「revisions リヴィジョンズ」、谷口悟朗監督&平川孝充CG監督インタビュー! 谷口監督が想像した、内山昂輝の声質から生み出されたキャラクターとは?
第36回星雲賞(アニメ部門)受賞作「プラネテス」や「コードギアス 反逆のルルーシュ」などで世界のアニメファンを魅了し続ける谷口悟朗さんが監督を務めるTVアニメ「revisions リヴィジョンズ」の放送が、2019年1月9日より放送開始となった。
シリーズ構成・脚本をキャラクターの日常と闇を魅力的に浮かび上がらせる「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズの深見真さん、キャラクターデザイン原案を、やわらかい質感で精緻に人物を描き出す「Wake Up, Girls!」の近岡直さんがそれぞれ務め、アニメーション制作は「永遠の0」「ALWAYS 三丁目の夕日」など心揺さぶる数々の劇場映画作品を生み出した白組が担当する本作は、「海外にアニメカルチャーを広げたい」というコンセプトのもと、高品質で世界基準のアニメ作品を、日本をはじめとして世界にも打ち出していくフジテレビの新アニメ枠「+Ultra」の第2弾作品だ。
300年以上先の「未来」に渋谷ごと転送されてしまう少年少女達を主人公に、「現在(いま)」を取り戻すために「未来」と戦う青春(ジュブナイル)“災害”(パニック)群像劇(アンサンブル)が描かれる本作だが、その放送を前に、監督の谷口悟朗さん、CG監督の平川孝充さんに、本作についてお話をうかがった。
2人の関係を言い表すと、「ドラえもんとのび太君」
──まずは、お2人が本作に関わることになった経緯をお聞かせください。
谷口監督:もともと企画書を基にしたところで私が先に呼ばれまして……。その段階で白組さんたちも関わっておられたりはしたんですけども、まだ制作をどうするかとかは未定だったんです。結果的に白組さんが現場の主流になってやっていこうという話になったんですが、そうすると現場を統括できる人がいないとどうしようもないので、平川さんにお願いしようということになったんですよね。
──それは谷口さんから平川さんにオファーをされたということでしょうか?
谷口監督:いえ、白組内からのオファーです。私が最初に入った時、白組さんは座組にいたことはいたんですけれども、どのあたりまで制作に関わるのかなどは検討中だったんですよ。結果的に、やっぱり白組さんが3DCGをメインに制作の中心になって作ったほうがいいだろうということになっていって、平川さんが入ってこられたという感じでした。
──では、平川さんは途中の段階でお話を聞いたということになりますか?
平川CG監督:そうですね。でも途中とはいっても、最初のほうに入れていただいたと思います。
──谷口さんが監督、平川さんがCG監督という役職になっていますが、お2人は本作でどのようなお仕事をされているのでしょうか?
谷口監督:すごくザックリ言うと、私のほうは「この作品はこういう感じに作りたいので、皆さん、こっち方向に向かって走ってください。こっち方向のそういう映像が欲しいんです」という立場で、まあ、簡単に言ってしまうと、私がのび太くんで……(笑)
──「こういう映像が欲しい!」と言うと出してくれるドラえもんが平川さん、ということですね(笑)。
平川CG監督:いろんな道具がポケットから……(笑)。
谷口監督:そんな関係です(笑)。
──では、谷口さんから「それは無茶だよ、のび太くん」と言いたくなるような注文が来たりもしたのでしょうか?
平川CG監督:そういう無茶ぶりな注文はあまりなかったですね。のび太くんのわりには…と言ったらアレですけど(笑)、制作現場側に立っていただき、すごく助かりました。
──なるほど(笑)。といっても、それは実際に一緒に仕事をされてみた今だからこその感想だと思います。お仕事される以前は、やはりプレッシャーを感じたりされていたのではないでしょうか?
平川CG監督:そうですね、お会いしたことがなかったので、最初はどんな方かなと思っていました。数々の作品を手がけてらっしゃいますし、厳しそうだなというイメージは確かにありましたね。逆に、作品に対しての思い入れが強い方というイメージもあったので、そういう意味では、一緒にお仕事させていただくのは、楽しみでもありました。
──谷口さんは、平川さんのCG作品をご覧になったことはありましたか?
