【新作プラモレビュー】優秀なパーツ分割、アンダーゲート、色分けと、WAVE×アカデミーの「ガリアン」はちょっとスゴい! 声優・泰勇気が作例に挑戦!
社会人ともなると忙しい毎日の中で積みプラが増えてしまいがち……。そんなあなたに代わって、ロボット&プラモデル大好き声優の泰勇気がプラモデル製作に挑戦するのが、この連載!
コンセプトは「忙しい社会人でも、週末の休みを使えばここまでできちゃうよ」。ルールは素組みで、1~2日の制作期間の2点のみ! この連載を読めば、きっとあなたの作ってみたいプラモデルと出会えるはずだ。
というわけで、「声優・泰勇気の週末プラモ!」第82回スタート!
泰勇気の週末プラモ 第82回 1/72スケール ガリアン
数あるサンライズロボットアニメの中でも、ハードなSFとファンタジーな世界観が融合した唯一無二の作品が「機甲界ガリアン」です。
原作・監督は高橋良輔氏、メカニックデザインは大河原邦男氏や出渕裕氏、キャラクターデザインは塩山紀生氏といった具合に、強力なスタッフが勢ぞろい。物語は、イラスタント太陽系第5惑星「アースト」という中世ヨーロッパを思わせる世界を舞台に、国を滅ぼされたボーダー王家の生き残りである主人公のジョルディ王子(通称ジョジョ)が、仇であるマーダルに戦いを挑んでいくさまが、全25話にわたって描かれました。
登場するロボットは「機甲兵」と呼ばれ、鉄巨人ことガリアン、ケンタウロス型の人馬兵ことプロマキス、飛行タイプのウィンガルなどなど、世界観にピッタリな機体も多数登場しました。
今回ご紹介するキットは、そんな本作より、主人公ジョジョが白い谷の洞窟で出会った伝説の鉄巨人、真紅の機甲兵ガリアンのスナップモデルキットです。
日本の模型メーカー・WAVEと韓国の模型メーカー・アカデミーが共同開発したもので、スケールは1/72。非常に組み立てやすく完成後の姿も劇中のイメージに近いうえ、飛行形態である飛装型(ビッグファルコン)へと完全変形をこなすというすぐれもの。
パーツ分割の工夫とアンダーゲートの採用、適度なアレンジにより、合わせ目消しや塗装をせずとも満足できる姿に組みあがるこのキット。
いきなり組み立て完成状態からご覧いただきましょう!
キット化発表の時から気になっていたのは、顔の中央の白いラインや腕部などの黄色いライン。はたしてこれらはどのように処理するのか、はたまシールが使われているのか、などといろいろ予想していましたが、すべてパーツ分割のみで再現されていました。
スタイルにはほとんどアレンジが加えられておらず、ディテールも劇中の描写を忠実に再現しているのが好印象。
頭部は、真ん中のブロックに顔面パーツや側頭部、後頭部のパーツを取り付けていく構造。額のクリスタル部分は塗装済みパーツとなっています。
ボディは、中央にコクピットなどのメインとなるブロックがあり、その周囲に装甲などを組み付けていきます。組み立てやすいうえに、ご覧の通りゲート跡はほとんど見えません。この画像で言えばゲートが確認できるのは、肩アーマーの数か所のみです。
腕部は上腕と前腕を、球状に見える関節パーツで繋いでいます。白、黄色、赤の部分はパーツ分割による色分け。腕部には合わせ目処理が必要な個所はありません。
腰部周辺の色分けも、パーツ分割でほぼ再現。腰部スリット内部まで色分けされています。
脚部上部のブロックのみ左右から挟み込む部品構造になっていますが、ここは合わせ目に段落ち処理が施されています。
腰部左右のアーマーは軸接続です。
ボリューム感のある膝から下の脚部も、よいバランス。足首の形状もシンプルな面構成ですが、ガリアンはこれがいいのだと思います。
肩アーマーやバックパックの上面にはインテークの造形。飛装型の機首になるパーツの内側にも、メカディテールの入った裏打ちパーツがあります。
フード状パーツを持ち上げると、背面の装甲のディテールが確認できます。
バックパックも挟み込む構造なのですが、分割ラインの工夫で合わせ目は目立ちません。
また腰の装甲の色分けもすべてパーツ分割で再現。太ももの中には、飛装型変形時に展開するスラスターが収まっていることが確認できます。
ふくらはぎの曲面・ふくらみも、とても理想的な形。関節周りは現代風なアレンジではありますが、ガリアンらしさの範疇を越えない絶妙な形状にまとめ上げられています。
ソールには、四輪のダッシュホイールの造形も再現されています。ディテールも世界観にあっていると思います。高橋監督作品ではおなじみのローラーダッシュというアクションは、発明ですよね~。
