「東京リベンジャーズ」「呪術廻戦」など人気作品とのコラボスイーツが続々登場! Cake.jpが目指す“仕組み作り”とは?【コラボのゲンバ第18回】
アニメや声優などのサブカルチャーとさまざまな業界のコラボレーションが活発化する今日この頃、「おっ!やってくれるな」「何?そうきたか!」とファンの心を刺激してくる商品、コラボ企画が続々と登場している。そこで、アキバ総研的に気になる「コラボ」の企画現場に伺い、企画の魅力やおもしろエピソード、苦労話などの制作裏話を、あれこれうかがっていこう!という連載が「コラボのゲンバ」だ。
第18回に登場するのは、人気アニメ「東京リベンジャーズ」や「呪術廻戦」とのコラボスイーツ商品を次々と販売し、SNSなどでも話題を集めている「Cake.jp」。今回お話をうかがったのは、株式会社Cake.jp 代表取締役の高橋優貴さんと、法人営業部 アライアンスグループの山下梨紗さん。スイーツのコラボ商品を作り始めたきっかけやコラボ商品を作るうえでのこだわり、今後やってみたいことなどをうかがいました。
山下梨紗さん(左)と高橋優貴さん
── コラボ商品としてケーキなどのスイーツを選んだ理由を教えてください。
高橋 弊社は有名シェフや予約が取れないお店とのコラボから事業をスタートしました。味は抜群においしいし、たくさんのお客様によろこんでいただきました。スイーツ好きやグルメ好きにからの反響はよく「刺さった」感はあったので、商品を出した意味はあったのですが、一般のマス層に広げたいという思いもあり、アニメや芸能人とのコラボを考え始めたのがきっかけです。
私はもともとエンジニアで、Flashという技術を使い、大手化粧品会社などの広告コンテンツを作っていました。化粧品、アパレルは特にデザインとの相性がよく、スイーツもそのひとつ。化粧品やアパレルはモデルやデザイン会社を使い、デザインにこだわる商品が多い中で、スイーツ業界はあまりそういったところにお金を使っていない印象がありました。そこで、デザインという切り口でスイーツを売るのはどうかと考えたのがきっかけです。私自身、デザインが得意で好きだったという理由が大きいです。誰かがやっていることをやるよりも、新しいことをやりたいタイプなので、デザインを入り口にスイーツを売ってみよう、と考えました。
── 最初のコラボ商品の思い出はありますか?
高橋 最初は写真ケーキでした。コラボ相手により写真を変える商品で、反響はそれなりにありました。ですが、たとえば芸能人とのコラボなら芸能人の誕生日に買うだけで、ほかにコラボケーキが登場するタイミングがなく……。誕生日じゃなくても、みんなが集まるときに写真映えするという理由で、ちょっとしたシーンでの利用はあったのですが、買う機会が限られています。最初に “幅広い層に”という意味でうまくいったのは、写真ケーキ以外ですと、「トムとジェリー」のチーズケーキです。
── 「トムとジェリー」のチーズケーキの開発のご担当は山下さんですよね?
山下 入社して最初に担当した商品ということもあり、思い入れがかなりあります。「トムとジェリー」といえばチーズというイメージがあり、仲のいいケーキ屋さんがすでにこの形のチーズケーキを出していたこともあって、組み合わせて何かできないかと考えたのがきっかけでした。「トムとジェリー」のじゃれ合いっこしている世界観を、ご自身の好きな形で表現してもらいたい、そんな思いでケーキピックを使った自分だけのケーキに至りました。会社としてもキャラクター版権を取得してのコラボケーキは「トムとジェリー」が最初でした。
── コラボ商品を作る中で、難しいと感じるのは具体的にどんなことですか?
高橋 版権に関しては、私と副社長がメインで交渉するのですが、さきほども触れたように、アパレルなどでは版権を使った商品作りをしているものが多い中、スイーツにおいては、こういう売り方をしている会社が少ないんです。正直、ライバルがいないからいろんな会社とお取引をしやすい(笑)。アパレルやアニメグッズだとライバルが多いので、勝ち抜く必要があります。我々のように実績がない会社は特に難しいはずです。おもしろがってもらえることが、協業がうまくいっている要因のひとつと言えると思います。
── ライバルが少ないとのことですが、Cake.jpの方法でコラボスイーツを作る会社も増えてくるのではないでしょうか。
高橋 私たちがうまくいっているような雰囲気が出ていたら、作りたい会社は出てくるかもしれません。ですが、スイーツは食品なので、賞味期限や衛生管理もあります。アパレルやグッズと比べて扱いが難しいこともあり、なかなか手を出せないところもあると思います。売れなかったら廃棄になるし、ロットの確保も難しい。さらに冷凍商品なので、保管料もかかります。そこが新規参入のハードルになっていると考えています。弊社には小ロットで生産できる仕組みがあります。サイトでご確認いただけますが、加盟店がたくさん集まっているので、数百という小ロットでも生産が可能となっています。
── 加盟店になるための条件はどのようなものでしょうか?
