【2024】読みたい、でも読みたくないオススメグロい漫画10選! 鬱展開、グロ描写……手に汗ジットリな作品たち

“マンガ”とひと口に言ってもそのジャンルは実にさまざま。王道で爽やかな漫画ももちろん人気だが、今回紹介したいのは“グロい漫画”。一部からは熱烈に支持され、一部からは拒否されることもあるクセのあるジャンルではあるが、言い換えればそれほど人間の感情を上下させるエネルギーにあふれた作品群とも言える。

そもそも“グロい漫画”とは?


“グロい漫画”とはその呼び名の通りグロテスクな漫画を指すが、この場合の“グロ”には大きく分けて2通りの使われ方がある。ひとつは残虐なものに対して、もうひとつは生理的嫌悪感を抱くものに対して使われる。しかしながら、多くの人は残虐なものに対して生理的嫌悪感を抱くだろう。いっぽう、生理的嫌悪感を抱くもののなかには精神的なものもあり、肉体的な残虐性は少ない場合がある(それでも精神的な意味では残虐性はあると言える)。つまり、残虐なものと生理的嫌悪感を抱くものはほとんどの場合、切っても切れない関係性を持つのだ。本稿ではそんな要素が詰まった珠玉の作品たちをご紹介していく。

項目
殺し屋1
pupa
シバタリアン
スマイリー
ROPPEN-六篇-
僕はラブソングが歌えない
狂四郎2030
アフターゴッド
世界鬼
嘲笑う世界の中で

グロい漫画

殺し屋1著:山本英夫/小学館/全10巻

殺し屋1

「ホムンクルス」や「のぞき屋」など多くの人気作を世に出し続けている山本英夫の金字塔的作品。少年時代にいじめられっ子だった主人公の殺し屋・イチ。一見ひ弱に見えるイチだが、彼のその心の内にはおぞましいほどのサディズムが内在する。そんな彼の標的になったのが超絶マゾヒストのヤクザ・垣原。相反する2人が交差するとき、新宿・歌舞伎町には血の雨が降り注ぐ……。

映画化もされ、いまだに熱狂的なファンを増やし続ける本作。そもそもなぜいじめられっ子だったイチは殺し屋になったのか? なぜ垣原はイチに狙われることになったのか? 異常者同士の命の奪い合いは、読んでいてうっかりエクスタシーを感じてしまうほどに狂おしく、ある意味爽快感すら覚えてしまうものだ。

pupa著:茂木清香/秋田書店/全3巻

pupa

長谷川 現と妹の夢は2人っきりで生きる高校生の兄妹。父親の激しい家庭内暴力が原因で両親は離婚。その後、母親も家出してしまったため、他に家族がいない2人の絆は異常なほど強い。しかし、ある日兄妹は赤い蝶を見て以来、夢はヒトを食べずには生きられない怪物となり、現は傷ができてもすぐに再生する体になってしまった。ヒトを食べないと生きていけない夢に、自己再生能力を手にした現はみずから生き餌となることを決意するのだが……。

アニメ化も果たしカルト的な人気を誇る話題作。その描写は目を覆うようなシーンも多いものの、純粋にお互いを思い合う兄妹の姿は健気でシンプルに美しい。なぜこのような事態になってしまったのか、不幸な環境の中でさらに不幸な能力を得てしまった2人がどのように生きていくのか、その目で最後まで見届けてほしい。

シバタリアン著:イワムロカツヤ/集英社/刊行中

シバタリアン

主人公の佐藤は中学3年生の春、桜の下に首だけ出して埋まっている柴田を見つける。柴田を助け、一緒に映画を鑑賞したり、文化祭の展示作品として映画を撮ったりすることでどんどんと友情を深めていく2人。しかし、突然柴田は姿を消す。5年間、柴田を探す佐藤だったが、そもそも学校内に柴田を知る者は誰ひとりとしていなかった事実が判明する。それでも探し続ける佐藤のもとに、ある日突然柴田が現れるのだが、その柴田はかつて佐藤の友人だった柴田ではなかった。そして、その日から世界中の人間が柴田になっていくという怪現象が起きていくのだが、それはかつて柴田と最後に会ったときに佐藤が語った夢だった。その夢の話を断ち切るべく、佐藤は同級生でもあるヒロイン・渡とともに柴田をこの世からひとり残らず消すために立ち上がる。

