はPS4で触れた「ゴッド・オブ・ウォー」だが、今回はそれから約4年ぶりということで、新鮮な気持ちで遊ぶことができた。父と子をテーマにした物語だけでなく、豪快なアクション、プレイヤーを飽きさせないフィールド作りは、まさにゲーム・オブ・ザ・イヤーにふさわしい。本作の続編である「ゴッド・オブ・ウォー ラグナロク」は今年発売される予定なので、未プレイの人は予習を、すでに遊んだ人は復習も兼ねて触れてみるのもいいかもしれない。

(文・夏無内好)

⇒Steam版「ゴッド・オブ・ウォー」

⇒Epic Games版「ゴッド・オブ・ウォー」

【タイトル情報】

■ゴッド・オブ・ウォー

ジャンル:アクションアドベンチャー

対応機種:PC(Steam、Epic Games)

発売予定日:2022年1月15日(土)

価格:4,900円(税込)

CERO 審査予定

開発元 サンタモニカスタジオ

発売元 株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント

(C)2021 Sony Interactive Entertainment LLC. God of War is a trademark of Sony Interactive Entertainment LLC.

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