追求したのはアナログならではの交流とゲーム性! デジタルとの強者の条件の違いなども語られた「Shadowverse EVOLVE」木村唯人プロデューサーインタビュー
対戦型オンラインTCG「Shadowverse」が、リアルカードゲーム「Shadowverse EVOLVE」となって2022年4月28日に発売された。
同作はアプリゲーム版の「Shadowverse」の運営元であるCygamesと、トレーディングカードゲームのノウハウを持つブシロードとの協力で実現したもの。Cygamesより木村唯人プロデューサー、ブシロードより木谷高明会長らが登場した発売当日の模様はこちらの記事を読んでほしい。
⇒GWに遊ぶTCGはこれだ! テープカットや、木村唯人Pサイン会で沸いた大型TCGタイトル「Shadowverse EVOLVE」発売日の秋葉原をレポート!【木谷会長インタビューもあるよ!】
今回アキバ総研では、「Shadowverse」のプロデューサーであり、「Shadowverse EVOLVE」の発案者でもある木村唯人プロデューサーにインタビューを行なった。
木谷会長への打診からスタートした「Shadowverse EVOLVE」
──4月28日にアナログトレーディングカードゲーム版の「Shadowverse EVOLVE」が発売されました。当日はAKIHABARAゲーマーズ本店で記念のテープカットも行なわれましたね。
木村唯人プロデューサー(以下、木村P) そうですね、デジタル系のゲームではあまりやることがない催しで、初めての体験でした(笑)。なかなか体験できることではないので、いい経験になりましたね。平日の朝からたくさんのファンの方が来てくれて大変ありがたかったです。
──集まった人がほぼそのまま木村さんのサイン会に並んでいたのも驚きました。
木村P 普段あまりサイン会とかしたことはないんですが、アナログのゲームというものを作ったことがあまりなかったので、このプロジェクトではいろいろと新しい経験をさせてもらっています。
──木村さん自身もアナログTCGのプレイヤーだったそうですね。
木村P 今もやっていますよ。主に「マジック:ザ・ギャザリング」をプレイしていました。何度かはグランプリ(大規模な競技大会)の2日目には(勝ち)残るぐらいぐらいです。
──「Shadowverse EVOLVE」の開発メンバーのひとりの八十岡翔太さんも有名な「マジック:ザ・ギャザリング」プレイヤーですよね。
木村P そうですね、八十岡くんも「マジック:ザ・ギャザリング」のつながりです。うちが会社としてTeam Cygamesという「マジック:ザ・ギャザリング」のプロプレイヤーチームを持っているので。それで今回のゲーム制作も手伝ってくれました。
──アナログゲームのプレイヤーとして、そしてご自身が長年育ててきた「Shadowverse」というIPがカードゲームとして店頭に並んでいるのはどう感じましたか?
木村P やっぱり不思議な感じはありますね。「Shadowverse」という作品を通して長年一緒にいたキャラクターたちがカードゲームになって店頭に並んでいるのは不思議な感覚だし、感慨深いです。
──ブシロードの木谷さんが、迅速な開発でゴールデンウィークに間に合わせてくれたことを感謝していました。
木村P 制作が早く進んだ話をすると適当に作っているんじゃないかと思われそうで嫌なんですが(笑)、ちゃんと作っているのでそこは安心してほしいです。
──もとは木谷さんとの会食の際に、木村プロデューサーからアナログTCG化を打診したんですよね。
木村P そうですね、食事の際に提案してみたら非常に乗り気になってくださって実現した感じです。
アナログなTCGゆえのアレンジ
──「Shadowverse」をアナログTCG化したら面白いのではないか、というアイデアが生まれたのはどういう考えからだったのでしょうか。
木村P 世の中にある多くのカードゲームはアナログTCGとして生まれて、そこからデジタル版が制作される流れが多いんです。僕らはデジタルだけでやっているんですが、アナログ→デジタルのTCGを制作する時って、アナログ版を忠実に再現しなければならない、という感覚があると思うんです。「Shadowverse」は、もともとデジタル用のゲームとして設計されているので、そのままではアナログに持っていくことはできないんですね。だからこそ、むしろ新しいアナログゲームを作れる可能性があるんじゃないかと思ったんです。そのままでは遊びづらいところも出てくると思いました。デジタルからアナログへと移植するからこそ、アナログゲームに最適化したものを提供できるんじゃないかと思ったんです。あえてアナログ版をやろうと思ったというよりは、ほかのTCGタイトルはデジタルとアナログの両環境があるのが普通なので、両方で遊べる環境が望ましいのではないかと考えました。