ゾンビ映画の金字塔「バタリアン」、そしてその元となったとされる「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」をオマージュし描かれる本作。気味の悪いストーリーと相反するようなビジュアルの“いいヤツ”そうな柴田がかえって読者の恐怖心を倍増するに違いない。

スマイリー著:服部未定/日本文芸社/刊行中

スマイリー

フリーライターの鴨目友司は忙しいながらも仕事は順調、家族も妻と娘の3人家族で仲睦まじく暮らしていた。しかし、不慮の事故で愛娘を亡くしてしまう。それをきっかけに妻にも去られた鴨目は茫然自失とした日々を送っていたのだが、ある日宗教団体「心笑会」の勧誘にあう。彼らの持ってきたチラシにはなんと音信不通となっていた妻の姿が映っていた。そこから鴨目は「心笑会」に入り込み、妻の行方、そして怪しい噂が絶えない「心笑会」の本当の姿に迫っていくのだが……。

現実でも実際にありそうな宗教と家族の関係性、そして事件性。細かく描写される物語のページを進めるたびに謎は明かされ、また新たな謎が生まれていく。邪悪な笑顔渦巻く「心笑会」には一体どのような真実が隠されているのか、そして宗教を取り巻く人間たちの業……一度読めばページをめくる手が止まらなくなるはずだ。

ROPPEN-六篇-著:宮下 暁/小学館/刊行中

ROPPEN-六篇-

伝説の“殺し屋殺し”として世界中にその名を轟かせるシフ。彼の生まれ故郷、山口県西部の独立国家、六篇法国にて国のトップの座を巡って6人の殺し屋による殺し合いが行われることに。その殺し合いに参加することになったシフは、さまざまな能力を持つほかの5人の刺客たちと激闘を繰り広げる。人間としての感情を持ち合わせないシフだったが、そんな彼にも戦いの中で次第に変化が……。ヒトをヒトとも思わぬ残虐性を持つ5人を果たして倒し切ることができるのか、暴力が暴力を呼ぶ極限サバイバル劇の開幕!

「東独にいた」で衝撃的デビューを果たした気鋭の漫画家・宮下 暁の待望の新作。怪しくもどこか魅力的に映る殺し屋たちとのバトル、そして切ない人間模様は読み手の心を常に揺さぶってくるはずだ。

僕はラブソングが歌えない著:高井唯人/双葉社/全2巻

僕はラブソングが歌えない

高校生の鈴木くんは女友達も多く、人気もそこそこ。誰と付き合うわけではないものの、幼なじみのみきちゃん、委員長の川上さん、ゲーム友達のさくらちゃんのかわいい3人の同級生と平和で楽しい毎日を過ごしていた。しかし、転校生の佐藤くんの出現で、彼の学園生活は一変する。佐藤くんは鈴木くんに“ハーレムを作りたい”と宣言し、行動に移していく。クラスだけではなく学校全体の女子、そしてついには鈴木くんのお気に入りの3人にまで佐藤くんは取り込もうとし……。

ポップでかわいらしいタッチの青春エレジー漫画かと思いきや、一気に事態は残酷なNTRストーリーへと変化する本作。佐藤くんや女の子たちのむき出しの動物性や業の深さに気味の悪さを感じると同時に、主人公・鈴木くんに感情移入した我々読者は何とも言えない不快感をもよおしてしまうだろう。

