「SHAMAN KING FLOWERS」日笠陽子(花役)×上坂すみれ(アルミ役)インタビュー! 先輩・林原めぐみの叱咤を受け、たどり着いた新主人公の声とは……?【2024冬アニメ】

完全新作アニメーションとして、原作準拠で制作された2021年版の「SHAMAN KING」から連なる新作「SHAMAN KING FLOWERS」が2024年冬クールアニメとして放送・配信中だ。

「SHAMAN KING FLOWERS」は、「SHAMAN KING」の主人公・麻倉 葉の一人息子である麻倉 花の物語となる。前作で麻倉 葉を演じた日笠陽子さんは、これまであまりイメージになかった少年役を演じ、新たな魅力を開花させた。そして、その息子である花を演じるのも、同じく日笠陽子さんだ。今回は、初代イタコのアンナの一番弟子であり、花の許嫁であるアルミ・ニウムバーチ役の上坂すみれさんと繰り広げられた、濃い「シャーマンキング」トークをお届けしよう。

作品に込められた想いを突然理解する不思議な体験

──日笠さんが「SHAMAN KING FLOWERS」で麻倉 花の役も演じることを知ったのは、どのタイミングだったのですか?

日笠 「SHAMAN KING」の最終話で「花もやります」と言われて、ヤバいなと思ったんです。2021年のことなので記憶が曖昧なのですが、確か収録の3日くらい前に言われたと思います。最終話に花が出ることは知っていたので、オーディションをどこかでやっているものと思いこんでいて、誰がやるんだろうな〜って思っていたら「兼役で」と言われたので、私がやるんだ!と驚いた記憶があります。

──アルミ・ニウムバーチ役の上坂さんはオーディションだったのでしょうか?

上坂 私は、2022年にオーディション用のテープを録っていました。もともと「SHAMAN KING」は小学校の頃、リアルタイムでコミックスを買って読んでいたんですけど、オーディションをきっかけに「SHAMAN KING FLOWERS」も読ませていただき、こういう話なんだ!と知りました。原作の武井宏之先生がキャラ原案をしていた「ブッチギレ!」という作品に出させていただいたことはあるのですが、アルミはそれとも全然違うキャラクターで。オーディションの原稿も外面の陽気なところとか、花のことを何でも知っていることとか、かなり確信に迫るような台詞が多かったので、どうやって演じようか悩んだんですけど、テープオーディションでたくさんの人が受けるだろうから、とにかくこの褐色感を出そうと思ったし、パッチ族の浮世離れ感もあると思ったので、そこを目指して録ったと思います。

しかもそれから2〜3週間で「決まりました。もうアフレコが始まります」と言われたんです(笑)。そんなにすぐに決まることがあるんだ!と驚いたんですけど、そこで日笠さんが花役として続投されることを知ったので、「すごい!」って思ったのが印象として残っています。そのほかにも続投のキャストが多かったので、そこに入っていくのは緊張感があるなと思いました。

日笠陽子さん

──「SHAMAN KING FLOWERS」の物語の印象をお聞かせください。

日笠 最終話で花を演じることが急に決まったので、どういう子に育っていくのか見ておかないと!と思って、急いで原作を買って読んだんです。「SHAMAN KING FLOWERS」は、武井先生の描き方の妙というか、より技巧的になっている印象がありました。花のキャラクターに関しては、葉とだいぶ違う印象を持ちながら読んでいたんですけど、途中までは「SHAMAN KING」あるあるのような、らしい流れがあったんですけど、後半の重要な新キャラクターが出てくるあたりから、よくわからなくなってしまって。私にはとても難しく思えたんです。武井先生が描きたいこと、伝えようとしていることがミルフィーユのように何層にもなっていて、何度も読んだのになぜか意図がわからない……。

でも、とりあえずそのままアフレコに臨んだのですが、最終廻の台本を読んでも、まだわからなかったんです。ただ、アフレコ現場で花になってしゃべった瞬間に、唐突に理解して! 伝えたかったことはこういうことだったんだ!って思いました。

──急に、すべてが繋がったんですね。

日笠 武井先生が伝えたいものって、いろいろなところに隠されていて、真意を直接描いているわけではないので、何かと何かが繋がったときに突然理解するみたいな不思議なことが起こったんだと思います。それはもちろん監督の力も大きいと思いますけど、私が花であり続けようと思っていたことが、唐突に理解する感覚をくれたのかなって思います。

──上坂さんはいかがでしたか?

