セクシー描写に逆風の時代に、どう立ち向かうのか? アニメ「閃乱カグラ SHINOVI MASTER ー東京妖魔篇ー」爆乳プロデューサー・高木謙一郎インタビュー!

放送中のTVアニメ「閃乱カグラ SHINOVI MASTER ー東京妖魔篇ー」をはじめ、アニメ、ゲームなどで幅広く展開する「閃乱カグラ」シリーズを統括する「爆乳プロデューサー」こと高木謙一郎さんがアキバ総研に登場!

「閃乱カグラ」は2011年9月に記念すべき1作目となるニンテンドー3DS用ゲーム「閃乱カグラ -少女達の真影-」を発売してから8年目を迎えた人気ゲームシリーズ。2013年には第1期TVアニメを放送。2017年11月末にはシリーズ初となるゲームアプリ「シノビマスター 閃乱カグラ NEW LINK」の配信を開始し、登録者数100万人以上の実績を記録した。新たな挑戦として、2018年12月13日にNintendo Switch用ゲーム「PEACH BALL 閃乱カグラ」の発売が予定されている。

現在放送中のアニメ「閃乱カグラ SHINOVI MASTER ー東京妖魔篇ー」は、柳沢テツヤさん(監督)×ごとうじゅんじさん(キャラクターデザイン)×ティー・エヌ・ケー(アニメーション制作)という、「ハイスクール D×D」シリーズ(~第3期)や「健全ロボ ダイミダラー」の制作を手がけたスタッフが、「閃乱カグラ」シリーズの爆乳プロデューサー高木謙一郎さんのもとに集結。総勢28名の忍びが激突するシノビマスターズが開幕されるという完全オリジナルストーリーが展開されている。

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今回、高木さんへ放送中のアニメの制作裏話からゲームの開発に関するインタビューを敢行。近年、規制が強まりつつセクシャル描写についても、現場を知る高木さんならではのコメントを寄せてくれた。

――現在、好評放送中のアニメ「閃乱カグラ SHINOVI MASTER ー東京妖魔篇ー」ですが、まず、放送が始まってからの反響はいかがでしたか?

高木謙一郎プロデューサー(以下、高木P) 我々としても、かなり刺激的な第1話だと思いながら作ってきたので、話の展開にすごく動揺した人、今後の展開を楽しみにしてくれる人など、いろんな反応が出てきていて、面白いな、と思いました。僕的には予想通りの反応でしたね。

――1話から、「閃乱カグラ」シリーズの象徴的な主人公である飛鳥が追い詰められるなど、緊張感のある展開でしたよね。

高木P と思ったら、2話はいきなり水着回かよ!っていう(笑)。みんなで温泉街に行ったり、シリアスな本筋とは違う展開で、視聴者をヤキモキさせたりしました。

――もちろん、第1話から毎話サービスシーンも盛り込んでいます。やはり「閃乱カグラ」として、サービスシーンは外せない要素となっていますか?

高木P (水着回や温泉回といったサービスは)早めにやっておこう、と(笑)。そういったお楽しみ要素は今後も常に散りばめながら、話は進んでいきます。

――今回、高木さんはアニメで「原作・爆乳プロデューサー」としてクレジットされていますが、アニメ制作ではどの程度関わっているのでしょう?

高木P 脚本作りから入っていますし、絵コンテも全部見ていますよ。かなりいろいろやらせてもらっていますね。

最初に、僕が大まかな流れを作らせてもらって、それを(ゲームから引き続き)脚本を務める北島行徳さんにお渡しして、肉付けしてもらう流れでやっています。

――バトルシーンではサービス的なアングルも散見されますが、そういった画の指示もされたりするのですか?

