「BIRDIE WING -Golf Girls’ Story-」Season 1放送終了記念! 誰もが「バーディー脳」にセットされるSeason 1の裏話とSeason 2の見どころとは【關山晃弘プロデューサーインタビュー後編】
2022年春クールに放送され、ジワジワと話題を集めたダークホース「BIRDIE WING -Golf Girls' Story-(バーディーウイング ゴルフガールズストーリー)」(以下、「BIRDIE WING」)の裏話を追いかけるインタビュー後編をお届けしよう。
企画の発端についてじっくりうかがった前編から続く後編では、關山晃弘(せきやま あきひろ)プロデューサーに、各話エピソードやコラボレーション、小ネタの裏話など、より作品をディープに掘り下げていただいた。
⇒「BIRDIE WING -Golf Girls' Story-」Season1放送終了記念!「ゆるふわゴルフアニメ」から唯一無二のオリジナル作品への大転換! 【關山晃弘プロデューサーインタビュー前編】
イメージは「大映ドラマ」、王道のストーリーにしたかった
――本作のメインターゲット層はどのように考えたのかお聞かせください。というのも、キャストを見た時に、イヴと葵はともかくとして、2000年代のアニメを見てきたアニメファンには、非常になじみのある声優さんの顔ぶれが揃っていたので、ある程度高い年齢層も考えていたのかなと。
關山 ターゲットは20代〜30代を基本として考えていました。ただ、マスに向けて幅広く狙っていきたい、というのが当時企画を一緒に考えたバンダイナムコピクチャーズ(以下、BNP)社長の意向でもあったんです。それで、主人公の2人に関しては、今、勢いのある鬼頭明里さんと瀬戸麻沙美さんにお願いすることにしました。周りを固めるキャストに関してですが、すぐに決まったのが古谷徹さんと池田秀一さんでした。
――古谷さんと池田さんの組み合わせで御社とくれば、どうしてもネタ的なものを感じてしまうわけですが、この2人はどのような意図で?
關山 シリーズ構成の黒田(洋介)さんからあがってきた構成案に(主人公以外で)重要な男性キャラが2人いたので、これは古谷さんと池田さんにやっていただきたいと思いました。確か主人公たちのオーディションをするよりも先……、それこそキャラクターデザインができる前にオファーしていたと思います。それに、お2人ともゴルフをやられていることも(理由として)ありました。ご自身がゴルフをしている方をキャスティングすればより熱を持ってやっていただけますし、作品も応援していただけるんじゃないかと。ネタ要素よりもそちらのほうが大きかったですね。
――そのほかのキャスティングについてはいかがですか?
關山 キャスティングは基本的に稲垣(隆行)監督主導で、監督が「この人がいい」「あの人がいい」という感じで決めていった感じです。
――さらに、こちらもターゲット層が気になった要因でもあるのですが、主題歌は広瀬香美さんが担当しています。広瀬さんに依頼したのはどのような理由からでしょうか?
