【2013冬アニメ】「ラブライブ!」「gdgd妖精s」「たまこまーけっと」──今年10周年を迎える、歴史的アニメを振り返ろう!【アニメ10年ひとむかし】
「十年ひと昔」と申しますが、アニメの世界で10年前は大昔のように感じることもあれば、今でもバリバリ現役のシリーズ作品がすでに放送されていたりという、微妙かつちょうどいい間合いの時間です。
今回はそんな10年前──2013年の冬クール、TVアニメの世界でどんな作品が放送されていたのかを見ていきたいと思います。
ラブライブ! School idol project
KADOKAWAとランティス、サンライズによる一大メディアミックスプロジェクト「ラブライブ!」、そのアニメ版は2013年1月に放映が開始されました。
もともとは美少女寄りのアニメ&ゲーム雑誌「電撃G's magazine」で2010年にスタートした読者参加企画。ユニット名やグッズのアイデア、ダンスポジションや曲作りなど、さまざまな点でファンの声が取り入れられています。同誌の読者参加企画からは、アニメやゲーム化もされた「シスター・プリンセス」をはじめ、多くの作品が輩出されています。
「ラブライブ!」が特に大きなムーブメントを起こせた理由のひとつに、アイドル戦国時代という世相とのリンクがあるのは言うまでもないでしょう。平成の街は不況の影響から「町おこし」をする必要に迫られているけれど、会いに行ける地元のアイドルたちがいます。そして、ファンはTVで見るよりも近い距離感で彼女たちを推すことができるのです。
そんな中、「ラブライブ!」の世界では、廃校の危機に瀕した母校を救うべく9人の少女たちが「スクールアイドル」グループ「μ’s(ミューズ)」を結成し、アイドルの甲子園とも言うべき「ラブライブ!」出場を目指して活動を開始します。彼女らが通う国立音ノ木坂学院は秋葉原の近くにあり、作中にも実在の場所が登場します。もともと秋葉原は多数のアイドルたちが活躍する街ですから、そのなかにμ’sがいても不思議ではありません。加えて読者参加企画では、投票をはじめとするさまざまな形でμ’sを推せました。そうした意味で、μ’sとファンの距離は非常に近かったと言えるでしょう。
もうひとつのポイントが、高校生の成長物語という強固なバックボーンがあることではないでしょうか。初のライブは観客数人からスタートし、ランキングを上げるために奔走するも、「ラブライブ!」本戦には体調不良で出場を辞退せざるを得なくなる。そして、再び開催された「ラブライブ!」の地区予選を突破するために努力を重ね、格上のスクールアイドルと競い合い、仲間の卒業を機に解散を決意する。μ’sの9人が活動するように、自分が学生時代に経験したサークル活動や部活動を重ねた人も多いでしょう。
物語終盤では、「ラブライブ!」本大会とその後の解散を控えたメンバーが、練習を終えるも別れが惜しくなり、そのまま学校に合宿してしまう姿が描かれます。こうした惜別は誰もが何らかの形で経験しただろうもの。そこには時の残酷さと、終わりがあるからこその美しさという普遍的なテーマがあるのです。
本シリーズには女性ファンが多いことでも知られており、本作が性別を越えて多くの人に受け入れられていたことがわかります。単にアイドルものだから人気が出たのではなく、高校生たちがアイドルを通して成長・変化する物語だからこそ、視聴者の心を捉えて離さなかったと言えるでしょう。
そして、本作のさまざまな企画が展開した「電撃G's magazine」は、もともとがギャルゲーをフィーチャーした雑誌でした。美少女が登場するゲームがギャルゲーと呼ばれ、ゲーム機におけるリリース本数がどんどん少なくなる中、スマートフォンではアプリ「ラブライブ! スクールアイドルフェスティバル」が多くの人に支持されてヒットとなる。これも、美少女が登場するゲームの主戦場が変わったことを象徴するエピソードと言えるでしょう。
gdgd妖精s(ぐだぐだふぇありーず)
