ゴジラ×エヴァンゲリオン×ウルトラマン×仮面ライダーの4大キャラクターが夢の合体!? 「S.J.H.U.PROJECT シン・ユニバースロボ」企画・開発者インタビュー
商品発表&PV公開と同時に、話題沸騰となった合体トイ「シン・ユニバースロボ」。
2022年に始動したプロジェクト「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」の『シン・ゴジラ』『シン・エヴァンゲリオン劇場版』『シン・ウルトラマン』『シン・仮面ライダー』が作品の枠を越えて集結し、変形・合体するロボット玩具だ。
4つの作品と各版権元会社が、文字通り「合体」する、この奇跡の商品がどのように製品化に至ったのか?
企画担当の光岡祐希氏(バンダイ)とデザイン担当の鶴巻拓也氏(プレックス)、設計チームの松尾博史氏(バンダイ)に、開発の経緯と商品のこだわりポイントなどをお聞きした。
この機会を逃したら実現しなかった? 奇跡のプロジェクト
――「シン・ユニバースロボ」開発の経緯をお聞かせください。
光岡 東宝さん、カラーさん、円谷プロさん、東映さんの4社による会社の枠を越えた、「S.J.H.U.PROJECT」の一環で、バンダイ内でも「このタイミングだからできる企画」として「シン・ユニバースロボ」の開発がスタートしました。
――「4キャラクターが合体する」というアイデアはどのようにして考えられたのでしょうか?
光岡 「4キャラクターを平等に扱う」ことを前提で考えたときに「それならば合体だ!」と(笑)。合体させるのが一番面白そうだと思ったんですよ(笑)。
鶴巻 企画段階ではほかにもさまざまなアイデアが出ていたんですが、どうしても「このキャラクターを立たせると、こちらが立たず」ということになりがちでした。キャラクターたちの構造や造形を崩さずに、それぞれを平等に扱うためには「合体させるしかない」と決まったそうです。
光岡 この4キャラクターが並び立つことはなかなかありませんから、「商品化に合わせて4キャラクターが共演するPVも作れるかも」という読みもありました。とはいえ、当初は「玩具を使った動きのある映像ができたらいいな」という程度の考えだったんです。でもそれが、どんどん大がかりな企画になり、結果的にCGや着ぐるみを使ったものすごいPVになりました。
――鶴巻さんが「シン・ユニバースロボ」のデザインを依頼されたときに、どのように感じられましたか?
鶴巻 デザインを依頼されたというよりは、バンダイ本社でたまたま光岡さんにお会いしたときに、光岡さんが持っていた企画書を偶然見てしまったんですよ。その企画書に描かれていた準備稿は、決定稿とは異なりキャラクターがロボットにアレンジされたデザインでした。ただ、話を聞いてみると、ロボットにアレンジされたデザインでは各社からの許諾が難しく、デザインの変更が必要とのことでした。それを聞いたときに「この4キャラが合体するなんて、この機会を逃したら金輪際実現しないんじゃないか」と思い、気がつくと手が勝手にデザインを描き始めていたんですね(笑)。その勢いのまま最後まで担当させていただくことになっていました。
――企画初期のデザインは各キャラクター、結構アレンジされたデザインだったということですか?
鶴巻 当初はそうでしたね。そこから舵(かじ)を切り、合体前はオリジナルのデザインのよさを残したスタイルに変更しました。
――設計を担当された松尾さんにお聞きします。オリジナルのデザインを残したまま合体させるのは苦労されましたか?
松尾 鶴巻さんから設計を依頼され、デザインを見た段階では「トンデモ合体をしている」という印象でした(笑)。ただ、鶴巻さんの描かれたデザインの段階で、単体状態では元のデザインを極力崩さずに、かつ合体後はロボット状態のプロポーションが映えるようにする工夫がされていました。たとえば、「ウルトラマン」と「エヴァンゲリオン」の下半身を合体させる際も、そのまま付けるのではなく上下逆にして下側が太くなるようになっていますよね。そういった工夫が見受けられていたので「これはモノにするしかないだろう」と設計者としての気持ちに火がつきました。
――鶴巻さんのデザインから変更された部分はどこですか?