──木村プロデューサーは「Shadowverse EVOLVE」の開発にはどのように関わっているのでしょうか。
木村P 先ほどお話しした通り、まずは僕の発案でゲームが作られることになりました。「Shadowverse」のゲームデザイナーの宮下(尚之さん。Cygames所属)がもともとアナログカードゲーマーで、彼らとどういったゲームにするかのフォーマットを決めていきました。商品の中身の構成やどういったゲームにしたいか、それからプロモーションなどに関わっています。
──クラス(リーダータイプ)が統合されるなど、抜本的な変更もされていますね。
木村P そういった部分は僕の意見というよりは話し合いの中ででてきたことですね。クラスが違うカードは使えないのが基本システムなので、リーダータイプが多すぎると(プレイスタイルによっては)パックを買ったときに使えないカードの割合が増えてしまうのではないかとなったんです。それでクラスを減らす必要がありました。
──ヴァンパイアとネクロマンサーが統合されてナイトメアになったほか、ネメシスなどは採用されていません。やはりデジタル特有の処理もネックだったのでしょうか。
木村P ネメシスはまさにデジタルカードゲームだからできる最たるクラスとして作られていますので。そこの部分はほかで生かそうと思っていて、ネメシスのカードがほかのクラスのカードとして登場して、ネメシスっぽい動きをさせたりはできないかなと考えています。アーティファクトの数を数えて参照するような処理はアナログではやりたくないので、いろいろ考えているところです。
──店舗ではシングルカード販売が早くも盛り上がっていましたが、アルティメットレアの絵柄違いなどはやはりアナログTCGならではの要素ですよね。
木村P 現実のカードが手元にあって、所有できるというのはアナログカードゲームの最大の魅力なので。もちろんデジタルでも絵違いというのはあるんですが、やはりアナログで魅力的な絵柄のレアカードというのはテンションが上がりますよね。
──「Shadowverse EVOLVE」のアナログだからこそ表現できた魅力にはどのようなものがあると思いますか?
木村P やはり対面で遊ぶゲームなので、コミュニケーションゲームにしたいなとは思いました。対戦相手とのやりとりがあることを大きな軸と考えています。「Shadowverse EVOLVE」には“クイック”という要素が入っていて、相手のターンに行動ができるようになっているんです。相手のターンに動けることで読みあいが発生するのは、アナログならではの魅力だと思います。
──相手のターン中に「ちょっと待ってください、そこでこのカードを使います」という入り方ができるのはアナログの対戦ならではですよね。
木村P そうですね、僕はそれが一番のよさで、デジタルとの最大の違いだと思っています。
──ワンプレイの時間感覚もかなり違いますよね。
木村P そうですね。数をこなしていくデジタル版に比べると、一戦一戦に少し時間をかけて楽しんでもらう作りになっていると思います。
──「ランダムに選ぶ」とか「カードを生成する」とかデジタルなら簡単な処理も、アナログで再現するのは大変そうです。苦労もあったのでは。
木村P そうですね、こうして形になってしまえばこれが正解だなと思えるんですが、最初はいろいろ大変でしたね。たぶん今は自然に遊んでもらえてるとは思うんですが、デジタル版「Shadowverse」とどこまで変えるかという部分は大きな課題でした。どこまで変えていいのか、という問題は開発に常につきまとう部分でした。実は、意外といろいろとルールが変わっているんですよ。
──変わったうえで、プレイ感を近づけているのかな、と感じました。
木村P 遊んでみるとこれは「Shadowverse」だな、とは感じてもらえると思います。実は最初はもう少しデジタル版に近いゲームだったのですが、それではアナログ版としての楽しさが足りないなと感じて、思い切って変えた部分があります。今は進化権とかないですし、全カード進化できるようにするべきかとか、一番調整したポイントのひとつです。
気になる今後の展開は……?
