本日発売「The Last of Us Part II Remastered」をレビュー! PS5の性能を生かしてさらなる没入感を実現したストーリーに加え、中毒性の高い新コンテンツ「NO RETURN」も登場

2023年1月19日に、PS5版「The Last of Us Part II Remastered」(以下、Part II)が発売される。本作は2020年にPS4で発売された「The Last of Us Part II」のリマスター版で、同年に開催されたThe Game Awards2020では、大賞のゲーム・オブ・ザ・イヤーを受賞している。

本稿では、そんな本作のレビューをお届けしよう。

ふたりの復讐劇が描かれるストーリー。PS5の性能も加わってよりリアルで陰鬱に



本作のストーリーは、前作「The Last of Us」から5年後から始まる。謎の菌のパンデミックによって文明が崩壊したアメリカで、ジョエルとエリーはかつて大陸をまたいで長い旅に出ていたが、今ではジャクソンという地に腰を据えて生活していた。だが、前作にも登場した組織・ファイアフライの元構成員であるアビーたちと遭遇してから、平和だったそれまでの状況は急転。エリーは復讐を誓い、アビーたちを追いかけてシアトルまでの長い旅に出る。



PS4版のレビューが当サイトに掲載されているため、オリジナル版の詳細はそちらを読んでほしいのだが、ジョエルとエリーの信頼や愛情が細かく描かれていた前作から一転、「Part II」では復讐とその連鎖がテーマであり、最初から最後まで重苦しい展開が続く。

バットやバールで頭を殴りつけたり、羽交い絞めにしながら喉をナイフで切り裂いたりといった暴力描写は前作譲りだが、今作では倒れた敵の名前を味方が叫んだり、エリーに向かって罵声を浴びせてくる。敵がただのNPCではなく、「Part II」の世界に生きている血の通った人間であることを突き付けられている気がして、オリジナル版はプレイ済みの筆者でも精神的にきつかった。



物語が進むと、今度はアビーの視点のストーリーが描かれる。エリーやプレイヤーにとっては目の仇に過ぎないはずのアビーだが、そんな彼女の取った行動にはれっきとした動機があり、またアビー自身もひとりの人間としての生活があるとわかる。エリーたちが正義で、アビーたちが悪であるという単純な構造になっていないのが本作の肝であり、ジャクソンからシアトルまでに至る復讐の旅は、果たして本当に正しいのかどうかを、エリーだけでなくプレイヤーにも問いかけてくる。



PS5版では、PS5の特徴がよく噛み合い、オリジナル版のストーリーにさらなる没入感を与えている。ひとつはデュアルセンスコントローラーに搭載された「アダプティブトリガー」で、これはゲーム中での状況によって、L2とR2ボタンの重さが変わるというもの。たとえばハンドガンのような小火器を撃つならちょっと力を込めればいいが、ショットガンなどの重めの武器ならいつもより強く押し込む必要がある。



こうした機能は、マルチプレイと相性が悪い。トリガーを押し込む強さによって得られるプレイ体験よりも、1秒でも早く敵プレイヤーを倒せるよう反応の速さが優先されるからだ。ストーリーが大切な作品なら、トリガーの重さもリアリティを醸し出すための一助になるし、敵にもしっかりとした設定や演出があるなら、彼らを攻撃することの重みを感じられる。「Part II」のような作品にこそ、アダプティブトリガーはふさわしいのかもしれない。



もうひとつは純粋な画質。PS5版は4K画質に対応しており、陰影の濃淡や、雨や風による景観の変化、キャラクターたちの表情などがより鮮明に確認できる。今回は4Kモニターでプレイしたが、暗いところは本当になにも見えないし、懐中電灯を照らす距離に応じて徐々に浮かび上がる風景なども緻密に表現されている。




キャラクターの顔の機微も原作以上に描写されるようになったのも大きい。本作は復讐が物語の軸になっていることもあり、エリーやアビーを始め、多くの登場人物たちの顔は険しい。罵声を飛ばすときや睨みつけるとき、彼らの変化がよりわかりやすくなったおかげで、「Part II」のストーリーをより深く理解できるように感じた。