上坂 「SHAMAN KING」を読んでいたときは9歳とか10歳で、自分がリアルタイムで連載している漫画で、初めてお小遣いで買って集めていた漫画だったんです。ただ、小学生だとシャーマンファイトとかはまだ理解はできなくて、パッチ族? 何?みたいな。武井先生の、小ネタやパロディを入れて、子供に向けて描いているよって感じじゃないところもカッコいいと小さい頃は思っていたんです。でも大人になってから、先生が書いた「恐山ル・ヴォワール」の詩を読むと、なんて素敵な詩なんだろうと思うんですけど……。「SHAMAN KING」は、子供がわからなくても読んでしまう勢いがあったので、「SHAMAN KING FLOWERS」はちゃんと理解して読もうと思っていたら、日笠さん同様、これ、なんだろう?となったんです。でも、すごく武井先生が花を息子のようにかわいがっているのが伝わってくるんですよね。いろんな人に愛されている花というのも伝わってきましたし。

ただ、全体的に読んだ感想としては、楽しい! 武井先生のユーモアと突拍子もない超展開が合わさって、次の予想がつかないという点でワクワクする、「SHAMAN KING」を初めて読んだときと同じ気持ちだなって思いました。それと私はアルミの気持ちで読んでいたんですけど、アルミは作中最強キャラみたいな立ち位置で、ものすごい修行をして初代アンナの弟子になり「三代目イタコのアンナ」になった、すごい子なんです。しかもその力をむやみに使わない超越的なキャラクターなので、この強さはいったいどこからくるんだろうなって思いました。

上坂すみれさん

■麻倉 花・麻倉 葉を演じるため転機になった出来事とは?

──先ほど、緊張感があったとおっしゃっていましたが、実際に現場に入られたときはいかがでしたか?

上坂 まだ分散収録の時期だったので、だいたい花と麻倉路菓(CV.小清水亜美)と麻倉葉羽(CV.堀江瞬)とアルミで録っていたんです。そこに、ときどきたまおさん(CV.水樹奈々)や竜之介さん(CV.田中正彦)がいらっしゃったので、緊張はしたんですけど、たまおが大人になっていたり、竜さんもやさしい大将になっていたり、キャラクター感が変わっていたんです。それで、みんなスタートは一緒なんだとわかったときに、緊張しているのは私だけではないという気持ちになりました。みんなでこのドキドキを共有して、みんなで作り上げていく新しい「SHAMAN KING FLOWERS」なんだなと思って、がんばろうという気持ちになれました。

──日笠さんは、アフレコはいかがでしたか?

日笠 麻倉 葉と変えなければと思って第1廻に臨んだんです。私自身、男の子役をたくさんやっていたわけではなく、七色の声を持っているわけでもなく、技術が高いわけでもないから「葉と一緒じゃん」って思われたくない気持ちが強くて、第1廻は相当気合いを入れて、自分で考えた花を持っていったんです。それと私、音響監督に一番言われたくない言葉として、「それっぽくやっているだけ」というワードがあるんですけど、テストが終わった瞬間、パーンとブースに入ってきて「それっぽくやっているだけだから!」と言われ、「わ〜〜!!!!」ってなったんです(笑)。

それが結構なショックで、どうしようと。そこからガラガラガラってプランが崩れちゃったんです。「花を葉と変えようとしている日笠の気持ちが前に出過ぎ。変えようという芝居しかしてない。それはもう花ではないから」と言われ……。これは本当に言われたくはなかったんですけど、そのあと諦めずに、音響監督さんも何度もテストをしてくださって、めちゃくちゃ長い時間をかけてやったんです。

上坂 そうだったんですね!