關山 タイトルに「Golf Girls' Story」とついているぐらいだから、絶対に女性ボーカリストにしたいと、僕が乾や監督たちに言ったんです。でも、その時点では、どちらかというとエッジの効いたガールズバンドのイメージでした。じゃあ誰にお願いしようかと考えた時に、先ほどもあった「マスに向けて狙っていきたい」という言葉に戻ったんですよ。
広瀬さんのファンは年齢層が幅広く、最近はYouTubeやTikTokでも活動されていて若い人にも名前が知られているし、年齢層の高い人たちが聴けば、「あ〜!広瀬香美だ」となる。やっぱりオリジナル作品は見てもらわなければ意味がないので、幅広く訴求できる女性アーティストとして広瀬さんが最適だと思ったんです。それに、広瀬さん自身もゴルフをやられていると聞いたので、「ゴルフをやられている方に歌っていただけると嬉しい!」という想いもお伝えしつつオファーしました。
――冒頭から広瀬香美節が効いてるというか、メロディも歌声もキャッチーですよね。
關山 最初にあがってきた曲を聴いて、スタッフみんなが「これでいこう!」となりましたね。作品に寄り添った曲をいただいたという手応えもありましたし、なによりアーティスト側にも気持ちよく作っていただくのが一番いい曲になるだろう、とも言っていたんですよ。
――音楽についても、中川幸太郎さんが公式サイトのコメントで「監督から『80年代』といったイメージもいただいていた」と書かれていました。
關山 物語を作っていく中で、監督や黒田さんと「王道のストーリー」、イメージとしては「大映ドラマ」みたいな作りにしたいと話していたんです。いろいろな伏線があるのではなく、見ていてすんなり頭に入るストレートなお話にしていきたいと。その後ろで流れている音楽ですから、発注する際も「大映ドラマみたいなお話を作りたい」とお伝えしましたね。
――そういうお話は、わかりやすく楽しいですからね。
關山 たとえば、イヴが日本に来たときに「あれ? なんでイヴは日本語しゃべれるんだっけ?」ってなったと思います。でも、そこを説明する時間がもったいないし、「なんでだっけ?」のままでいい。大映ドラマの「プロゴルファー祈子」とか「スチュワーデス物語」とか「スクール☆ウォーズ」みたいに、お話に熱がこもっていれば日本語がしゃべれようがしゃべれまいがお客さんはついてきてくれるんじゃないかと思って、そういった説明を入れずにシナリオを作りました。
ガンプラやパックマンもBNPだからこそ実現
――より具体的なシーンや、気になったネタについてもお聞きしたいと思います。まず、やっぱり御社らしいなと思ったのが「ガンプラ」です。こちらは誰の発案だったのでしょうか?
關山 発端は黒田さんです。黒田さんの脚本に「ガンプラ」と書いてあったんですよ(笑)。いろいろと社内調整はありましたが、BNPだからこそできた小ネタということで、面白いなと思いましたね。
――第12話に出てきた「シャイターン」(「機動戦士Vガンダム」に登場する、ザンスカール帝国側のモビルスーツ)はかなりマニアックなチョイスですよね。第6話で積み上がっていた箱の中には「ガーベラ・テトラ」などもありましたが、シャイターンはさすがに予想外でした。
關山 これも黒田さんならではのチョイスだったと思います。
――BNPだからこそできたといえば、葵のボールに描かれた「パックマン」(葵はパックンと呼んでいる)も同じですか?
關山 そうですね。黒田さんが「葵になにかキャラ付けをしたい」とシナリオ会議で話されたのがきっかけだったと思います。これに関しては、僕も「許諾さえ取れれば、商品化する時にパックマンが描いてあったほうが面白いな」とかいろいろ考えました。
――そういえば、葵は48インチのクラブを使うじゃないですか。ゴルフクラブの長さの基準は2022年に変更となって、プロやトップアマチュアの大会ではそれまで48インチ以下だったものが46インチ以下になりました。葵の48インチの設定は、レギュレーション変更後もそのままいこうと?
關山 はい。48インチのクラブは、葵のアイデンティティになっていますので。一度この問題については制作陣で議論しましたが、お話がすでに構築されているし、そこを変えてしまったら作品を壊しかねない、という結論に至りました。それに、もしかしたら今後ルールがまた変わってしまうかもしれないですからね。
否定しないことで生まれた、コースや義手のアイデア
――話数は前後しますが、第4話に出てきた「自動コース生成システム」も衝撃でした。アニメらしいダイナミックさがいい意味でバカバカしくて、最高に面白かったです。このアイデアはどのように生まれたのですか?
