【放送終了記念!】「悔いのない、作り切ったぞ!という気持ちです」TVアニメ「BIRDIE WING -Golf Girls’ Story-」Season 2關山晃弘プロデューサーインタビュー前編
女子ゴルフをモチーフにしたオリジナルTVアニメとして2022年4月〜6月にSeason 1が放送されたTVアニメ「BIRDIE WING -Golf Girls' Story-(バーディーウイング ゴルフガールズストーリー)」(以下、「BIRDIE WING」)。
監督に「ジュエルペット サンシャイン」「タイムボカン24」などを手がけた稲垣隆行氏、シリーズ構成に「機動戦士ガンダム00」をはじめ多数の人気作品を生み出してきた黒田洋介氏を起用した本作は、ドラマティックなストーリー展開や熱い必殺ショット、衝撃的な演出などで人気を博した。
2023年4月から放送されたSeason 2でも「BIRDIE WING」らしさは健在。Season 1から続く日本の学園を舞台にした通称「日本編」、そしてイヴと天鷲 葵(あまわし あおい)がプロになっていく「プロ編」が描かれ、熱い戦いや結末は興奮と驚きをもって視聴者から迎えられた。
アキバ総研では、Season 1放送終了記念インタビューと同様に、企画の立ち上げから全てを見てきたバンダイナムコピクチャーズプロデューサーの關山晃弘(せきやま あきひろ)氏を直撃。物語の内容からキャラクター、小ネタのことまで、今回もたっぷりとお話をうかがった。
どこまでリアリティを残して、どこまでアニメ映えする映像にするか
――まずは、全25話を終えた今の率直な感想をお聞かせください。
關山 いやー、大変でした(笑)。ドラマもそうですが、ゴルフ自体を面白く描きたい、「BIRDIE WING」を見て「ゴルフを始めてみようかな」「まずは打ちっぱなしから行ってみようかな」と思う人が、ほんのちょっとでもいいから増えてくれればいいな……企画当初はそういう気持ちだったんですけど、実際にやっていくうちに、これはえらい大変な題材を選んでしまったと思って。それが正直な感想です。
アニメーションを作ること自体も大変ですけど、自分で題材を選んだとはいえ、ゴルフってルール以上にマナー部分でいろいろあって。そこも勉強しながらでしたから。やりきれなかった部分もたくさんありますが、僕や稲垣監督が考え得るところには、なんとか持っていけたかなと思っています。
――スポーツを題材にするのは大変なのですね。別のスポーツアニメのプロデューサーにお話をうかがった際も「当初の目論見より何倍も大変だった」とおっしゃっていて。
關山 そうですね。僕自身、キャリアの中でサッカーのアニメを作ったことがありますけど、「嘘をつける部分」と「嘘をつけない部分」があるんです。
もちろん、アニメはどこまでいっても嘘の世界ではあります。ただ、ずっと嘘の世界でやってしまうと、誰も見てくれない。かといって、リアルな表現ばかりでは、それはそれでつまらない。どこまでリアリティを残して、どこまでフィクションというかアニメ映えした絵作りにしていくか。その線引きなんですね。その線引きを考えるのが大変でしたし、「BIRDIE WING」はリアルな部分の描写が大変だったなと思います。
――物語が進むにつれて必殺技などアニメ映えする部分を派手にしたくなるのでは? と思ってしまいますが、Season 2になって新たに考えたことはありますか?