──アナログならではの要素に、多人数対戦もあると思います。「Shadowverse EVOLVE」は多人数でのプレイを想定しているんでしょうか。
木村P これは構想というよりは、ユーザーさんに自由に楽しんでもらう余地を残している感じです。僕自身、昔、とあるトレーディングカードゲームで、公式にはルールが整備されていない多人数戦を楽しんでいた時期があるんです。1対1だけでなく、多人数で集まって遊ぶというスタイルには時代的にも可能性を感じています。カードテキストも、対象は相手ひとりか全員か、といったことをあらかじめ書いてあるので、今はまず、ユーザーさんに自由に遊んでほしいと考えています。
──デジタル版のプレイヤーがアナログ版を遊んだり、その逆といったユーザーの動きはどう考えていますか?
木村P 両方やらないと楽しめない、という風にはしたくないので、片方だけ遊んでもらうのでも問題ありません。ゆるやかなシナジーはあればいいなと思っていて、片方の大会でもういっぽうのカードがもらえるとか、デジタルの大きな大会のサイドイベントでアナログの大会をやったりはしていこうと思っています。両方持っていくとより楽しめるかもしれないよ、みたいな。こちらで無理に誘導しなくても、アナログかデジタルどちらかやっていれば自然とほかも気になるんじゃないかと思います。どちらも「Shadowverse」ではあるので。
──木村さんから見て、デジタルカードゲームとアナログで、強者の条件に違いってあると思いますか?
木村P カードゲームって、細かいところまで目を配れる人が強いとは思うんですよ。アナログのほうがその細かさが上がるというか、全体を自分で管理しないといけない。プレイ面での違いとしては、アナログの方が対戦相手に関する情報が大きいのはあると思います。対戦相手の手つきや表情、空気から情報を読み取れる人がアナログカードゲームでは強いのではないかと思います。そういう対人ゲームとしての要素と、デジタルでの純粋な読みって微妙に違うようなんですね。「マジック:ザ・ギャザリング」でもオンラインで強い人と対面の対戦で強い人は違うことが多かったので。たしかに違いはあるんだけど、なかなか奥深くてわからないところでもあります。
──プレイ時間の管理などもデジタルは厳密で、複雑なデッキだと時間に追われることが多いです。
木村P 早指しの得意な人がデジタルに強いのは間違いなくあると思います。自分のターンを早く終えれば相手の思考時間も削れますからね。
──アナログ版の「Shadowverse EVOLVE」をこんな風に楽しんでほしい、といったことはありますか?
木村P どんな風に遊んでもらえてもうれしいので、遊び方は自由だと思っています。クラス同士を混ぜてもらってもいいし、開封したパックからデッキを構築して遊ぶのも楽しいと思います。多人数で遊んだり、どんな遊び方も自由にできるのがアナログのよさだと思っています。
──いわゆるシールド戦(開封したパックでデッキを構築する)やドラフト戦(共同のカードプールから各プレイヤーが1枚ずつカードを選んでデッキを構築する)といった遊び方は想定していますか?
木村P そうですね、もうちょっとしたら何かできればと考えてはいますので。今はまず通常のプレイを楽しんでもらえればと思います。
──最後にメッセージをお願いします。
木村P 「Shadowverse EVOLVE」を発売できたのも、これまで「Shadowverse」を応援してくれた皆さんのおかげです。アプリ版とはまた違った面白さがたくさんあると思いますので、ぜひ遊んでもらえれば嬉しいです。
(取材・文・撮影/中里キリ)
【製品情報】
■Shadowverse EVOLVE ブースターパック第1弾「創世の夜明け」
・発売中
・価格:1パック(カード8枚入り)385円(税込)、1ボックス(16パック入り)6,160円(税込)
・企画:株式会社Cygames
・発売元:株式会社ブシロード
■Shadowverse EVOLVE スターターデッキ6種
スターターデッキ第1弾「麗しの妖精姫」(クラス:エルフ)
スターターデッキ第2弾「怨讐刀鬼」(クラス:ロイヤル)
スターターデッキ第3弾「神秘錬成」(クラス:ウィッチ)
スターターデッキ第4弾「蛇竜の爪牙」(クラス:ドラゴン)
スターターデッキ第5弾「永久なる定め」(クラス:ナイトメア)
スターターデッキ第6弾「穢れし洗礼」(クラス:ビショップ)
・発売中
・価格:各1,650円(税込)
・企画:株式会社Cygames
・発売元:株式会社ブシロード
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