狂四郎2030著:徳弘正也/集英社/全20巻

狂四郎2030

「ジャングルの王者ターちゃん」や「昭和不老不死伝説 バンパイア」など人気作を多く発表する徳弘正也の代表作。時は2030年、第三次世界大戦が終結した5年後の日本が舞台。大戦中に使用された核ミサイルで地球上の人間はおよそ20%までに減少。コンピューターに完全に制御され、男女間も分断された独裁政治国家に変貌してしまった。大戦を生き延びた主人公の狂四郎はヘリで空を警護する巡査として生活していたのだが、ある日科学者の脳を移植された天才犬・バベンスキーと出会う。また、以前よりバーチャルの世界で愛し合っていた志乃(※バーチャルでの仮名。本名ユリカ)が現実世界にもいると知り、彼女と現実社会から逃げだすべく決意する……。

人間の果てしない欲望が深く描かれた本作は、読んでいて目をそらしたくなる描写もしばしば。しかし、だからこそそんな世の中で真実の愛を求め続ける主人公・狂四郎とヒロイン・志乃の思いは涙が出るほど美しく映る。泣けて笑えて怒れる、人間の持つすべての感情が詰まった珠玉の名作だ。

アフターゴッド著:江野朱美/小学館/刊行中

アフターゴッド

舞台は神々に侵攻され、一部退廃してしまった日本。神がいる危険区域となってしまった東京で、厳重に閉ざされた危険区域の向こう側を覗いていた少女・和花。友人に会うために佐賀から上京してきた彼女は、付近を警戒していた研究員・時永と出会う。和花が不思議な力=神と同等の力を持つことを知った時永は彼女を保護するのだが、2人の出会いが世界の運命を変えていく。

“神”と呼ばれる圧倒的な存在のモノたちは、人間をいともたやすく殺してしまう。まるで虫けらのように命を軽んじられる人間が神々に対抗する手立てはあるのだろうか? また、和花はなぜ神と同等の力を持つのか? そして時永の秘密とは? すべてが謎のまま進むストーリーに、今後も目が離せない。

世界鬼著:岡部 閏/小学館/全11巻

世界鬼

両親ともにおらず、叔父一家に身を寄せる少女・東雲あづま。彼女は叔父一家から暴行や性的虐待を受けており、おまけに満足に食事もとらせてもらえない状況だった。そんな現実世界すべてに絶望していた彼女は、ある日医師から現実から逃避するがゆえ“鏡の国のアリス症候群”という病気にかかっていることを知らされる。時を同じくして突如世界を破壊しようとする怪物・世界鬼が現れ、病院から帰宅中のあづまも襲撃に合う。なんとか世界鬼から逃げ延びたあづまは、家に着いたのも束の間、また叔父から性的虐待を受けることになる。事後、絶望のさなかにいるあづまだったが、突如何の前触れもなく鏡の世界に引きずり込まれ、同じ病気にかかった6人の男女とともに世界鬼と命をかけた戦いに巻き込まれてしまうことに……。

絶望すればするほど力が強くなるアリス症候群。6人の中でも最強クラスの力を発揮するあづまはどれほどの絶望を覚えていたのだろう。吐くほどに怒りを感じる彼女の不幸な境遇……あづまの幸せを願わずにはいられない。

嘲笑う世界の中で著:和泉亜明/少年画報社/刊行中

嘲笑う世界の中で

精神疾患を患い働けなくなってしまった夫の樹を支えるべく、スーパーのパートに勤しむ妻・留衣。しかし、パートの収入だけでは生活費が足りず、風俗に手を出して日銭を稼ぐことに。そんなとき、パート先のセクハラ店長が客として来てしまう。弱みを握られた留衣は、店長に口止めしてもらう代わりに性奴隷として扱われることになる。それでもすべて夫との生活のためと我慢する留衣。しかしある日、樹に風俗で働いていることがバレてしまい、絶望した2人はSNSを通じて知った集団自殺志願者のグループたちと自殺を図るも未遂に終わってしまう。しかし、そこから2人は徐々に犯罪に手を出していってしまう……。

現代社会におけるいわゆる低所得者層である留衣と樹。彼らのリアルなどうしようもない不安や不幸が、静かな叫びとして読者に訴えかけてくる。“生きる”ということがいかにしんどいか、生へ執着した結果どれほど欲深くなれるか、そして“人間らしさ”とは……。改めて考えるきっかけとなる作品だ。

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