高橋 もちろん一定のラインはありますが、大切なのは「おもしろい」と思ってもらえることです。こちらからお店や商品が気になりオファーすることもあります。一定ラインというのは、たとえば、売れる目線で言うとブランド力や認知力です。商品軸としてはトレンドに合っているかどうかということ。最近であれば、色ならパステルカラーの商品や需要の高いクッキー缶をやっているお店などに注目しています。売り上げを伸ばしたくて困っているケーキ屋さんにコラボを提案するケースもあります。地方では街のケーキ屋さんの廃業は深刻です。弊社には通販のシステムもあるので、お店の場所に限らずコラボ商品を作れることも強みだと思っています。
── アニメ「東京リベンジャーズ」や「呪術廻戦」など、人気作品のコラボ商品が多数販売されています。コラボする作品を選ぶ基準はありますか?
高橋 まずは認知度。そしてトレンドです。商品化したときにお客さんが「欲しい」と思えるかどうかはとても重要です。認知度が高い作品ならコラボ商品にすれば売れるというわけではありません。幅広い層をターゲットにしていますが、コアは小さいお子様がいるファミリーや働いている女性です。ケーキの需要が高い層でありながら、ケーキ屋さんに行くのが難しいという声が多い層です。ネットでケーキを買う必然性が高いので、コラボするときは、商品、作品にもよりますが、お子様のいる家庭を想定して考えることも多くあります。
── Cake.jpの会社としてのコンセプトを教えてください。
高橋 自分たちが食べたい、誰かにあげたいと本気で思えるもの。そこは大事にしているところです。
── お2人にとってケーキとは?
高橋 “ちょっと幸せになれるもの”です。
山下 自分も幸せになれるし、プレゼントすれば相手も幸せになれます。“ハッピーをシェアできるもの”ですね。
── 今後の取り組みについて。Cake.jpが目指すことを教えてください。
高橋 版権の契約が取れること、ケーキを製造できる店舗が多いことは弊社の強みだと考えています。現状、社内でコラボの企画を立てていますが、企画はたとえば芸能人でもYouTuberでも、デザイン会社でも、誰発信でもよいと考えています。コラボスイーツを作りたかったけれど、作ることができなかった人たちに、コラボスイーツが作れる仕組みを提供したいと考えています。フランスの高級バター・エシレが日本に上陸して、スイーツを展開してうまくいったケースがありますが、バターメーカーはひとつじゃないし、材料メーカーとなればその数はかなりのもの。日本進出を考えていても、数億円規模の予算が必要になれば、実行できる会社は限られてきます。いずれ日本進出を検討するうえでの市場調査のように、実験的にCake.jpでコラボケーキを販売するという使い方でもよいと考えています。
── コラボ企画を考える際のリサーチはどのようにしていますか?
高橋 基本はSNSです。一般の方が作るスイーツが月に数回バズったりします。バズりの原因がスイーツの出来なのかトレンドなのかを考え、その要素を取り込めれば、と考えることは多いです。チェック対象は国内外問わず行っています。
山下 作品であれば公式SNSでのファンのコメントを参考にします。「こういう商品が欲しい」「こういうものが食べたい」というファンの方たちの生の声を聞くことができますから。おもちゃメーカーのWebサイトなども見ることが多いです。小さい子どもの好みを知ることもできるので。まさにそのリサーチをもとに動き始めている商品もあります。「トムとジェリー」であれば、「ケーキピックをどこに刺す?」、「呪術廻戦」の「狗巻棘のおにぎりケーキ」なら「どれを食べる?」という会話が生まれます。家族や大切な誰かとのちょっとした会話ややりとりが増える背景を考えながらリサーチしています。
── 個人的に今後やってみたいことはありますか?
高橋 私の場合、「会社でやりたいこと=個人でやりたいこと」なので、結果的には同じことなのですが(笑)。Cake.jpを世界中に広めていきたいです。ニューヨークやパリでも展開したいです。Cake.jpに出店することで海外に売れる、Cake.jpを使うことで海外に進出できるという流れを作りたいです。レシピがあれば海外でのケーキ作りも可能だと考えています。もちろん、近くで作ったものを食べるのが一番だとは思うのですが、我々には冷凍の技術も通販のルートもあるので、海外への展開、海外からの日本展開は難しいことではないと思っています。
── 世の中にあふれるコラボ企画については、どう感じていますか?
高橋 私たちが気をつけているのは、作品であれお店であれ、コラボ先の認知や資産をお借りするだけにならないこと。Cake.jpが関わることでコラボ先に対して付加価値がつく提案をしたいと考えています。私自身、アニメや漫画に関しては一般消費者レベルです。Cake.jpがやるべきことは、作品自体に愛着を持つことではなく、愛着を持っている人たちからの情報を集めて、いいコラボ商品を作ることです。愛着が強すぎないゆえに、いい距離感で見ることができるからこそ、いいコラボ企画ができていると考えています。
(取材・文/タナカシノブ)
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