最新作「eBASEBALLパワフルプロ野球2022」レビュー! 高校野球やプロ野球を始め、さまざまな形の「野球」が楽しめる

2022年4月21日に、PS4およびSwitch向けに「eBASEBALLパワフルプロ野球2022」(以下、パワプロ2022)が発売された。本作は野球を題材にした人気シリーズ「パワフルプロ野球」の最新作だ。


ほかのプレイヤーやCOM(コンピューター)と試合をするシンプルなモードもあるが、それだけにとどまらないのが「パワプロ」シリーズの醍醐味だ。本作では全21種類のゲームモードがある。物語を楽しみながら、甲子園優勝を目指す「サクセス」、プロ野球選手として入団から退団までの30年を楽しめる「マイライフ」、高校野球部の監督としてチームを導く「栄冠ナイン」のほか、日本の野球界における名勝負を体験できる「LIVEシナリオ」など、それぞれで異なるスタイルの野球を楽しむことができる。
すべてのモードについて書くとキリがないため、今回は個人的にいちばんオススメの「サクセス」に焦点を絞ってレビューをする。詳細は後ほど説明するが、サクセスは初心者向けであるだけでなく、ほかのモードにもつながる入門的位置づけでもあるので、特に本作から「パワプロ」を始める人には参考になるはずだ。


3つの異なる高校から甲子園を目指すサクセスモード



サクセスには、「パワフル高校 ライバルズ」、「熱血きらめき アオハル学園」、「千将高校 君がキャプテンだ!」の3つのストーリーがある。それぞれで展開する物語を楽しみながら、プレイヤーは甲子園を目指して選手を育成していく。



「打撃」や「守備」、「変化球」といった各種練習をこなすと、それに応じた経験点がプレイヤーに入る。経験点を割り振ることで、自身のステータスの強化や、能力の獲得が可能だ。ただし、練習すると体力が下がっていき、「ケガ」をする確率が上がってしまう。ケガをした場合、現在所持している経験点が下がるなどのデメリットがあるので、なるべく避けたいところ。


練習だけでなく、チームメイトと外に出かけることもできる。イベントによっては経験点が入ったり、新しいアイテムが手に入る


体力は休息を挟むことで回復するため、練習ばかりではなく、折を見てしっかり休むのが重要となる。練習や休息、そのなかで発生するイベントなどを楽しみながら、最終的に高校3年生の夏の甲子園で優勝、ドラフト指名を受けてプロを目指す。つまり、定められた期間のなかで、どの性能をどれだけ伸ばすか、プレイヤーは頭を悩ませることになる。



限られた時間での育成もそうだが、投手の球を読んでバットを振る、逆に打者のステータスや能力を見たうえで適切な球種を選ぶなど、試合ではなかなか高度な技術を要求される。攻撃側なら、相手の投球はなんなのか、なにが得意なのか、ヒットやバントなどのうちどれを狙うべきなのかなどを考える。守備であれば、球種はどうするか、盗塁のけん制はするべきか、打たれた場合どの塁手に送球するべきなのかといったことに頭を巡らせる。


これらの要素は、野球を知っている人なら問題ないだろうが、詳しくない人はまずとまどうだろう。個人的には難易度ノーマルでも厳しい。筆者の場合、最初に遊んだ「パワフル高校 ライバルズ」では、甲子園優勝どころか地区大会決勝で負け、出場自体できなかった。



とはいえ、そうした難しさも試合の操作方法でカバーできる。自分の出番のみ、チャンスとピンチのときのみ、8回表以降は全員など、操作するタイミングや対象を細かく設定可能。COMにすべての操作を任せることもできるので、プレイヤーは練習とイベントのみ集中してもいい。


ただし、自分だけを操作するというモードには弱点もある。自身の打席でヒットを打っても、それが点につながるかどうかはCOMの働き次第になるからだ。なので、操作に慣れてきたら全員を操作するのがオススメだ。



いっぽう、試合の合間には、まん丸でかわいらしくデフォルメされたキャラクターたちが、さまざまな物語をくり広げていく。これといった特徴もないチームが甲子園を目指すという王道がまずあって、そこに他校のライバルなどがからんでくる。野球が軸で、ストーリーはおまけ程度だろうとも思ったが、これがよく作り込まれている。



