2023冬アニメ「冰剣の魔術師が世界を統べる」榎木淳弥(レイ=ホワイト役)インタビュー「“一般常識を知らない人”という感じが出ればいいな」
TBS、BS11にて放送中のTVアニメ「冰剣の魔術師が世界を統べる」。
原作は御子柴奈々さんによるライトノベルで、コミカライズ版も刊行中の「冰剣の魔術師が世界を統べる 世界最強の魔術師である少年は、魔術学院に入学する」。本作は、世界最強と謳われる“冰剣(ひょうけん)の魔術師”、レイ=ホワイトを主人公とした学園ファンタジーだ。
強大すぎる自身の力に苦悩し、深い心の傷とともに戦場から姿を消したレイは、正体を隠して、エリート魔術師が集まる<アーノルド魔術学院>に入学。貴族の魔術師から差別の眼差しを向けられながらも、かけがえのない仲間たちとともに、数々の試練や陰謀に立ち向かう。
そんな本作のメインキャストに、アキバ総研がインタビュー。今回は主人公であるレイを演じる榎木淳弥さんに、作品の見どころやレイを演じるうえで意識したことなどお話をうかがった。
論理的に解析されている魔法が新鮮
――まずは、この作品を読んだ印象からお聞かせください。
榎木 タイトルに「魔術師が世界を統べる」とある通り、主人公がめちゃくちゃ強いんです。でも、いろいろあって学校の生徒たちには優秀だと見られていない。そこからの逆転といいますか、本当の能力が認められていくケレン味が面白いなと感じました。
――魔法の設定も面白いですよね。
榎木 そうですね。システマチックといいますか、「これがあるからこうなる」とかなり論理的な感じで、それに対応する単語が出てきます。この世界にとって魔法がどれだけなじんでいるのかわかりやすい設定だと思いました。
――使われる単語が現代的というか。
榎木 解析されているもの、といった感じが新しいですね。
――今回アニメ化されるわけですが、完成した映像をご覧になっていかがでしたか?
榎木 毎回思うことですが、色がついているのを初めて見るのは新鮮さがすごくあって。熱い曲が流れていたのも盛り上がりましたね。第1話ではまだ学生同士の戦闘ですが、ここからもっと強い敵が出てきますので、戦闘がどう描かれるのかが楽しみになりました。
――そのような作品の主人公であるレイ役に決まったときの気持ちもお聞かせください。
榎木 自分が感じたイメージで演じた結果、採用していただけたのが嬉しかったですね。監督とは別の作品で何度かご一緒していましたし、リラックスして楽しめそうだなと思いました。
淡々としすぎる演技は、下手だと思われる怖さとの戦い
――自分が感じたイメージで、とのことですが、キャラクターの資料や原作を見てどのような役作りをしようと考えたのでしょうか? アフレコでのディレクションについても教えて下さい。
榎木 アニメのレイは、悪い意味ではなく、原作よりも淡白な印象があったんです。なので、本当に“一般常識を知らない人”という感じが出ればいいなと思いました。第1話から女性に「レディ」と言うとか結構キザなセリフがあるんですけど、かっこつけて言ってしまうと“世の中を知っている人”になっちゃいます。そうではなく、“教えられたことを言っているだけ”とするため、感情が表に出ないようにやりました。ディレクションでも「最初は感情が出ない感じでやっていきましょう。じょじょに成長して出していけたらいいです」と言われましたね。
――戦闘などのアクションシーンでも淡白な感じは崩さずに?
榎木 そうですね。基本的にレイはめちゃめちゃ強いので、学生ぐらいでは相手にならないんです。赤ちゃんと遊んでいる感じだと思うので、アクションシーンでも特に(息芝居などの)声を入れなかったですね。
――キザな台詞を淡々と言うのって、やりやすいですか? それともテンション感が難しいのでしょうか?
榎木 難しいです。声優っぽくといいますか、かっこよく「失礼、レディ♪」と言ってしまえば視聴者も下手だと思わないんですけど、それだとキャラとしておかしい。下手だと思われる可能性のある芝居をしなきゃいけないんです。淡々としすぎて下手だと思われる怖さとの戦いでした。
――演技の素人だとうまく言うのが難しいですけど、逆なのですね。
榎木 そうしないとおかしいとはいえ、装飾をしないとわかりにくくなるから難しいんです。嫌われても仕方ないと思いながらやっていました。
――戦闘で声を出さないことについて、より具体的にお聞かせいただけますでしょうか?
榎木 アニメって殴る時に「ふっ」とか「はっ」とか言うんですけど、そういうものをほぼ入れない感じですね。監督からの指示があれば入れるぐらいでした。ディレクションでもそういう声を出してほしいとは言われず、逆に「出さないで」と言われることがありました。
――抑え気味という感覚?
