20年の時を経て振り返る長編アニメの始まり――「NARUTO -ナルト-」放送開始20周年記念!伊達勇登監督×朴谷直治P対談

2022年、岸本斉史さんの同名マンガを原作とするTVアニメ「NARUTO -ナルト-」の放送開始から20周年を迎えた。これを記念した展示会「NARUTO THE GALLERY」が2022年12月10日(土)から2023年1月31日(火)まで東京・AKIBA_SQUAREで開催されている。

今回、同作の監督である伊達勇登さんと、アニメーションプロデューサーの朴谷直治さんのインタビューが実現。2002年の第1話から2016年の第699話まで14年にわたって関わってきた両者間の信頼を感じられるような、軽妙なやり取りをご堪能あれ。

朴谷直治さん(左)と伊達勇登さん

伏線だらけの原作ストーリーと苦労だらけのオリジナルストーリー

――「NARUTO -ナルト-」のアニメを準備し始めた頃のことは覚えていますか?

伊達 準備が始まったのは……オンエアの3ヶ月前からだったかな。

朴谷 違う! さすがにオンエア3ヶ月前はない(笑)

伊達 そうだっけ?(笑) 当時の僕は別タイトルがオンエア中で、そのラストに向けて盛り上げなきゃいけないというなかで「NARUTO -ナルト-」の原作マンガをドカーンと目の前に置かれて。あれ、でも当時は7巻くらいだったからドカーンじゃないか……まあ、そんな状態で「次はこの作品やるよ」と言われたんです。僕はずっとそんな感じで、作品の放送が終わった翌週から次の作品の放送がスタートするということの繰り返しでした。

朴谷 僕とコンビになってからずっとそうだよね。

伊達 だから休みが一切ない。

朴谷 途中で劇場版の監督(「ROAD TO NINJA -NARUTO THE MOVIE-」)も担当したしね。あと「NARUTO -ナルト-」を始める時に大変だったのは、TVシリーズの1話とジャンプフェスタ2003で公開する「紅き四葉のクローバーを探せ!!」を同時に作ったこと。しかも前のタイトルを作りながら。

伊達 「紅き四葉のクローバーを探せ!!」は少し尺も長かったしね。TVシリーズが当時は19分30秒だったけど、そちらも同じくらいあって……。

――すごく大変だったことが伝わりました。原作の魅力はどの辺りにあると感じていますか?

伊達 とにかく伏線の張り方が秀逸です。僕は当初から「サスケは里抜けします」と聞かされていたんですけど、先生の頭の中では最初から最後まで話が決まっているなかで描き進めていらしたんだなと感じました。だからあれだけうまく伏線を回収してくる。

朴谷 かなり時間が経ってから伏線を回収するよね。「え、ここであれがつながるの?」「そんなことを前から考えてたの?」って驚かされる。

伊達 あと付けしたものもあるかもしれないけどね。

朴谷 そういう伏線になりそうなものを散りばめているところは、それまでに読んでいたマンガとは少し違うなと感じたな。

――アニメ化するなかで、後々の伏線になるようなことを意図せずにオミットしてしまうようなことはなかったんですか? 逐一原作側のチェックを受けて進められたとか?

伊達 いや、原作側のチェックはほぼ受けていません。でも原作にある描写はできるだけ拾うように気を付けながら絵コンテをチェックしていたので、拾い漏れはない……と思いたいです(笑)。

朴谷 どの描写も伏線に見えていたしね。ほぼ拾えていると思うな。

――一方でアニメ版はオリジナルストーリーも多かったです。

朴谷 はい。ただ原作の先を描けない、キャラクターを成長させられないというのがきつかった。

伊達 そのふたつの縛りがあるなかで、どんな話を作ればいいか……とにかく苦労しました。

朴谷 新しい技も勝手に作れないしね。どんな敵が出てもナルトは螺旋丸で倒すしかない

伊達 あとオリジナルストーリーに限らないけど、ナルトはほかのアニメの主人公に比べてお馬鹿なんです。彼自身があれこれ語って状況や気持ちを説明することはできない。だから、そうした情報を敵や周囲の人に伝えるためにはどうすればいいかに神経を使いました。

――ナルトはそういう点で特殊な主人公だったと。ほかに印象的なキャラクターや好きなキャラクターがいれば教えてください。

伊達 作品から離れてしばらく経つと、その問いに答えるのは難しいなあ。やっている当時は「アヤメちゃんが好き」とか言ってたけど。

朴谷 そこは普通「再不斬が……」とか言うところでしょ!

伊達 いや、当時はラーメン一楽の店主の隣にいるアヤメちゃんがいいと思ってたんですよ(笑)。

――作品と離れてしばらく経った今となっては、どのキャラクターにも等しく思い入れが湧いている、という感じでしょうか?

伊達 特に僕はすべてのキャラクター作りに携わっているから、そうですね。役者さんとも「こういう方向でいきましょう」とかやり取りしていたし。最初はスタジオにいる役者さんが兼役でやっていたような、あまりどんな人物か決まっていないようなキャラクターが、後半では出突っ張りになって演技の方向を修正する必要が出てきて一緒に悩むこともありました。

朴谷 それはトビのこと?

伊達 いや、アオバ役の津田(健次郎)さん。

朴谷 あー。でも、そういう人多かったよね。

伊達 多かった。オリジナルストーリーでもそう。「三尾出現の章」とかは「最終話に向けてこんな方向に話を持っていきたい」くらいはあるけど、キャラクターを作り込めていないうちにシナリオを始めないといけなくて、アフレコしながら役者さんとキャラクターについて相談し合った思い出があります。幽鬼丸のかないみかさんとか。

――そんないろいろあった「NARUTO -ナルト-」の放送開始から20周年ということで、記念展「NARUTO THE GALLERY」が12月10日から開催されています。木ノ葉隠れの里のジオラマや有名アニメーション作家によるオリジナル映像など見どころは多そうですね。

朴谷 なんか、俺達は会場で同窓会できそうだよね。「あれが大変だった」とか「あいつがー」とか。

伊達 「あの時さー」って恨みつらみ言うの? 一緒に見に行っちゃダメだね、きっと(笑)。

朴谷 え、俺は一緒に見に行く気でいたんだけど?

伊達 絶対に一般のお客さんに気付かれるよ。

朴谷 いいじゃん。どうせあなたは気付かれたいんでしょ?

――では、ファンが会場でおふたりを見かけたら声をかけても大丈夫ですか?

伊達 大丈夫です。

朴谷 むしろ監督は声かけてほしいくらいですよ。どこのイベントに行っても絶対にファンの知り合いがいるんだから。「お疲れ様でしたー」とか言われて、監督も相手のことを把握しているのがすごいよ(笑)。



【イベント情報】

■アニメ『NARUTO-ナルト-』20周年記念 NARUTO THE GALLERY

会期:開催中~2023年1月31日(火) 10:00~20:00(最終入場19:30)

会場:AKIBA_SQUARE (秋葉原UDX内)

主催:NARUTO THE GALLERY実行委員会 

◆公式サイト:#

◆公式Twitter :@naruto_20th

©NARUTO THE GALLERY実行委員会

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