【ゲームレビュー】今度の黒井社長は手強い! 961プロ調査報告書~「アイドルマスター スターリットシーズン」序盤を古参Pが遊んでみた!

バンダイナムコエンターテイメントから発売中のゲーム「アイドルマスター スターリットシーズン」。プロデューサーとなってアイドルたちをトップアイドルに育てあげる「アイドルマスター」シリーズの最新作です。


対応プラットフォームは「PS4」と「Steam」。自分は大昔、「アイドルマスター」初の家庭用版が出ると聞けば「Xbox 360」を買い、「アイドルマスター」の位置情報エリアゲームのスマホ版(「アイドルマスターモバイルi」)が出ると聞けばフィーチャーフォンをスマホ(iPhone 4S)に買い替えという感じで、アイマスに合わせてハードを更新してきた歴史があるので、新作は「PS5」で! …と言われなかったのはちょっと安心したような、買い替えのタイミングを逃がしたような複雑な気分です。うちのパソコンは非力なので、今回はプレイステーション4版を遊びたいと思います。ゲームの前半パート、3月から7月までのネタバレがあるのでご注意ください。

さて、今回の「アイドルマスター スターリットシーズン」ですが、一番の売りは「アイドルマスター」シリーズの元祖たる765プロの面々に加えて、「アイドルマスター シンデレラガールズ」から安部菜々、神崎蘭子、城ヶ崎美嘉、双葉杏、諸星きらり、「アイドルマスター ミリオンライブ!」から春日未来、最上静香、伊吹翼、白石紬、桜守歌織、「アイドルマスター シャイニーカラーズ」から白瀬咲耶、小宮果穂、杜野凛世、大崎甘奈、大崎甜花という面々が登場することです(DLCでの追加アイドルを除く)。これまでの家庭用版で、「シンデレラガールズ」や「ミリオンライブ!」のアイドルたちのライブシーンを楽しめるコンテンツはありました。

が! 

「シャイニーカラーズ」のアイドルの登場は初めて! 「シャイニーカラーズ」はブラウザーゲームですから、これまで想像の世界だったライブシーンを家庭用ゲーム機のハイクオリティな環境で遊ぶことができるのです! 果穂、背が高い! 咲耶、もっと大きい! きらりは天をつく! 

本作では、765プロ高木社長の肝入りにより、各事務所から選抜された28人+1人という事務所越境ユニット“プロジェクトルミナス”として活動していくことになります。目標は年末に行なわれる“スターリットドーム”のこけら落とし公演出演! ドームですよ、ドーム! 夢は果てないですが、今は事務所でいろんな事務所のアイドルたちが話し、笑いあっているだけで楽しく、幸せな気分です。

昔は新作が出るたびにアイドルたちに「初めまして」と言われてしまい、ともに戦い抜いた記憶は彼女たちにはないのね……と、世界線を渡った悲哀を感じたものですが、本作ではプロデューサー(わたくし)はしばらくハリウッドに研修に行っていた765プロプロデューサーという設定になります。765プロのアイドルたちとは“久しぶり”のプロデュースという距離感で、信頼関係はできあがっている感じ。基本的なイメージ的には「アイドルマスター ワンフォーオール」以降の家庭版の設定や世界観に、アニメ「アイドルマスター」のエッセンスを振りかけた感じです。あくまで「感じ」です。新たなアイドルたちの育成に悩んだとき、ちょっと先行く存在として765プロのアイドルがアドバイスをくれたり、練習を引っ張ってくれるのが嬉しいですね。

「アイドルマスター」の歴史を引っ張ってきた765プロのアイドルたち。そして、「ミリオンライブ!」で加わった765プロの後輩たち。「シンデレラガールズ」の事務所はアニメでは346プロダクションと呼ばれていました。「シャイニーカラーズ」の事務所は283プロダクションです(本作に天井社長も登場するよ)。「アイドルマスター」にはほかにも315プロや、876プロなど、さまざまな事務所が登場するのですが、本作にはもうひとつ忘れてはいけない事務所が存在します。それが765プロの最大のライバルであり、黒井崇男(CV:子安武人)社長が率いる巨大プロダクション、961プロです。今回は、主に961プロの話をします! なぜなら、僕が961プロをすごい好きだからです。

「スターリットシーズン」の物語は、28人+1人の「1人」である本作オリジナルアイドルの奥空心白が、ふと、街頭ビジョンを見上げるシーンから始まります。東京で一番デカいスクランブル交差点を思わせる街頭ビジョン。劇場版「THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!」のエンディングで、この街頭ビジョン(に似たやつ)で輝くアイドルたちを渋谷凛が見上げていた鮮烈なカットを思い出します。ここは、アイドルたちの物語がはじまる交差点なのです! 

