「星屑テレパス」のギスギス&シリアスの正体は……!? 大熊らすこ(原作者)×かおり(アニメ版監督)×原作担当編集者スペシャル座談会【まんがタイムきらら20周年記念企画】

2023年11月9日発売の12月号で20周年を迎えた「まんがタイムきらら」(芳文社)。そんな記念すべきタイミングで、現在放送されているのがTVアニメ「星屑テレパス」だ。

今回の座談会では、「星屑テレパス」の原作者・大熊らすこ先生と編集担当・末永雅弘さん。そして、TVアニメ「星屑テレパス」を手がけるかおり監督に集まっていただき、“きららアニメ”の思い出や「星屑テレパス」の魅力について語っていただいた。


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■「まんがタイムきらら」との出会い

──今回は「まんがタイムきらら」20周年記念企画として、アニメを通じて「きらら」を語っていきたいと思います。まず、出版社である芳文社さんとしては、漫画作品が「きららアニメ」として人気を博していく様子をどのように感じていましたか?

末永 私は芳文社に入社したのが2017年なので、その歴史を中で体験している期間は全体の半分もないのですが、そういう立場から見ても、アニメという媒体の存在はすごく大きかったと思っています。まずゼロ年代は「ひだまりスケッチ」(’07年)に始まり、「けいおん!」(’09年)が放送され、2010年前半頃にはアニメ化作品がどんどん増えていきました。その頃から「きらら」ブランドが世間に認知されていったかなと思っています。やはりアニメは、全国の幅広い層に届くというのが大きいですね。

──「まんがタイムきらら」関連作品で、共通して大事にしていることはあるのでしょうか?

末永 スローガンとして「ドキドキ☆ビジュアル」という言葉を掲げていまして、読者の方に、女の子たちのかわいさや魅力でドキドキしてもらうことを大事にしています。これは多様な作品がある「きらら」の中で、唯一共通している部分と言ってよいと思っています。

──多様な作品という言葉が出てきましたが、実際「きらら」作品にはかなり振れ幅がありますよね。

末永 そうですね。漫画家さんの個性や、漫画家さんそれぞれが持っている“きらら観”みたいなものは違うので、そういうところによって、幅広くなっているのかと思います。

──大熊先生は「ひだまりスケッチ」がきっかけで、「まんがタイムきらら」を知ったんですよね。

大熊 「ひだまりスケッチ」が、「まんがタイムきらら」さんと出会うきっかけになった漫画であることは間違いないです。「ひだまりスケッチ」のイラストを見た時に「すごくかわいい!」と一目惚れをして、このかわいいイラストは何という漫画のものなんだろうと調べ、実際に漫画を購入させていただきハマった、という経緯があります。

「ひだまりスケッチ」蒼樹うめ


もともとはゲームのアンソロジー4コマ漫画が好きで、子供の頃からお小遣いで買っては読んでいたんです。ただ内容的にギャグが強めなこともあって、「まんがタイムきらら」さんとは違うテイストのものが多かったんです。だから「ひだまりスケッチ」を読んだ時は衝撃的でしたね。4コマ漫画としての自由度もさることながら、キャラクターたちが本当にそこで自由に生活をしている実感があったんです。物語の随所でほろ苦さとか温かさが感じられて、素敵な4コマ漫画体験ができたのですが、漫画を本格的に描いたのは、少し先の話です。

──きらら編集部に持ち込みをされたと聞いております。

大熊 はい、4コマ漫画を描いて持ち込みました。描き始めた時は、4コマ漫画は1回が8ページだからすぐ描き終わるかな、などと甘いことを思っていましたがそんなことはありませんでした。

かおり 基本的にページ数が少ないですもんね。

──実際、「きらら」の4コマ漫画を読んでいると、1ページあたりの情報の密度が高いというか、ものすごくボリューミーだと感じています。何ページにもわたって描けるような内容でも、たった4コマで表現してしまうわけですからね。大ゴマがあるわけでもないので、むしろ情報を詰め込むのは普通の漫画よりも大変なんじゃないかと思うくらいです。

大熊 そうなんですよ! 見た目よりも、ものすごくボリューミーなんです。4コマ1本でオチがひとつ消化されてしまうので、ものすごくハイスピードにいろんなネタを出さなければいけないんです。これが大変で、それこそが4コマ漫画作家のすごさなんだと思います。恥ずかしながら連載して初めて気づきました。

──ちなみに「ひだまりスケッチ」の素晴らしさはどんなところにあると思っていたのですか?