關山 シナリオの段階ではそこまで細かく書かれてはいなくて、それをいまの形にしたのは、ゴルフコースデザイン・コンセプトアートを担当した三沢(伸)さんのアイデアです。
しかも、「地下にゴルフコースがあること自体ありえない」「どんだけ広いんだよ! 野球場の比じゃないですよ?」「でもアニメだし」といった話をしていたら、どんどんタガが外れていって。三沢さんが、こういうのはどうですかとCGで作ったデザインを持ってきてくれたんです。それを見て、「めちゃくちゃ面白いじゃないですか、これ!」「なにで動いているんですか?」「下に車輪がついていて」「いいっすね! でも作るの大変そう……」って盛り上がっていったんです。その結果、大変そうとは言いながらも、結局作っちゃいました(笑)。
――あの動くシーンに、まさにサンライズらしさを感じたというか。次は巨大ロボットが出てくるんじゃないかと思いましたからね(笑)。ギミック的なことで言えば、第7話でローズの義手が壊れたシーンもすごかったです。
關山 実は、そこまでインパクトがあったんだと、放送後の反応を見て驚いたんですよ。僕らはまずシナリオで読んで、絵コンテでもアフレコでも見てきて麻痺しちゃっていたから、「あ、うん。アンダーグラウンドな世界だしね。そういうこともあるよね」ぐらいの感じだったんです(笑)。
腕が義手だから遠くに飛ばせるというアイデアは、黒田さんが「ローズにチート的なもの(設定)を作るとしたらなにがいいですか?」と、監修をしてくださった井上透さんや、協力でクレジットされているグローバルゴルフメディアグループの方にヒアリングをするなかで生まれました。「(ゴルフのショットは)手首に衝撃がかかるので、手首が鉄だったら遠くまで飛ぶんじゃないか」という無理やりな話が発端でした。「じゃあ義手にしましょうか」「義手ですか!?」みたいなやり取りが、シナリオ打ちでありましたね。
――「ナフレス編」のラストも衝撃で。まさかゴルフのアニメで主要キャラがあんなかたちで退場するとは思いませんでした。
關山 そうですね。でも、ネットの感想を見て、ローズを応援してくれていた人がこんなにいたのかとわかって嬉しかったですね。ローズはかわいいとか綺麗よりも、アウトローで硬派なキャラクターでしたが、感情移入してもらえてよかったなと思いました。
――ローズで言えば、あの部屋もコテコテでしたね。背後にアロワナ、前には亀。ボスの部屋の典型を詰め込みました感がすごくて。
關山 これも三沢さんのデザインです。亀は監督のアイデアだったと思いますけど、アロワナとかは全部三沢さんですね。
――お約束がお約束として出てくるのって、見ている側も楽しかったです。そこは作り手側ももっと盛っていこうといった意識があったのですか?
關山 そうですね。監督にしても黒田さんにしても三沢さんにしても、抑えることはしたくないなと思っているのだと思います。せっかくのオリジナルですし、みんなの考えたことがそのまま映像になった方が勢いや熱がある。ちょっと絵のクオリティが落ちたとしても、お話やキャラクターの熱があれば、楽しく見てもらえると思ったんです。
だから、今回僕はあまり否定していないんですね。倫理的によくないものはもちろんダメですけど、それ以外のことに関しては、予算とスケジュールが合うならいいですよ、というスタンスでした。結果、予算もスケジュールも合ってないんですけどね……。
――だからこそ、見ている側もみんなが「バーディー脳」になっていったというか、「BIRDIE WING」の基準でセットされていく感じがしました。
關山 それは嬉しいですね。
――だって要人を暗殺するのにロケットランチャーを持ってくるなんて、今の時代なかなかないじゃないですか(第6話)。そんなわかりやすいもの来る!?と思って。
關山 ロケットランチャーは黒田さんのアイデアですね。しかも、ロケットランチャーの種類まで指定してあって。僕も「ロケットランチャーね。確かにその方がわかりやすいよね」みたいな(笑)。
一番見てもらいたいのは、葵とイヴの関係性
――そんな衝撃も多かった「ナフレス編」から、舞台を日本に移した「日本編」では学園モノが展開されています。多数の学校、ライバルたちが登場して、どんな勝負や必殺技を見せてくれるのか楽しみです。
關山 そうですね。キャラクター性を出すために、監督がいろいろと演出を凝らしていますから、楽しみにしてもらいたいです。
――最初に考えた「ゆるふわゴルフアニメ」ほどではないにせよ、「日本編」ではいろいろな女性キャラクターが登場しています。こちらはどのようなことを意識して作られたのでしょうか?
