【2012秋アニメ】「ジョジョ」「アイカツ!」そして「てーきゅう」! 10年代を代表するロングシリーズが続々スタート!【アニメ10年ひとむかし】
「十年ひと昔」と申しますが、アニメの世界で10年前は大昔のように感じることもあれば、今でもバリバリ現役のシリーズ作品がすでに放送されていたりという、微妙かつちょうどいい間合いの時間です。
今回はそんな10年前──2012年の秋クール、TVアニメの世界でどんな作品が放送されていたのかを見ていきたいと思います。
ジョジョの奇妙な冒険
荒木飛呂彦氏の大河ロマンホラーが連載25周年を経てついに第1部からアニメ化されました。2012年秋からは「1st Season」と題し、原作の第1部と第2部が放映されたのです。雑誌連載時からコアな人気を博している「ジョジョ」ですが、完全なアニメ化は今回が初めて。「第3部をダイジェストしてカセットブック化」「第3部の一部をOVA化」「第1部のみが劇場アニメ化」「少年ジャンプのオールスターゲームでゲスト参戦」「第3部だけがアドベンチャーゲーム化」「第3部だけが格闘ゲーム化」と、第3部を中心としたメディアミックスは行われていたものの、原点である第1部からのアニメ化はファンにとって嬉しいサプライズだったのです。
スタッフは、ディレクターに2012年春アニメ「妖狐×僕SS」で監督デビューした津田尚克氏。シリーズ構成と脚本には、「仮面ライダー電王」といった高評価の特撮ドラマで知られ、翌2013年に「進撃の巨人」を手がけ、本作と合わせて原作付きアニメでの評価も不動のものとした小林靖子氏。特にdavid production側のスタッフはファンで固められたといいます(#)。
本作の特徴は、リスペクト精神あふれるアニメ化。前述の通りコアなファンが多いうえ、名台詞・名シーンが広く知られているなど、評価が厳しくなりがちな要素が揃っているものの、原作をきちんと理解したうえでの尺の配分、声優陣の熱演など、高いクオリティでファンを納得させています。
たとえば、シリーズを通して主人公となるジョースター一族は、首に星形のアザを持つのですが、これは原作第3部からの後付け設定。しかし、今回のアニメ化では第1部の時点で主人公・ジョナサンの首にこのアザを配しており、大河ロマンとしての完成度を高めています。オープニングは、後に「ポプテピピック」「ギャルと恐竜」を手がける神風動画によるもの。第1部では90秒に原作の名シーンを余すところなく詰め込み、第2部ではリアルタイムの読者が目にしたジャンプコミックスの表紙を思わせるカラーリングと特徴的なポージングを表現しているといった具合。ファンから絶賛されると同時に、その後の原作ものアニメに大きな影響を与えています。
今回のアニメ化は10年を経て2022年現在、第6部までたどり着いており、2023年2月よりスタート予定の原作コミック第9部「The JOJOLands」とあわせて、さらなる展開が期待されるのです。
てーきゅう
ルーツ氏とPiyo氏によるギャグ漫画が、連載5か月で早くもアニメ化ということで話題を呼んだのが「てーきゅう」。
本作の特徴は、短い放映時間にギャグを詰め込んだ密度の濃さにあります。総放映時間は3分弱、オープニングやCMを除いた本編は1分20秒ほど……とショートどころの話ではありません。
その中で、原作の1話分を忠実にアニメ化していくのですから大変です。解決策は「キャラクターたちが早口でしゃべること」。最終的には公式で「早口過ぎる超高速ギャグアニメ」を謳うほどのスピードに達しています。スパっと始まって見どころのギャグシーンが次々と連発され、スパっと終わっていくスピード感はある種の中毒性があります。
AT-Xでは広告の代わりに本作がランダム放送され、「なんか気がついたら始まってて、なんか気がついたら終わってるギャグアニメ」という不思議な立ち位置を獲得しました。
本作はYouTube公式チャンネルで公開されていますが、AT-Xの視聴体験を再現するランダム再生オプションも欲しくなります。今はさまざまな娯楽がスキマ時間を奪い合っており、流行歌もサビから始まるほどのスピード重視。本作のスタイルはこうした世相とマッチしており、ある意味で時代を先取りしたアニメともいえます。
とはいえ、本作の流儀を引き継いだ作品が見当たらないことから、ハイテンポな原作と1分20秒ほどの本編というスタイルが組み合わさった奇跡の1作なのかもしれません。
本作は同じスタイルでのアニメ化が進んでいき、最終第9期ではエンディングが導入され、ただでさえ短い本編がさらに短くなってしまいました。数ある美少女ものアニメの中で、独特のスタイルで異彩を放っているのです。
アイカツ!
バンダイのアーケード用カードゲームと連動したアイドルアニメ「アイカツ!」は2012年秋にスタート。その後10年間に渡って展開を続ける一大シリーズとなりました。女児向けコンテンツでゲームとアニメが同時展開するあたりが時代を象徴しています。「ゲーム=男児向け」という図式は、この頃にはすでに過去のものとなっていたわけです。
名門アイドル育成校を舞台に、アイドル志望の中学生たちがさまざまなアイカツ(アイドル活動)を繰り広げるという内容で、最終的には世代交代を含む群像劇的な物語へと発展していきました。
アイドルたちがさまざまなユニットを組むという、現実のアイドル戦国時代を反映した展開も物語にアクセントを与えており、前述した群像劇としての側面を強めています。視聴者は、たくさんのアイドルたちから推しを見つけて応援するという、アイドルコンテンツらしい体験ができたわけです。
衣装をカードで表現し、これを用いて変身する演出も好評を博しました。ゲーム的であると同時に平成「仮面ライダー」を思わせるこのシステムでは、アニメに出てきた衣装をほぼタイムラグなしにゲームで楽しめました(2014年の時点では、ゲームの衣装をベースとしてアニメ用のモデルを新たに起こしていたそうです)。アイドルものの物語とアーケードゲームの融合を実現できたのは、進化した3DCGの技術であるわけで、こちらも現代的な光景といえるでしょう。
また、アイドルどうしのライブ勝負という、その優劣が個人の主観によるところの大きいコンテンツにわかりやすさを提供したのが「アイドルオーラ」。文字通りアイドルたちが身にまとうオーラであり、形状や大きさで個性や実力がわかるようになっています。男性向けバトルマンガ的演出を女児向けコンテンツに取り入れるという、柔軟かつゲーム的な発想がアニメにもよい影響を及ぼしているわけです。
いっぽう、物語作りでは過去の王道作品からの影響も存在しています。主人公であり、アイドルを目指す星宮いちごと、トップアイドルである神崎美月の関係性に「エースをねらえ!」、母校のピンチにいちごが颯爽と帰還するさまに「あしたのジョー」のイメージがある、と監督である木村隆一氏とシリーズ構成・脚本の加藤陽一氏が語っているのは有名なところ。物語の王道は年月を経ても不滅というわけです。
(文/箭本進一)
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