【ゲームレビュー】MDカートリッジで復活「シティコネクションMD」! アーケード版の見た目に、ファミコン版の操作性!「いい所取り」の移植に原作への愛を感じる1本
かわいいクラリスが世界中を爆走する「シティコネクション」。本作がもしメガドライブ(MD)に移植されていたら……?という「IF」を追求したのが「シティコネクションMD」だ。
ダウンロード配信が当たり前になった昨今、本作「シティコネクションMD」はMDの実機で動くカートリッジと紙の取説をプラスチックのハードケースに詰めたものを入手できるという、ロマンあふれる頒布形態でも話題となった。2023年9月27日に発売されるや、レトロゲーム界隈を騒がせた本作のレビューをお届けしよう。
「シティコネクション」は、かつて「忍者じゃじゃ丸くん」「フォーメーションZ」「燃えろ!!プロ野球」といったゲームで一世を風靡したゲームメーカー・ジャレコが、アーケードゲームとして1985年にリリースしたアクションゲームだ。
15歳の美少女クラリスが、パトカーに追われつつも愛車「クラリスカー」を駆って爆走。パトカーにオイル缶をぶつけてスピンさせつつ、ステージ内の足場を自分色に塗り替えるとステージクリアとなる。そのジャレコのライセンスを継承したのが、株式会社シティコネクションである。そのシティコネクションから許諾を受け、「シティコネクションMD」を開発したのが、現在もMSXやFCで動作するオリジナルソフトを開発し、カートリッジで販売するHABITSOFTである。
ジャレコには、かつてMDに参入しようとして果たせなかったという経緯がある。初回作となるはずだった横スクロールシューティング「P-47」は動作可能なサンプルROMまで仕上がっていたというから、まさに悲劇の参入断念だ。それから30年以上の時を経て、年号も何度か変わった令和の時代にジャレコのソフトがMDで動くわけで、当時を知る人としては感無量だろう。
そんな「シティコネクションMD」だが、実際にプレイしてみると、本作はアーケード版とファミコン版のいい所取りであることがわかる。グラフィック的にはアーケード版に近く、ステージ数についてもファミコン版の6面ではなく、アーケード版に準拠した12面構成だ。
それでいて「クラリスカー」の操作性自体はファミコン版に近い。特に大きいのが、ハイジャンプ中に方向転換するターンジャンプを出しやすくなっていることだ。ステージには複数段の足場が並行して走っており、全てを塗りつぶすためには、切れ目からハイジャンプで上の足場へ飛ぶ必要がある。このハイジャンプ中に、レバーを進行方向と逆に入れるとターンジャンプとなり、「クラリスカー」は空中で方向転換する。素早く足場を登ったり、パトカーをかわすのに便利だが、アーケード版では操作がシビアで、慣れないと出しづらいテクニックだった。その後に移植されたファミコン版では操作性が改善されたのか出しやすくなっており、多くのプレイヤーを助けている。
「シティコネクションMD」では、このファミコン版に近い操作性となっている。憧れのハイジャンプ方向転換が楽に出せるのはなかなか爽快で、自分がうまくなったような気分に浸ることができた。アーケード版をプレイしたことのある人にとっては感慨深いはずだ。
いっぽう、ファミコン版をプレイした人には、移植時に削られた6つのステージと、アーケード版に近いグラフィックスとサウンドが見どころになるだろう。ファミコンで慣れ親しんだ「シティコネクション」の少し違った一面を見られるというわけで、興味深い体験になるだろう。
プレイアビリティを高めているのが、豊富なオプションと塗った割合の表示である。「オイル」「ジャンプ」ボタンの配置を選べるほか、足場に塗る色を変えられるあたりはファミコン版からパワーアップしている点。また、足場を塗った割合が「PAINTED」の数字で示されているのも嬉しいポイントだ。本作ではちょっとした塗り残しが発生することが当たり前で、これを探してステージを右往左往するスリルも楽しさのひとつとなっている。本作では割合が表示されることで、どれだけ塗り残しがあるのかを把握しやすくなった。値が大きければゴッソリと塗っていない一角があり、小さいなら足場の端や細かいところに注目すればいいというわけだ。