關山 制作的にはSeason 1とSeason 2を区切って作っていたわけではなく、ずっと通して第25話まで作っていたので、Season 2になって改めて「ここに力を入れよう」ということはなかったです。
ただ、ずっと作っていると、どうしても(感覚が)麻痺してきて、「これでいいのかな? もうちょっと派手にしたほうがいいんじゃないかな?」と思うんですよ。それの表れが、たぶん第14話(Season 2の1話目)の「旗つつみ」(※)かなと(笑)。脚本に「旗つつみ」とは書かれていないですが。
※「プロゴルファー猿」の主人公・猿谷猿丸が使う必殺技のひとつで、ボールがピンの旗に直接当たり、そのままカップインする。「BIRDIE WING」では、イヴが「オレンジ・バレット」で旗を狙って打ち、カップインした。
――当然ですけど、作中でも「旗つつみ」とは言っていないですからね(笑)。
關山 そうなんですよ。ゴルフのリアリティでいうと、Season1のインタビューの時も話したように、ゴルフの監修をしていただいた井上透さん(プロコーチ・世界ジュニアゴルフ選手権日本代表監督)に相談して、「プロの選手が100回やったら1回ぐらい成功するんじゃないか」を基準にしました。いや、こんなの嘘だよ、というプレイでも、「100回ぐらいやれば1回ぐらいは偶然にできるんじゃないか、と思えるもの」「物理法則を無視してまでのスーパーショットや必殺技はなしにしよう」と。
――「旗つつみ」って、プロの目線から見ても物理的におかしくはないんですかね? 旗にぶつかった映像は見たことありますが。
關山 ボールが旗に当たったからといって必ず入るわけではないでしょうけど、100回旗に当たったら1回ぐらい入るんじゃないか。「旗に当たる」部分も、100回ぐらい(狙って)打てば1回ぐらい旗に当たるんじゃないか。そういう論理です(笑)。
――そうすると10000分の1ですね(笑)。
關山 そうですね(笑)。
――ちなみに、Season 1の反響うんぬんは関係なく、最初からこのショットを登場させる予定だったのですか?
關山 最初からというか、稲垣監督が絵コンテを描いている時に思いついたようです。
ラストの熱い展開は、作りきったぞ! という気持ちに
――物語を3部構成にすることも最初から考えていたのですよね?
關山 そうです。監督や黒田さんたちとシナリオの打ち合わせを進めていく中で、この作品の一番の根底はイヴと葵の人生の交差、お互いにくっついたり離れたりのドラマを描きたい、となりました。
そのうえで、昨今は実写ドラマでもほかのアニメ作品でも、どれだけ魅力的なキャラクターがいても話の進め方はテンポよくいきたい。25本かけてなにかを成し遂げるのではなく、もう少しコンパクトにできないか。じっくりとイヴと葵の関係性を見せるのも大切ですけど、イヴと葵を取り巻くストーリーに関してはテンポよく、展開を早くしたいと相談しました。
それで黒田さんから、3分割して「◯◯編」「□□編」「△△編」と区切るのはどうだろうかと提案をいただいたんです。イヴが日本に来て、また日本から出ていく――テンポ感もよく、すごく面白い構成になっていたので、これはいけるなと思いました。
――2つ目にあたる「日本編」だけ、サブタイトル(各話のタイトル)が文章のようになっていますが、これはどのような意図があったのでしょうか?
關山 アニメの脚本ってサブタイトルが空欄のまま来ることはなくて、だいたいは脚本家が(仮)でもその話数のタイトルを書いて、シナリオ打ちに提出してくれるんですね。「BIRDIE WING」は、黒田さんが最初に提出してくれた脚本のサブタイトルをそのまま採用しています(笑)。
シナリオが全部終わったあと、「サブタイをどうしましょうか?」となったときに、監督が「え? これでいいじゃん」「(仮)とついているのを取っちゃえばいいんじゃない?」って。僕や乾(アソシエイトプロデューサーの乾雄介さん)もこれでいいと思ったので、黒田さんに確認して、そのままいただいちゃいました。
第15話サブタイトル
――そのまま採用したのは「日本編」だけ?
關山 いえ、全部です。第1話から第25話まで。「日本編」は学園モノだし、女の子たちのワチャワチャ感が足されたら面白いだろうなと思っていたところに、この(文章のような)タイトルがスッと入っていたんですよ。
――「日本編」の色を出すために、後から考えてつけたわけではないのですね。
關山 最初からですね。第8話で「ナフレス編」が終わります、第9話からは「日本編」になります、というところでサブタイトルもガラッと変えてきたので、黒田さんの中には最初からこういうイメージがあったのかもしれないです。
――内容としては、ゴルフの対決だけでなく、Season 2ではイヴと葵の両親についての真実が明らかになりました。このあたりは、どのように考えて作られたのでしょうか?
