【2024】読んで後悔させない泣けるBL漫画10選! 外せない王道から今年出た変わり種まで
今やBLは非常に人気の高いジャンルのひとつ。広告などでついつい気になり読んだ経験がある人もいるだろう。
ここでは、BL初心者の方をもっと深淵に引きずり込めるような泣ける作品を厳選。甘酸っぱい胸キュン作品から、数日引きずるほど魂を揺さぶる作品までジャンルレスにピックアップした。もちろん、長年BLをたしなんできた方にも楽しんでいただけるよう、意外性抜群の新刊も取り揃えた。
とにかく感情をぐちゃぐちゃにされたいんだ……!という方はぜひ最後まで読んでみてほしい。
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泣けるBL漫画
親愛なるジーンへ著:吾妻香夜/心交社/全2巻
舞台は1973年のニューヨーク。ある日弁護士のトレヴァーは重要な書類を紛失してしまう。雪が降る夜、それを届けてくれたのは清掃員していた元アーミッシュの青年ジーンだった。トレヴァーはお礼も兼ねて職を失っていたジーンに、ハウスキーパーをしないかと持ちかけ、2人の同居生活がはじまる。
トレヴァーは、自身がゲイである苦悩で、ジーンは、愛する故郷を捨てたことへの罪悪感で、心やさしい性格だからこそ自分を責め続ける2人。お互いがお互いの救いとなり惹かれ合う過程がとても美しくていねいに描かれている。しかし、それ以上に胸を打たれるのは、2人の恋愛が成就した後だ。知的好奇心が旺盛で聡明なジーンと、そんなジーンを大切に想うトレヴァー。彼らの人生の選択は、あなたの恋愛観をきっと大きく変えてくれるだろう。 また、同著者の「ラムスプリンガの情景」も同じ設定を引き継いだ作品で、本作に出た主人公たちも登場している。ぜひセットで読むことをおすすめしたい。
インターネット・ラヴ!著:売野機子/祥伝社/全1巻
ネイリストの天馬は、たまたまインスタで見つけた韓国人の一般人ウノくんを5年間もネットストーキングしている。SNS中毒のウノくんは、新しいものが大好きで、食いしん坊で、動物を大切に飼っているやさしい男の子。ウノくんを手の届かないアイドル的存在として眺めていた天馬だが、ある出来事がきっかけで日常に変化が?。
「MAMA」や「君に会いたい」でお馴染みの売野機子さんの初BL作品として、単行本発売前から話題になった本作。主人公の天馬は、長い間ネトストしていることを周囲の女性たちにやや引かれている。しかもバイセクシャルなので彼女がいる。こんな味方0人の状況から物語は始まるのに、読者は天馬にとても共感し応援してしまう。ゲイではなくバイセクシャルだからこそ抱える悩み。息子のセクシュアリティを理解しようと寄り添うけど、やや不自然になってしまうやさしい両親。なんとも言葉にできない生きづらさも解像度高く描かれている。
そんな天馬の日常に、胸キュン展開が猛スピードで突撃してくるのがかなり爽快だ。ウノくんからのメッセージに、ガッツポーズしたり、胸を締め付けられたり、一緒に一喜一憂してほしい。
STAYGOLD著:秀良子/祥伝社/全6巻、続編刊行中
両親不在、血は繋がっていたり、いなかったり。ちょっと複雑なお家事情の中山家は、叔父兄弟と甥、姪の4人で暮らしている。いびつながらも「家族」として、何とかうまくやってきたが、ある日、駿人(甥っ子)が優士(叔父)に好きと告げ、キスをすることに。13歳の青く、まっすぐな恋心は、大人と子どもの境目で、ついに暴走をはじめる。
日頃BLを頻繁に読んでいない人からも支持を得ている作品。メインキャラクター駿人(甥っ子)×優士(叔父)のストーリーも言わずもがなすばらしいが、ここでは、この複雑な家族の一員であるコウ(叔父の弟)の話に焦点を当てたい。プレイボーイなコウには日高という親友がいる。しかし日高はゲイでコウに10年間も片想いをしていた。心理描写の鬼才、秀良子さんの手にかかればこの王道の設定も、BL史に残る大失恋と評されるほどの傑作になる。言いたいことはひとつ、とにかく読んでほしい。
好きの種類が異なる時、両者とも納得できる関係性とはいったいどんなものなのか。まだこの2人の物語は完結していないので「STAYGOLD」の4巻で干からびるまで泣いた後、「STAYGOLD それから。」 もあわせて読んでほしい。
朝と昼と夜とそれから著:夏井数/株式会社ふゅーじょんぷろだくと/全1巻