榎木 たとえば、「すごいな」と言うときも、「(感情を込めて)すごいなぁ」とは言わずに「(淡々と)すごいな」って。本当にそう思っているの? この人、と思われるぐらいにやっています。
声優って思っていないことでも「すごいなぁ!」って表現することもありますし、社会的にも全然思っていないのに「それすごいですね!」みたいに言うことってあるじゃないですか。でも、レイはそれをできない人なんです。「そういうときは『すごいな』と言え」と教えられたから、ただ言っているみたいな感じというか。
――表面上はつかみどころのないレイですが、榎木さんはどういうところがレイの魅力だと思いますか?
榎木 レイはいろいろ失ってしまい、なにも持っていない状態からなにかを得ようとして学校に行くんです。その赤ちゃんが成長していくみたいな感じはいいですね。強さは最初からカンスト状態ですけど、メンタリティ的にはスポンジのように吸収して一番成長するキャラなんですよ。
――ちなみに、レイのように女性を淡々と褒める男性が実際にいたらどうですか?
榎木 どう考えても怖いですけど、それを怖くないように見せないといけない。極力かっこつけず、嫌味ったらしくなく、さらっと言えたら、というのが課題でした。
――お話をうかがっていると、榎木さんはキャラクターをかなり分析されていると感じたのですが、この作品に限らず普段からどのように分析されているのでしょうか?
榎木 キャラクターの目的、なにをやりたいのかを3分割ぐらいに分けて考えます。「全体の目的」「シーンの目的」「ひと言の目的」といった感じですね。すごく面倒くさいですよ(笑)。
――それは自宅とかで考えるわけですか?
榎木 そうですね。家でやっています。
――感情ではなく目的を中心に考えるようにした理由はあるのですか?
榎木 芝居の勉強をしていると、感情中心で考える演技論はあまりなく、目的論が多かったんです。アドラー心理学にも「原因論」「目的論」とありますけど、そのキャラクターには「何をしたいのか」が絶対にある、ということを見極めて演じられたらいいなと思ってやっています。
気になるキャラクターは、レイの筋肉仲間
――レイと同じ学院に通うアメリア=ローズ(CV. 佐伯伊織)とエリサ=グリフィス(CV. 春村奈々)の印象や、アニメで声がついてどう印象が変わったのかお聞かせください。
榎木 アメリアは、アニメのほうがちょっとまろやかになっている印象があります。性格も、すごくやさしい貴族のお嬢様という感じになっていて。心の繊細なキャラクターだなと思います。佐伯さんも性格的に落ち着いている方なので、アメリアの堂々としたところに通じる部分があって、リンクしているなと感じました。
――エリサはいかがですか?
榎木 エリサは自分に自信がなく、引っ込み思案な子ですよね。春村さんとは初めてご一緒したんですが、彼女はまだ新人で緊張していたと思うんです。でも、新人の緊張している感じが、エリサらしくてよかったですね。経験を積んだ方がリラックスしてやるのは、それはまた違うよさがありますけど、「今にしかないエリサ」になったんじゃないかなと思います。
――ほかに楽しみにしているキャラクターをあげるなら誰でしょうか?
榎木 そうですね。エヴィ=アームストロングは結構好きなキャラクターです。エヴィは梅原(裕一郎)くんがやっているレイの筋肉仲間なのですが、彼が出てくるとシリアスになりすぎないというか、作品の空気が沈みすぎないんですよね。
――やり取りが面白いですよね。
榎木 個人的に、梅原くんは筋肉的な役をやっているイメージがあまりなかったので新鮮でした。
――レイとエヴィは筋肉仲間とのことで、原作を知っている方はご存の通りレイの筋肉もすごいですよね。ちなみに、榎木さんは筋肉好きですか?
榎木 好きか嫌いかで言うと好きですね。でも、過度な筋肉は威圧感があって怖いです(笑)。
――榎木さん自身は筋トレを結構やられるのですか?
榎木 昔はずっと運動をしていたので、体がバキバキでした。体脂肪率も3%とかでしたね。
――完全にアスリートですね。
榎木 今は全然です。たぶん20%ぐらいある気がします。
――梅原さんとはアフレコ現場でどのようなお話を?
榎木 レイみたいなキャラクターをリアルにやるのは難しいよね、みたいな話をした記憶があります。
――本作に限らず、アフレコの合間とかに演技について話すことって結構ありますか?
榎木 いや、あまりないです。みんな照れくさいですし、それぞれの方法がありますからね。梅原くんとのこの会話もほんの一瞬のことで、ほかに話していたのはほぼ雑談でした(笑)。
――アフレコはまだ分散収録だったとのことですが、そうやって直接現場でお会いして一緒に収録できるようになると、やはりかけ合いは違ってきますか?
榎木 全然違いますね。ひとりではほぼ無理です。なんとかテクニックでそれっぽく見せることはできますけど、勘のいい人が聴いたらひとりで録っているとわかります。なので、できればみんなで録りたいです。
――そういう日が来るのを視聴者のひとりとして待っています。ありがとうございました!
(取材・文・撮影/千葉研一)
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