ガメラのプラモデルは、まさかの1/700スケール!? エクスプラス「少年リック」の目指す、プラモデル製モンスターたちの理想郷【ホビー業界インサイド第79回】

昨年、セクシーな女吸血鬼「ヴァンピレラ」の1/8スケールのプラモデルが発売され、またたく間に売り切れとなった。発売したのは、「少年リック」のブランド名で多数の怪獣フィギュアを発売してきた株式会社エクスプラス。
そのエクスプラスが、「ヴァンピレラ」に続いて「メトロポリス」の美女型アンドロイドのプラモデルも発表。すでに受注が始まっている。そればかりか、「シン・ウルトラマン」や平成「ガメラ」をも組み立て式のプラモデルキットとして発売するという。これらの大胆にして独特な商品ラインアップの背景には、どんな狙いが? なぜプラモデルなのか? エクスプラス常務の岡本Geeさんに、お話をうかがった。

マルサン、オーロラ、ビリケン商会のモンスターたちへのリスペクトをこめて


──「少年リック」は、エクスプラスさんの中の一事業部なのですか?

Gee 屋号みたいなものですね。エクスプラスという会社は、アパレルの総合商社です。私は1998年に入社したのですが、その時期、たまたまエクスプラスはエンターテインメントを新しいテーマにしようとしていました。私は海外と取引のある商社なら、フィギュアの生産に有利ではないかと考えたのです。もちろん、会社は繊維関係ですから、フィギュアの工場にはツテがありません。ですから韓国、中国、ベトナムなどを回って生産工場を探しました。

──すると、岡本さんが怪獣フィギュアの企画・開発をひとりで始めたのですか?

Gee 入社したばかりの頃は、自分の名刺に「スカルプター」と刷っていました(笑)。


──では、ご自分でも怪獣の原型を作っていたのですか?

Gee そうですね、最初のころは、誰に原型を頼んだらいいのかわからなかったからです。海洋堂、ボークス、ゼネラルプロダクツ、イノウエアーツなどのガレージキットメーカーが関西でしのぎを削っていた時代を体験していたので、見よう見まねで怪獣を粘土造形していました。
エクスプラスから最初に発売した初代ゴジラのひな型バージョン、次のゴジラ(ローランド・エメリッヒ版の「GODZILLA」)までは、自分で原型を作っていました。その頃からパッケージにはこだわっていて、ひな型版の初代ゴジラはマルサンのブリキ製ゴジラと同じようなサイズの箱にしました。そして、無意味に英文を並べて、あたかも米国向けに日本で作られたブリキ玩具のような体裁にしました。また、付属のプレートには「いつも楽しい東宝映画」というロゴを入れました。もし昭和29年に「ゴジラ」の公開された映画館に、この商品が並んでいたら……と空想した遊びです。

──そんなマニアックな製品だったんですね。

Gee 3歳のときに「ウルトラQ」と「ウルトラマン」をリアルタイムで視聴した世代ですので、マルサンとブルマァクのソフビ人形は強烈に覚えています。それから十数年後、ビリケン商会さんから「宇宙水爆戦」のメタルーナ・ミュータント、「地球へ2千万マイル」のイーマ竜などのソフビキットが発売されて、大変な衝撃を受けました。ですから、いつかは自分も理想の怪獣ソフビをつくりたいと、ずっと思ってきました。
もうひとつ動機がありまして、長い歴史をもってダイキャスト製の高級なミニカーを作り続けている会社があるのに、怪獣の分野にはそういうメーカーがないと気がついたことです。コレクタブルでリアリティのある怪獣、クリーチャーを作りつづける会社になりたいと思いました。

──そういう動機があって、プラモデルとして「シンバッド七回目の航海」のサイクロプスを出すんですね?

Gee レイ・ハリーハウゼンの創造したクリーチャーは、「チェスピースコレクション」というシリーズで、過去にたくさん商品化しました。では、どうして今回はプラモデルなのかと言うと、発想の根底にはオーロラのモンスターシリーズがあるんです。

──オーロラ社というと、1970年代まで一世を風靡したアメリカの模型メーカーですね。

Gee 子どものころ、模型店の棚の上のほうに、狼男やドラキュラ、半魚人などのパッケージが並んでいて「あれは一体なんだろう?」と気になっていました。後になってから手に入れてみると、パーツの合いは悪いのですが、半魚人のエラは1枚1枚が別パーツになっています。インジェクションキットなのに、そこまで再現されているのはすごいと唸りました。そして、何よりもパッケージアートの素晴らしさに惚れ惚れしました。あらゆる要素が高次元で完成されていて、ひとつの製品として結実しているのがオーロラのモンスターシリーズでした。ですから、エクスプラスのプラモデルもスケールは1/8で、オーロラやビリケンの合わさったような王道のサイズです。

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