もしかすると塗り残しがある方向を矢印で表示したり、ミニレーダーを出すこともできたのかもしれないが、あえてそうしないことにより、前述したスリルを損なうことなく利便性はアップしている。「シティコネクション」というゲームの面白さを理解した、愛あるアレンジと言えるだろう。
本作をプレイして再認識させられるのが、「シティコネクション」というゲームが持つ、本質的な面白さだ。
「クラリスカー」の走りには独特のクセがあり、これを理解して乗りこなす楽しさは2023年現在も色あせていない。クセの中でも影響が大きいのが、前輪を浮かせるウィリーである。方向転換した際にはウィリー状態になり、この時はジャンプすることができない。上段へ移動する前には方向転換しないのがポイントだが、パトカーは容赦なく迫ってくる。要するに、パトカーをかわすために右に左にクルクル方向転換していると、ウィリー状態となってなかなかジャンプすることができないわけだ。そして、状況によっては上段へジャンプできるポジションを見送らなければならないことも起こる。この「あえて見送ってしばらく走り、次にちょうどいいポジションを探す」感覚は、実際の車を運転している際の感覚にも似ている。「次の曲がり角を探そう」「降りるのは次のインターにしよう」というアレだ。物事が思った通りに進まない中、素早く判断して次善の手を打たなければならないというわけで、一手一手先を見ていくのがリアルなドライブっぽい。つまり、「クラリスカー」は車であって自分の手足ではなく、あえて手足にはして“いない”あたりが本作のポイント。思った通りにいく時もあれば、いかない時もあるという振れ幅があるからこそ、うまく走れた時の爽快感も増すのだ(「シティコネクション」の達人であればまた感想も変わってくるのだろうが、これは普通のプレイヤーである筆者の体感である)。
そして、こちらをじゃましてくるパトカーや猫は、2023年の今もいい意味で憎ったらしい。
特に猫! 猫だ。猫なのだ。ある時はゲームに全く無関係な位置にたたずんでいるかと思いきや、いきなりこれ以上ないほどじゃまな位置に出現する。はねられて吹っ飛ぶ姿を見る際の気まずさも当時のまま。必ずこちらを狙ってくるわけではないっぽいところも「自分が気を付けていれば、はねずに済んだ」という自責の念を駆り立てる。
こうなるともう「シティコネクションMD」の虜だ。本作にはロード時間なんてものは存在しないため、ゲームオーバー後のプレイ再開もサクサク。うまくいったとか、いかなかったとか、猫が憎いとか、オイルが尽きたとかブツブツつぶやきつつ、延々と繰り返しプレイしてしまう。
さすがはアーケード生まれのゲームだ。ゲームセンターをさ迷うプレイヤーをゲームの魅力のみで惹きつけ、1プレイ50~100円の料金をできるだけ投資してもらう。キャラクターの成長やゲーム内資産なんてものはないので、プレイはいい意味でのその場限りとなる。このように過酷なゲームセンターで人気を獲得し、ファミコンに移植されて多くのユーザーの注目を集めたゲームなのだから、面白くないはずがないわけだ。
もちろん、「シティコネクションMD」として再構築する際の手腕も見逃せない。当時の操作性をしっかりと再現し、長年発見されていなかった6ステージ分の隠しフィーチャーも取り込み、面白さをスポイルしないアレンジを加えているというわけで、愛ある移植と言える。
そして、これにROMカートリッジや紙の説明書、プラスチック製のパッケージという実体がともなうのも素敵。パッケージを開け、ROMカートリッジをゲーム機に差し込むひと手間と手応えは、当時を知らないプレイヤーにも新鮮に感じられるはずである。
「シティコネクションMD」はメガドライブ実機でも動作する(ただし、セガのライセンスを取っているわけではないため、厳密な意味では保障外となる)のに加え、現在も手に入るMD互換機・レトロフリークでもプレイできる。つい黙々と遊んでしまう、80年代ゲームならではの中毒性の高さを、ぜひ体験していただきたい。
(文/箭本進一)
【ゲーム情報】
■シティコネクションMD
・発売中
・価格:8,800円(税込)
・メーカー:HABITSOFT
・対応機種:MD
・プレイ人数:1人
・ジャンル:アクションゲーム
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