松尾 元のデザインでは、エヴァンゲリオンの肩のパネル状の突起が、合体後もそのまま残っていました。それではエヴァンゲリオンの顔が見えにくくなってしまうので、肩の突起を取り外してロボット本体の肩に移動させました。肩のパネルは「エヴァンゲリオン」の特徴でもあるので、合体後も印象的な位置に付けたかったんですよ。
また「ウルトラマン」と「エヴァンゲリオン」の腕は単体時のままの状態で合体していたところを、ボディ内部に収納できるようにしました。なにぶん僕は合体ロボが大好きなので(笑)。
光岡 松尾がボディに腕を収納してくれたことで、見た目がすっきりしてカッコよくなりました。
鶴巻 本来は合体しない4キャラクターを合体させるからには、「バンダイの合体ロボとしての様式」をできる限り取り入れました。
光岡 当初は「ウルトラマン」も「エヴァンゲリオン」も腕を収納するために胸板が分厚かったり、背中には合体用のジョイントボックスが付いていました。でも、それでは単体状態でのイメージがオリジナルからかけ離れてしまいます。そうならないように内部構造を極限まで突き詰めていただきました。
松尾 戦隊ロボと同じくらいのサイズにすることが決まっていたので、そこから各キャラクター単体のサイズを逆算して決めました。そのサイズの中で、ポージングや保持力を考慮した関節構造や、変形機構とプロポーションをギリギリ両立させた結果、この商品仕様に落ち着きました。
「このサイズでやれることは全てやり尽くしました」商品クオリティへのこだわり
――合体時のサイズはかなりの迫力ですね。
光岡 全高約24センチです。
鶴巻 羽根のボリュームもあるので、お手元に届いた時の充実感は高いと思います。
光岡 分離時には、机の上に4キャラを並べて飾れるようなサイズ感を意識しています。
――サイクロン号が細かいところまで塗られているので驚きました。
鶴巻 彩色はとんでもない工程数ですよね。
光岡 なるべくキャラクターの特徴部分でもある配色は成形色と塗りを組み合わせて再現するように意識しています。
――鶴巻さんと松尾さんは、これまで他作品のロボットなどを担当されていたということで、今回のような商品は珍しい経験だったと思います。
鶴巻 合体前の形状を変更できないのには苦労しました。削れる個所は限界まで削りましたし、仕込むべきジョイントや可動域など、このサイズでやれることは全てやり尽くしました。PVや受注ページの画像では伝わらない部分ですが、遊んでいる時の手触りはまさに「合体ロボ」なんです。
松尾 細かい部分ですが、合体時にシン・ゴジラの下腹部を下げると連動して「ウルトラマン」と「エヴァンゲリオン」のイメージカラーのモールドが迫り出すギミックが仕込まれています。
鶴巻 「ゴジラ」の全身が真っ黒なので、体の各部を展開させ、内蔵されたカラーリングを露出させることで色味を足す工夫です。
光岡 単体でも「ウルトラマン」は、きちんとスペシウム光線のポーズを取らせられるようになっていますし。それぞれのキャラクターフィギュアとしても遊べる商品に仕上げていただきました。
松尾 余剰パーツを出さないことにもこだわりました(笑)。
鶴巻 武器も今回ならではのものにしようということで、スペシウム光線やA.T.フィールドを剣と盾にすることにしました。
光岡 男児からしたら夢のような武器ですよ!
鶴巻 なぜ「ゴジラの背びれとスペシウム光線が剣になるんだ??」というツッコミも大いにあるかと思いますが……(笑)。
松尾 でもPVを見たときには「おぉ!」っと思いましたよ(笑)。あんなにうまく演出していただけたのは嬉しかったです。
鶴巻 スペシウム光線と背びれ合体剣は、許諾が下りるかドキドキしましたが、各社様の寛容なご判断で受け入れてくださいました。
――合体後の顔には何かモチーフがあるのでしょうか?
鶴巻 そこは皆さんが気になっているポイントだと思います。我々の中でも、4キャラを合体させることが決まった段階から悩んでいた部分なんですよ。検討された案の中には「S.J.H.U.PROJECT」のロゴマークをデザイン化する案もありましたが、ロゴ自体に4キャラクターの顔が入っているので、わかりにくくなってしまいます。いろいろな案が検討されている間に、企画書に描かれていたプレーンなロボット顔でそのまま進行しました。また、PVを作ることも決まっていたので、きちんと目鼻がついた顔のほうが映像として成立しやすいということになったんです。
――上半身に、4キャラクターの顔がバランスよく配置されたデザインになっていますね。
鶴巻 結果的にそうなりましたね(笑)。
光岡 先ほどロゴマークの話も出ましたが、合体状態の構成は配置こそ違いますが、「S.J.H.U.PROJECT」のロゴのような位置関係にそれぞれの顔が並ぶデザインになっているんです。
鶴巻 これは各キャラのサイズのバランスにこだわったことが、理由でもあるんですよ。公式設定とは違いますが、「ウルトラマン」と「エヴァンゲリオン」はイメージ的にサイズが近いですし、「ゴジラ」は一番大きく、「仮面ライダー」は極端に小さいとなると、合体時の配置が自然に決まっていったんです。その結果、4キャラの顔が上半身に集中するようになりました。
――ほかに、注目ポイントなどがあればお聞かせください。
松尾 個人的には頭部の「仮面ライダー」の変形がすごく楽しいと思っています。サイクロン号に斜めの軸が入っていて、ジャバラ状に折り畳まれロボの耳部分になるんですよ。しかも、そのときにライダーが一度上に跳ね上がってパーツの移動を避ける。そして前輪が回転して顔が出現するところもお気に入りポイントです。じつは頭部のデザインは鶴巻さんのデザインから変わっていないんですが、この変形をサイクロン号のデザインを崩さずに、商品として成立させることに気を使いました。
鶴巻 一番小さいのに、一番細かい変形をしているんですよ。サイズ感を揃えるというこだわりがなければ、この変形にはならなかったかもしれませんね。
松尾 じつは、この変形機構は『シン・仮面ライダー』公開前に考えられていましたが、映画でサイクロン号のパネルが折り畳まれて変形する演出や、マフラーが真下を向くシーンを見たときに「解釈として間違っていなかった!?」と感動しました(笑)。
鶴巻 A.T.フィールドの立体的処理は、版元様からもご好評をいただきました。
松尾 立体的に造形したことによって、発動時に「パパパッ」と展開されるイメージに見えますからね。
鶴巻 合体時に腕に取り付けるための軸をただの棒ではなく、A.T.フィールドらしい処理にした結果です。
企画発案から発表まで1年間──開発の陰で苦労とミラクルが!?