大型ビジョンでは、本日961プロから新アイドルユニットがデビューするというニュース映像が映し出されています。メンバーは玲音(れおん)、詩花(しいか)、そして亜夜(あや)の3人です。玲音はPS3「ワンフォーオール」で初登場したトップアイドル。“オーバーランク”と呼ばれるラスボス的存在です。詩花は「アイドルマスターステラステージ」で初登場。物腰のやわらかさと、黒井社長の時に強引な方針にも時にははっきりとノーと言える芯の強さが魅力的でした。各作品で961プロの看板をソロで張ってきたアイドルたちがトリオユニットを組む! 

そしてそんな規格外のアイドルたちのセンターに立つ謎の新人・亜夜。これは今日これから新しい伝説がはじまる予感がバリバリしますね!

ここで少し961プロについておさらいします。アイマスの歴史に詳しい人なら、961プロのアイドルとして伝説のトリオユニット「プロジェクトフェアリー」を思い浮かべると思います。

初登場はPSP「アイドルマスターSP」で、シリーズ初のしっかりとしたキャラクターとストーリーを持ったライバルアイドルとして765プロの前に立ちはだかりました。メンバーについてはちょっとややこしいのでど忘れしてしまったことにしますが、なんくるない感じだった気がしますね。

Xbox 360/PS3「アイドルマスター2」では961プロは、なんと男性アイドルのJupiterをプロデュース。今やJupiterは「アイドルマスター SideM」の315プロで、看板を張っています。

そして、玲音、詩花という尊敬すべき最強のライバルたち。黒井社長が見出したアイドルたちは、いずれも並外れた才能を持った真のトップアイドルばかりでした。961プロは資本力や、時にダーティーとも言われる豪腕のプロデュース方針ばかりが注目されますが、それを支えているのは黒井社長のプロデューサーとしての眼力なのです。黒井社長は常に765プロと高木社長を目の敵にしているのですが、そこに至る物語はコミック「朝焼けは黄金色 THE IDOLM@STER」を読むといいと思います。

そしてそんな961プロが送り出す最強のトリオユニットこそが、「ディアマント」なのです! 街頭モニターでの輝かしいデビュー告知のセンターに凛として立つ亜夜を、心白は複雑な表情で見上げていました。

さて、そんな事情はつゆ知らず、海外から戻ってプロジェクトルミナスに選ばれたアイドルたちと交流をはじめたプロデューサーさん。限定ケーキを求めてパシリに行ったケーキ屋さんで偶然、心白(こはく)と亜夜を見かけたり、街中で見様見真似でプロ並みのパントマイムを見せる心白の姿を目にしたりするうちにティン!と来ます。プロジェクトルミナスにはこの子が必要だ!

謎の少女は名刺も受け取ってくれませんでしたが、粘って名前を聞き出していたことで思わぬつながりが生まれました。奥空心白は高木社長の旧知の大女優・奥空眞弓の娘だったのです。

高木社長はコネクションを使って、心白と奥空眞弓にアポイントメントを取ってくれました。かつて高木社長が、ここまで有能にプロデューサーを助けてくれたことがあったでしょうか(笑)。しかも、どうやら心白はかつて961プロからデビューしようとしていたといいます。

あの黒井社長が認めた(?)原石。ティンときた直感は正しかったようです。

そして対面した奥空眞弓が、心白の再デビューの条件として出したのは、心白が持っている「ある心の問題」を見つけて、解決すること。その課題を達成できるか、夏までの期限付きですが、プロジェクトルミナスに29人目の仲間が誕生しました。

そして高木社長が用意してくれたルミナス専用の事務所に引っ越しして、心機一転、スターリットドームを目指す毎日が始まりました。いっぽう、ビルの高層階にある961プロの社長室では、亜夜が黒井社長との面会に臨んでいました。亜夜は実績のない自分がディアマントのメンバーに選ばれた理由を知りたかったのです。

黒井社長は、亜夜を選んだのは自分ではなく玲音と詩花であること、その理由は彼女のアイドルに対する熱い想いであると語ります。もちろん、厳しくも皮肉交じりの口調ではあったのですが。

ん、あれ? 今まで大体、黒井社長といえば発掘から育成までは抜群にうまいものの、ダーティーなやり口でアイドルと道が別れていったり、自由気ままに動くアイドルが765プロと仲良くなっちゃったりと、なかなかうまく行かなかった印象があります。

でもなんか今回の崇男(黒井社長)、モチベーション管理に成功してませんか。最高の才能たちが抜群のコンディションでデビューに臨もうとしてますよ。……これ、勝てるのかなぁ?