20歳の大学生・西田章吾は、真面目で不愛想な後輩の河原悠人に片思いをしている。恋に胸をときめかせる順風満帆な学生生活を送っていたが……、ある朝、目を覚ますとそこは10年後の世界で、その片想いの相手と一緒に暮らしていた。
同じ時間を生きられないカップルのストーリー。あることがきっかけで、いっぽうは6年付き合っている感覚、もういっぽうは付き合い立てホヤホヤの感覚のまま、ともに生活している。この時間間隔と感情のズレがのたうち回るほど切ない。だが、それが彼らの当たり前の日常なのだ。しかし当たり前だからといって、彼らがその特殊な状況を完全に受け入れられたわけではない。確実に身も心も消耗していることが、言葉のない静かなシーンから痛いほど伝わる。愛を積み重ねるとはどういうことなのか、過ごした時間なのか、想いの強さなのか。淡々と読者に問うてくる作品だ。
同級生著:中村明日美子/茜新社/全9巻、スピンオフ刊行中
合唱祭前の音楽の授業中、メガネの優等生・佐条利人が歌っていないことに気付いた同級生の草壁 光。草壁はその様子を「お歌なんかくだらないってか?」と思っていたが、ある日の放課後、誰もいない教室でひとりこっそり歌の練習をする佐条のうしろ姿を見て思わず声をかける。高校生のピュア・ラブストーリーの傑作。
劇場アニメ化もされた大人気シリーズ。中村明日美子さんの代表作として本作をあげる人も少なくないだろう。学園恋愛モノというきわめてシンプルな題材にもかかわらず、唯一無二の純愛作品として圧倒的存在感を放ち続けている。BLの教科書といっても過言ではないほど読んでいる人が多い。また2006年に1巻目となる「同級生」が発表されて以来、現在もスピンオフのシリーズが連載中というのだから驚きだ。絵画のように美しい絵柄が、常軌を逸したレベルの心理描写と相まって、読むたびに心を奪われてしまう。とにかく幸せな涙を流したい人におすすめのレジェンド作品だ。
金持ち君と貧乏君著:秀良子/一迅社/全1巻
お金持ちで生徒会長の明治君はことあるごとに、とっても貧乏な三崎君につっかかる。そのたびにフワリとかわされるそんな毎日を過ごしていた。でもある日、三崎君のお母さんが倒れてしまう。三崎君は学校をやめて働こうとするのだが、そこに明治君のお祖父様がまさかの愛人契約を持ちだして……?
タイトルだけ見ると、生まれ育った環境が正反対の2人がすれ違いながらも、楽しく学園生活を送る青春BLに見えなくもないが、あなどることなかれ、ストーリーの主軸はまったく別のところにある。意外な展開に驚いていたらいつのまにか泣いていた……なんてことがあるかもしれない。また、子ども同士の恋愛にお祖父様が参戦するというかなり斬新な三角関係も面白い。現実世界だと厄介だが、この作品だとなくてはならないスパイスになっている。読後感も爽快だからなんとも不思議だ。
僕らには僕らの言葉がある著:詠里/KADOKAWA/全1巻
ろう者のピッチャー・相澤真白と聴者のキャッチャー・野中宏晃。音のない世界と音のある世界を超えてお互いに近づいてゆく男子高校生バッテリーの青春ストーリー! 高校の入学式で壇上から手話で挨拶する真白。野中は、野球だけが目当ての自分には関係ないと聞き流していた。だが放課後、真白は野球部にピッチャー希望の新入生として、野中の前に再び現れたのだった。
読者は耳の聞こえない主人公・真白の視点を通して、聴覚障碍者への容赦ない偏見を目の当たりにするだろう。しかし同時に、ろう者だろうが聴者だろうが関係なく、知らないということが偏見を生み出すのだと本作は教えてくれる。軟式野球経験者から野中(硬式野球経験者)への偏見、少年野球チームの保護者たちから向けられる野中母(シングルマザー)への偏見など、そこかしこに偏見はある。だからこそ、それを乗り越えた時に心は大きく揺さぶられるのだ。
真白と野中がキャッチボールをした際、野中はたった1球ボールを受けただけで、真白がどれほど野球に情熱を注いできたのかを、バッグボーンごと瞬時に理解する。タイトルの意味が気持ちよく読者に突き刺さる瞬間だ。BL好きだけではなくすべての人にぜひ読んでほしい。
ハッピー・オブ・ジ・エンド著:おげれつたなか/竹書房/全3巻
「おめでとう、生きてる」昼下がりのゴミ捨て場、見覚えのある男の声で目が覚めた。 ヒモをクビになった千紘は新しい家主を探しに訪れたバーでド好みの男・ケイトに目を奪われ声をかける。まさかのホテルに誘われ、いい雰囲気になったところを突然ボコボコに殴られた! そんな衝撃の出会いから物語がはじまる。謎めいたどイケ傷害男×人生底辺ヒモカス男。こんなクソみたいな人生に救いはあるのか?