頭部はボールジョイント接続。首の下側で前後にスイングもします。
胸部でかるく左右に傾けることも可能。スタイルと形状を崩さずに、しっかり可動部が内蔵されています。
肩アーマーは跳ね上げることが可能。ベーシックなロボットキットだと肩と二の腕の区切りにロール回転軸があるところですが、本キットではその可動がない代わりに、肘関節の上下それぞれの接続部でロール回転ができるようになっています。そこを使って、フレキシブルに可動させられるようになっています。
開脚は写真の状態まで可能。かっこよくポージングを取らせるのには十分です。
この球状の関節と、前腕の付け根は二重関節です。
片膝立ちも可能。太ももの上の部分でロール回転が可能です。
膝は二重関節。足首は引き出し式になっていて、接地性は見た目の印象以上に高いです。
市販のディスプレイ台に接続できるような軸穴は設けられておらず、ジャンプなど浮かんでいるポーズを取らせるには、キットを挟み込むタイプの台座を使用することをお勧めします。
胸部のコクピットハッチは開閉可能。中にはジョジョが座っています。
画像の平手は左右とも付属。乗降する際には、この手のひらにある操作ボタンを使用することでガリアンを地中に隠したりしていました。
さらにジョジョは、立ちポーズも付属。こちらも1/72。
手首の付け根でスナップが可能。また前腕への接続は頭を削ったボールジョイント型のポリパーツで行うので、ロールなども可能です。
差し替えはポリパーツごと行うのですが、手首とはC型のジョイントで接続されているため、根元をつまんで引き抜かないとポリパーツが前腕に残ってしまうのでご注意を。
(※塗装前に撮影した画像が破損してしまったため、塗装済みの手首を使用しています)
ガリアンソードの柄は可動パーツで、収納状態と展開状態を再現可能。
剣は専用の握り手に固定できます。手首はそれぞれ左右のものが付属しているので、左手で剣を握ることも可能です。
気になる刀身部分は通常のものと、ガリアンソードの代名詞である鞭状のものの2種類が付属。
この剣も、ロボットアニメ界の大発明!
鞭状の刀身も通常のプラ素材なので、表情をつけるにはちょっとした工夫が必要です。
今回は鍋に沸かした熱湯を用意して、その中にパーツを沈め、やわらかくなったところを曲げました。
火で直接あぶるのは危険なので、絶対にやめましょう。
肩関節は引き出し式になっているため、左手も武器握り手に交換することで疑似的にガリアンソード両手持ちの再現も可能。
腹部は、ここまで後ろに反らせることも可能。足首は軸可動の組み合わせなので、安定感があります。
それでは、飛装型への完全変形を解説していきましょう!
飛装型への変形!
頭部を回転させて後ろ向きにし、背部のフード状のパーツを起こして顔を収納します。
上腕を少し下にスライド、肘関節を腕パーツの中に収めるように前腕を押し込んで、腕部の変形は完了。説明書には手の甲が前の図になっていたので、今回はこの手首の向きで変形を進めていきます。
股関節ではなく、太ももの上の可動部から前屈させてメインスラスターを露出。
腰部サイドアーマーに格納されていた垂直尾翼を立てて、膝を逆関節に曲げます。
膝を逆関節に曲げたのに合わせて足首の角度を調整することで、見事完全変形が完了!
この独特な飛行形態もガリアンの特徴。
比較的シンプルな変形機構ですが、変形前後のスタイルと可動をここまで堅実に再現するのは意外と難しいのではないでしょうか。
各部のディテールも含めて、1/72というスケールだからこそ可能だったのかもしれません。
飛行形態ということで浮かせた状態でディスプレイしたいですよね。
1/72スケールですが中身がみっちりというわけではなく、必要最低限のパーツ数で構成されているのでキット自体は比較的軽量。そのため、このように市販の台座を使ってのディスプレイも難しくありません。
やっぱり、飛行形態は浮かせて眺めたいですね。
プラスひと手間!
さて、ここからはいつもの「プラスひと手間」なのですが、夏休み時期ということもあり、金曜日の夜から日曜日の夜までを使ったと想定してできる範囲の内容を検討した結果、パーツ分割も非常に優秀なので……こうなりました↓
全塗装!!
もはやレビュー記事じゃなくて作例じゃないかよ! と言われてしまいそうですが、これがまた2日強でできてしまったんだから、ご勘弁ください!