高木P 指示をしているところもあります。

ただ、「閃乱カグラ」シリーズは、全編を通して「理由のないエロはやめよう」ということは決めています。性的に刺激的な描写ひとつとっても、「なぜかパンツを下から見てる」とか「なぜか服が脱げている」ということではなくて、前後の理由付けをしっかり作っていくようにしています。

――ただただセクシーなシーンが出てくるわけではない、と。それでは、たとえば第2話では雪泉たちがプールにおもむく展開となっていましたが、舞台がプールだったということにも理由があるわけですね。

高木P それはなんて言うか、深く考えずに……。「それはそういうものだ」って飲み込んでもらうところはありますね。「なぜ?」って思い始めたら、いろいろ崩れてしまうと思います(笑)。

――すいません、そこは野暮な質問でした(笑)。先ほども言ったとおり、今回の「閃乱カグラ SHINOVI MASTER -東京妖魔篇-」では、シリーズの主人公である飛鳥が“闇堕ち”に思える状況に陥ったりと、1話からシリアスな面も強いです。やはり「閃乱カグラ」シリーズとしては、少女たちのかわいいやり取りだけでなく、シリアスな展開も描こうというのは最初から決められていたのですか?

高木P もともと「閃乱カグラ」は、シリーズを通してシリアスなノリを持っている作品です。

昨今でいうと、シリアスなノリは好まれないことも多い要素ではありますが、やはりキャラクターたちの成長していく様を描く中で、彼女たちにとっての試練であったり、乗り越えるべき状況というのはきちんと描いていきたいと思っています。反対にそこがなければ、「閃乱カグラ」とも違うし、僕が作りたいものでもないんですよ。

そういったシリアスな部分とギャグ要素のバランスは悩ましいところではありますが、「熱血美少女もの」として、あえてそこはしっかり描いていきましょう、ということでアニメも制作しています。

ただ、意外とセクシーなギャグだけのほうがウケちゃったりするのかもしれないですけど……。

――最近では、シリアスなノリはなかなか視聴者に受け入れられにくい、という状況があるのですか?

高木P そういう話もあるといえば、あります。

ただ、これは僕の勝手な妄想ですけど、制作スタッフもただ女の子がキャッキャウフフするだけの作品って作りたくないんじゃないかな、って思ってる部分もあって……。今、作り手の中心にいる僕ら世代は、やはり熱血モノなどを見て育ってきた世代なので、(シリアスなノリを盛り込むことも)「いいですね! やりましょう!」と、みんな喜んでやってくださっていると思います。

制作現場は大変だとは思いますが……。

――「閃乱カグラ SHINOVI MASTER -東京妖魔篇-」では、忍者らしく激しいアクションもあって、作画なども大変そうですよね。

高木P 速く動くバトルなどは、テレビアニメーションでは(制作の労力的に)避けたい内容だとは思いますが、あえてそこにチャレンジしています。激しいバトルや群衆の中での演技など、アニメスタッフの方も苦慮しながら、かなり僕らが描きたいものを実現してもらっています。

――この作品を通して、読者に伝えたいテーマというのはどういったものなのでしょう?

高木P 「人や世界が変わること。それはいけないことでしょうか。」という見出しを付けていますが、僕としては「いろんなものは変化していかなくてはいけない」ということをテーマに置いています。

それは、作品の中でいろんな出会いや戦いを経て、キャラクターたちがどう変化していくのか? 「閃乱カグラ」シリーズ自体がどう変わってきて、どう変わっていくのか? 当然、作品を作る僕たちを含めた、人間がどう変化していくのか? といったことを踏まえたものになっています。

最近では「昔と言ってることが違う」というのを問題視する風潮もありますが、僕は「変化する」というのはいいことだと思っているんですよ。やっぱり人間は生きていたら変わっていく。

なので、「変わっていくことはいいことなんだ」というのを、作品の軸として入れ込んだつもりです。

――飛鳥の変化も、視聴者としては心配になってしまうけれど、お話が進む中で明らかになっていくわけですね。

高木P これまで「閃乱カグラ」シリーズの中で、飛鳥はずっとピュアな存在だったんです。ただ、これからもシリーズを担っていく主人公として、飛鳥には少し試練にぶつかってもらわないと。ということで「閃乱カグラ SHINOVI MASTER -東京妖魔篇-」ではいろんな刺激が一気に来ている感じですね。