別々の事務所から集ったプロジェクトルミナスのアイドルたちでしたが、レッスンやライブを重ねながら成長していきます。交流のために、4月にはお花見を行ないました。桜はもう散ってしまっていましたが、歌織さんや未来の提案で、事務所に手作りの花飾りを飾りつけての親睦会を行なったのです。

新曲制作が間に合わないトラブルがあり、「お願い!シンデレラ」をルミナスとしてカバーすることになった時は、杏たちがダンスを教えてくれました。さまざまな個性が集まるクラス(事務所)で、目配りをしてくれる美嘉の頼もしさったらありません。一番新人の283プロのメンバーが自分たちの活動を撮影するテレビ番組の企画があったり、息抜きにみんなで夏祭りに遊びに行ったり……。

日々のレッスンに加えて余暇の活動で目が回るような忙しさでしたが、行き詰まったパフォーマンスのレベルがグッと伸びるのは、ちょっとした心の交流でアイドル同士、そしてプロデューサーとアイドルの心の絆が近づいた時でした。

心白の心の問題は一体なんなのか? 

それには、彼女が母の眞弓から受け継いだ、他人の表情や表現を観察して自分の表現として見せる卓越した才能が関わりあるように思えます。ヒントはたくさんあるのですが、プロデューサーは確信が持てないようです。

プロデューサーが行き詰まっている時、助けてくれたのは、長年の戦友でもある765プロのアイドルたちでした。春香や千早、律子と貴音、そして伊織に心白のことを相談しながら、プロデューサーは奥空心白というアイドルの心と過去に迫っていきます。心白の誕生日の7月26日には、ルミナスのメンバーで誕生会を行ないました。

このあたたかな時間が続くのか、ひと夏の思い出になってしまうのかは、今後のプロデューサー次第です。

そうする間にも日々は進みます。

ルミナスの最終目的であるスターリットドームを目指すには、本来毎月のタスクを乗り越え、ユニットとしての実力を証明し続けなければいけません。しかし、961プロはなんと、シードのような特別扱いで7月の大ライブ「サマードルフィン」に参戦してきました。黒井社長の政治力をもってすればどうということはなかったようです。

そしてどうやらディアマントの亜夜も、一緒にデビューするはずだった心白との関係に、複雑な想いを持っているようです。それでも彼女は努力を重ね、最高で最強の先輩たちとともに、デビューステージに立ちます。

ディアマントのデビュー曲。それはかつて961プロの最高傑作だったユニットから受け継がれた楽曲。765プロ、そしてすべてのアイドルたちを超えていく決意の歌でした──。

やっぱり、これ、勝てなくないですか?

今ははるか先を行くディアマントのパフォーマンスのクオリティの高さに、ルミナスのアイドルたちもショックを隠せない様子。ですがその悔しさや悲しみは、心白の心にも何かさざなみを立てたようです。

奥空眞弓との約束の期限までは、1か月。プロジェクトルミナスのメンバーは夏合宿に向かいます。そこで彼女たちが見たものは──え、ここから先は配信禁止区間? ネタバレ禁止? 

うーん、そうですか! 

ここから先はこっそり楽しみたいと思いますし、皆さんもこっそり楽しんでほしいと思います。

ひとつ言えるのは、今回の黒井崇男と961プロ、そしてディアマントは、手強いですよ。

(文/中里キリ)

【ゲーム情報】

■THE IDOLM@STER STARLIT SEASON (アイドルマスター スターリットシーズン)

ジャンル:アイドルプロジェクトプロデュースゲーム

発売日:2021年10月14日(木)

価格:

 通常版:9,020円(税込)(ダウンロード版同価格)

 PS4用初回限定生産版:15,180円(税込)

 PS4ダウンロード版専用デラックスエディション:13,750円(税込)

 STEAM版:オープン価格

プレイ人数:1人

CERO:B

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