關山 気にしたのはリズムです。あまりひとつのエピソード、ライバルに関してダラダラと続けたくないというか。ただ、黒田さんからあがってくるものは、そういった不安要素が一切なかったので、毎週毎週シナリオが送られてくるのを僕も楽しみにしていて。「マジか! こうなったのか!」と、新しいシナリオを読むたびになっていました。
監督も、構成に関しては黒田さんに全幅の信頼を置いていたと思います。「もうちょっとこのキャラクターのセリフ量を増やしてキャラを立たせたい」といったリクエストはありましたけど、大きなリテイクはなかったですからね。
――このまま熱いゴルフバトルが描かれるのか、人間模様も含めてまた違った展開となるのか、今後の見どころをお聞かせください。
關山 一番見てもらいたいのは、やっぱり葵とイヴの関係性です。さらに複雑、かつ最終的にはシンプルな形に着地するようにお話を作っていますので。そこが第1話から最終話までの本筋のストーリー展開となっていきます。それに加えて周りのライバルたちも今後もキャラクターの立っている子がたくさん出てきますから、見ていて飽きないと思いますよ。
――知っている人ならニヤリとするようなネタは、引き続きちょこちょこ出てきそうですね。第12話では、イチナが「偉い人にはそれがわからないんですよ」と口にしていましたし。
關山 名前やセリフなどに、たまに入っていると思います。ぜひ楽しみにしていてください。
――最後に、關山さんのプロデューサーとしての考えについてもお聞きしたいと思います。これまで携わられた「ジュエルペット」シリーズにしても「ヘボット!」にしてもサービス精神旺盛な作品が多く、そこは本作にも通じるものがあると感じます。關山さんが作品を作る際、根っこにはどのような考えがあるのか教えてください。
關山 アニメを作るのって大変なことなんです。でも、大変なことを「大変だ、大変だ」とやるのって、生産性もないし楽しくないと思っていて。作ったものを視聴者が楽しんでくれるのが一番嬉しいですけど、その前に自分たちが作っていて楽しいと思えることを意識して現場を組み立てています。
――まず現場がめちゃめちゃ楽しんでいるんですね。
關山 そうですね。いま名前をあげていただいた作品は、基本的に手綱をゆるめています(笑)。好き勝手やっていいよと。ダメなことはダメだけど、どうしてもやりたいならテレビ局に僕が謝りにいくよ、という感じでしたね。
――プロデューサーとして責任を持つと。
關山 基本的にはそうです。僕は、オリジナル作品はほぼほぼ監督のものであり、監督のあふれ出るアイデアが鍵になってくると思っているんです。だから、そこを制限しちゃうと、面白くない作品になると思うんですよね。やっぱりクリエイターあっての作品ですから、そこは意識しています。
――「BIRDIE WING」もそういう現場から生まれたからこそ面白いのですね。本日はありがとうございました!
(取材・文・撮影/千葉研一)
【作品情報】
『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』 Season 2 制作決定!
2023年1月 テレビ東京ほかにて放送予定!
公式サイトにて、新PV&ティザービジュアルを公開中
配信サービス「GYAO!」にて『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』 Season 1の一挙無料配信を実施中!
期間:6月29日(水)正午~7月6日(水)正午まで
配信URL:#
『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』 Season 1のBlu-ray BOXが、【受注生産限定盤】と【通常盤】の2種類で発売決定!
【受注生産限定盤】はA-on STORE(#)にて予約受付中!
©BNP/BIRDIE WING Golf Club
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