低価格帯フィギュアを開発する苦労と楽しみとは? フリュー株式会社の新フィギュアブランド「TENITOL(テニトル)」の開発チームに聞く【ホビー業界インサイド第84回】
完成品の美少女フィギュアに興味のある人なら、フリュー株式会社の名前を聞いたことがあるだろう。プリントシール機の企画開発や販売、女性向けのカラーコンタクトの企画販売などの「ガールズトレンドビジネス」と、「世界観ビジネス」を2本柱とするエンターテインメント企業だ。「世界観ビジネス」では、クレーンゲームの景品(一般にプライズと呼ばれる)、コンシューマ・スマートフォンゲームの企画開発を実施。TVアニメーション『ゆるキャン△』の製作委員会に名を連ねるなどアニメ製作も行っている。
その「世界観ビジネス」の一環として、フリューは数年前から高価格帯フィギュアのブランド「F:NEX(フェネクス)」を展開しているが、今年から低価格帯のフィギュアブランド「TENITOL(テニトル)」をスタートさせた。その名のとおり、手に取りやすいシリーズを目指しているそうだが、開発の裏にはどんな苦労があるのだろう? 「TENITOL」のクリエイティブプロデューサーの寳迫(ほうさこ)夕紀さん、同プロジェクトマネージャー今谷奏絵さんにお話をうかがった。
どのキャラクターをフィギュア化するかは、海外での販売データにも左右される
──まず、寳迫さんと今谷さんの仕事内容を教えてください。
寳迫 私は開発担当で、商品づくりを担当しています。「TENITOL(テニトル)」の立ち上げを、今谷と2人でやりました。
今谷 商品をつくる業務は寳迫に任せていて、私は営業面やプロモーションを担当しています。
──寳迫さんはもともと、プライズのフィギュアを担当していたそうですが、どうすればフィギュアを安く生産できるのでしょう?
寳迫 プライズの場合、大量生産という部分が大きいです。最近は材料が値上がりしているのですが、それと同じぐらい工場で働く人たちに支払う工賃が商品の価格には大きく関わってきます。いかに人の手を減らせるかが大事なんです。ですから、もちろん魅力的な商品を作ることが最優先ですが、プライズでは仕様をしぼりこんで工程を減らすのも重要なポイントのひとつです。(景品ではない)物販のフィギュアだったら分けるパーツも、金型を減らす意味でひとつのパーツにつなげたりします。別パーツにして塗装したあとに組み立てなければならないとか、そうした細かい工程をなるべく減らしていって、価格を安くするという考え方です。
──フリューのフィギュア製品としては、すでに「F:NEX(フェネクス)」という高価格帯のブランドがありますよね。
寳迫 高価格帯のフィギュア製品は仕様が豪華ですし、その価格帯ならではのよさがあります。それとは別次元のところで、低価格帯で勝負したいと思って立ち上げたのが「TENITOL(テニトル)」です。低価格帯のフィギュアは他社さんも出していますが、まだまだ参入の余地があると思いました。
今谷 たとえば、1万円以上は出せないけど1万円以下なら買ってもいいと思ってくださるライト層、物販フィギュアを初めて購入する層に訴求したいという気持ちから「TENITOL(テニトル)」をスタートさせました。もちろん、そのキャラクターを好きな方は価格に関係なく買うので、一部は重なっているとは思うのですが、100パーセント同じユーザーではないでしょう。そういう意味では、低価格帯のブランドを新しく始めることにはチャレンジしがいがあります。現在まで、「TENITOL(テニトル)」は4種類発表していますが、その反響を見るかぎり、かなりの手ごたえを感じています。
──ラインアップを見ると、「初音ミク」や「すーぱーそに子」など、おなじみのキャラクターが多い感じですね。
寳迫 最初のラインアップは過去に販売実績のあるキャラクターを用意しました。「F:NEX」の商品は海外でも販売しているため、そういった海外の売り上げデータも踏まえてラインアップを考えています。
今谷 弊社のECサイトから直接販売させていただく場合と、ほかの問屋さんを経由する場合とがあります。中国ですと、bilibiliさんなどにご案内させていただいています。
寳迫 「エロマンガ先生」は過去にプライズでフィギュア化したときに好評で、海外の問屋さんからも要望があったので、「TENITOL(テニトル)」でもフィギュア化させていただきました。
今谷 すべての商品が全世界で同じ熱量で人気があるというわけではなく、キャラクターによってメインとなる国が少しずつ異なると感じています。
寳迫 中国、アメリカ、ドイツが伸びてますよね。
──えっ、ドイツですか?
今谷 ヨーロッパで漫画やアニメの愛される国というとフランス……というイメージがありますが、ドイツにも好きな方が大勢いるんです。
寳迫 ですから、海外で販売する分も見込んでラインアップを考えています。まさに、海外へ打って出るという勢いで取り組んでいます。
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