【インタビュー】橋本裕之さんが監督なので、かわいい女の子を出したいなと。シリーズ構成・賀東招二がぶっ飛んだ脚本で話題のアニメ「エスタブライフ グレイトエスケープ」を語る

TVアニメ「エスタブライフ グレイトエスケープ」のインタビュー第2弾をお届け!
谷口悟朗さんの原案・クリエイティブ統括により、TVアニメ、ゲーム、劇場アニメとメディアミックス展開される「エスタブライフ」シリーズ。TVアニメ「エスタブライフ グレイトエスケープ」はその先陣を切る作品で、TVアニメのスタッフには、谷口さんとともに、世界全体の設定を作り上げていくことが求められたという。橋本裕之監督やプロデューサー陣とともに、その一翼を担ったのが賀東招二さん。さまざまな「クラスタ(街)」に分断された未来の東京や、主人公エクアを初めとするキャラクターたちは、どのようにして生まれたのか? そしてTVアニメがこれから向かっていくクライマックスとは? シリーズ構成の立場から、「エスタブライフ グレイトエスケープ」について、たっぷりと語ってもらった!

基本的な設定の半分はくらいは、TVアニメスタッフが作りました


──まず、TVアニメ「エスタブライフ グレイトエスケープ」に参加された経緯から教えてください。

賀東 企画・プロデュースの株式会社スロウカーブのプロデューサーから、連絡をいただいたのが最初です。谷口悟朗さんや橋本裕之さんといった著名な方々が関わるプロジェクトということで、魅力を感じました。オリジナル作品のシリーズ構成がしんどい仕事なのはわかっていたんですけど、勉強になるし、がんばってみようと思いました。

──TVアニメは、これからゲームや劇場アニメへと展開していく「エスタブライフ」シリーズの最初の作品です。賀東さんが参加された段階で、作品の世界観はどのくらい定まっていたのでしょうか?

賀東 まず谷口さんが作った設定があって、その後、僕を含めたTVアニメのスタッフが作った設定と半々くらいの割合ですかね。たとえば、新宿とか池袋とかの「クラスタ」は、初期設定では「エリア」となっていて、それを「クラスタ」という名称に変えたりしました。クラスタを管理するAIを「モデレーター」という名前にしたのも、アニメ側のスタッフです。初期設定では「ザ・マネージャー」というAIが、各エリアをそのまま管理しているという世界観だったんです。でも、それだと唯一の神みたいなもので、力が強すぎるんですよね。だから、橋本監督たちと話し合って、それぞれのクラスタにモデレーターがいるという多神教の世界観に変えました。

──TVアニメのスタッフが、基本的な設定作りにも大きく関わっていたんですね。


賀東 谷口さんは「大まかに言うとこういう世界だよ、あとは好きにいじっていいよ」というスタンスで、こちら側の自由度がすごく高かったですね。むしろ、世界観についても、僕らから積極的に提案していくという形でやっていました。だから、「エスタブライフ」シリーズの基本設定は、TVアニメから作られたものも多いんです。その分、最初は試行錯誤の連続でした。

──TVアニメは最初の作品ということで、最終回で世界を閉じないでほしいという要望が、谷口さんからあったそうですね。

賀東 そこはまあ、もちろんよくわかっていたので。世界を終わらせる気は、最初からありませんでした(笑)。クライマックスは確かにシリアスにはなっていきますけど、TVアニメは基本、エンターテインメントとして面白いものを作る、視聴者に深く考えずに楽しんでいただくというのが、コンセプトでした。

──メインキャラクターの設定については、いかがですか?

賀東 メインキャラクターも一応、初期の原案はあったんですけど、それにとらわれることなく、自由に作っていきました。せっかく橋本さんが監督なので、かわいい女の子を出しましょうと。その脇を固めるアルガとウルラは男性キャラの範疇ではあるんですけど、視聴者がセクシャリティを感じないように獣人とロボットにしました。そのほうが女の子たちとのやり取りを、安心して見ていただけるのではないかということですね。

──さらに言えば、ウルラは言葉をしゃべりません。

賀東 「わん」しか言わないんですけど、最初はしゃべる設定だったんです。満月のときだけ調子がよくなって、しゃべれるようになると。実際にシナリオの初稿段階ではしゃべらせていた話数もあって、しかも、もう黙れよって言いたくなるくらい、すごい勢いでしゃべっていて(笑)。でも、スタッフの間で「ずっとわんわん言ってたのに、今さらしゃべってもなあ」という空気になっちゃって、じゃあ、しゃべらせるのはやめましょうということになりました。


──そんな経緯があったんですね。

賀東 結局、「わん」という回数もそれほど多くない、寡黙なキャラクターになりました。その分、三木(眞一郎)さんが、1つひとつの「わん」をすごく考えて言ってくださっています。

──「わん」というセリフの中に、シーンごとにいろいろな感情が入っているので、演じる方はむしろ大変そうです。

賀東 三木さんはさすがですね。そして、実は台本には、その「わん」を言葉にしたらどんなセリフになるのか、(カッコ)に入れて詳しく書いてあるんです。

──なるほど。「わん」に込められた意味が明記されているんですね。ウルラがしゃべらない分、アルガは饒舌で、しかも女の子たちに遠慮なしですよね。

賀東 速水奨さんの芝居が、すばらしいですよね。画面の中では女の子たちと丁々発止(ちょうちょうはっし)のやり取りをしているんですが、実はコロナ禍の影響で、一緒に収録できていないんです。まるで同じ場にいるようなノリでツッコんでいましたね。

──アルガのキャラクターは、どのようにでき上がっていったのでしょうか?

賀東 賑やかしというかトラブルメーカーの役割を担ってもらおうと思いました。女の子たちへのツッコミも強めなんですけど、ロボットだから憎まれないだろうと(笑)。初期はほかにもいろいろな設定があって、アルガ回というのも考えていたんですけど、物語全体から見たらいらないなということになって、それは実現しませんでした。


──ツッコミ役、お騒がせ役に徹するということですね。

賀東 いいバランスの5人になったと思います。「エスタブライフ グレイトエスケープ」はプレスコで、コンテ段階で音声を収録して、声優さんのお芝居に合わせて作画しているんです。だから、声優さんのお芝居も自由度が高くて、それがノリのよさにつながったのかもしれませんね。ただ、全員揃っての収録が、最終回まで一度もできなかったのが残念ですね。一緒にできていたら、より面白いかけ合いになっただろうなと思います。

──コロナ禍ゆえのつらいところですね。

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