大熊 先程、漫画で衝撃を受けた部分をお話したのでアニメの話をすると、アニメの「ひだまりスケッチ」は、原作の4コマ漫画を、しっかり映像にしているなというイメージがありました。私は漫画から入って、「何でアニメを見てないの?」と友達に言われて、それからアニメを全部観ました。最初は、アニメだとこの漫画はどういう感じに表現されるんだろうと思って見ていたんです。

そうしたら、4コマ漫画みたいな感じで、トントントンと心地よく展開しているのにぶつ切りではなく、ちゃんとドラマの連続性が感じられる。テンポもいいんですけど、その奥に、ちゃんとキャラクターたちの人間性や生活感が描かれていて、すごく広がりを感じたんです。

それは、アニメーションに落とし込む時のセリフや画面のテンポ感の調整、あとは主題歌がすごく穏やかなところなどが影響していたと思うんです。BGMもすごく利いていましたね。いい意味で気にならない、自然とスッと心に入ってくるようなBGMだったので、アニメのすべての要素を使って、キャラクターたちの日常を表現していたのかなと思っています。アニメ版は、そういう魅力があると思いました。

──そういう意味では「星屑テレパス」も、まさにそういう作品になっていると思います。かおり監督は、きらら作品では「ゆゆ式」(’13年)で監督をされていました。改めてアニメ現場から見て、きらら作品にどのような印象を持たれていますか?

かおり やっぱり「けいおん!」が爆発的にヒットしたことで「まんがタイムきらら」という雑誌が認知されたのかなって思っています。私も「ゆゆ式」に携わる過程で、(「きらら」のことを)少しずつ知っていった感じなんですが、きらら系と言っても、「まんがタイムきらら」だけでなく、「MAX」,「キャラット」、「フォワード」といろんな派生雑誌があって、いっぱいかわいい作品があり、それらがアニメになっているんですよね。

「ゆゆ式」三上小又


私はもともと植田まさしさんの漫画が載っている「まんがタイム」を、スタジオの先輩の影響で毎週読んでいたんです。その後「けいおん!」がヒットして、「こんなかわいい女の子しか載っていない雑誌があるんだ!」と驚いていたくらいなので、まさか自分にきららアニメの仕事が回ってくるとは、露ほども思っていなかったんです。だから私に「ゆゆ式」と「星屑テレパス」の仕事が舞い込んできたのは、昔「まんがタイム」を読んでいたご縁なのかなと勝手に思っていました(笑)。

──監督としては、たとえば原作の別エピソードの間を繋げるオリジナル部分を考えねばならないなど、4コマ漫画をTVアニメにする苦労もあったのではないでしょうか。

かおり そうですね。4コマ漫画って起承転結が連続してあるから、それを「オチはこれです!」「オチはこれです!」ってアニメでもやってしまったら、見る側としては疲れちゃうと思うんです。だから「ゆゆ式」の時もオチをオチとして使わないで、次の4コマエピソードに移行する、みたいな苦労をすごくしたし、12本のストーリーにどうやって落とし込むのかということを考えていました。その経験があったので、今回の「星屑テレパス」ではそこまで悩むということはありませんでした。それよりも、むしろロケットの表現をどうするかのほうが大変でした。それとアニメにする難しさで言うと、ギャグもあるけど、エモーショナルな雰囲気というのは失いたくないので、それをどう両立させるかというところに毎回苦心しています。


■こだわりのグラデーション表現

──きららアニメで、印象に残っている作品をそれぞれ教えていただけますか?

末永 私が初めて見た「きららアニメ」は「けいおん!」なので、当然その思い入れはあるのですが、内容的なところだと「ハナヤマタ」(’14年)でしょうか。華やかな衣装を着たかわいい女の子たちがよさこいをがんばる作品で、美しい映像のアニメになっていましたね。もちろんそれだけでなく、女の子たちの葛藤や衝突、さらには挫折までもが描かれていて、青春の濃さみたいなものを非常に力強く感じられたので、印象に残っています。