谷口監督:ええ、やっぱりいくつか。サンプルじゃないんですけれども、「どこまでできるのか」とか「どういったことを得意としているのか」といったことを見させていただきました。とにかく、白組と言ったら映像業界でひとつのブランドなので、そこでチーフを張っている人っていうんだから、どんな怖い人がやってくるのかと……。
(一同笑)
──谷口さんも、平川さんに対してそんなイメージを抱かれていたんですね。
谷口監督:いやあ、でもそういうのってあるじゃないですか。こういう世界でやっていると、それぞれの分野のところのイメージがあるから(笑)。
「+Ultra」ならではの舞台設定
──これまでに白組さんが制作されてきた作品ですと、実写映画におけるCGというイメージがあるんですが、今回は完全にアニメーションの作品となります。アニメーションにおけるCGと実写映画におけるCGとの違いといったものを、実際に制作されてみて感じられたりしましたか?
平川CG監督:そうですね…、一番違うのは、VFXであれば完全に写実的に作ることが大前提になるので、リアルなものを追求するんですが、TVアニメーション──今回はセルルックで作りましたけれど──では、どちらかというと作品において説得力が出せるものにするというか。
──アニメでも実写でも、作品にマッチするように作るということでしょうか。
平川CG監督:いつか TVアニメーションでVFX級のものが作れる時代が来るかもしれないんですが、そうなるための技術を学んでいかなければならない。「revisions リヴィジョンズ」でやったのは、そういうことですね。
──今回は、キャラクターもCGで制作されているのでしょうか。全編通してのCGとなりますか?
平川CG監督:一部作画、手描きの部分がありますが、全編ですね。
──手書きなのは、キャラクターがアップになるような部分でしょうか。
谷口監督:子ども時代だったりとか、ゼロベースでCGを作っていると大変だったりする部分とかですね。
──CGにするか手描きにするかは、作画のイメージとかではなくて動かしやすさで決めているということでしょうか?
谷口監督:出番の数だったりとかですね。
平川CG監督:そういうところが一番大きいですね。
──なるほど。ところで、もしかしたら制作チームが違うのかもしれませんが、秋本(康)さんプロデュースのアイドル「22/7」のMVを制作されていましたよね? あのMVは、渋谷を舞台にしたアニメーションでした。今回の作品と、渋谷という点がつながるのかな、と感じたのですが。
平川CG監督:そうですね。チームはちょっと違うんですが。あのMVも渋谷のスクランブル交差点を使っていますね。でも、制作上は「revisionsリヴィジョンズ」のほうが早かったんじゃないかなと思います。
──今回、お話の舞台が渋谷というのは、最初から決まっていたんでしょうか。
谷口監督:いえ、「海外にアニメカルチャーを広げたい」というコンセプトのある「+Ultra」枠の作品ということで、世界配信を見据えていたりとか、そういったものをひっくるめた理由からです。海外の人でも、「渋谷」という地名だったら、1回くらい聞いたことがあるんじゃないんですか?
──なるほど、海外の方でも、聞いたら思い浮かぶような場所ということですね。
谷口監督:そういうことです。日本国内の人だって、来たことはなくても「渋谷」なら1回くらい聞いたことがあるだろうと。
平川CG監督:知名度というところと、全景を映したときにすぐわかる場所というのも大きかったですね。
谷口監督:新宿になると、都庁とか歌舞伎町とかになっちゃって、それは学生っぽくないですしね。
──今回のお話の主人公が学生というのも、すでに決まっていたのでしょうか。それとも、谷口さんからのご提案でしょうか?
