アニメライターによる2022年冬アニメ中間レビュー【アニメコラム】

2022年冬の新作アニメの中から注目作を中間レビュー! プリキュア最新作「デリシャスパーティ♡プリキュア」、「ヤングガンガン」連載のラブコメ「その着せ替え人形は恋をする」、「となりのヤングジャンプ」連載の学園もの「明日ちゃんのセーラー服」、電撃小説大賞の受賞作「錆喰いビスコ」、創作童話が原作のショートアニメ「かなしきデブ猫ちゃん」、5作品をピックアップしました。

デリシャスパーティ♡プリキュア


プリキュアシリーズ19作目のモチーフは「ごはん」。すべての料理を独り占めしようとするブンドル団の野望を止めるため、3人の少女がプリキュアに変身して立ち向かう。第1話のしょっぱなから、お寿司、焼き鳥、ハンバーグ、ピザ、ラーメンなど、美味しそうな料理が盛りだくさん。料理アニメは深夜に放送されれば夜食への欲望をかきたてる敵となるが、朝ならば夕食の献立を決めてくれる友となる。今週はどんなメニューが出てくるのか楽しみだ。
プリキュアたちをサポートする料理の妖精は、米のコメコメ、パンのパムパム、麺のメンメンと、炭水化物に全振り。なにかと炭水化物が悪者にされる風潮に抗う攻めの姿勢が好感触だ。クッキングダムの王様・クッキングの「クッククック」という口癖や、ブンドル団の「ブンドルブンドルー」という鬨(とき)の声など、どこか懐かしいワードセンスにも癒される。プリキュアシリーズでは初めて動画配信サービスでの見逃し配信されており、あらゆる意味でやさしい作品になるだろう。



その着せ替え人形は恋をする


雛人形職人を目指す高校生・五条新菜(わかな)が、同級生のギャル・喜多川海夢(まりん)にコスプレの衣装作りを頼まれたことがきっかけで仲を深めていくラブコメディ。新菜の部屋は6畳の和室で本人は作務衣ばかり着ているが、そこに海夢が現れると雰囲気が一変。長押(なげし)にかけたハンガーにコスプレ衣装が吊されていたり、畳の上で海夢の撮影会が始まったりと、和室とコスプレの意外な組み合わせのよさに引き込まれる。
新菜の何事にもマジメに取り組む姿勢も好印象。キャラが登場する美少女ゲームをやり込み、衣装を再現するためのポイントを三面図に描き込み、そして何より無茶な納期もしっかり間に合わせる勤勉さは見習わなければならないだろう。ここまでしなければギャルからの信頼は得られないと痛感する一作だ。



明日ちゃんのセーラー服


ブレザーが制服の女子中でただひとり、セーラー服姿で学園生活を送る主人公・明日小路(あけびこみち)の青春ストーリー。本編では彼女がセーラー服に憧れるようになった理由が天真爛漫な口ぶりで語られるが、その純粋な感情はときおり挟まる主観ショットを介して、キャラクターを観察したいという我々の欲望に繋がる。好きだという気持ちを全力で肯定するテーマゆえに、瞳や唇、足、爪など、身体の一部分へのクロースアップにもためらいがなく、ていねいというよりは執拗という言葉が似合う描写も相まって、何か見てはいけない領域に踏み込んでいるかのようなソワソワした気分になってくるほど。
アニメーション制作は「その着せ替え人形は恋をする」と同じくCloverWorksが担当。多くの放送局で放送時間も連続しており、衣服を題材にした1時間を堪能できる。



錆喰いビスコ


舞台はあらゆるものが錆びついて荒廃した未来の日本。弓の達人の指名手配犯・赤星ビスコと天才医師の猫柳ミロが出会い、すべての錆を浄化する伝説のキノコ・錆喰いを求めてタッグを組む冒険譚だ。文明崩壊後の世界を描いたポスト・アポカリプスの作品だが、驚くのはそのビジュアル。巨大な蟹やイグアナ、カバに乗って移動したり、ビスコが弓を射った場所に巨大なキノコが出現したりと、冗談のような現象が独特なリアリティを持って表現された。
序盤のエピソードは時系列を大胆に入れ替えて、ビスコとミロの双方の視点を見せることでバディものとしての印象を強めているのも効果的。登場人物たちの軽妙な語り口が気持ちいい次回予告まであり、最後まで視聴者を飽きさせない。OPアニメの絵コンテを小説家の舞城王太郎が担当しているのも含めて、予想がつかない闇鍋のような魅力にあふれている。



かなしきデブ猫ちゃん

愛媛県で親しまれている創作童話を、NHK松山放送局の開局80年特別企画でショートアニメ化。とある誤解から飼い主に叱られたデブ猫・マルが、広い世界を見るために愛媛を冒険するストーリーだ。マル役は俳優の滝藤賢一が務め、デブ猫らしからぬ渋い声による語りと哀愁を誘うギターサウンドがハードボイルドな世界観を盛り上げていく。人前ではリアルな猫らしい仕草を見せるが、ひとりになると途端に2本足で街中を闊歩するなど、人間臭くなるギャップにも笑ってしまう。
愛媛の魅力を伝えるご当地アニメとしての要素もあり、しまなみ海道では漁船に忍び込んだり、宇和島のみかん畑では農業用モノレールでジェットコースター気分を味わったり、エピソードごとに異なる景色を堪能できる。旅のきっかけとなる謎の黒猫・マドンナと、マルの飼い主・アンナ役を、愛媛出身の水樹奈々が担当しているのも注目。

(文・高橋克則)

(C) ABC-A・東映アニメーション
(C) 福田晋一/SQUARE ENIX·「着せ恋」製作委員会
(C) 博/集英社・「明日ちゃんのセーラー服」製作委員会
(C) 2021 瘤久保慎司/KADOKAWA/錆喰いビスコ製作委員会

おすすめ記事