この冬一番の話題作「ドラゴンボール超 ブロリー」はバトルもストーリーもすっげえぞ! 叫びっぱなしでも疲れ知らずの孫悟空役・野沢雅子インタビュー!
全世界が待ちわびた劇場版「ドラゴンボール」の最新作「ドラゴンボール超(スーパー) ブロリー」が2018年12月14日、ついに全国公開される。
本作は、劇場版「ドラゴンボール」の記念すべき20作品目となる新作映画。監督はTVシリーズ「ドラゴンボール超」でシリーズディレクターを担当し、「ONE PIECE FILM Z」でも監督を務めた長峯達也さん。作画監督は新進気鋭の新谷直大さん。そして美術監督はこれまで数々のアニメーションの背景を手がけてきた株式会社草薙の小倉一男さんと、20作記念にふさわしい万全のスタッフが名を連ねている。
本作の見どころはなんと言っても、世界中の「ドラゴンボール」ファンから最強のサイヤ人として愛されている「ブロリー」が、新たな設定で登場することだろう。また、TVシリーズ「ドラゴンボール超」の「その後」を描くストーリー、シリーズ最強のクオリティで描かれるバトルシーンなど話題満載! 2018年の年末を、熱く激しく盛り上げてくれること間違いなしだ。
そこで、今回は主人公・孫悟空役の声優・野沢雅子さんにインタビュー! 本作のアフレコ裏話をたっぷり語っていただいた。
今回は裏切られました! いい意味で
――今回の敵は、24年ぶり、4回目の登場となるブロリーですが、野沢さんはブロリーのことは覚えてらっしゃいましたか?
野沢 本当に申し訳ないんですが、前にやったのって覚えていないんですよ。
――では新鮮な気持ちでブロリーと対峙した感じですか?
野沢 そうです。私、ビデオ自体は持っていますからね、それを観ればいいんです。でも今回、私はあえて観直しませんでした。記憶にないまま会ったほうが新鮮でしょ? 前のブロリーはこんな奴なんだ、これだけ悪い奴なんだっていう先入観があると、初めてキャラクターが相対する時のセリフのニュアンスが変わっちゃうんです。
――改めて戦ったブロリーにはどんな印象を受けましたか?
野沢 根っからの悪い奴ではないと思いました。たまに心底悪い奴もいるじゃない。でも今回は違うんですよね。
――シリーズ最高と言っても過言ではないバトルシーンも見どころです。
野沢 すっごいでしょ? 今までの作品もすごいんですけど、それ以上にすごいでしょ。
――ずっとジェットコースターに乗っているような気分でした。シリーズを追うごとに絵もどんどんなめらかになってきていますが、演出の変化によって野沢さんの演技も変わった部分はありますか?
野沢 ありますよ。(演技の幅が)広がりました。1本目と今回の作品を見比べたら、全然違うと思います。
――バトルシーンの見どころとしては、やはりかめはめ波を撃つシーンかと思います。技を叫ぶシーンは気合いが入りますか?
野沢 入りますね。本作のように長い劇場アニメだと一発だけじゃなくて何回か撃つじゃないですか。でも今回は実は一発だけなんです。だからすごくいいと思うんです。私、今までたくさん作品をやってきて、大体こうきたらこういう展開になるんだろうなってわかるんだけど、今回は裏切られましたよ。いい風に。そうか! なるほど、こうきたかと。
――野沢さんはどんな気持ちでバトルシーンを演じましたか?
野沢 もう素直に、「おめえ、そりゃだめだぞ!」って気持ちでした。悟空はどんな相手に対しても「憎い」とは感じないと思うんです。平和を願う人ですから。「そんなことやったらみんなに迷惑がかかるだろ、だからだめだ!」って思って戦うんであって、頭から相手をやっつけてやる!という感じではないと思います。「そういうこと、なんでわかんねえんだ。大人なのに!」「それは違うよ、間違ってるだろ」っていうのが、常に悟空の頭の中にあって、それをわからせるための戦いなんですよね。そうじゃなかったら、もっとコテンパンにやっつけちゃってると思いますよ、悟空は強いから(笑)。
――確かに。悟空は基本的に一度攻撃されてから反撃しますからね。
野沢 そうなんです。だから野沢雅子本人としては歯がゆくなる時もあるんです。「やりゃあいいじゃない!」ってね(笑)。だけど悟空はそうじゃないんですよ。
――本作はフリーザも大きな存在で、やはり「悪い奴」ぶりは健在でしたが、彼に対してはどんな印象を持っていますか?
野沢 私としては、フリーザもいろいろわかってくれて、「こっち側に来てる」と思いましたね。悟空はああいうキャラですから、やっぱりあんまり憎むって感じではなかったですね。
今回のドラマのキーワードは「親子」!
――今回、序盤ではバーダックも演じられていましたね。
野沢 お母さん(ギネ)も出てきたでしょ? それもびっくりしました。アニメだと初めてなんですよ。
――バーダックのお父さんとしての演技がすごく感動的でした。バーダックを演じられるのは久しぶりですか?