「ハナヤマタ」浜弓場双


大熊 「ひだまりスケッチ」以外だと、「ゆるキャン△」(’18年)です。好きな方はたくさんいると思うので、私が言うまでもない気がするんですけど、個人的にはキャラクターたちがアプリでメッセージをやり取りしているところを見て、「友達だ!!」って思ったんです(笑)。私が友達とやり取りするときと同じテンション感だ!みたいな。自分の生活の中にキャラクターたちのやり取りがスッとなじんできたので、これこそ日常だよなってある意味衝撃を受けました。距離感の描き方が素晴らしいアニメだと思います。あとは劇伴も、食べ物の描写も、全部がよかったです。

「ゆるキャン△」あfろ


かおり 自分はやっぱり「けいおん!」かなぁ。20周年だと私の業界歴のほうが長くなっちゃうので、若い頃にこれを見ていました!みたいなのは全然ないんです。だから業界に入ってから触れた作品になってしまうんですけど、その中でもやっぱり「けいおん!」はすごいなと思いました。

制作は京都アニメーションだったんですけど、同じ業界人、いちアニメーターとして見ると、才能がものすごいんです。すごくぬるぬると動いていたじゃないですか。全部2コマ打ちなのでは!?というところに感動してしまいましたし、日常モノでこんなにやっていいんだ!という驚きや衝撃がありましたね。

内容はふわふわしていて、話が進まないなぁ、なんて思っていたんですけど、それも作画力やレイアウト力、構成で観せるところもものすごいと思いながら見ていました。「ゆゆ式」をやると決まったときは、映画「けいおん!」(’11年)のBlu-ray特典の絵コンテ集を、ものすごくチェックしてました。

「けいおん!」かきふらい


──そしてアニメ「星屑テレパス」ですが、原作サイドから見ていかがですか? すでに先のほうまでご覧になっているのではないかと思うのですが……。

かおり それが、大熊先生は先に完成した映像を観ていなかったんですよ!(笑)映像チェックをされているのかと思っていたら、末永さんがチェックをされていたんです。

大熊 そうなんです。私も視聴者の皆さんと一緒にアニメを見ようと思って、先に観ないようにしていたんです。

かおり 私も、それを最近知りました。

大熊 すみません……データはいただいていて「あとで観ても大丈夫ですか?」と末永さんに聞いたら、大丈夫だと言ってくださったので(笑)。

かおり 気持ちはわかります(笑)。アフレコにも立ち会われていたのですが、その時はコンテ撮だったので、そこからどう完成していくのかは、確かに楽しみですよね。

大熊 で、でも実はいくつかチェックしていたシーンもあるんです! あの……めっちゃいいですっ! めっちゃいいんです! 気になるところだけを観てニヤニヤして「うおー!!」ってなって、これ以上はやめとこうって感じで映像を止めてました。

──大熊先生もアニメスタッフを信頼して、絶対にいいものになる確信があったということですね。

大熊 そうですそうです!! 脚本会議から絵コンテ、声優さんのアフレコまでは見ているので、これはもう間違いないだろうって思っていました。

かおり ありがとうございます(笑)。

──アニメになる際に追加される要素・エピソードもあるかと思うのですが、それについてはどうでしたか?

大熊 最高です! 語彙がすいません……。好きなシーンを聞かれたときに言おうと思っていたのですが、アニメオリジナルのシーンがすごくいいなって思っていました。第2話のユウと鏡(紗也)さんがベランダで日向ぼっこしているシーンや、海果たちがペットボトルロケットを持って灯台へ向かうシーンなど、アニオリで入れていただいたシーンが本当によかったです! アニメとして見やすくなっているなって感じました。

──原作コミックとアニメは幸せな関係性になっていますね。

かおり それは本当にそうです。本読み(脚本会議)もすごく楽しかったですね。負担になっていないかな?と思いながらも、遠慮していたらダメだと思って先生と末永さんには「ここはどうなっているんですか?」と、いろいろ質問させていただいたんですが、かなり早く返事を戻してくれるから「ありがてー!」って思っていました。末永さんもイヤがらずに先生に繋いでくださったし、調べてくださったりもしたんです。サブタイトルの宇宙語を考えていただいたりもしたので、本当に感謝しています。ありがとうございます。

末永 いえいえ。原作を大切にしていただいているからこそ、いろいろ質問をしてくださると思っています。そういう風に作っていただけることは原作側としてはありがたいことなので、こちらこそありがとうございます!と言いたいです。

