【2022春アニメ】「ULTRAMAN」シーズン2配信記念インタビュー! 6大ヒーロー集結に、あの巨大な敵も登場! 神山健治&荒牧伸志両監督が語る見どころとは!?

モーションキャプチャーを導入したフルCGアニメーション、Netflixでの全13話配信など、数々の話題を呼んだアニメ「ULTRAMAN」が、満を持してシーズン2の配信をスタートした。

円谷プロが誇る人気コンテンツを換骨奪胎し、新たなファン層の開拓に成功した本作だが、いよいよきたる2022年4月14日、シーズン2の配信がスタートする。

そこで今回、ダブル監督を務める神山健治さん&荒牧伸志さんの両名に、シーズン2でのこだわりや見どころについて語っていただいた。

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手探りだったシーズン1から蓄積を経た上でのシーズン2

――まずはシーズン1を振り返っていただければと思います。作品に対しての反響はどのように受け取っていますか?

荒牧 シーズン1では、Netflixで全13話を一度に配信するのが初の試みとしてありました。ただ、テレビシリーズを想定して作っていたので、そこでレスポンスがちょっと違う形で入ってくる感じがありました。

神山 正直、そのとまどいはありましたね(笑)。

荒牧 各話単位で「今回はこうだ」と作っていたつもりだったけど、なんとなくフワッとした感想しか伝わって来なくて(苦笑)。

神山 もともとテレビシリーズ自体が消費されていくものなんですけど、こんなにも消費されるスピードが早いのかと。

荒牧 それも見えないところでどんどん消化されていく。だから、こちらから情報を取りにいかないとね。そういう意味では、こちらの手応えと反響でギャップがあったわけですが、幸いにもシーズン1の後ですぐにシーズン2の製作が決まり、また年間の視聴レートもかなり高かったとの報告をいただいて、それはとてもありがたいと思いました。

――そこは、いわゆる「イッキ見」できる配信ならではの特性ではないでしょうか。

神山 ええ。話数と話数を繰り越して楽しんでもらうテレビシリーズとはまた違いますね。

荒牧 テレビだと1週間待ってもらうわけですからね。

神山 だから、そういう演出自体がもはやオールドスクール。シーズン1のような試合の仕方はダメかもしれないなと思いました。

荒牧 テレビシリーズだと、前話の終わりを次の話の頭でもう一度やってから、物語を始めるスタイルが多いけど、そういう「思い出し」もいらないねって。そこは今回のシーズン2での改善点、変えた個所のひとつになります。

――シーズン1では、フル3DCGアニメーションでの製作も話題となりましたが、挑戦されてみていかがでしたか?

荒牧 神山さんと2人体制で取り組んだ最初の作品がシーズン1だったんです。正直、手探りだったり、足りない部分もあったりしたけど、順番的にはシーズン1の後に「攻殻機動隊 SAC_2045」を製作して、そこでの蓄積、フルCGならではの見せ方、気持ち良さ、逆に「こうしていかないとCGアニメとしては辛いよね」といった部分を今回はかなり加味した作りになっていると思います。

神山 本編の細かいクオリティに関しては、シリーズ監督として入ってもらった内山寛基さんがうまくやってくれました。特に今回、カメラワークが圧倒的によくなりましたね。僕がこだわった部分で言えば、脚本の持つスピード感をいかに再現するか。プリビズの段階で、どこをフォーカスすべきかはしっかりと伝えたつもりです。

6大ヒーローの活躍を描く難しさと醍醐味

――シーズン2を製作するに当たって、お互いに申し合わせた部分はありましたか?

荒牧 今回、TARO がメイン格で活躍するのですが、僕らはウルトラマンシリーズの最初のほうの世代で、「ウルトラセブン」辺りまではしっかり観ていたけど、それ以後はあまり詳しくはないんです。そんな中、今回は思い入れの深い男がひとりいまして。

神山 内山さんですね。

荒牧 そう。さっき神山さんが名前をあげたシリーズ監督の内山さんです。今回は彼がやりたいことをやらせてみようと。シーズン2では、そこが僕ら2人で一番相談した部分になりますかね。ある意味、シーズン2は内山さんをサポートしながら作品作りを行ってきたところがあります。

