【2023夏アニメ】声優デビュー時に戻った気分──アニメ「自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う」福山潤(自動販売機のハッコン役)インタビュー

異世界転生モノは数あれど、自動販売機に転生する作品は稀有だろう。タイトルからインパクト抜群の作品「自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う」(原作:昼熊/角川スニーカー文庫刊)が、2023年7月よりTVアニメとして放送をスタートした。

自動販売機マニアの青年が交通事故に巻き込まれ、異世界に転生。大好きな自販機に生まれ変わった彼は右も左もわからない異世界に放り出されてしまう……。突然の出来事にとまどうものの、自販機マニアとしての「アツいサービス精神」に火がつき、自動販売機・ハッコンとして、異世界住人の胃袋を満たしていくのだった!

という具合に、のっけから急転直下の展開を見せる本作。今回、アキバ総研では、ハッコン役の福山潤さんにインタビューを実施。インパクトのある本作の印象や魅力についてうかがった。

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感情をこめず、定型のセリフでどうコミュニケーションをとるか

──役が決まったときの感想をお願いします。

福山 僕は声優デビューした年に「黒板消し」と「玄関ドア」を演じた男なので、その頃に戻った気分でした(笑)。作品のことを聞いて「いくところまでいったな」と感じましたし、そのときはまさか自分が自販機(ハッコン)を演じることになるとは思ってもみませんでしたが(笑)。

──ハッコンを演じるうえで意識したことはありますか?

福山 彼は会話によるコミュニケーションがほとんどなく、魂の叫び(モノローグ)がメインなんです。前世である「自販機好きの青年」を意識するのがいいのかな、と考えながら演じました。彼にキャラクター性を持たせてしまうと「迷宮に動かない自販機が置いてある」というシチュエーションが生かされないと思ったんです。

──演技をするうえで、何かディレクションは受けましたか?

福山 役のとらえ方などについては特にありませんでした。「無味無臭の演技」を持ち込み、そのうえで「作品のテイストや周りに合う、合わない」を判断していただこうと思いまして。普段は、僕がやりたいと思っている方向性を提示し、NGだったら修正、OKなら「どこまでならいけるかな」と思いながら微調整していくんです。でも今回は「キャラクターのしゃべり方や声を変にいじらないほうがいい」という感覚がありましたので、思うとおりに演じたら、OKをいただきました。

 

──アフレコはどのような環境で行なわれましたか?

福山 モノローグの部分は基本的に別録りでしたが、ラッミス役の本渡楓(ほんどかえで)さんら、メインでからむキャスト同士のかけ合いには参加できました。定型文でやり取りをしていると、どうしても感情を込めたくなるのですが、そこはさすがにやらせてもらえませんでした(笑)。

──かけ合いは大変でしたか?

福山 彼の単調な定型文のセリフに感情を込めつつ反応しなければならない、本渡さんのほうが大変だったと思います。僕の場合、モノローグで受けることでコミュニケーションとして成立させられるので。「難しいことをしているのは、あなたのほうなんだよね……」と、申し訳ない気持ちになったのを覚えています(苦笑)。

──気になる登場人物はいますか?

福山 ラッミスはとてもいい子ですよね。ほかにも魅力的なキャラクターがたくさんいるのですが、個人的にはハンター協会の会長である「熊会長」が気になります。熊の姿でそこに普通にいますし、何かを感じます(笑)。

──物語序盤の見どころをお願いします。

福山 「自販機になってしまった彼がどのように生きていくのか?」というテーマで話が進みますが、そこには異世界転生ものの“お約束”が多分に盛り込まれています。自販機の身体を駆使して、どう問題を乗り越えていくか? また「ファンタジー世界に、令和でも活躍する自販機を持ち込んだら人々がどれくらい幸せになるか?」という点にも注目していただきたいですね。



福山潤と自販機トーク!?

──ありがとうございます。ここからは、作品に絡めたお話をうかがえたらと思うのですが、もし福山さんが自販機に転生するとしたら、どんな自販機になりたいですか?

福山 近くに寄らないと中身を見ることができない自販機ってありますよね? ああいう、ちょっと後ろめたさを感じるような自販機っていいですよね。利用者の悲喜こもごもを感じられると言いますか。

 「それってどんな自動販売機?」と疑問に思った人は、ぜひお父さんやお母さん……いや、ちょっと大人ぶっている友達にでも聞いてみてください(笑)。

──ハッコンはいくつかの定型文しかしゃべることができませんが、実際にひとつのフレーズしかしゃべれないとしたら、どんな言葉を選びますか?

福山 「誰かに助けてもらいたい」という前提だと、客が商品を購入したあと「この恨み、晴らさでおくべきか」としゃべります。「あの自販機、もしかして誰かが呪いにかかった姿なのでは……?」と思わせることができたら、しめたものです(笑)。

──本作では自販機が「成長」していく様子も描かれていますが、福山さんが成長、カスタマイズさせてみたいものはありますか?

福山 自分の身体ですね。別に、誰かに鍛え上げたボディを見せつけたい……というわけではないんです。たとえば、バーベルを100キロ持ち上げることができたら「俺、強くなった!」と感じられるじゃないですか。言わば「自己満足」ですね(笑)。常に身体をカスタマイズさせていきたいです!

──本作ではハッコンと異世界人との交流が描かれていますが、福山さんがいままでで印象的だった人との出会い、交流はありますか?

福山 ついさっき起こった出来事なのですが、外国人旅行客と思われる一団とすれ違ったとき、英語で「その服、どこで買ったんだ?」と聞かれたんです。僕はコミュニケーションが取れるほど英語が得意ではなかったので、ただブランド名を連呼することしかできず……悔しかったですね(笑)。

──最後に、福山さんにとって、理想の自販機とは?

福山 「おしぼりの自販機」です。歩き疲れて「スッキリしたい」と思うことはありませんか? 飲み物や食べ物の自販機に並んで「冷たいおしぼり」と「温かいおしぼり」が置いてあると、つい使いたくなるんじゃないかと思うんです。……と言っていたら、すでにあるみたいですね。ビジネスチャンスだと思いましたが(笑)。

──ありがとうございました!


(取材・文/佐伯敦史)

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