「新幹線変形ロボ シンカリオンZ」完結記念インタビュー第2弾──「津田(美波)さんの姿を見て、私もがんばろうと」鬼頭明里、碓氷アブトを語る!
先日、1年間に渡る旅路の完結を迎えたテレビアニメ「新幹線変形ロボ シンカリオンZ」(以下、「シンカリオンZ」)。
Z合体など格好いいシンカリオンZのメカニカルな魅力はもちろん、中盤以降はW主人公であるシンとアブトとの戦いや想いが熱い展開とともに描かれ、無事大団円となったことに安堵した人も多かったのではないだろうか。
アキバ総研では、「シンカリオンZ」の完結を記念して、本作のメインキャラクターを演じた3人にそれぞれインタビューを実施。第2回は、碓氷アブト役・鬼頭明里さんのインタビューをお届けする。
⇒「新幹線変形ロボ シンカリオンZ」完結記念インタビュー第1弾──「シンは自分の子供であり、魂を分け与えたような存在だった」津田美波が語る主人公・新多シン!
アブトを演じて感じたのは、声を低くするだけが男の子じゃないこと
――放送前には、アブトはW主人公なのにシンカリオンZに乗れなくてショックだったと話していましたが、乗れましたね!
鬼頭 そうなんです。でも、あんな形で乗ることになるとは思っていなかったのでビックリしました(笑)。
――そんな驚きの展開もあった「シンカリオンZ」ですが、1年間走り抜けた今の気持ちをお聞かせください。
鬼頭 本当にあっという間でした。アブトはテオティ側についている時間が長く、意外にみんなと別行動だったのはちょっと寂しかったですけど、アブトはアブトで重要なキャラクターでしたので演じていてすごく楽しかったです。
――アブトがテオティ側につくこともアフレコが始まった当初は知らなかったわけですよね?
鬼頭 全然知りませんでした。
――台本をもらって、それを知った時はどうでしたか?
鬼頭 最初は「お父さんを探しに行く」みたいな感じだったから、すぐ戻ってくると思っていたんです。でも全然戻ってこないし、なんなら途中で闇堕ちするし(笑)。収録は同じシーンの人たちが一緒に録るので、まだかなまだかな、まだみんなと一緒に録れないのかなって。一時期はメインの方たちと全然一緒にならなかったのが寂しかったです。
――テオティ側、言ってしまえば敵になったわけで、収録が一緒にならないのは仕方ないとしても複雑な気持ちですね。
鬼頭 アブトはずっとつらい気持ちのお芝居が続いていたので、シンたちのシーンを見て「楽しそうだなぁ〜、いいなぁ〜」って思っていました(笑)。
――アブトの演技についてもお聞きします。鬼頭さんはここまでしっかり男の子を演じるのは初めてだったそうで。
鬼頭 そうなんです。ここまでガッツリ男の子役をやるのは初めてで、最初はすごく緊張していました。でも、周りは少年役の上手な方たちばかり。レギュラーでご一緒する中ですごく勉強になりました。
――役作りも含めて、難しかったことや印象的だったディレクションはありましたか?
鬼頭 ここまでの男の子役は初めてでしたし、アブトは格好よくて冷静なタイプだったので、最初は「声をがんばって低くしなきゃ低くしなきゃ」って気持ちでやっていたんです。でも、音響監督の三間(雅文)さんには一度も「もっと低く」とは言われず、むしろ「感情を優先して」と言われました。自分的には、今のセリフはちょっと高くなっちゃかな、と思ったところもそっちのほうがいいと言ってくださることが多くて、声を低くするだけが男の子(の演じ方)じゃないんだなとすごく感じました。
――確かに最初の頃のアブトは冷静なタイプでしたが、闇堕ちしての戦闘シーンやシンに対する気持ちを吐露するシーンなどは、セリフの質も変わってきた気がします。そのあたりの演技についてはいかがですか?
鬼頭 闇堕ちしている時は、憎しみや葛藤といった感情をずっと頭に置いていたので、自然とドスの効いた声になるように演じていたのかな、と思います。
――それにしても、改めてアブトというキャラクターを見ると、闇堕ちするし、実はテオティの血を引いているし……属性というか情報が多いですよね。こういう部分はすごく意識したけどこの部分はあまり考えずにやったとか、そういうことってありますか?
鬼頭 子供ではあるけどアブトは背負わされているものがめちゃめちゃ大きいから、大人っぽくならざるを得ないというか。こんな幼い少年が板挟みになっている気持ちは意識しました。ただ、子供っぽさに関しては、たまに素に戻る時に出せればいいかな、というぐらいで普段はあまり少年であることを意識しなかったかもしれないです。
津田さんが頑張る姿を見て、私も一緒にがんばろうと思いました
――アブトとシンはW主人公という立場でしたが、シン役の津田美波さんとはアフレコの合間などにどんな会話をしたのでしょうか?