谷口監督:いや、私のところにきた企画書にはすでに学生グループという設定があって、できれば守ってほしいという仕事のオーダーがありました。学生がある程度活動できるところ、活躍できる範囲内という形で、結果的に渋谷になったという感じです。
──渋谷のロケハンは行われたのでしょうか? 「revisionsリヴィジョンズ」では、渋谷の街がすごくリアルに描かれていますが、渋谷という街は、気がつくと古い建物がなくなったり新しい建物ができていたりするので、そこを切り取るというのは大変だったと思うのですが。
平川CG監督:そうですね。(ロケハンは)「この時点で終了」と決めておかないと、どんどんどんどん街の雰囲気が変わっていってしまうので、その当時、2017年の何月と決めて、そこまででロケハンをしました。写真もかなり撮りましたね。
──一番「渋谷」を感じる場所というと、やはり「109」や「TSUTAYA」のある…
平川CG監督:スクランブル交差点付近ですね。やっぱりあそこはかなりこだわって…、というか隅々まで合わせたというか。まあ看板の中身とかは変えていかなければいけないんですれど、それはその広告の雰囲気を崩さずにモジッていく感じで。
──そこは白組さんというか、平川さんのこだわりなのでしょうか。「この看板は絶対残したい!」という(笑)。
平川CG監督:ちょっと変に変えてしまうと、画から受ける印象として、街並みは渋谷なんだけどそれっぽくないという違和感が出るので、そうならないよう、なるべく印象を忠実に作りました。
──試写を観させていただいたのですが、冒頭部分だと世界が切り取られた跡…、渋谷ではないというか、荒廃したところも登場しますよね。あのあたりは制作されるときにCGに合致するかどうかみたいな…、渋谷のでき上がった都市みたいなところから荒んだ場所になっていくのに、どれくらい元の渋谷を残したまま、どれくらい壊すかというか、どのあたりまで渋谷を残すかというこだわりもあったのでしょうか。
平川CG監督:渋谷は半径約1kmの球状に切り取られていて、その範囲でスパッと空間が切れています。転送された渋谷の外側の荒野は300年以上先の未来の世界ですが、荒廃はしているけれど近くには池尻大橋もありますし、三軒茶屋もありますし、という形で作っています。地形が変わっている個所はありますが、街の配置は変わっていません。300年以上先の未来、渋谷周辺はどうなっているっていうのが、あの荒野なんです。
主人公・堂嶋大介は、谷口監督が内山さんの声を聞いたイメージから制作されたキャラクター
──なるほど。では次にキャラクターについてお聞きしたいと思います。今回のキャスティングというのは、谷口さんのほうから「この人を使いたい」という要望があったんでしょうか?
谷口監督:「内山(昂輝)さんを起用してほしい」というオーダーがあったので、じゃあそれありきで考えようと。
──キャラクター作り自体が内山さんありきということですか。
谷口監督:そうです。(堂嶋)大介という名前のキャラクターが企画書上にすでに存在していて、この大介というキャラクターは内山さんでいきたいんだというのがあって。
──では、大介という名前と、演じるのが内山さんということだけが決まっていたということですか?
■堂嶋(どうじま)大介(CV:内山昂輝)
17歳。聖昭学園2年生。幼い頃に遭った誘拐事件で自分を救い出してくれた
謎の女性“ミロ”が告げた「大変な危機が訪れる、そのとき皆を守れるのは貴方」という言葉を盲目的に信じ、以来その危機に一人備えている。
ほかに真に受けている仲間はおらず、周囲からは浮いた存在になっているが、それでも自説を曲げず身勝手に行動する。
谷口監督:キャラ表みたいなものはありましたね、何となくこういう感じの方向性みたいな。あとは、私が内山さんの声質を聴いて、じゃあ性格的にこういう形にして、こういうことかなって形のところで組んでいました。初めてですね、こういう仕事の仕方は。
──普通ですと、キャラが決まってからオーディションなり、オファーなりでこの方に、となることが多いと思います。
谷口監督:そうです、先にキャラを作って、それから役者さんを決めるためにオーディションするというのがほとんどです。
──先にキャストが決まっていて、後からキャラを作るといういつもと違うやり方だったことで、苦労したことはありますか?