野沢 久しぶりです。お父さんを演じることはあまりないんですよね。
――今作では、今までのバーダックにはない「お父さんらしさ」が強く出ていましたが、そこも自然と演じられましたか?
野沢 そこは自然体で入っていけますね。どんな人でも父親になると、ふとした時に父親らしいところが出るじゃないですか。それがたとえ悪人でも。誰しもそういう部分を持っているんですよね。そういうところを見ると、やっぱり人間らしいなって思っちゃうんです、私。
――今回の映画を観るまでは、悟空は父親の愛情を知らずに地球に送り込まれたのかと思っていたんですが、実はすごく愛されていたというところがうかがえて、そこにグッときました。本作では、そういう家族の絆を思わせる要素もありますよね。
野沢 ありますね。子どもの時の印象って、大人になっても消えないんですよね。だからふとした時とかに父親らしいことをやってもらってたら、その記憶は大人になっても残っていますよね。きっと悟空の中にも、バーダックの記憶っていうのがどこかに残っているのかなって思います。
――そこの対比が、ブロリー親子といい対比になっていると思います。
野沢 それは思いますね。
――そういう意味ではブロリーに対する悟空の行動は、ある意味父親らしさが出ているような。
野沢 そうですね。なんて言うか……、人間らしいでしょ。人間の根本のところ、これがなかったら人としてダメだよっていう、そういうことをまざまざと見せつけられる気がします。そこを感じてもらえると嬉しいかな。
当然バトルもないと「ドラゴンボール」じゃないんですけど、その裏にある悟空の人間としての魅力を、きちっと出すのが鳥山先生ですよね。照れ屋さんだから、表だってあからさまに言うことはないんですよ。でも、何かの形でちらっと出すのが先生らしさだと思いますね。
――悟空の人柄や父親と息子の対比など、今回の「ドラゴンボール」はちょっと大人っぽい部分もあるかもしれませんね。
野沢 そうですね、テーマ的に大人っぽいところもあるかもしれないですね。でも決して子どもさんにも理解できないものじゃないと思います。子どもさんは子どもさんなりに観て、こういうところがいいというのは十分に伝わると思うんです。でも大人も、その裏にあるドラマに「そうだよ、こういうことだよ!」って感動できると思います。もしかしたら、今までの「ドラゴンボール」とはちょっと肌触りが違うかも。
――いろいろな世代の方の感想を聞いてみたいですね。
野沢 やっぱり親子で観に行ってほしいし、その後は感想を言いあってもらいたいです。できればおじいちゃん、おばあちゃんも一緒に行っていただいて、家族みんなでディスカッションしてもらえると嬉しいですね。映画にもバーダック、悟空、悟天と三世代が出てきますから。甘いものでも食べながらね。一家の団らんに「ドラゴンボール」はおすすめです。
どのキャストの演技も素晴らしかった!
──先ほどバトルシーンがすごい、というお話が出ましたが、中盤以降は本当にノンストップでバトルされてますよね。
野沢 そうですね。すごかったでしょ。私、この映画は全部がバトルシーンだったんじゃないのって思うくらいでした。「あれ? セリフ言った?」っていうくらい。でも見直したら、ちゃんとセリフを言ってました(笑)。
──バトルシーンの映像は、まるでジェットコースター乗ってるようでした。アフレコ時は、ずっと叫ばれていたんですか?
野沢 はい。ずっと叫んでいましたよ。もうすごいですよ。始まったらずっと叫びっぱなし。
──疲れたりはしませんか?
野沢 私、役者になってから今日まで疲れって感じたことないんですよ。変なのかもしれない。
──本当ですか! では普段から喉のケアなど気を付けていることはありますか?
野沢 私ね、実は気を付けてることはないんです。でも365日、毎日やってることがあるんです。それはお風呂に入った時にシャワーを口に当てて、ガーッとうがいをするんです。それをやると風邪をひかないんですよ。喉についた1日のほこりが取れたんじゃないかなって思うんですよ。
あと、ぬるま湯を鼻から吸うんです。で、それをペッて吐き出すんです。すると鼻の中のほこりが取れたって感じるんです。
それをずっと続けていますね。それが悟空の強さの秘訣かもしれない(笑)。10代くらいからやっているんです。ほかの皆さんはもっとすごいケアをされていると思うんですけど、私はその程度で大丈夫ですから。……サイヤ人みたい?(笑)
誰にでもできることなんですけど、今日はやめたって止めたら意味がなくなっちゃうと思うから、どんな時でもやってます。その日のほこりは、その日のうちに落としたいから、私。
――共演者の皆さんの演技については、どう思われましたか?
野沢 長年一緒にやってるメンバーだから、台本を見て、こう言ったらこうくるだろうなっていうのが大体わかるんですよ。(本作のキャスト一同の演技について)私はすっごくいいと思いますよ。自分も出てるのに「すごく」っていうのも変だけど、第三者として見たらみんなかみ合ってるし、演技も素晴らしいと思いました。
――水樹奈々さん演じるチライ、杉田智和さん演じるレモと、新キャラクターについては、どのような印象ですか?