――今回はTAROの活躍のみならず、JACKをはじめ、前作からのULTRAMAN、ZOFFY、SEVEN、ACEと「六傑集結」も大きな注目ポイントだと思います。

神山 それこそ、今回は全6話なので最初は「無理だな」と思ったんですよ(笑)。それに新しいヒーローが次々と登場するとインフレを起こしますよね。そこは自分がリアルタイムで、昭和のウルトラマンシリーズを観ていた時にも感じていた部分で、当初は「うーん、ちょっとこれは……」と、ややこしい宿題が来たように思っていました。

ただ、内山さんはその面白さを知っている世代でもあり、一緒に練り上げていく中で、次々と新しいヒーローが登場する醍醐味を感じることができました。
今回、その中でも特にTAROとJACKがフィーチャーされているのですが、シーズン1で登場していたULTRAMAN、SEVEN、ACE、ZOFFYもおざなりにしないように意識を持ってやった結果、TAROにしろ、JACKにしろ、また違う強さや技の魅力を描くことができたと思います。

そのうえで、最後はULTRAMANの活躍に集約するように持っていくことができたし、無理ゲーだと思っていたのが(笑)、実に見事にまとまりました。それはもうポスターの時点で物語っていますね。

荒牧 6人が並ぶだけでかっこいい。

神山 シーズン1のポスターを作ったときは難航したんですよ。それが今回は何のハンドリングもせずに「もうこれしかないよね」とビジュアルが決まった。何かが生まれるということは、そういうものなんですよ。答えは我々の中にはなくて、みんなの中にある。

荒牧 シーズン1では、アクションシーンを大胆に盛り込んだ結果、多くのファンに喜んでもらえたことが、ひとつの手応えとしてありました。ただ、同じことをやっても飽きられてしまうし、シーズン2では、各スーツの特徴を生かしつつ、いかにストーリーに落とし込むかがキモだと思いました。
ただ次々とヒーローが現れて次々と活躍するとなると、どうしてもインフレを起こしてしまうけど、それに見合った戦い方、ステージを用意したこともうまくハマったんじゃないかと思います。特に後半は巨大な敵が出現して、スケールの大きな戦いになっていくので、そこは今までにない展開を楽しんでもらえるはずです。

――その巨大な敵、「黄金の城塞」は公開されているPVで一部観ることができますが、こだわった部分もうかがえればと思います。

荒牧 今回、巨大な敵を登場させることが決まった段階で、円谷プロさんから2つ候補をいただいたんです。それで世代的なことから選んだのがキングジョーだったのですが、「じゃあ、荒牧さんがデザインしてください」と言われて、そこは苦労しました(苦笑)。

神山 しかも、かなりの大きさがあるんですよね。ヒーローが遭遇した瞬間、「勝てる気がしねぇ!」と思わせるくらいの大きさや強さを描くことで、6人の活躍がマイナスに作用しないよう注意を払いました。6人のヒーローに対して同じサイズの敵だと、パワーバランスが悪く、ヒーローの活躍自体が面白くならないので、それを解消するためには、とてつもなく巨大で強い敵を出さないとダメじゃないかと話していたんです。

荒牧 それは間違いなくそうだよね。もちろん、巨大な敵との戦いを描くのも工夫が必要なわけですが。

神山 その要塞のような敵をいかに攻略するかが面白さで、そこはターゲット関係なく、作り手が一番努力しなくてはいけない部分としてありました。もちろん時間や予算が無制限にあるわけじゃないけど、クライマックスへの持っていき方はシーズン2で最も力を入れたところになります。しかも6人いるから簡単に突破できるわけではなく、6人いるからこそのやり方で切り抜けていく。そこはしっかりと描いたつもりだし、観ている側にも伝われば嬉しいですね。

――各話にも湾岸のクレーン上でのアクションや、予告動画でも見られるバイクチェイスなど、つかみとなる見せ場がたくさん盛り込まれていますね。

荒牧 湾岸で戦う場面は、まともに戦うだけでは地味だと思って「高いところがいいんじゃない?」と僕のほうから提案しました。

神山 バイクに関しては荒牧さんと内山さん(笑)。

荒牧 あれは内山さんが「バイクチェイスをやりたい」と言って、最初は普通のバイクをコンテに描いて来たのですが、「普通のバイクは大変だからエアバイクにしなさい」と、僕が昔描いたものを参考に渡してデザインを起こしてもらいました。