日笠 そっか、すみぺは第1廻の収録のときはいなかったのか! 実はそうだったの。でも、そうやって時間がこぼれるくらいまでキャラ作りをしていく中で、葉と違う部分が自分の中で浮き彫りになってきたんですよね。たぶん葉から見て「花ってこういう子供であってほしい」という像を作り上げていたんです。「生意気言ってる中学生、うんうんうん」みたいな。そういうキャラ作りだったんだけど、花は葉にかわいく思われたいなんてひとつも思っていないんですよね。だから葉のことを一度忘れようと思ったんです。

で、私自身はものすごく悔しかったので、「何クソ!」「ギャフンと言わせてやる、来週見てろよ!」っていう気持ちがあって、それが花の感情とリンクした部分がすごくあって、いい方向に作用したんですよね。ただ、逆にすごい勢いで花に入っていったゆえにぶち当たった壁もあって……。

──それは、どんな壁ですか?

日笠 葉も本編に出てきちゃうんですよ(笑)。花と葉で会話しなければならなくて、そうすると、やっとつかんだ花を手放すのが怖くなって、全然葉になれなくて。しかも花の気持ちになってるから、葉が出てきたときに「親父が出てきた! 最悪」くらいに思っちゃったんです。それもショックで! 第1期のころあんなに1年間向かい合って大切にしてきた葉に、自分がそんなことを思うのもショックだったから、もう感情がめちゃくちゃでしたね、当時は。どうやって葉になればいいのか、葉になると花がどこかへ行くんじゃないかという怖さと戦い、葉からも逃げちゃう。そういうのがすごくあったんです。しかも、そのとき葉が録れなくて。音響監督さんが、来週アンナ(CV.林原めぐみ)を収録するから、そのときいっしょに録ろうと言ってくださって、そこでギリギリ葉になれたんですよね。

でも林原さんには愛のあるお叱りをいただきました。「1000回練習してきなさい。悩んでいることに酔うんじゃない」と。もうアンナ、ママなんですよね。その先に葉と花が会話するシーンがあることもわかっていたので、ここで、林原さんとお会いできて、アンナに会えたことは、花にとっても葉にとっても、私にとっても、「SHAMAN KING FLOWERS」という作品を演じるうえで転機だったと思います。でも、さすがに1000回は練習できなかったですけどね、100回くらいでした(笑)。でも気持ち的には、そのくらいの気持ちでやっていきました。

──アルミと花のかけ合いも多かったと思いますが、お芝居をしてみていかがでしたか?

日笠 アルミって、アンナの系譜を継いでいる子なので、どんな人が演じるんだろうと思っていたんです。そしたらすみぺがやることを知って、アルミの飄々とした部分、明るい部分、でも芯の強さがあるところがすみぺの声に乗っているなと思いました。すみぺもすごく音響監督さんのディレクションについていっていて、それでどんどん変わっていく姿を見て、すごくグッと来ていました。だからどんどん声が低くなっていったよね?(笑)

上坂 腹から腹から!と言われて。

日笠 覚悟が!ってなると、覚悟は腹からと教わるので。だから我々、第1廻から全員声が低くなっていくという現象があったんです(笑)。

上坂 あれはみんなだったんですね(笑)。私は最初から、花だ!って純粋に思ったんです。葉のアフレコに携わっていないこともあるんですけど、完全に最初から花として接していました。花って、陰キャぶってる元気な子みたいな感じで、すごく令和感があるんですよね。葉は平成の子って感じなんですけど。あのトゲトゲしていて暴れたいのにな! 俺強いのにな!っていう、やり場のない感じ。でもみんなに守られていることにまだ気づいていないところが、今どきのちびっ子みたいな感じがすごくあってよかったし、それを先輩の日笠さんが完全に表現しているのがすごいなって思いました。

アルミは全部を知っていて、花は何も知らないというところで、何も知らない花にアルミは試練を与えていくんですけど、噛み合っていないけど、相性はいいんだろうなっていうシーンが多かったなと思います。あと、花がいつも全力なので、アルミもつられそうになるんですけど、音響監督さんに「アルミはがんばらない」って言われることは多かったです。アルミは常に花の手綱を握っていなければいけないので、花に釣られないようにすることを意識的に心がけていました。

──では、TVアニメ「SHAMAN KING FLOWERS」の、どんなところに期待してほしいですか?

上坂 これまでの日笠さんのお話を聞いたら、見ないわけにはいかないですよね? 日笠さんが本当にすごいので、皆さんアニメもよろしくお願いします!