塗装工程をご説明しましょう。基本的にはラッカー塗料を使用しています。
関節パーツなどのグレーの部分は、クレオス黒鉄色とガイアカラーフレームメタリック2を使用。黄色い部分はガイアカラーのビビッドオレンジ。白い部分はガイアカラーEXホワイト。赤い部分はガイアカラーオキサイドレッドのサーフェイサーを下地に、モデルカステンファイアーレッドで塗装。パイプ状の部分とインテークのフチには、差し色としてクレオス水性ソードストライクブルーで部分塗装。
最後にすべてのパーツを、クレオスウェザリングカラーのグランドブラウンでウォッシング。
仕上げはつや消しで、額の宝石はガイアカラープライマリーメタリックブルー、目にはクレオスの蛍光イエローを塗装して、可動部以外で分解する必要のない部分には完成後に取り扱いやすいように接着剤を使って固定しました。
目の周りは、0.03ミリのピグマでなぞりました。
基本的に塗装はラッカーで行っているので、肩のインテークのフチなどははみ出しても水性ホビーカラー専用の溶剤でやさしく拭き取ればOK。
ウォッシングでウェザリングカラーを拭き取る度合いを変えれば、さらに発掘メカ感が出せたかもしれません。
上腕と肘のパイプも部分塗装。スミイレについて解説していないのは、スミイレをしていないからです。溝に色がはいっているのはウェザリングカラーが入りこんだままになるように拭き取ることで、スミイレ代わりになっているわけです。
あと写真の下のほうに見切れているサイドアーマーにある◎のモールドですが、おそらくこれはヒケを防止するためのディテールで、裏側には垂直尾翼の可動軸が存在します。
フードパーツの内側のメカディテールは、スミが入るととてもよいですね。バックパックのインテークフチも肩アーマーと同様に塗装。
下半身。
ファイアーレッドという塗料は消防車などに適した赤なのですが、ウェザリングカラーでウォッシングしたことで少し暗い色合いになっています。ガリアンの場合、多少雑に拭き取り残しがあっても、設定的に許容できるので、イメージに合わせてふき取り加減を調整しましょう。
汚し気味な本体に対し、ガリアンソードの刀身は、ガイアカラースターブライトシルバーで塗装しました。初期ガリアン唯一の武器なので、よく斬れる状態を維持できる素材で作られているとイメージしての配色になります。
飛装型。
素組みでも素晴らしいのですが、ガリアンの世界観を想像すると何かしらの汚しを入れてみたくなります。ドライブラシでハゲチョロ銀もありかもしれませんね。今回は、さすがに時間が足りなかったのでそこまではやれませんでしたが……。
ウェザリングした状態であおって見ると、リアルでいい雰囲気。
後ろから。
アニメなどでは手首は人型時の向きのままだったので、この写真ではそれを再現。
6発のスラスターには、きも~ちヤケ表現を入れてみました。古代発掘兵器だし、以前の文明でも活躍していたのなら、使い込まれているだろうなと想像できてしまったのです。
ダッシュホイールも、当初自動車と同じゴムのような素材かなとも思っていたのですが、替えがきかないかなと思ったのでグリップ力のある何か別の素材と想定。写真だとわかりにくいですがソール部分とホイールとでは色を変えて塗装してあります。
最後に決めポーズ。
大きさもほどよく扱いやすく、組み立ても決して難しくない。それでいて変形前後のスタイルも良好で、取らせたいポーズもおおむね可能ということで、本当によいキットだなと感じました。
今回は全塗装してしまいましたが、成型色の状態にウェザリングをするだけでも映えるキットだと思います。破損さえさせなければウェザリングに多少失敗したとて「それは、汚しです!」と言い張れる世界観だと思いますので、これを機に、プラモビギナーの方も本キットでウェザリングに挑戦してみてはいかがでしょうか。
それにしてもここまで出来がいいと、やはり重装型ガリアンの「アザルトガリアン」にも期待せざるを得ません。
アンダーゲートも採用されていましたので、ライバルのハイ・シャルタットの愛機「ウィンガル・ジー」をシルバーメッキ仕様で……、なんてのも欲しくなってきてしまいます。(あわよくばウィンガルもバリエーションでいけるのでは!?)
とにかく「機甲界ガリアン」には、作品を象徴するような機甲兵がたくさん登場するので、OVA版の「鉄の紋章」も視野に、ぜひともラインアップの充実をよろしくお願いいたします。
【商品情報】
■1/72スケール ガリアン
・発売中
・価格:6,380円(税込)
・メーカー:WAVE
「無敵超人ザンボット3」放送開始2日前生まれ。幼少期より玩具(特にロボット)を愛し、小学生からプラモを組むようになる。声優となってからもロボット玩具・プラモ好きは変わらずアキバ総研でライターデビュー。
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