神山 あと必殺技とストーリーを紐づけたのもこだわった点です。

荒牧 TAROですね。

神山 必殺技もインフレを起こしがちなので、すごい技の裏には弱点もあると。そこにドラマとしての構造が生まれてくる。特に今回は短期決戦だから、わかりやすく仕込み、しかもそこが観る側に引っかかるようにしたつもりです。

荒牧 シチュエーション自体は時々ある描き方ではあるけど、それが全6話を通じてうまくフックになっているし、TAROとしての話も成立しているなって思いますね。

神山 そういう描き方は、普段の僕だったらやらないんですよ。今回、改めて「ULTRAMAN」がいいなと思ったのは、ヘンに頭を捻ったものではなく、シンプルなものがうまく乗ってくるんですよ。そこはウルトラマンシリーズ自体の持ち味で、やはり普遍的な魅力を内包したヒーローなんだなと改めて感じました。

荒牧 土台の話ですよね。僕らの世代が「ウルトラマン」や「セブン」がすごく印象に残っているように、今の若い人たちがどれくらいウルトラマンシリーズを認識してくれているのかはわからなかったけど、シーズン1をやった際の手応えとしては、思っていたよりみんな知ってくれていたんですよね。今回もPVで巨大な敵が想像していた以上にハッキリ映っていたから「大丈夫? ネタバレ過ぎない?」と気になったけど、それはそれでよかったのかなって。逆に「いつ合体するんだろう?」と期待感を持って観てもらえればと思っています。そこはすでにベースにある世界観をみんなが知っている、という共通認識を若干利用した形です。

――そこは「皆さんの期待は裏切らないですよ」と。

荒牧 そうそう。そこは逆に乗っかっていこうかなと思ったんです。

神山 もはや歌舞伎ですよね。

荒牧 そうだね。ウルトラマンとしての「型」があって、これがあるなら次はこれだと、ひとつ見せるとまた次への期待値がワッとあがる。そこを利用しつつ演出していくのがまた楽しいんですよ。

神山 今、ハリウッドでも大勢のヒーローが描かれているけど、たとえば正体が知られちゃいけないとか、そういうヒーローとしての古典を世界に先駆けてやっていたんだなって。だからこそ生まれてくるドラマもあるし、義理や人情とか日本的な要素も含めて、外国人にも好まれているみたいで、僕らとしても、改めてウルトラマンシリーズの魅力を知る機会になりました。



全6話を通じて得られる爽快感

――それでは公開に向けての見どころをそれぞれお聞かせいただければと思います。

荒牧 シーズン2は、なんと言ってもイッキ見できるスピード感ですね。全6話なのでヘタしたら2時間くらいで観られると思います。そこで爽快感を抱いてもらえれば嬉しいです。

神山 やっぱり新しく登場するTAROやJACKをはじめ、ULTRAMAN独自のアクションを観てもらいたいですね。後は今回、意外な形で3人のヒロインが登場していて、そこは「おやっ?」と思いつつ、今までにないドラマが繰り広げられるので、どうぞご期待ください。

――最後にお気に入りのULTRAMANをあげるとしたら、いかがでしょうか?

神山 俺は勝手にひとつの美学として、自己犠牲を払ってでも何かを成し遂げようとするヒーローが好きなんです。そういう意味ではTAROとJACKになります。各話を通じて、それぞれの性格が出ているけど、2人には仲間のために何かをする描写があるのですが、そこは大勢のヒーローが登場するシーズン2ならではの見どころにもなっています。その中でも強いて言うと、ちょっと意外性のあるJACKかな。

荒牧 いや、なかなか選べないよね(笑)。TAROとJACKは確かに見せ場も出番も多いけど、やっぱり目玉はTAROになるのかな。ウルトラダイナマイトを発動する前の炎の燃える感じも「タロウ」世代でもある内山さんのこだわりがかなり入っているし、TAROがらみの場面はかなり盛り上がると思うので、ぜひ楽しみにしていてほしいですね。

――本日はありがとうございました。

(取材・文/トヨタトモヒサ)

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