鬼頭 中盤はほとんど一緒に収録できなかったですけど、一緒にできたときは津田さんがすごく話しかけてくださったり、私からおしゃべりしたりしていました。津田さんが「峠の釜めし食べてきたよー」って、釜めしの釜を持ってきてくださった日もあったんです(笑)。
――釜だけ?(笑)
鬼頭 中身は悪くなっちゃうからって(笑)。写真も撮ってくれて、すごくシンカリオン愛にあふれているのを感じました。
――津田さんも主人公的な男の子役は初めてとのことでしたし、2人が切磋琢磨できたのは大きかったのでは。
鬼頭 (アブトとシンは)全然タイプの違う役ではありましたけど、「一緒にがんばっていこうね!」という空気を感じて、すごく頼もしかったです。自分だけがあまりやったことのない役だったら、ちょっと追い詰められていたかもしれないけど、津田さんも「男の子で主人公なのは初めてだからがんばらなきゃ」って姿を見せていて。私も一緒にがんばろうと思いました。
――ほかの共演者の方たちも心強かったと思いますが、共演者に関してはいかがですか?
鬼頭 お芝居の面で安心感、安定感のある頼もしい方ばかりでしたので、背中を見て「こういうアプローチもあるんだ」などと感じていました。安心して背中を任せられるじゃないですけど、そういう気持ちでいつもやっていました。
――アブトはそれほどアドリブを入れるキャラクターではないと思いますが、アフレコでは皆さん結構アドリブもあったのでしょうか?
鬼頭 ハナビとかは、めちゃめちゃアドリブを入れていて。台本を追いながら聴いていると「あ、いまアドリブ入れた」というのがわかって、すごく楽しかったです。
――今回のインタビュー連載では津田さんにもお話をうかがったのですが、津田さんは「『黒髪のアブトがめちゃくちゃ格好いい!』と鬼頭さんに伝えたかったけど言えなかった」と話していましたよ。
鬼頭 あはははは! 津田さんはシンが憑依しているというか、シン目線でアブトのことをすごく好いてくれているのが伝わってくるんです。そのフィルター越しに私のことも見てくれているのも伝わってきて。シンがアブトを大好きだから津田さんも私のこと大好きみたいな(笑)。現場でも話しかけてくださったのが嬉しかったです。
――逆はどうですか?
鬼頭 アブトはシンのことを好いているような姿は表に出さないですけど、心の底から信頼しているし、私も津田さんのことをそう感じています。
鬼頭さんが特に気になったシーンやキャラクターは?
――テオティ側についてからは特にそうなのですが、アブトとシンとの戦いや会話など胸が熱くなりました。鬼頭さんが特に印象的だったシーンをあげるならどこでしょうか?
鬼頭 私、闇堕ちから戻ってきて抱きしめるところが大好きなんです。今まではずっと「つかまえてみろ」みたいな感じで鬼ごっこをしていたり、「それは嘘だ」とシンのことをおちょくったりしていましたよね。あそこでシンが「やっとつかまえた」と言うのは、今までのことが思い出されるようでジーンときました。シンがそこまで成長したと感じられましたし、音楽も相まってすごく印象的でした。
――あのシーンはよかったですよね。ほかのキャラクターについてはいかがですか? 特に気になったキャラクターとか。
鬼頭 アブトのお父さん(碓氷トコナミ)です。アブトが帰ってきたと思ったら、お父さんが宇宙の彼方に消え去ってしまって。「とーさーん!」ってなった次の話数で、普通に地球でアブトが宿題をやっていたのはちょっとビックリしました。あれは現場でも「前回のことなかったことになってないよね?」「ちゃんとお父さん助けるよね?」となっていたんです(笑)。
――見ていても思いました。探しに行くと言っても、どうすればいいのか……と。
鬼頭 ちょっと不思議な人ですよね。
――そんなこともありつつ、最後には親子3人水入らずの姿も描かれましたね。
鬼頭 時間はかかりましたけど、ようやく3人が揃いました。アブトもようやく子供に戻れたというか、境遇のせいで大人っぽくならざるを得なかったのが、いろいろ解決したことで等身大の少年に戻れたんだなと思ってすごく嬉しかったです。
――運転士たちもみんな個性豊かでしたよね。
鬼頭 ナガラ(安城ナガラ)とかギンガ(嵐山ギンガ)とかすごくかわいいな、いいキャラだなって思いました。でも、アブトとは全然絡めなかったので、もうちょっとからみたかったです。ほかにも、テオティ側にいる間に仲間が増えていて。(その回だけの)コラボキャラクターだと思っていたメーテルさん(月野メーテル)がレギュラーメンバーにいて、ずっと一緒に戦ってくれることにビックリしました(笑)。
――「シンカリオン ハローキティ」や『エヴァンゲリオン』シリーズは、その話数だけのコラボって感じだったじゃないですか。でも、メーテルは普通の運転士として登場するし、ゴダイゴの『銀河鉄道999』(劇場版『銀河鉄道999』主題歌)がそのまま流れて宇宙に旅立ちましたからね。
鬼頭 そうなんです。物語的にいなきゃいけない役割だったなって。
――前作もそうですが、コラボやオマージュ、小ネタが詰め込まれていたのも「シンカリオンZ」の見どころのひととでした。そういった部分についてはいかがですか?