野沢 私、収録時は作品の中に入り込んじゃうから、やっぱり悟空の目線になっちゃうんですよね。だから「こんな人が来てくれたんだ」って新鮮な気持ちでした。
──ブルマの声については、本作では久川綾さんが演じられています。鶴ひろみさんからバトンを渡されている感じがしました。
野沢 今の言葉はすごくうれしいです。長年レギュラーとして一緒にやってきたから、やっぱりみんなの中にも鶴(ひろみ)が残っちゃってるんですよ。だから何かの拍子に話題が出てきちゃうんです。それって、とってもいいことなんです。ずっと一緒にやってきたし、亡くなり方も辛かったし。でも、みんなに「もうこの辺でやめよう。みんなの中に鶴が残っているのはわかってるから」「彼女(久川さん)が受けてくれて、一生懸命やってくれてるんだから」って言ったら、ほかのみんなもわかってくれました。
久川綾ちゃんも彼女なりに一生懸命役に近づいて、ドラゴンボールの一家の中に入ろうという努力もしていると思うんですよ。役者からすると大変なんです。もう一家ができているところにポッと入ってくるのって。しかも2~3年どころじゃないでしょ。そこに入ってくるんだから大変なんです。私たちはそれを迎え入れて、一家の中に自然な形で受け入れてあげて、表に言葉を出せたらいいなと思っています。
でもよかったでしょ? これからも、「ドラゴンボール」をやる時は、きっとうまく私たちの一家に入ってきてくれると思いますよ。素晴らしいと思います。
一番印象に残ってるシーンは……?
──今回で映画は20作品目、アニメが始まって32年目なんですが、その長い歴史の中で印象に残っているシーンを教えていただけますか?
野沢 パッと浮かんでくるのは、スノの家で悟空がトイレに入ってるシーン。どうしてそこ?って言われると思うんですけど(笑)。そこにレッドリボン軍が攻めてきて、銃をダダダダッて撃つんですよ。そしたらトレイのドアにバーッて穴が開くんですけど、誰も出てこない。
それで私、「嘘、主役って死ぬの?」って思ってたらギーッとドアが開いて、真っ暗なトイレの中から「いって~!」って悟空が言いながら出てくるんですよ。
そのシーンがものすごく印象に残っています。大好きなんです。普通の人は弾に当たったら「痛い」じゃすまないですよね。それが「いってーっ」て言いながら出てくるんですから。「すごいわ、この子」って思いましたね。大好きなシーンなんですよ。
──野沢さんにとってドラゴンボールは、どちらかというとコミカルな作品というイメージがあったりするんでしょうか。
野沢 うん、そうかもしれない。それで悟空はまじめじゃないですか、とっても。畑仕事でも、クリリンはさぼっているのに悟空はひとりでやってるじゃない。ああいうところが好きなんですよね。相手がさぼってても「やれよ」とかは言わない。自分でコツコツとやっている、そういうところが好きですね。そこは私と似ているかもしれない。私も人は人なんです。他人は何をやっててもいいんですよ、その人が責任をもってやっていると思うから。
でも、人様が「これはいいですよ」っていうことに関しては、自分でやれそうかなと思ったらやるんですよ。ただ、やってみて「これは私には続かない」と思ったらやめる。続かないのに中途半端にやるのは嫌いなんです。
──映画の話題に戻りまして、ラストシーンを観た後もこれで「ドラゴンボール」が終わりという感じがしなくて、まだまだ悟空たちの冒険が続くというイメージでした。野沢さんとしては、今後、どんな活躍が見てみたいですか?
野沢 私、「どんな活躍が観たい」っていうのがないんですよ。平和であればいいとは思うけど、そこに平和を乱す奴がやってきたら受けて立たないといかないといけないから、きっとこれからもバトルを繰り広げていくと思います。私、「ドラゴンボール」って永遠に続くような気がするんですよ。私、今は鳥山先生もけっこう乗ってると思っているんですよ。
鳥山先生にいただいた宝物にしている言葉があるんですけど、悟空を描く時に私の声が聞こえてくるんですって。それで筆が動いてるんですよ、って言われた時はどうしたらいいのかわからないくらい、本当に最高の気分でした。
──先ほどお話されたように、今回は親子三世代で楽しめる作品だと思います。特に、「超」から入ってきた小さな子に向けてメッセージをお願いします。
野沢 本でも映画でも、何でもそうなんですけど、お子さんたちにはともかく入り込んで、楽しんで観てもらいたいですね。それで観終わった後に何かひとつ残ればいいと思います。いくつも、なんて欲張りなことは言いません。そして、また次の作品の時に何かひとつでも残れば、それがどんどん増えていくわけでしょ。そして、自分もこうなろう、ああいうことをしようと思っていけたら、きっといい世の中になっていくと思います。
──では、長年作品を応援している大人のファンに向けてのメッセージもお願いします。
野沢 「純粋」っていう言葉があるじゃないですか。大人たちには純粋な心を持ち続けてほしいですね。それをもって天国まで行ってほしいです。
──ありがとうございました!
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