かおり アニオリの話ですと、第1話のユウの早着替えは、末永さんがめっちゃ入れたいと言っていたことを思い出しました(笑)。

末永 まだ「星屑テレパス」が単行本も出ていない、アニメ化の話も来ていない頃に、大熊先生に「星屑テレパス」がアニメ化したらこういう場面が見たい!、という妄想をお話ししたことがあるんです。

大熊 長文メールで書いてありましたね(笑)。

かおり 宇宙人だから着替えは早いので、着替えシーンを見たい!みたいなことでしたよね? その気持ちに応えて、海果のおへそは出そう!と思いました。

末永 ありがとうございます。着替えシーン以外だと、大熊先生はキャラの瞳を本当にきれいに描かれるんです。アニメでも、そこは変わらずキラキラと輝いていることに感動しました。海果は泣き虫な子という側面もあるんですけど、アニメの泣き顔もきれいだなぁって思っていました。

かおり 作品の空気感みたいなものは最初からこだわっていて、こうしたい!というものが私の中にあったんです。そこを撮影監督さんとか美術さん、色彩設計さんといったメインスタッフの方たちに「お願いします! こういう空気感を出したいんです!」と、いっぱい話をさせていただきました。それがばっちりハマったと思っているので、そこは自分でも「やった!!」と思っているところです。

末永 素晴らしいです。

大熊 本当に、ありがとうございます。

かおり このあと、まだまだ加速度的に美しくなっていきますよ。先生の美しいカラーページをどうやって再現しよう!って思いながら、みんなで原作とにらめっこをしつつ作っていたので、もう私の原作コミックスはぼろぼろなんです(苦笑)。

末永 でしたら、新しいものをお送りしますので!

──髪の毛のグラデーションまで、本当にきれいに再現・表現されています。

かおり そこはキャラクターデザイン・酒井孝裕さんと「どうしたらいいんだろう」って一緒に考えて突き詰めていきましたし、撮影監督・千葉大輔さんや色彩設計の歌川さんとも、「どうしたらああなるんだろう」っていう話をしていました。よくあるグラデ表現を応用する形になっているんですけど、それをきれいに出す色をブレンドするのは色彩と撮影の力なんです。ただ、そうやって髪色を設定してアニメとして教室に入れてみたら、クラスの中で海果が派手になってしまったんです。そこで全体でバランスを取るために、隣の列の子を青い髪にしたりしています。

大熊 あれは、そういうことだったんですね!! 初めて知りました。

かおり 茶色と黒の髪色だけだと海果が浮いてしまうから、緑系の髪色の子を入れてみたりとか、そういうバランスは取っています。

大熊 なるほど~! すごく勉強になります! 

末永 クラスメイトの髪色設定も全部監修させていただいているんですけど、そういう意図があったとは知りませんでした。

かおり 原作でカラーがないキャラクターの髪の色はどうなっているんですか?とうかがったら、特に決まっていなかったんです。そこで「それはこちらで決めても大丈夫ですか?」というやり取りをした記憶はするので、私も意図までは伝えていなかったと思います。そこで決めてもいいというお返事をいただけたので、色彩設計のスタッフと、「こういう色はありなんじゃないか」など話をしながら作らせていただきました。

大熊 何だか、そういう仕事をまとめた資料集が欲しくなってきました!

■キャラクターの真剣な思いを、やわらかい表現で包み込む

──かおり監督は、アニメ「星屑テレパス」視聴者に、どんなことが伝えたいと思われていますか?

かおり 「きらら」にあるまじきシリアスと一部で言われているのは私も知っていますけど、「そうじゃないよ」ってずっと思っているんです。これは小ノ星海果たちの成長物語であり、人と関わらないで生きていける人なんていないのだから逃げちゃダメだよっていうメッセージを、私は勝手に「星屑テレパス」から受け取っているんです。人とぶつかっていく過程をシリアスと言われてしまうと、「みんなも実際やっていることなんだけどなぁ」って。アニメでそんなところを見たくないと思われてしまったらそれまでなんですけど、10代の子には人とぶつかって成長してほしいという気持ちもあるので、アニメを見てそういう思いを感じてもらえたら嬉しいなと本当に思っています。

私自身がコミュ障だったから、人と関わることからすぐに逃げたくなっちゃうんです。でも、それだとその先しんどいよっていうのを、この作品で気づいてもらえたらいいなと思っています。