谷口監督:いや、どの作品でも必ず挑戦ポイントはあります。今回の仕事のポイントのひとつはそういうことなんだな、と思って引き受けたので苦労というのはないですね。
──内山さんの声を聴いて作られたとのことでしたが、もう少し大介というキャラクターができた過程について教えていだけますか?
谷口監督:私の中の「内山さんの声」からできたキャラクターですね。この声の持ち主はきっとこういう性格だよねって。あ、もちろん内山さん個人じゃなくてね(笑)。
──声質から感じるイメージということですね。
谷口監督:ちょっと内にこもっていて、ひとり部屋の中でニヘラニヘラと笑っていて、あまりお近づきになりたくないタイプ…、とそんな感じですね。もし犯罪を起こして捕まっちゃっても、「やっぱりやっちゃいましたか」というそんな感じ。
(一同笑)
──ほかのキャラクターも、そういった声のイメージから決まっていったんでしょうか?
谷口監督:まず内山さんの声がありますから。それに対して男性側のところでいうとすると、まっとうなど真ん中、主人公的な感じの声が必要だろうと。そこは島﨑信長くんにやってもらおうと。対して、接着剤になるような、多少愛嬌があるような芝居もできる声がないといかんだろうと。そこは斉藤壮馬くんにやってもらおうみたいな。そんな感じですかね。あ、決め打ちではなくオーディションですよ。
──なるほど。では、女性側もそうして決まっていったのでしょうか。
谷口監督:そうです、こちらもオーディションですけど。マリマリ(手真輪愛鈴)とかに関しては、自己主張が最初から強かったりするとキャラが崩壊しちゃうので、ちょっと内にこもっていても、叫んだりする時に強い自己主張が入ってくる感じとか。マリマリがそんな感じだとルウ(張・露・シュタイナー)のほうは最初からある程度ハキハキしたところがないとキャラがかぶっちゃうとか。そういう形ですかね。
──ミロに関しては、どのような選択理由なのでしょうか。
谷口監督:ミロに関しては、製作委員会側から「ある程度好かれるキャラクターにしてほしい」というのがあったので。で、そうすると機械音声的な考えではそもそもなかったです。声質の根っこのところに、どこかやさしさであったりとかが感じられる声じゃないとキャラが成立しなくなってしまうというか。やさしい言葉づかいをするわけじゃなくて、突き放した言葉づかいとかキツいことも言ったりするからこそ、声の根っこのところにやさしさがないと成立しないんです。そうしたら小松(未可子)さんが、意外と合ったなあと。
──意外と、ですか。
谷口監督:「意外」というのは、小松さんの声質っていうのは少年(役)に向いていると思っていたんですよね。でも、オーディションしたら「あ、こういうのもいいじゃない」と。
──なるほど。
■ミロ(CV:小松未可子)
パンデミックにより破滅した未来において罹患せず生き残った数少ない人類の子孫である未来人。人類が生き残る未来を護る組織“アーヴ”のエージェント“バランサー”。
アーヴを殺戮するリヴィジョンズに強い憎しみをもち、自身のすべてを組織の活動に捧げている。
感情表現が乏しく、合理性にのみ生きる性格の女性。
谷口監督:なので、ミロのようなタイプのキャラクターができるかなどうかなってのがあったんですが、まあそれは小松さん本人が個人的な努力を積み重ねてこられた結果ですよね。
──収録はもう終わって、制作も佳境な……?
谷口監督:いや、もう私たちがやるべきことは何ひとつありません。
──もうまったく? 完成しているんですか?
谷口監督:ええ、あとは忘年会を待つだけです。(取材は12月末)
(一同笑)
──では、制作が終わってからだいぶ時間が経っているのでしょうか。
谷口監督:先月末(2018年11月)ですかね。
──既存の作品と比べて、製作期間は長いほうでしたか?
谷口監督:いや、結構タイトだったと思いますよ。白組さんがこういう形で丸々制作の中心になって関わるっていうのは、たぶん初めてだと思っていたので、できれば、あと2~3か月渡してあげられればよかったんだろうなあと思いつつ、昨今のアニメの制作状況で考えると、なかなかそうもいかない部分もありつつ、みたいな感じでしたね。
──平川さん、その辺りは?