「妖精の森」に住む天然ボケの妖精・ピクピク、毒舌な妖精・シルシル、不思議ちゃんの妖精・コロコロたちが過ごす楽しい日々を描く15分のギャグアニメである本作。第1期である本作の好評を受けて、2年後には第2期が放映されました。
シリーズの大きな特徴は、キャラクターをはじめとするビジュアルが、MMDをはじめとした3DCGソフトで作られていることにあります。MMDは3DCGをアニメーションさせるフリーソフトで、その扱いやすさから多くのユーザーが手に取り、動画サイト「ニコニコ動画」を始めとしたネット上でCG動画が発信されています。ツールの発達により、これまでよりも少ない労力でCG動画を作れるようになっていく時代を象徴する作品のひとつとも言えるでしょう。
監督の菅原そうた氏いわく「実質1週間でアニメ1話を作る」ような状態を自宅のパソコン数台でこなしていたそう。氏は当時のインタビューで「大袈裟にいえばひとりでアニメ制作会社になれちゃう時代を証明できるかもしれない」と語っていましたが、近年におけるAIの発達によって、そうした流れはさらに加速されていくのかもしれません。
作品は3人の妖精の会話がメインとなっており、さまざまなコーナーが用意されていることも含めて、まるで深夜ラジオのよう。3人が魔法でさまざまな人や物を呼びだし、ローポリゴンでカオスな世界が展開する「メンタルとタイムのルーム」、あらかじめ用意された奇矯(ききょう)過ぎる映像にアドリブで台詞を当てる「アフレ湖」といった定番コーナーが人気を博しました。第2期からは、上記コーナーに加えて流れる不思議な音に対し、何の音であるかの解釈を加えていく「素ピーカー」が登場。アドリブを重視する姿勢はさらに先鋭化しています。
3人を担当する声優である三森すずこ氏、水原薫氏、明坂聡美氏の“素”が現れては消えるのが面白く、皆のトークをこっそり盗み聞いているような独特の面白さがあるのです。新旧のアニメや漫画、ゲームのネタが解説もなく出てくるあたりもオタク的に居心地がよく、いい意味で“gdgd”した15分を楽しめる番組と言えるでしょう。
たまこまーけっと
「涼宮ハルヒの憂鬱」「らき☆すた」「けいおん!」などの原作付きアニメでムーブメントを起こしてきた、京都アニメーション。そんな“京アニ”としては珍しいオリジナル作品ということで話題になったのが本作「たまこまーけっと」です。
監督に山田尚子氏、シリーズ構成に吉田玲子氏、キャラクターデザインに堀口悠紀子氏という「けいおん!」のメインスタッフが集結。餅屋の娘である高校生・北白川たまこと、南の島のお妃を捜すしゃべる鳥・デラの日常が描かれます。「京アニクオリティ」として称えられる作画の美しさと精緻さは本作でも健在です。
たまこの住む「うさぎ山商店街」は京都市上京区の出町桝形商店街がモデルです。背の低い建物が並ぶ独特のモダンさ、家の中には今風の液晶テレビと古風な流し台が共存、大量のレコードが並ぶ中にエキゾチックな装飾の入ったカップでコーヒーを楽しめる喫茶店……。京都が持つ独特の空気感と生活感がしっかりと表現されており、さすが京都アニメーションと言えるでしょう。
そんなうさぎ山商店街で皆が過ごす日常は、暖かくも美しいもの。新学期に新しい友達を作り、臨海学校では告白騒ぎがあり、商店街を盛りあげるためのお化け屋敷を作り、文化祭のステージ成功に努力するという、美しくも足早に過ぎ去っていく学生生活がていねいに描写されます。京都という独特の雰囲気を持つ街を舞台に、夢のようにやさしい商店街と不思議なしゃべる鳥というファンタジー成分を加えた、高校生たちの青春模様が「たまこまーけっと」なのです。
本作は高い評価を受け、物語は1年後の劇場版「たまこラブストーリー」へと続きます。デラがいなくなったうさぎ山商店街で、たまこが幼なじみから寄せられる思いと向き合う、より繊細なストーリーが展開するのです。
(文/箭本進一)
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