ただシリアスって、やろうと思えばいくらでもシリアスにできるんです。でもそれだとツラくなってしまうんですよね。だからそこはかわいい、きれい、エモい、みたいな、ふわっとしたやわらかいもので包むことによって「心が痛くて、もう見たくない」という感じにならないように気をつけています。大熊先生の原作は、“おでこぱしー”の大発明もあってユウも距離が近いですし、みんなでキャッキャと楽しそうにしているシーンのほうが多いので、そこをふくらませていけば、そういうメッセージを挟みながら、従来の「きららアニメ」としても見られるものになるのかなと思って、作っています。

大熊 私もギスギス&シリアスと言われていることは知っているんですけど、キャラクターが真剣なことを、そうとらえられてしまうことは仕方ないのかなと思っています。でも、これはキャラクターが真剣だからこそ発生していることなので、という気持ちで描いています。

アニメになることで、ツラい部分がダイレクトに、感覚的に伝わってしまうことは間違いないと思うので、末永さんに「アニメのお話をいただきました」と聞いたときは「こんな、ほの暗い話、大丈夫なんですか?」と確認したくらいなんです(笑)。

でもそのあたりもかおり監督がすごくうまくコントロールしてくださっているし、1話の中でどのくらいをまとめるのかという構成も(高橋)ナツコさんとご一緒にしっかりとしてくれているので、アニメとしてすごく見やすくなっていると思います。だからそんなに身構えずに見ていただけると嬉しいです。

──確かに瞬みたいなズバッと言うキャラクターは、きらら作品では稀有かもしれないですね。

かおり ジャックナイフみたいな、切れるぜ!みたいなキャラだから、そういうのは確かにいなかったかもしれませんね。

──ちなみに、この作品は宇宙やロケットが題材になっていますが、先生はもともとそういうものがお好きだったのですか?

大熊 もともと詳しかったわけではなく、普通の人と同じくらいの知識でした。「星屑テレパス」も宇宙が好きだから宇宙の漫画を書こう!と思って始めたわけではなく、5案くらい候補を出した中で、その中のひとつにあった宇宙のネタがいいんじゃないと言われて、そこから勉強し始めたほどです。どちらかと言えば理系でもないですし。自分が素人であることは重々承知しているので、モデルロケットについても専門知識をお持ちの方に取材させていただいたりしています。そういった意味では、モデルロケットに詳しい方に観ていただいても大丈夫な内容にはなっていると思います。

──個人的にはニッチな題材をついてくるアニメには、いい作品が多いと思っています。あまり知らない世界だから興味が湧くし、部活動のようにみんなが協力してがんばっていく青春感も描ける。そういう意味で、モデルロケットはすごくいい題材だと思いました。

末永 そこに関しては、本当に大熊先生の取材と勉強の賜物です。

大熊 ロケットというとペットボトルロケットか、巨大なロケットに目が行きがちですが、その中間というか、手頃でありながら本格的に作れるモデルロケットも実は存在しているんです。でも日本だとまだそこまで認知されてない感じもするので、そこも知っていただけると嬉しいです。

かおり 私も、この作品で初めて知りました。

「ぼっち・ざ・ろっく!」はまじあき


──単行本のあとがきに、いつも感謝の言葉をつづられていますよね。大会も見てみたくなるし、すごくワクワクする題材だと思いました。では最後に「まんがタイムきらら」が、20年間愛され続けている理由をうかがいたいと思います。

末永 「ひだまりスケッチ」に始まり、最近では「ぼっち・ざ・ろっく!」。そして今回の「星屑テレパス」など、その時代ごとに多くの人に愛される作品を世に送り出すことができているからなのかなと思っています。そうなることで、各年代の視聴者にとって「自分の世代のきららアニメと言えばこれだ!」となる。そういう作品が出続けていることが、非常に大きいと思っています。

かおり やっぱりかわいいは正義なのかなぁ。それにつきますね。癒やしを常に提供してくれるから、20年という長い期間続いているのかなって思います。

大熊 視聴者の生活の中に入り込みやすいから、ですかね。さきほど「ゆるキャン△」でお伝えしたことと重なるんですけど、それまでの自分の経験や、今自分がほしいと思っていることと、アニメの中のキャラクターたちの言動がリンクする瞬間がよくあるんです。それが自然と起こりやすいからこそ、きらら作品が愛されているのかなって思っています。

──ありがとうございました!


(取材・文/塚越淳一)

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