グラウンドで練習するのはもちろん、部員といっしょに商店街で買い食いしたり、女の子をデートに誘ったりと学生らしい生活が楽しめるほか、特定のチームメイトには専用のイベントが用意されている。魔球の開発やスランプ中のライバルとのトレーニングといった展開もたっぷりあって、スポーツ漫画の世界をそのまま遊んでいるような気分だ。



サクセスにある3つの物語は、内容こそ違うが雰囲気は明るいという点で共通している。試合の結果やイベントの選択肢次第では、成功と挫折などさまざまな出来事が起こるものの、最終的にはよい終わり方が多く、少なくとも筆者が今回遊んだ限りでは後味の悪い結末は見られなかった。全部が硬派だと重い雰囲気に疲れてしまうが、「パワプロ2022」では物語が明るいおかげで全体のバランスが取れているように思えた。


高校生と球児という2つの立場から、物語と野球を満喫できるわけだが、サクセスのボリュームはかなりお手軽。ストーリーをじっくり楽しみ、ほとんどの試合で操作を全て行うプレイである「8回以降全員操作」にするとかなり時間がかかったが物語のスキップ機能を用いつつ、試合も最低限の野球操作しか行わないプレイであれば、半分から3分の1の時間で済む。慣れれば1日に何周もすることも可能だ。



筆者が冒頭で「サクセスは初心者向け」と書いたのは、これらの手軽さというところが大きい。初心者であれば、いきなり対戦モードをしてもまず勝てないし、野球を楽しむきっかけとしては弱い。



その点、サクセスはストーリー仕立てのおかげで、物語を楽しみながらある程度の時間をかけて操作方法を学べるうえ、慣れたら各種スキップを活用して選手の育成だけに専念することもできる。プレイヤーが主人公になれるので、没入感も段違いだ。入門編としてだけでなく、「パワプロ」の魅力である選手育成を、短い間隔で楽しめるやり込み向けという側面もある。育てた選手のデータは「マイライフ」などほかのモードにも使えるため、いいことづくめだ。


ここまではサクセスの総合的な部分をレビューしてきた。以下からは、サクセスで楽しめる各高校に焦点を当てていく。

3つのシナリオに分岐する「パワフル高校 ライバルズ」


「パワフル高校 ライバルズ」では、数十年前に甲子園に出たっきりで目立った成績のないパワフル高校を舞台に、プレイヤーは甲子園出場を目指してチームを引っ張っていく。練習を始めとする基本的なシステムはすでに書いた通りだが、本シナリオはストーリーと野球の両方をバランスよく取り入れている。



「熱血きらめき アオハル学園」や「千将高校 君がキャプテンだ!」と違い、こちらはシナリオがさらに分岐する。あかつき大附属高校の猪狩兄弟が登場する「永遠のライバル編」、野球の強豪・帝王実業の友沢亮がメインに描かれる「悲劇のエース編」、あかつき大附属のメンバーが出てくる「あかつき黄金世代編」があって、上記の順番に物語をクリアするとつぎの話が解放されていく仕組みだ。


パワフル高校編の序盤で出てくる選択肢のうち、どれを選ぶかでストーリーが分岐する


「永遠のライバル編」ではプレイヤーと何度も戦う猪狩が、「あかつき黄金世代編」では、すでに現役プロ選手になっているなど、シナリオごとの設定が異なるのもポイント。分岐次第で展開ががらりと変わるため、球児としてのストーリーを重視して進めたいプレイヤーには、「パワフル高校 ライバルズ」がもっともオススメできる。


ライバルたちと競り合うという要素は物語や練習にも見られる。ことあるごとにさまざまなライバルたちが現れ、自分の目標や心情を語る一方、練習メニューによっては協力してくれることもある。「ライバルズ」という名前が示す通り、甲子園を目指す好敵手たちとの熱い戦いを楽しむことができる。

青春を満喫できる「熱血きらめき アオハル学園」


「熱血きらめき アオハル学園」では、自由な校風が特徴のアオハル学園で野球部を創設、その初代メンバーとなった主人公が、幼なじみたちとともに甲子園優勝を目指す。メンバーのほとんどが幼なじみであるという点もそうだが、こちらのシナリオはほかのサクセスと比べて学園生活を重視している。


練習メニューには学園内の行事も含まれていて、臨海学校やクリスマスパーティー、バーベキューから動物園まで、およそ野球と縁のなさそうな、学校らしいイベントがたっぷり用意されている。さらに、幼なじみ全員には個別イベントもあり、「パワフル高校 ライバルズ」以上にストーリーが濃い。学園生活で男友達と友情を深めていく、アオハルにふさわしい青春の要素が詰め込まれたシナリオと言える。



