【本日発売!】「S.H.Figuarts スーパーサイヤ人孫悟空-伝説のスーパーサイヤ人-」発売記念、開発者インタビュー! 造形と可動を極めた「伝説のスーパーサイヤ人」の魅力とは?

BANDAI SPIRITSのアクションフィギュアブランド「SH.Figuarts」シリーズにて、「スーパーサイヤ人孫悟空-伝説のスーパーサイヤ人-」が発売された。

2009年のブランド立ち上げ以来、国内外問わずさまざまなキャラクターを意欲的にアクションフィギュア化している「S.H.Figuarts」シリーズ。なかでも2009年11月発売の「ピッコロ」よりスタートした「S.H.Figuarts ドラゴンボール」シリーズは、日本国内のみならず海外でも高い人気を誇る屈指のロングシリーズとなっている。

常に新たな技術やギミックを採り入れることで進化してきた「S.H.Figuarts」シリーズだが、そもそもアクションフィギュアの進化はひと目ではわかりにくいもの。見た目で判断できる造形面はともかく、可動ギミックに関しては「可動域を広げつつ、関節パーツは極力目立たないようにする」という折衷案を模索するため、最適な可動ギミックの導入と、造形やキャラクターに応じたバランス取りが重要になる。特に劇中ポーズの再現やパワフルなポージングが不可欠な「S.H.Figuarts ドラゴンボール」シリーズは、スタッフの作品世界への理解度が試される難易度の高いアイテムと言えるだろう。

そんな同シリーズに、道着が破れ上半身があらわになった「スーパーサイヤ人孫悟空」が、ついに参戦決定した!

そこで今回はBANDAI SPIRITSコレクターズ事業部の企画担当・MOTTO!OKAMOTO氏を迎え、本アイテム制作への経緯や意気込みをうかがった。

――今回の悟空は『ドラゴンボール』ファンなら全員欲しくなる、対フリーザ戦での姿ですね。

OKAMOTO 対フリーザ戦のクライマックス、「クリリンのことかー!!!!!」のときの悟空のイメージですね。S.H.Figuartsの悟空は過去にもさまざまなバリエーションがあるのですが、この姿の悟空は初立体化で、しかも僕が一から悟空を作ったのは、実はこれが初めてなんです。だから「これで何回目の立体化だな」という感覚はなくて、「今この姿を立体化するなら、どこまで作り込めるだろう?」ということしか考えませんでした。

――今回この悟空を選んだ理由は?

OKAMOTO フリーザ編のアイテムをリリースしていく中で、「最新の可動ギミックで進化した悟空を出すなら、この姿を再現したかった」ということです。フリーザ編の「スーパーサイヤ人悟空」のアイテムとしても、2016年発売の「S.H.Figuarts スーパーサイヤ人孫悟空 超戦士覚醒Ver.」で止まっていた状況でしたし、やっぱり自分も欲しいと思えるような悟空を新たにラインアップに加えたかった。この商品の企画自体は僕の前任者の頃から考えると3~4年前から動いていたので、本当に満を持しての立体化になりました。

――この姿を立体化する上で、一番留意した部分は?

OKAMOTO やっぱり、造形と可動の両立が一番大きいですね。試作品を作る作業では、基本的にはまず原型師さんに無可動のキャラクターを作っていただいて、そこに通常の関節ギミックを当てはめて後から調整していくことが多いんですけど、今回の悟空は初期段階から必要な可動を考えて、そのためのギミックを組み込んで可動を確認しつつ作りました。無可動の試作品がすごくカッコよく仕上がっても、いざ可動を組み込んだら関節部の隙間が目立ち過ぎたり、思うように可動できないということもあるので、今回はそういうズレが起きないよう慎重に進めました。まあ僕は「ここはこうして欲しい」とお願いするだけで、本当に原型師さんのおかげですけど(笑)。

――アクションフィギュアにとって「肩関節の可動域と見た目の処理」は、永遠の課題かも知れませんね。

OKAMOTO そうですね。可動域を確保しつつ、関節をどう目立たないようにするかという部分は、常に正解のないせめぎ合いだと思います。「S.H.Figuarts ドラゴンボール」シリーズでは、かめはめ波のポーズをよりカッコよく再現するという点に重きを置いて展開してきました。その意味では肩の可動構造に関しては、今できる限界ギリギリまで攻めていると思います。

――肩周りの可動は、具体的にはどう変化したのですか?