平川CG監督:まあ、それは与えられたスケジュール内で収めることが前提で。
──白組さんが1本のアニメを丸々制作するのは、今回が初ということでよろしいでしょうか?
平川CG監督:そうですね。白組として3DCGをメインとしたTVアニメーションを1本丸々、単独で制作するのは初ですね。作画を中心とした作品やショートアニメ作品は何本かあります。
──単発作品や映画とは違う大変さというのはありましたか?
平川CG監督:やっぱり12話を全部作りきるときのペース感というのは、今まで全話・全カットというのがなかったので大変でしたね。劇場版でも2時間くらいじゃないですか、TVアニメーションとなると12話で倍近くなると思うので、そのペース配分を今までやってきてなかったので、クオリティとともにそこを一番気にしました。クオリティは保ちつつ、ギリギリの線を狙うというところに神経を使っていましたね。
──今回のCGに関してもうひとつお聞きしたいのですが、キャラクターの動きはモーションキャプチャーを使用しているのでしょうか?
平川CG監督:序盤は使用しました。
──序盤は、といいますと?
谷口監督:キャラクターの動きとかイメージを固めるときですかね。
平川CG監督:なので前半数話に関しては、「大介の動きってどうだろうね」とか、「(浅野)慶作はどんな動きかなあ」というのを、アニメーターの中に落とし込むうえで、谷口監督にもいらしていただいて、実際のモーションアクターさんに演技指導をさせていただいて。それで慶作は結構ひょうきんなキャラクターなので、「動きは軽やかに」とか、あとは芝居の間だったり、そういうのを学ぶうえでも前半でモーションキャプチャーをとって、そのあとは大体手付けのほうに移行していったという感じですね。
──制作されるうえで、モーションキャプチャーと手付けのどちらのほうが制作しやすいのでしょうか?
平川CG監督:やってみて、今回のスタイルはよかったなと思っています。これまでは大体2パターンだったんです。全部手付けでいくか、全部モーションキャプチャーでいくか。どちらもいいところと悪いところがあるんですけど、それをちょっと融合できた感じがあったので。序盤にキャラクターの動きとかイメージを固められたのがすごくよかったなと。
谷口監督:そうですね。あの独特の生っぽさというのは、手描きでやってやれないことはないけど、ものすごい手間暇がかかるので。劇場(アニメ)を作ってるんじゃないんだよ! ってことで。大変すぎて逃げられそうな気がするんですよ、スタッフさんに。
(一同笑)
──メカの動きはCGですよね。
谷口監督:ええ、ああいうのは手付けじゃないと逆に難しいですからね。
──今回、ロボットものという感じの作品じゃないと思うんですが、谷口監督というとロボットものというイメージがあるんですが。
谷口監督:そんなにやってるかな?(笑)
──私の好きな作品がそうなだけかもしれませんが…
谷口監督:今回はパワードスーツですね。最初、企画書のところで、ロボット的なやつと書いてあったんですよ。そのときにたしか私、企画会社の人に「今の御時世、巨大ロボはダメですよ」みたいなことを言ったような気がするんですよ。でも、「それでやりたいんだ。ゲームにもしたいから」と言われて。でも、それから何か月かしたときに、「昨今は巨大ロボはダメだから変えよう」みたいな話をし出して……、「俺言ったよね?」って(笑)。
──「俺はもっと早くダメだって言ってたのに!」と(笑)
谷口監督:何今さら言い出してるんだよ!って。そして、さも俺が巨大ロボを出そうとしたかのような言い方で、会議の流れをリードしようとするとは何事だ!(笑)
──そんなことがあったんですね(笑)
谷口監督:まあ、それは置いておいて。現実問題として、日本国内だけで考えたら巨大ロボという選択肢はあったのかもしれません。ただ、「+Ultra」ということで、ある程度海外も視野に入れていくとなると、巨大ロボというのは不利な面が多々あって、パワードスーツになるっていうのは、当然の流れだろうと。ゲーム的なことも考えたりすると、ということもありましたから。ただやっぱり、メカというか、アクションは映像の華ですからね。そこのところはひとつのクセと言いますか、独特のカッコよさがないとダメなんで、そこは大変ではあるけどすいません、ということで白組さんにお願いする形に(笑)。