日笠 そんなことないし、まだEDテーマの話とかあるじゃん!

上坂 それは、まーいいですよ。

日笠 でも私、すみぺにLINEしたじゃん! EDテーマめっちゃカッコいいね!って。

上坂 そうですね……。日笠さんが本当にやさしくしてくれて、EDテーマよかったよと言ってくださって、嬉しかったです。EDテーマの「ディア・パンタレイ」は、歌詞がとにかく「SHAMAN KING FLOWERS」の世界そのものなんです。フルで聴いていただくと特になんですけど、愛とか、受け継がれていくものとか、魂の繋がり、連綿と命はつながっていくことは尊いことだけど、それは普通のことなんだよっていうメッセージが、情熱的な歌詞と楽曲になっているんです。私の活動的には、結構おふざけソングが多いんですけど、初めて、とても真面目な曲を歌わせていただけました。

──初めてなんですね!

上坂 もう初めてです。生きることや愛とはこういうことだっていう歌を歌ったので、レコーディングが一番苦労しました。アニメでは、原作にあったギャグテイストは差し引いて、シリアスで壮絶な戦いを描いているので、それにふさわしいエンディングというのはプレッシャーだったんですけど、かなり熱い曲に仕上がってますので、どんな映像が付くのかも楽しみです。

アルミから花への想いみたいなものは、作中ではあまり描かれはしないんですけど、それが楽曲ではにじんでいたりするので、飛ばさず聴いてほしいです。

日笠 熱いのに、どこか切なくて、すごくいい曲なんですよ!

上坂 収録の後半あたりの収録終わりに日笠さんに「このあと時間ある?」って言われ、怒られるんだ私、と思って、謝ることをいっぱい考えていたら、喫茶店に連れて行ってくれて。

日笠 そんなこと考えてたんだ……(笑)。

上坂 そこで「悩んでることない? やりづらいところない?」って聞いてくださって、本当にやさしい方だなと思いました。アルミって難しいよね、大丈夫?って。

日笠 で、時間がなくて歌のこと言いそびれちゃったので、あとでLINEしたんです(笑)。

上坂 だから日笠さんの人柄のよさがアフレコの空気を作っていたんだなと思いました。

日笠 本当はもっと早くにすみペと話したかったんですけど、私が申し訳ないけど本当にいっぱいいっぱいで……。だからLINEしたのも、花としての大事なシーンが終わったあとなんですよ(笑)。

上坂 それ待ちだったんですね(笑)。

日笠 ごめんな〜(笑)。でも、すごく力強く、作品に寄り添ってくれたいい曲だったから、どうしても伝えたかったんです。

上坂 私も、それっぽくなっているだけの曲にはしたくなかったので、そう言っていただけて嬉しいです。

日笠 アフレコのリハVにもEDテーマは入っていたので、今日もチェック終わった〜ってなったあとに、この曲を聴くのが毎回の楽しみでした。

──今日は、少年役を演じるような日笠さんの、さらなる新境地だと思って、そのお話を聞こうと思っていたのですが、まさか、こんなにも悩まれて演じていたのか!と思いまして。何だか、ものすごく貴重な話を聞けた気がします。

日笠 つまるところ少年とかそういうことではなく、人間を演じる、その子を演じるということ自体が、そもそも難しいということなんだなって気づいてきました。でも葉を演じたことで、ありがたいことに、オーディションでも男の子のオーディションを受けさせていただくことが増えたんです。自分の役者人生で、たとえばエロいお姉さんとか、男の子をやるイメージとは真逆のイメージが自分にはあったと思うんです。でも、自分のイメージになかったものをやらせていただき、「男の子もやるんだね」って思ってくれる関係者が増えてきてくださったので、すごく嬉しかったし、見てくれていたんだなと思いました。だから、葉とはまた違う人間である花を演じているのを、早く見てもらいたいです。

それに、「SHAMAN KING FLOWERS」自体が始まりの物語であって、完結するものではないんです。我々もどういう結末を迎えるのかわからないまま、命を削って全力で向き合った1クールでした。きっとその先を見たいと思ってくださる方がたくさんいると思うので、まずは1クール、1ミリも見逃さずに観てください!

(取材・撮影/塚越淳一)

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