OKAMOTO 「スーパーサイヤ人4」と比べると、胸部内に可動箇所を増やすことで、左右の肩をそれぞれ上方へ動かすことができるようになりました。可動域自体が極端に広がったわけではないのですが、左右の肩が独立して上げられるようになったことで、ポージング時のニュアンスの幅はかなり広がったと思います。

――腕も、かなり前へ突き出せるようにもなっていますね。

OKAMOTO 今回より手首をよりしっかりと重ね合わせた、力感あふれるポーズが再現できるようになっています。悟空のフィギュアとしてはある意味最重要ポイントだと思うので、ここにはこだわりました。ちなみにリストバンドは、これ以前は上腕側に一体化されていましたが、今回は独立した別パーツにしました。これによって手首部分のジョイントを隠せるようになっただけでなく、かめはめ波を打つポージング時の手首のひねりも表現しやすくなっています。

――そのほか、パッと見では気付かないような試みも多そうですね。

OKAMOTO そうですね。たとえば腰周りの部分……道着のヒモとその上の破れた道着、そして下のパンツ部分に、今回初めて軟質パーツを採用しています。これで少し可動させやすくなったので股関節のほうにもちょっと手を加えていて、足の付け根部分も軸可動からボールジョイントに変更しました。これによって微妙ではありますが、両足を少し内側へクロスしたポージングが可能になり、歩くポーズも含めてより自然な立ち姿が再現できるようになりました。この辺りは「大幅な可動域拡大」というよりは「少しニュアンスが変わります」くらいの部妙な変化ではあるのですが、やっぱり「ドラゴンボール」のイラストっぽさを可能な限り再現したいというのがあるんですよね。たとえば大股開きをしたときに気になるので、股関節が露出する部分に道着のシワのディテールを加えたり、そういう細かい部分には気を遣っています。

――そのほか、可動でこだわった部分は?

OKAMOTO 肘と膝は曲がるだけで、あえて軸回転させないようにしています。肘や膝は軸回転可能にしたほうがポージングはある意味楽になりますが、人体の構造的には回転しない部分なので、個人的に「ドラゴンボール」のキャラクターではやらないことにしました。

――造形面では、道着の破れ具合もイメージそのままですね。

OKAMOTO 道着のディテールも今回ていねいにトレースしているんですけど、そのいっぽうで可動域も追求したいので、膝裏の可動を妨げないように一部ディテールを調整したり、出力品を見ながら最適解を検討しました。求める可動域と見た目のバランスを考えつつ、何度もやり直しています。

――手首などの差し替えパーツも豪華ですが、特に髪形の再現が素晴らしいですね。

OKAMOTO やっぱり「クリリンのことかー!!!!!」は絶対再現したかったので(笑)、前髪は通常のものとは別に逆立っているものも用意しました。また前髪とは別に髪全体のパーツも2種から選んで装着できますし、表情違いの顔パーツも3種用意しているので、シチュエーションに応じて多彩な姿を再現できると思います。また顔パーツに関しても、当時の鳥山明先生のタッチにこだわってかなり修正を入れています。

――現状ではこれがベストという形になっている?

OKAMOTO S.H.Figuartsの約1/12サイズというスケール感で考えると、現状これが最善だと思っています。

――ある意味本命アイテムというわけですね。

OKAMOTO 「S.H.Figuartsドラゴンボール」シリーズは本当に長年続いていますが、今回の悟空のように「まだ商品化されていなかったのか……」というキャラや衣装違いなどのバリエーションが、まだけっこう残っています。ちなみにここ3~4年はずっとフリーザ編のキャラクターを立体化していたのですが、とにかく作品人気が高いこともあって、メイン級のキャラだけでなくフリーザの各種形態やザーボンやドドリアまで商品化することができました。しかもこれらのマニアックなキャラたちも想定以上に好評で、本当にありがたいことだと思います。今後は要望の多いキャラやそのバリエーションはもちろん、立体化にあまり恵まれていないキャラもさらに突き詰めて行きたいなと思っています。

――今後のラインアップも楽しみですね。

OKAMOTO セル編もじょじょに進めて行きたいのですが、フリーザ編もまだまだ深堀りできますし……アプール、変身後のザーボンなんかも今ならいけるんじゃないかと(笑)。その辺のフィギュア化がまれなキャラにも、どんどん挑戦したいですね。まずは今回、渾身の悟空が作れたと思っているので、お手に取っていただけたら嬉しいです。どのアイテムも「渾身のS.H.Figuarts化だ!」という覚悟で挑んでいますので、今後のラインアップにもぜひご期待ください!

(取材・構成:徳重耕一郎)

【商品情報】

■S.H.Figuarts スーパーサイヤ人孫悟空-伝説のスーパーサイヤ人-

・価格:7,150円(税込)

・発売日:2023年11月23日

・発売元:BANDAI SPIRITS

(C)バードスタジオ/集英社・東映アニメーション

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