ギャグ漫画にも定評がある人気漫画家、おげれつたなかさんが放つ衝撃のダークラブストーリー。生まれ育った境遇は違えど、誰にも愛されてこなかった2人。とくにケイトの過去は想像を絶するもので目も当てられない。だからこそ、2人の平凡な日常が、慈しみ合う姿が、あまりにもまぶしく映る。しかし悪意を持つ人間の存在も常にチラつき、その幸せもいつ壊されたっておかしくない。そんな気の抜けないヒリつく状況がボディブローのように読者のメンタルに効いてくる。はじめて幸せに触れた時、ケイトがポツリと放った言葉がこの作品を象徴するようで、いまだ鈍く光り続けている。
スリーピングデッド著:朝田ねむい/プランタン出版/全2巻
真面目で爽やかな佐田は、同僚や生徒から信頼される高校教諭。ある日、放課後の見回りをしていると、そこには女子生徒に刃物で襲いかかる怪しい人物が。とっさに逃げようとするも間に合わず、佐田は命を落としてしまう。しかし、冷たい台の上で佐田は再び目を覚ましたのであった。
こちらは「チェーンソーマン」の作者である藤本タツキさんがおすすめしたことでも話題の作品。BLの枠をグッと広げた(壊した?)問題作としても注目を集めている。
ゾンビになった高校教諭とマッドサイエンティストが主人公。異色のカップリングすぎて面くらう。そして物語の中で新たな情報が明かされるたび、読者は真水をぶっかけられたような気持ちになって唖然とする。なので萌える暇が全くない。しかし2人の関係性は確実に変化していき、とびきりサイコな設定にもかかわらず登場人物たちにどっぷりと感情移入してしまう。読んだ人によっては「BLなのか?」「BLじゃないのか?」と意見が割れるのもこの作品の面白いところ。もちろんわたしは「まごうことなくBLだろ!」と未来永劫叫ぶつもりだ。
囀る鳥は羽ばたかない著:ヨネダコウ/大洋図書/刊行中
ドMで変態、淫乱の矢代は、真誠会の若頭であり、真誠興業の社長だ。金儲けに長け、本音を決して見せない矢代のもとに、百目鬼力が付き人兼用心棒としてやってくる。部下には手を出さないと決めていた矢代だが、どうしてか百目鬼には惹かれるものがあった。自己矛盾を抱えて生きる矢代と、愚直なまでに矢代に従う百目鬼。傷を抱えて生きる2人の物語が始まる!
2011年から現在まで連載が続いている大人気レジェンド作品。独特の色気と世界観が今も多くのファンを虜にし続けている。裏社会が舞台なので読む人を選ぶかもしれないが、少しだけ勇気を出して読んでほしい。1コマ1コマにとんでもない情報量が詰め込まれているからだ。目線はもちろん、わずかな手の動き、眉毛の角度、セリフの間、光の射し方、無言のシーンにたくさんの本音が隠されてきた。難解な男、矢代の精神構造を少しでも理解したくて、何度も読み返してしまうのが本作の魅力と言える。本心をさらけ出せない主人公たちの一途な想いはどのような結末が待っているのか。いずれ迎える完結時には最高に幸せな涙を流したい。
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