「熱血きらめき アオハル学園」では、もうひとつ大きな要素がある。それは、練習として出てくるメニューが毎回ランダムになっているという点。毎週どの練習ができるかは運次第というわけだ。



練習メニューには、大別すると「きらめき」と「熱血」という2つの属性がある。練習をこなすとそれぞれに対応した属性が専用のゲージに蓄積され、どちらかが一定量に達すると「FEVER」状態に。きらめきゲージが起点の場合は「きらめきFEVER」となり、いっしょに練習した相手から受ける評価が増え、さらに特殊能力の「コツ」を伝授してもらえる。対して「熱血FEVER」中は練習でもらえる経験点が増加。特定のステータスを集中して鍛えたいときに最適だ。



練習メニューが毎回ランダムなので、主人公のステータスがどう伸びるかは運任せではある。とはいえ、熱血ときらめきという2種類のFEVERによってブーストがかかるおかげで、ある程度の遅れなら瞬く間に取り戻せるため、あまり気にならない。とくにきらめきFEVER時に練習すれば、一度に4、5個のコツを一気に習得できることも。運がよければ「パワフル高校 ライバルズ」よりも簡単に強い選手を育てられるかもしれない。

野球に特化した「千将高校 君がキャプテンだ!」



「千将高校 君がキャプテンだ!」では、そこそこの強さで知名度もそこそこの千将高校のキャプテンとして、チームを甲子園に導いていく。



本シナリオ独自のシステムとして、「キャプテンサークル」というものがある。部員たちを周囲に配置することで練習やイベント、試合など、さまざまな恩恵が受けられるというものだ。また、部員同士の相性によって恩恵のレベルが変化。サークルのレベルに応じて追加効果が発動する。各生徒のステータスを考慮する必要があるため、少しとっつきにくい印象があるが、要は相性が最大になるよう配置していけばいい。



さらに大きな要素として「代替わり」がある。甲子園優勝という目標はあるものの、明確なゴールは存在せず、毎年1年生が入部し3年生は引退していく。そのため、スタメンをただ強化するだけでなく、世代交代を考えた後継者育成も重要になってくる。ほかのシナリオと比べても、キャプテンとしての主人公という面が強く描かれていて、シミュレーションゲームが好きな人はとくにハマるかもしれない。


より野球の要素が盛り込まれているいっぽうで、ストーリー的な演出は控えめだ。ほかのシナリオと同様に練習中のイベントもあるし、お出かけやデートもできる。ただ、主人公と監督以外に固有のキャラクターが存在しないためか、内容的にも見た目的にも少しあっさりしている。ただ、1年ごとに代替わりするという本シナリオ独自の要素を考慮すれば、1つひとつの濃さよりはテンポを重視したほうがいいし、こうした仕様はむしろ適切だろう。



ライバルという存在を軸に学園生活と野球をバランスよく楽しめる「パワフル高校 ライバルズ」、学校行事を通して青春を満喫できる「熱血きらめき アオハル学園」と違い、こちらは野球に専念できるストイックなモードと言える。


甲子園の優勝やプロ入りを目指す王道のストーリーに加え、限られた期間を使って選手を育成するシビアなシミュレーション要素のほか、サクセスごとに用意された趣きの異なるプレイスタイル、くり返し遊びたくなるお手軽なボリュームもあって、サクセスは初級者から上級者まで楽しめる、間口の広いモードになっている。



記事の冒頭で書いたとおり、サクセスは「パワプロ2022」に用意された数あるゲームモードのひとつに過ぎない。実際に本作をプレイする人は、サクセスにとどまらずいろいろなモードに触れて、さまざまな形の野球を楽しんでほしい。

(文・夏無内好)

  • 【作品情報】
  • ■eBASEBALLパワフルプロ野球2022
  • ジャンル:スポーツ
  • 対応機種:PS4/Switch
  • 発売日:2022年4月21日
  • プレイ人数:
  • Nintendo Switch(TVモード1~4人、テーブルモード1~4人、携帯モード1人 ※プレイヤー1人につき、Joy-Con1本が必要)
  • PS4:1~4人(オンライン時1~2人)
  • 価格:通常版 (パッケージ・DL) 
  • Nintendo Switch/PS4:8,250円、パワフルエディション(DL)Nintendo Switch/PS4:10,450円
  • メーカー:KONAMI

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