鬼頭 ハローキティ回(第16話)やエヴァンゲリオン回(第21話)はアブトが全く関われなかったので、関わりたかったなって気持ちは正直あります。でも、間接的に作品としてコラボしたので、親にも自慢できます(笑)。うちの親は「エヴァンゲリオン」が好きなので誇らしいなって思います。
「シンカリオンZ」はいろんな夢をかなえてくれました
――アブトが乗っていたダークシンカリオンも格好よくて人気でした。鬼頭さん的にはダークシンカリオンのことをどう見ていましたか?
鬼頭 めちゃめちゃ格好いいなと思っていました。変形シーンもクオリティが高いですし、実物の新幹線の運転士にはなれなかったけど、これはこれですごくよかったなと思います。
――ケンタウロスモードやデビルモードに変形するし、最後はダークシンカリオンアブソリュートになるし、心をくすぐられるような熱さがありました。
鬼頭 本当に熱いですよね。以前、プラレールの箱にサインさせていただいたことがあったんですが、箱のイラストもめちゃめちゃ格好よくて。やっぱり黒って格好いいなって思いました。
――どっちも格好いいですが、黒(ダークシンカリオン)と白銀(ダークシンカリオンアブソリュート)なら黒のほうが好きですか?
鬼頭 子供の頃って黒に憧れませんでしたか?(笑)
――憧れました(笑)。
鬼頭 黒って強そうだから、子供にとって格好いい!ってなる存在なのかなって思います。
――鬼頭さんも闇の新幹線に乗れたのは、嬉しかったのでは。
鬼頭 アブトを苦しめてしまう存在なので、複雑な気持ちではありましたけど(笑)。でも、強い機体ではあるので、心強いというか、それに乗れているアブトはめっちゃ格好いいなと思っていました。
――自分も子供の頃に見ていたらダークシンカリオンにかなり惹かれたと思います。とはいえ、シンたちのシンカリオンZに乗ってみたかった気持ちも正直ありますか?
鬼頭 実在する新幹線だと会いに行けるじゃないですか。実際に新幹線に乗った時に「これは私の乗っている新幹線」ってなれるのがちょっとうらやましいなと思いました。でも実在しないからこそめちゃめちゃ格好よく作っていただいたシンカリオンZだったので、よかったのかなって。
――もし、今後「シンカリオンZ」でまたなにかやるとしたら、アブトとしてどんなことをしたいですか?
鬼頭 やっぱり先ほども話したように、アブトがいない間に増えたキャラクターとからむ機会があれば嬉しいです。それから、これは私個人のことなのですが、鉄道博物館にずっと行きたいなと思っているので、いつか行きたいです。
――ぜひその模様も見てみたいですね。そういえば、編集部の人間が先日鉄道博物館に行ったら、ダークシンカリオン弁当が大人気で真っ先に売り切れていたそうですよ。
鬼頭 え〜! 私も絶対に欲しい!!
――では最後に、1年間アブトを演じてきて鬼頭さんにとって大切な役になったのではと思いますが、鬼頭さんにとってアブトはどういう存在になりましたか?
鬼頭 男の子の役をガッツリやるのは声優人生の中でのひとつの夢でしたし、子供向けアニメにも出演したいと思っていましたので、いろんなことをかなえてくれた「シンカリオンZ」には感謝しかないです。こうやって丸々1年、アブトにしっかり向き合うことができたからこそ学べることもありましたし、本当に感謝しています。
――1クールや長くても2クールの作品も多い中で、丸1年ひとつの作品を、しかも子供たちに大人気の作品で演じられたのは大きいですよね。
鬼頭 本当にありがたいです。自分の人生経験の中でも、すごく大きなものになったと思います。
(取材・文・撮影/千葉研一)
(C)松本零士・東映アニメーション
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