――シン・ユニバースロボ開発についての感想をお聞かせください。
光岡 奇跡的に実現した商品だと思います。
鶴巻 そのひと言に尽きますね。冒頭にも言った通り、僕は「この機会を逃したらもう実現しないんじゃないか?」と思ったんです。これほど少ない人数で、この規模の商品を作るというのもあまりないことですしね。
光岡 去年の4月に企画を出してから、各社さんの了解をいただき、PVの企画がどんどん大きくなって、発表に至るまで約1年くらいの期間でした。
松尾 設計期間的には、普段やっている他作品のロボ玩具の倍くらいかかっています。それから、これまで出ている「ゴジラ」の商品と比較して大きく違うのは、PVCをほぼ使わずに硬質ABSのプラで「ゴジラ」の体表なども表現していることなんですよ。PVCならムクでできる部分を、内側を肉抜きするなどの処理が必要になるために手間がかかります。
鶴巻 素材の手触りも含めて、統一感を持って4キャラクターが揃うというのも、この商品ならではですね。
松尾 いろいろな苦労や工夫を経て、晴れて皆様にお見せできる商品になりました。
光岡 完全に変形させずに、合体遊びを楽しむことができるんです。
――ところで、庵野監督にはお見せになったのでしょうか?
光岡 実物はまだお見せしていませんが、PVの制作過程は版元さん経由でご覧いただいています。またPVを撮っていただいた佛田(洋)監督が、庵野監督に「本当にこれ撮っても大丈夫なの?」と相談されたそうです(笑)。
鶴巻 僕らがいくら説明しても、佛田監督は実現可能かどうか心配されていて……。
光岡 でも、佛田監督が庵野監督に確認の連絡をしてくださったおかげで、佛田監督の決心も付き、着ぐるみの製作にまで発展したわけです。
松尾 結果的によかったですよね(笑)。
鶴岡 僕らの手の及ばないところで、ミラクルが起きていたんですよ(笑)。
光岡 あの4キャラクターが勢揃いして動いている映像なんて、普通ではあり得ませんからね。
――シン・ユニバースロボのパッケージはどのようなデザインになるのでしょうか?
光岡 過去、合体ロボのパッケージイラストで実績のある鶴巻さんに、今回もパッケージ用の描き下ろしイラストをお願いしています。
鶴巻 いま張り切って進めています。
――ありがとうございます。商品とともに、パッケージイラストも楽しみにしています。
(取材/五十嵐浩司(TARKUS)、文/赤尾将義)
【商品概要】
■S.J.H.U.PROJECT シン・ユニバースロボ
・価格 :23,100円(税込/送料・手数料別途)
・対象年齢 :15才以上
・セット内容:ゴジラ…1
エヴァンゲリオン…1
エヴァンゲリオン交換用手首左右…1
ウルトラマン…1
ウルトラマン交換用手首左右…1
仮面ライダー…1
仮面ライダー用台座…1
A.T.フィールドパーツ…1
A.T.フィールド用台座…1
スペシウム光線パーツ…1
スペシウム光線用台座…1
<商品購入ページ>
プレミアムバンダイ :#
EVANGELION STORE:https://www.evastore.jp/shop/g/gC9600101/
東映 ONLINE STORE :https://www.toei-onlinestore.com/shop/g/g4570118000675thn/
ゴジラ・ストア :https://godzilla.store/shop/g/gGSG1650001/
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