【2023夏アニメ】TVアニメ「アンデッドガール・マーダーファルス」八代拓(真打津軽役)インタビュー「やりたい部分と、聞こえの部分とのバランスを相談しつつ作っていきました」
7月スタートのTVアニメ「アンデッドガール・マーダーファルス」で、“鬼殺し”の異名を持つ半人半鬼の真打津軽(しんうちつがる)を演じている八代拓さん。
不老不死の美少女探偵・輪堂鴉夜(りんどうあや、CV:黒沢ともよ)の奪われた体を探すため、鴉夜とメイドの馳井静句(はせいしずく、CV:小市眞琴)とともに、怪物専門の探偵“鳥籠使い”として数々の事件を解決しながら、ヨーロッパを巡る旅が描かれる本作では、津軽と鴉夜が繰り広げる軽快な会話劇も見どころだ。「演じることがずっと楽しみだった」という八代さんに津軽へのアプローチ、黒沢さん演じる鴉夜とのアフレコ、本作で感じた「ファルス=笑劇」要素などを教えてもらった。
ーー津軽を演じるのを楽しみにしていたとのこと。実際に演じた感想を教えてください。
八代 どんな死に様が芸として面白いかというところから始まり、鴉夜と出会ってからも変わらずに面白いものを見たい、聞きたい、触れたい、やりたいという気持ちを持っているキャラクターです。周りがどれだけシリアスになろうと、人の生死がからむ、とてもじゃないけれど笑えない状況になっても、津軽は面白いと笑える、もしくは自分自身が笑い飛ばしてもらえるようなうふるまいをするところに、根幹にある芸人魂のようなものを感じました。そのアンバランスさは意識していたし、演じていて楽しく感じる部分でした。物語がどれだけ暗くなろうとも笑い飛ばしたり、状況に似つかわしくない小噺(こばなし)をはさんだりする。そういったある種空気の読めなさみたいなところは、演じていてすごく楽しかったです。
ーー鴉夜役の黒沢さんは津軽がかなりお気に入りのようです。フェチの塊とおっしゃっていました。八代さんは津軽の魅力をどのように感じていますか?
八代 最大の魅力はバカじゃないところ。ヘラヘラしているようで一枚上手だったり、何も考えていないようで実は考えている……と思ったら本当に考えてなかったりもする。津軽は一度死を覚悟している人間なので、幕が下りるまではタイトルじゃないけれど「ファルス(笑劇)」でいるみたいなところがあるような気がします。それが彼の芯。芯のある人間ってカッコいいし、魅力的ですよね。その芯が真面目でも、熱くても、かわいくても、面白くても、どんな芯でも持っている人間は魅力的に感じる。腹をくくっている人間からは、何か伝わってくるものがある、だから津軽は魅力的に見える気がします。
ーー津軽を演じるために、落語もたくさん聞いたそうですが。
八代 原作に出てくる落語は実在するものだったので、映像や音源でたくさん触れました。噺家(はなしか)さんによって同じ話でもテンポ感や話の運び方などが全然違っていて、すごく面白かったです。何がすごいって、話もオチもわかっているのに何度聞いても笑えるところ。それって究極だと思いました。家で、ひとりで観ているときにクスッと笑ったり、「フフフ」と気持ち悪い笑いが自分から生み出されてしまって、すごい芸だなと感じました。思わず笑ってしまうってこういうことなんだなって。
ーー津軽の独特なしゃべり方、節回しはどのように作り上げたのでしょうか。
八代 落語はあまり触れてこなかった分野なので、たくさん聞いたことはすごく役立ちました。しゃべり方の特徴やしゃべりの見せ方のようなものを取り入れて、それを津軽節にしてしゃべることができれば一番いいなと思っていました。僕の中でひとつ、ちょっとしたテーマとして言葉の不明瞭さの美学というのを考えていました。べらんめえ口調ではあるけれど、ハキハキというよりも、助詞が若干流れ気味というのを意図的に出せたらと思っていました。でも、やりすぎてしまって音として聞こえなかったら意味がないので、不明瞭になりすぎないように、自分のやりたい部分と、聞こえの部分とのバランスを、音響監督の若林さんといろいろと相談しながら作っていきました。
ーー鴉夜と津軽のかけ合いも本作の大きな見どころになるかと。
八代 小説でも台本でも鴉夜と津軽の会話の相性がいいなと感じたし、かつ2人は笑いのツボが似ていると思いました。2人にしかわからない世界観というのでしょうか。不死の生首と半人半鬼という境遇も相まって、2人が織りなす独特の空気感はあると感じていました。リハVのテンポが美しくできあがっていたので、台本だけでなく映像から受けるインスピレーションも結構あって、すごくありがたかったです。あまりにもテンポがよすぎて、逆に自分が演じる時にはどうしようか、ってなりました(笑)。アフレコではリハVのテンポ感をベースに、言葉の中に調子が付くようなところを微調整していきました。僕の中でのできる限りの遊び心は、大げさにならない程度に入れています。
ーー津軽のしゃべりそのものも本作の見どころ、聞きどころですね。
八代 ただ、正直いうと津軽の小噺そのものは、この物語の世界には必要な感じに見えるけれど、ストーリーを追ううえでは全く必要ないんです(笑)。そういう意味では、楽しんでいただけたらうれしいと思うのですが、静句のように「また津軽が言ってるよ」くらいの感覚で聞いていただいても全然いいです。ちょっとスパイスになっているくらいに思っていただけたら上出来。しゃべればうるさいと言われてしまうけれど、どうしても口に出てしまうのは津軽のパーソナルなので、そんな感覚で楽しんでいただけたら。
ーー黒沢さん演じる鴉夜はいかがでしたか?