平川CG監督:手描きでは難しいパワードスーツの表現がCGではできるので……。手描きでも100%無理というわけではありませんが、やっぱりキャラクターがあれだけ露出していて、手前のところに半透明のカバーがあって、そこのところに常にいろいろな表示が出るっていうのは、TV作品では現実的じゃないんです。常にそこのところに対してCGと連動させるかデータを貼り込んでいくみたいなことをしなきゃいけなくなっちゃうので。
──それが、CGが入ったことで、TVアニメでもあのクオリティが実現可能になったと。
谷口監督:そうですね、逆に表現としてできるようになったというよさだと思います。
──さきほど、お話の中で「ゲーム」という単語が出ていましたが、それはもう予定に組まれていたのでしょうか。
谷口監督:ゲームだけじゃなくて、小説だったりマンガだったりとか、多角展開ができるプロジェクトにできないか、というのが元々のお題だったんですよ。その中の中核がTVアニメです。TVアニメになれば、認知度が格段に上がりますからね。そこのところで1回やってくれないかと。というのが最初のオーダーです。だから私のほうとしては、そこから先がどういった形で展開していくのかというのは、製作委員会の皆さんのほうのお仕事の範疇だろうし、そこで協力すべきことがあれば協力しますし、といった形ですね。
──本作のオファーが来たときに、谷口さんご自身はどのような役割を求められていると感じましたか?
谷口監督:ただ単に、プロジェクトに対する遂行能力を求められていると思いました。
──遂行能力、ですか。
谷口監督:いや、仕事ってそういうもんじゃないですか(笑)。元々私のほうにオファーしてきたのは、(原作・企画・プロデュースを担当する)スロウカーブの尾畑(聡明)さんなんですが、尾畑さんとはその前にも1回仕事をさせていただいたことがあって。スロウカーブとしても、当時そこまで大きいプロジェクトをやったことがなかったとか、フジテレビさんも新枠を作ることになるとか、白組さんのところも初めて(3DCGTVアニメの)全話を自社でやるとか、各社の思惑とかチャレンジの幅が大きかったってことがあって、「まあ谷口なら何となく形にしてくれるんじゃないの?」ということで(オファーが)来たんだろうと思います。
──なるほど。
谷口監督:いや、私のところにくる仕事はそういったタイプのオファーも多いんですよ。各社の調整役というか。ま、そういうときはほとんど『企画協力』とか『クリエイティブプロデューサー』という肩書きになりますけど。(今回のオファーは)そういったことを『監督』としてもやってほしい、という発注なんだなと思いました。個人的には、連続してCGアニメをやっておけると、業界内のところで、私としては特定のジャンルにこだわりがあるわけじゃないんだなってことになるから、先々の営業のことを考えても不利にはならないということもあって。
──以前、「アクティヴレイド」の際にアキバ総研でインタビューさせていただいた時に、「きちんとしたテレビシリーズを作る」ことが個人的な目標だとおっしゃっていましたが、今回の作品の個人的な目標というのは?
谷口監督:サンジゲンのところで1回学んだCGアニメのノウハウというか、守んなきゃいけないところ作んなきゃいけないところを応用して、自分の中でひとつの型として入れ込んじゃうってわけでもないんですけど、覚えこんじゃうのがひとつの目標ではありましたね。
──平川さんはいかがでしょうか?
平川CG監督:個人的な目標は、12話を無事に、クオリティを高く作りきるということにつきますね。やっぱりこの物量をこなすっていうのは、未経験だったってこともありますし、谷口監督の要望に応えられるもので作りきるというのが一番の目標でしたね。
最大の見どころは「ハチ公」
──作中で動かしやすいキャラクターというのはいますか?