ランダム生成されたステージを連続で攻略していく新コンテンツ「NO RETURN」



「NO RETURN」は、PS5版専用の新コンテンツ。このコンテンツはステージクリア型で、挑むたびにランダムで生成されるステージを連続で攻略していき、その道中では手に入れたアイテムや装備を拠点に戻って強化。この流れをくり返していき、最後に待ち受けるボスを倒すというものだ。ランダムという要素が重要で、要は決まった攻略法やルートなどが存在しない。途中で死んでしまうと最初からやり直しで、それまで持っていた装備やアイテムはすべて失われる。

拠点では専用のポイントを使い、アイテムや装備を購入できる

ステージには「エンカウンタータイプ」というルールがあり、タイプの違う「エンカウンタータイプ」がランダムで発生する。段階に分けて襲ってくる敵を一掃する「AASAULT」、押し寄せる敵を倒しながら一定時間生き残る「HUNT」など、さまざまなバリエーションのルールが設定される。

どのエンカウンタータイプでも、本編と同様にアイテムや装備のやりくりが欠かせない。NO RETURNでは物資のほとんどは各ステージで調達しなくてはならず、やみくもに敵を倒しているとすぐ枯渇してしまう。戦闘が始まる前の設けられた準備時間を使ったり、敵から隠れつつまずは物資を集めるなど、なにかしらの対策が重要になる。



「Mod」という特殊効果の発生が加わると、ステージ攻略はよりおもしろくなる。各種ステージに一定確率で追加するModは、敵の体力が低下したり、近接攻撃で敵を倒すことで体力回復が行えるなど、その内容はじつに多彩で、プレイヤーの攻略に大小さまざまな影響を与える。



自分の物資や装備の充実具合、各ステージの舞台になるフィールドや、そこに付随しているModの中身などを考慮しつつ、進むべきステージを選んでいく。最初は考えることが多いために序盤でも大いに苦戦するが、自分が得意なエンカウンタータイプや武器を見つけられると、少しずつ自分のなかの立ち回りが確立されてきて、徐々にではあるが奥のステージへと進めるようになる。



プレイヤーが最初操作できるのはエリーとアビーだけだが、特定のキャラクターで条件を満たすと、ジョエルやトミーといったほかの人物も操作できるようになる。キャラクターには特性があり、最初から爆弾の作り方を覚えていたり、スキルの習得に使う「サプリメント」の獲得量が50%アップしたりと、それぞれの強みは明確に違う。初期装備も異なるので、キャラクター次第で習得するスキルや強化する武器も変わってくる。NO RETURNはくり返し遊ぶこと自体が目的のゲームモードなので、これだけでもかなり長く楽しめそうだ。

自分好みに難易度を設定できるカスタムモードを見ると、敵が透明、視界が反転、両手武器使用不可といったModもあった。Modによっては、ステージのゲーム性自体も大きく変わる

4K画質やアダプティブトリガーといったPS5ならではの強みを生かすことで、「Part II」はオリジナル版ですでに完成されていた物語に、さらなる没入感をもたらしている。また、新要素のNO RETURNは、くり返し遊ぶのを目的としたシンプルかつ奥深いモードで、そのランダム要素から生半可には遊び尽くせないほどのポテンシャルを秘めている。大作系の作品が好きな人だけでなく、前作をすでに遊んでいる人にもオススメできる1作だ。


  • 【タイトル情報】
  • ■TheLastofUsPartIIRemastered
  • ジャンル:サバイバルアクション
  • 対応機種:PlayStation5
  • 発売日:2024年1月19日(金)
  • 価格:パッケージ版 小売価格:5,480円(税込)ダウンロード版 販売価格:5,480円(税込)
  • CERO:Z(18才以上のみ対象)

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夏無内好

夏無内好

活動歴約10年のフリーライター。専門学校を出た後、大手のゲーム雑誌の記事作成や編集プロダクションの攻略本作成などを経験。週刊誌での長期連載やプレスリリースのリライトも経て、最近はアキバ総研などのウェブ系でも執筆を始める。 基本的に雑食で、RPGからアクション、シミュレーションやFPSまでなんでもやる。

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