八代 カラッとした小気味のいいセリフを投げかけてくれるので、ボケにしろツッコミにしろ乗りやすかったですし、会話をするのがすごく楽しかったです。推理パートはすごく面白く聞かせてもらいました。推理パートは事実や起こったことの説明になるし、カット割もすごく多くて、セリフをあてるのは大変な作業だったと思います。大変なのは台本の文字の量からもわかるのですが、聞いていてわかりやすいだけでなく、興味を惹かれるような色づけを文章から感じました。黒沢さんからしか出てこない言い回し、聞かせる推理に僕もワクワクしました。
ーー黒沢さんからは「オトナのお伽噺」というコメントも出ていましたが、八代さんはどのように感じましたか?
八代 原作の要素として、大人が心の中で「ふーーーーっ!」と思わず言いたくなるようなお洒落さがあると思っています。お洒落の塩梅(あんばい)ってすごく難しくて、味が濃すぎると寒くなってしまうもの。でも、この作品にはそれが全くなくて、常に納得させられるお洒落になっています。その魅力はアニメになっても変わってなくて。会話や、起きる出来事、小ネタも含めてすべての要素に大人がクスッと笑えて、ちょっとワクワクするような部分が確かにあると思っています。「ちょっと」とか「思わず」みたいなところが、大人な感じがします。と同時に、僕は逆に子どもが観てどういう感想を持つのかが気になっていますし、普段、アニメをあまり観ない方でも面白く観れるし、いろいろなアニメを観てきた方にもうなっていただけるような作品になっていると思っています。
ーーヨーロッパを巡る旅の中でいろいろな二次元キャラクターが登場します。八代さんのお気に入りを教えてください。
八代 ルパンです。津軽とは方向性は違えど面白い芯を持っているキャラクターだと思っています。津軽は最終的に自虐に持っていったり、泥臭い芸のような方向性があるけれど、ルパンはすごく真っ当にかっこいい。キザに生きるってすごく難しいし大変なことだけど、それを地で行っちゃうところとか(笑)。ブレなさという意味では2人は似ていると思っています。2人が交わる瞬間はちょっと楽しみにしていただきたいです。
ーータイトルにもある笑劇<ファルス>にはどのようなイメージを持っていますか?
八代 みんなを笑顔にして幕を閉じるのが喜劇。この作品ではいろいろな事件や出来事が起き、人も失われたりするけれど、最終的には笑顔っぽく、冗談っぽく、お洒落に落ちるみたいな感覚にファルスを感じます。喜劇と悲劇は表裏一体。割とどちらにも転がりやすいけれど、喜劇だからアハハハと高笑いして終わるわけではなく、すぐ裏には悲劇がある、そんなところがある気がします。
ーーお洒落な落とし方は演じる時にも意識していましたか?
八代 落とさなきゃみたいな感覚は別段なくて。半人半鬼が鳥籠を持って、鳥籠の中には不死の生首の少女がいて、すぐそばには傀儡のメイドがいて、3人は探偵でという時点でちゃんちゃらおかしくて、もはや素っ頓狂(すっとんきょう)。ギャグをやろうがシリアスをやろうが、推理パートをやろうが事件解決をしようが、3人が揃った時点でもう喜劇ができあがっています。津軽でさえいれば大丈夫という変な安心感の中で演じていました。
(取材・文/タナカシノブ)
【アニメ情報】
■アンデッドガール・マーダーファルス
<放送情報>
2023年7月5日よりフジテレビ「+Ultra」ほかにて毎週水曜24:55〜放送
※放送時間は変更の可能性あり
<放送局 /放送日時>
フジテレビ 7月5日より毎週水曜24:55~
関西テレビ 7月6日より毎週木曜26:25~
東海テレビ 7月8日より毎週土曜25:45~
北海道文化放送 7月9日より毎週日曜25:10~
テレビ西日本 7月5日より毎週水曜25:55~
BSフジ 7月12日より毎週水曜24:00~
AT-X 7月9日より毎週日曜23:00~
※毎週(木)29:00、毎週(日)8:00にリピート放送あり
<配信情報>
2023年7月6日より毎週木曜日正午からdアニメ/U-NEXTで先行配信
【先行配信サービス】
dアニメストア
dアニメストア ニコニコ支店
dアニメストア for Prime Video
U-NEXT
2023年7月9日より毎週日曜日正午から各事業者で順次配信開始予定
【見放題サービス】
・ABEMA
・Amazon Prime Video
・Disney+
・DMM TV
・FOD
・J:COMオンデマンド
・milplus
・アニメ放題・ニコニコ動画
・バンダイチャンネル
【都度課金サービス】
・Amazon Prime Video
・Google Play
・HAPPY!動画
・J:COMオンデマンド
・milplus
・music.jp・ニコニコ動画
・バンダイチャンネル
・ビデオマーケット
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