平川CG監督:好きなキャラクター…、動かして楽しいのは、ニコラスですね。ちょっとゆるキャラみたいな動きがお気に入りです。ただ、どのキャラクターもいい感じですよ。
谷口監督:可能性を感じています。CGアニメならではの生っぽさというか、本当にキャラがいそうな感じとか、その辺を礎にして進んでいけると映像表現として面白いものになっていくんじゃないかなって気がしています。
──試写を観させていただいた時、キャラクターの会話がリアルだなと感じました。「いるよね、こういう子」とすんなりと受け入れてしまえるというか。
谷口監督:そういった感じの表現だったりが、手描きアニメーションのところはある意味定型化させていったり、記号化を強くしていったりするかたちで見せてしまうことが多いと思うんですが、CGアニメーションの場合は、それとはまた別に、CGだからできる生っぽさといったところで勝負できるなら、これは棲み分けができるんじゃないかなって思っています。
──CGだからできることなど、監督がアニメーションを作っている中で、CGに任せたいこと、手描きでしたいことというのは、どのように決めているのでしょうか?
谷口監督:手描きとCGの違いでいうと、手描きというのは結局どうやったって手で描いているから2Dなんですよ。2Dをなんとなくそこに世界が存在するように見せる技術ですよね。本来なら、街中をフォローしていった時に、そのビルが書き割りのように微妙にズレながら見えていくということはありえないわけです。とくにアニメーションにおける「パン」(カメラを水平方向に振って撮影すること)と言っても、カメラを固定して振っているわけではなく、移動しているケースが多かったりするんですが、それはそれで2Dのところに世界が存在しているように見せる技術で、あれはあれで面白いものだと思うんです。ただ3Dは3Dでカメラが自由になるという点と、ライティングが個人的にはいいですよね。手描きの場合は、ライティングがひとつしかないケースが多いんで。これはしょうがないんですが、メイン光源の方向だけ決めちゃったら、それに対して美術もキャラもそれにぴったり合わせるんですけれども、3Dの場合は、一応メインとしてもライティングがあったとしても、ここから少し当てましょうとか、それができるじゃないですか(笑)。そういうのは楽しいですね。あと長回しができる。長回しだからこそ出る、世界の存在感みたいなものもあるじゃないですか。カットを割っていけば、どうしても作り物臭が出てきちゃいますから。そこの違いがあるから、両方面白いといえば面白いですね。
──他作品にない、今作の見どころはどんなところにありますか。
谷口監督:見どころはすべてですが、さっき言ったストリング・パペット(本作に登場するパワードスーツ)は、手描きではほぼ現実的に不可能です。あとは渋谷の街を歩いていただければ、意外ときっちり再現しているな、とわかるんじゃないかと思います。あ、そうそう、アニメ史上屈指の安定したハチ公が見られます!
──ハチ公、ですか(笑)
谷口監督:こんな立派なハチ公を初めてみましたよ。ハチ公って造形が難しくて、妙に太くてダボッとしたり、精悍になったり…。
平川CG監督:微妙なラインがなかなか…(笑)
渋谷と言えばこの場所を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
— TVアニメ「revisions リヴィジョンズ」放送中! (@revisions_PR) 2019年1月15日
忠犬ハチ公像も作中に登場します!いったい何話で出てくるのでしょうか・・・。そんなリアルな渋谷の風景にも注目しつつ、ぜひお楽しみ下さい。 #リヴィジョンズ pic.twitter.com/9HPAlUQkWJ
──では、平川さんは、本作の魅力や見どころはどういった点だと思われますか。
平川CG監督:個人的にも渋谷の街並みというのは、気に入ってますし、再現度もかなり高くできたかなと。あとはストリング・パペットの造形だったり、処理の細かさだったり。作画のパートもあるのでわかると思いますが、あれを作画でやってほしいと言われた時に、かなり撮影の工程が増えたりするんで、すごく大変だなっていうのがわかるんですよね。ストリング・パペットに表示されているディスプレイであったりとか。そういうのを細かく逐一作っているので、どこを見ても楽しめるんじゃないかなって思います。