――アニメだけでなく、ゲームも含めた今後の「閃乱カグラ」シリーズについてうかがいます。開発中の最新作「閃乱カグラ 7EVEN -少女達の幸福-」では、メインストーリーが一段落するというお話もされていたそうですが……。

高木P 僕の中で、常にストーリー自体は完結させたいとは思っているんです。完結というのは、すべての終わりという意味ではなく、ひとつの区切りとしてですね。

そもそも「閃乱カグラ」シリーズは計画的に始めた作品ではありません。(第一作目のゲーム「閃乱カグラ -少女達の真影-」)当時はコンシューマーゲームが下火で、予算も少なかったし、それほど期待されていなかった(笑)。ただ、僕としてはこういうコンシューマーゲームを絶対に作りたい、という強い思いがあったので、好きで始めたらウケて、次の作品を作ってもいい、と続いてきたシリーズです。当時は、本当に好き勝手自由にやらせてもらえた時期でした。

なので、この先どうなるのかっていうのはわからないんです。

ただ、今どきは10周年や20周年、30周年を迎える作品もたくさんあるので、(「閃乱カグラ」シリーズも)そういった作品のひとつにできるよう、しっかり作っていきたいとは思っています。

――「閃乱カグラ 7EVEN -少女達の幸福-」の進捗はいかがでしょうか?

高木P 最近、セクシャルな描写に対する規制が世界的に強くなってきていて、そういった面で誤解されないような作りにしないといけないというのがあるんですね。だから、今までに経験したことがないくらい、やりにくい部分というのはやっぱりあります。

なので、時間はかかると思うんですけど……。なんとか実現していこうと、どういう風にやっていくのか、全体的にいろいろと考えているところではあります。

――アニメでも、テレビ放送時にはやはり規制となる”謎の光”も目立ちますね。

高木P 正直、アニメもいつまでああいった描写をやれるのか、わからないんです。あと数年でオリンピックもやって来て時期的に危ないんじゃないかな、とも思いますし、「子供が見たらどうするんだ」っていう話もありますし。まぁ、なんのための深夜放送なのか、ってところもあると思いますが……。

ただ、こうした中で(セクシャル描写も目立つ作品は)ちょっとずつ追いやられていくジャンルにはなっちゃってます。

それでも、見たい人もいますし、そういった作品を作りたい我々もいるので、どううまくすり抜けていくのか、というのを考えていきたいところです。

――アニメのエンディングは、画面全体がほとんど真っ白で……(笑)。

高木P そうなんですよね。ですので、エンディングはBlu-rayで見るといいですよ!!(笑)

――改めて、折り返しを迎えた「閃乱カグラ SHINOVI MASTER -東京妖魔篇-」ですが、これからまた一層盛り上がっていきそうですか?

高木P バトルを含めて、人間ドラマの部分でも非常に盛り上がっていくと思います。

新キャラも出てきますし、前半は美少女をフィーチャーしていましたが、後半からはオッサンたちを含めたいろんなドラマが交錯していきます。「飛鳥がどうなっていくのか?」というのも気になりますし、全体のストーリーの落としどころもぜひ見ていただきたいです。

――それでは、最後に読者へのメッセージをお願いします。

高木P アニメ「閃乱カグラ SHINOVI MASTER -東京妖魔篇-」はこれまでのシリーズの集大成みたいな形で、ドラマ的にもセクシャル的にも熱い内容になっていますので、ぜひ楽しんでもらいたいなって思います。

これまで「閃乱カグラ」シリーズを見てくれた人はもちろん、僕と同じように90年〜00年代にアニメを見ていた人も楽しめる内容になっています。「最近、アニメを見ていないな」っていう人にも、見てもらいたいですね!

――本日はありがとうございました!

(取材・文・写真/須賀原みち)

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