關山 シナリオ打ち合わせは、いい意味でも悪い意味でも、20代の意見がない(参加者にいない)状態でしていたんですね。そんな中で、どうやったら面白くなるか考えたとき、「大映ドラマ」みたいなドロドロした人間関係はどうか、1周回ってまた面白いと受け止めてもらえるんじゃないか、となりました。韓国ドラマとかも、肉親を描くことによって、ちょっとドロドロしているけど「次はどういう展開になるんだろう?」とグイグイ引き込まれるじゃないですか。だから、いやらしくない形、視聴者がすんなり受け止めてもらえる形にするには、キャラクターをどういう関係値にしたらいいのか考えたんです。
例えば、「お父さんが同じ異母姉妹だったとしたら、お父さんを尊敬できるのか?」とか、「ダメな親父が死んじゃう設定だったらどうですかね?」とかいろいろ考え、それを黒田さんや監督がうまくまとめてくださいました。誰も不誠実ではなく、みんな周りに翻弄されてしまって、一生懸命生きた結果こうなった、というドラマに仕立てることができたので、僕はすごくよかったなと思っています。
――葵が本当の両親が、天鷲世良(あまわし せいら)と亜室麗矢(あむろ れいや:亜室監督)であると気づいてからも、2人との関係が悪化するわけでもなく、すごくなごやかに話をしますからね。
關山 そうなんですよ。葵の前から身を引いた亜室監督も含めて、どのキャラクターもあまり悪者にならないというか、嫌な奴にならずにドラマを構築できたのは黒田さんの手腕ですね。すごいなと思いました。
――そういえば、母親の名前が「世良(せいら)」なのは最初から決まっていたのでしょうか? 亜室監督のCVが古谷徹さんですから、「せいらさん」と呼ばせるのは狙いだったのかな? と思えてしまって。
關山 どうだったかなぁ。でも、狙っていたと思います。
――では、後半のストーリーは、シナリオを読んだときにどう感じましたか?
關山 オリジナル作品ですから、黒田さんからのシナリオで僕らも初めて知るわけです。僕も監督も周りのスタッフ陣も「早く来週にならないかな」「早く次が読みたいな」という感じで、途中からはほぼ黒田さんの独壇場でした。細かなゴルフの描写や、大里桃子プロ、関藤直熙プロを出したい(※)といった相談はしましたけど、小ネタ以外のストーリーは「今回も面白かったです。以上」といった感じで、シナリオ打ち合わせはほとんどがすぐ終わっちゃう感じでしたね。
※「BIRDIE WING」に大里桃子プロ&関藤直熙プロをモデルにしたキャラクターが登場!
https://birdie-wing.net/collaboration/collaboration10.php
――ラストは、イヴも葵もどうなってしまうのか……と思いましたが、前回のインタビューで「きれいな形に着地しますよ」と話されていたように、本当にきれいな終わり方でした。この終わり方はすぐに決まったのでしょうか? それとも別案もありましたか?
關山 ラストは、黒田さんから3パターンぐらい終わり方の案をいただいて、監督やみんなと決めました。
――ということは、2人ともゴルフができなくなるようなバッドエンド的なラストも?
關山 ありました。そういうのも含めつつの3つの案でした。でも、これがきれいで、満場一致という感じでしたね。
――全英オープン3日目で葵が倒れたあと、最終日(第25話)で葵がイヴのキャディーになるのも熱い展開でしたが、ここは關山さん的にはいかがでしたか?
關山 やっぱり燃えますよね。イヴと葵がひとつの目標に向かってゴルフをしたらどうなっちゃうんだろうと、シナリオを読んだときに「これは熱い展開だなぁ」と思いましたね。それを監督が絵コンテ、映像にしてくださったので、僕としては悔いのない終わり方というか、作りきったぞ! みたいな気持ちになりました。
――葵が髪を切るのも、黒田さんの脚本に最初から書かれていたのですか?
關山 いや、髪を切る描写はなかったですね。髪型を変えたのは、稲垣監督が絵コンテを描き終わった後に気持ちの変化を表現したく髪を短くしたんだと思います。
インタビュー後編に続く!
(取材・文/千葉研一)
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