──では最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
谷口監督:個人的なところでいくと、THE ORAL CIGARETTESさんの歌だったり、声優さんだったり。声優さんに関しては、若手からベテランまで、それぞれの持ち味のところで勝負してくれていると思うので、そのあたりを聴いてもらえると面白いと思います。今現在のTVアニメに必要とされている要素がいくつか入っている作品だと思うので、一度ご覧になっていただいても損はしない作品になっていると思います。
平川CG監督:映像に関しては、TVアニメとはいえ+Ultraのコンセプトに見合うクオリティという話だったので、どこまでいけたかはわかりませんが、クリエイター・スタッフともども頑張って作った見どころ満載の作品なので、ぜひ見ていただければと思います。
──いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
【作品情報】※敬称略
■TVアニメ「revisions リヴィジョンズ」
<放送情報>
2019年1月より毎週水曜日24:55からフジテレビ「+Ultra」にて放送中
NETFLIXにて全世界独占配信
ほか各局でも放送中
関西テレビ/東海テレビ/テレビ西日本/北海道文化放送/BSフジ
<ストーリー>
「これは予言よ。
あなたたち五人に、いつか大変な危機が訪れるの。
そのときみんなを守れるのはあなた」
幼いころ誘拐された過去をもつ高校2年生・堂嶋大介は、幼なじみのガイ、ルウ、マリマリ、慶作とともに、不可思議な現象──「渋谷転送」に巻き込まれる。
渋谷の中心部が跳ばされたのは300年以上先の「未来」。そこで待っていたのは、広大無辺な荒野と森、点在する廃墟……そして、未来人「リヴィジョンズ」と彼らが操る巨大な機械の化け物だった。
理由もわからぬまま化け物に蹂躙されていく渋谷を助けようと現れたのは、誘拐事件の大介の恩人と同名で瓜二つの少女・ミロ。彼女は、大介たちだけが操縦できる人形兵器「ストリング・パペット」を提供し、渋谷を守れと促す。
誘拐事件の恩人──ミロによる予言「仲間を守る運命」を信じて生きてきた大介は、ついに訪れた危機と手に入れた力に歓喜する。しかし、幼なじみ5人の絆は誘拐事件の影響でバラバラとなっていた。
孤立した街。未知の敵。未確定な過去と運命の予言。
少年少女たちは、「現在(いま)」を取り戻すために「未来」と戦う。必ず、元の時代へ戻る──
<スタッフ>
原作 S・F・S
監督 谷口 悟朗
CG監督 平川 孝充
シリーズ構成 深見 真/橋本 太知
キャラクターデザイン原案 近岡 直
メカデザイン 新井 陽平
CGキャラクターデザイン 白井 順
BGコンセプトアーティスト 白田 真人
MattePaintディレクター 大西 穣
美術・設定 坂本 竜
色彩設計 長尾 朱美
撮影監督 高橋 和彦
編集 齋藤 朱里
音響監督 明田川 仁
音楽 菊地 梓
オープニングテーマ THE ORAL CIGARETTES「ワガママで誤魔化さないで」(A-Sketch)
エンディングテーマ WEAVER「カーテンコール」(A-Sketch)
企画 スロウカーブ
アニメーション制作 白組
制作 リヴィジョンズ製作委員会
オープニングテーマ THE ORAL CIGARETTES「ワガママで誤魔化さないで」(A-Sketch)
<キャスト>
堂(どう)嶋(じま)大介 内山昂輝
ミロ 小松未可子
張(ジャーン)・剴(ガイ)・シュタイナー 島﨑信長
張(ジャーン)・露(ルウ)・シュタイナー 高橋李依
手(て)真(ま)輪(り)愛(ま)鈴(りん) 石見舞菜香
浅野慶作 斉藤壮馬
チハル・イスルギ 日笠陽子
ムキュー・イスルギ 田村ゆかり
堂嶋幹夫 櫻井孝宏
矢沢悠美子 遠藤 綾
黒岩亮平 てらそままさき
牟田誠一郎 飛田展男
泉海香苗 寺崎裕香
ニコラス・サトウ 大塚芳忠
(C)リヴィジョンズ製作委員会
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