アニメ「絆のアリル」、今だから語れるスタッフインタビュー!駒屋健一郎(監督)×千野孝敏(アニメーションプロデューサー)×吉信慶太(アニメーションプロデューサー)×中島直人(プロデューサー)【PR】

アニメ「絆のアリル」のセカンドシーズンが、2023年12月に最終話を迎えた。

セカンドシーズンでは、ファーストシーズンで結成までのストーリーが描かれたユニット「PathTLive」に加え、新たに「BRT5」「VICONIC」「3DM8」のメンバーが登場。ユニットバトルで行われるバーチャルグリッドアワード、ADENシード本選はどうなるのか、そのストーリーとともに、各ユニットの楽曲やMVのようなライブ、ユニット横断のコラボ曲も注目を集めた。最終話となる第24話は、映像の迫力も相まって引き込まれた人が多かったのではないだろうか。

さらにアニメだけでなく、本作に登場する出自も個性も異った15人のバーチャルアーティストが、バーチャル世界にDiveしてさまざまな活動をしているアリルズプロジェクト(Alleles Project/以下、アリルズ)も注目だ。こちらは現在もYouTubeを中心として多数の動画をアップしている。

アキバ総研では2024年3月8日に開催が決定したアリルズXRライブ(https://kizunanoallele.com/?post_type=news&p=1141)を記念して各ユニットのキャストにインタビューを実施してきたが、最後にアニメを作り上げたスタッフへのインタビューをお届けしたい。

駒屋健一郎氏(監督)、千野孝敏氏(アニメーションプロデューサー)、吉信慶太氏(アニメーションプロデューサー)、中島直人氏(プロデューサー)に、今だから言える裏話も含めていろいろとお話をうかがった。


⇒こちらのインタビューもあわせてお楽しみください!

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大事にしたのは各シーズンのラスト

――2シーズン完走お疲れ様でした。まずは、視聴者の反応もご覧になった、いまの率直な気持ちをお聞かせください。

駒屋 視聴者の反応を逐一チェックしていたわけではなかったのですが、見てくださった方にはおおむね好評だったのかなと思って安心しました。いい意見が全くなく、叩かれまくっていたら大変だなと思っていましたので(笑)。

吉信 僕もとりあえずはホッとしました。オリジナル作品としていろいろ大変な部分はありましたけど、2クール分をしっかり放送できて、最終話後には「続きを作ってほしい」との声もいただきました。そういうところも含めてホッとした、というのがいまの気持ちです。

千野 最初のうちは正直、探り探りやっていたところもありましたが、その中でスタッフたちが本当によくやってくれたと思っています。ファーストシーズンとセカンドシーズンでどう見せるか、作っている最中は監督とも吉信くんともよく話していましたから。

駒屋 そうですね。最終的にはいい形に収まったと思いますが、やっぱり最初はとまどいといいますか、何が求められているのかつかみきれないまま進んでいたところがありました。それこそ、アイちゃん(キズナアイ)が主役ではないことは聞いていましたが、もっと出てくると考えていました。ただ、ミラクたちをメインにすることで、結果的にはいい形になったのではないかと思います。


――より具体的に、制作するうえで意識したことや大変だったことなど、振り返ってみていかがですか?

駒屋 ファーストシーズンは物語の進みが遅いという視聴者の意見もあったと思いますが、ファーストシーズンがどういうふうに終わって、セカンドシーズンはどういうラストを迎えるかは一番意識して力を入れたところでした。もちろん、細かい話数でどうこうはたくさんありましたけど、大きなところはそこですね。

千野 吉信くんとも話していましたが、テンポ感はすごく大切にしていました。ただ、セカンドシーズンはキャラクターやユニットが増えたので、ファーストシーズンからギアチェンジをしなくてはいけなくて。そこが視聴者にどう思われるのか心配していた記憶があります。

吉信 確かに、物語のテンポ感について話していましたよね。それ以外で、たとえばキャラクター作りのことでいえば、「元気な子」「前向きな子」といったざっくりとした性格表はいただいていましたが、最初はその程度の情報しかありませんでした。シリーズ構成の赤尾でこさんやライターの方たちが本読み(シナリオ会議)で話し合いながら作っていったんです。そこは、両方のシーズンを通して苦労したところではありますね。

中島 そういったところは、オリジナル作品だからこその苦労でもありますね。

謎のリテイク「ニスカ語をもう少し足して」

――ファーストシーズンではPathTLiveの5人を描いたわけですが、面白いキャラになったとか、特に印象的なキャラをあげるなら誰でしょうか?

駒屋 どのキャラクターも好きですが、個人的にはノエルは結構こだわりました。ノエルについては公式のインタビュー(※)でもお話ししていますので、それ以外のキャラを語るならばリズですね。遅れて登場する彼女をどうやって周りに溶け込ませるのか、あたかも最初から5人組でしたと思えるような仲のよさや彼女の魅力をどう引き出すかは、すごく考えました。ただ、語られていない裏設定も実はありましたので、それを感じられるようなシーンをもうちょっとやれたらよかったなとは思います。

※参考記事:公式サイト 第3回 絆のアリルクリエイターズインタビュー “プロット・設定編”

吉信 僕はまるまるが印象的でした。まるまるは本当に現場に愛されていて、クリエイター陣や演出さんがいいように使ってくれたというか、面白い動きとかミラクとのからみといったものは現場発信で作り上げられたところもあるんです。中身はクオンですから、ちょっとクールなところもありますけど、話数によってかなりおもちゃにされているシーンもあって、そのギャップがいい具合に作用したキャラクターですね。

――PathTLive以外のユニットも登場したセカンドシーズンでは、いかがでしょうか?

千野 面白いと思ったのはニスカですね。やっていく中で「ニスカ語をもう少し足して」と、よくわからないリテイクが出ていたんですよ(笑)。ニスカ語ってなんだよ?と思って。どうやら、回りくどい言い方というか、ちょっとねっとりした感じみたいで、面白いキャラだなと思ったんです。デザインを見せてもらったときに、この子は男の子とか女の子とか意識しないでくださいと言われたので、最初はどう転がそうか悩んだんですね。でも、そういう言葉の言い回しなどが面白くて、印象に残っています。

駒屋 逆に少し申し訳なかったなと思うキャラもいて、エリーとハルだけ個人の話数がなかったんですよ。ハルはちょこちょこ出てきたのでまだいいですけど、エリーはとてもいいキャラをしているのに単体としてお話を描くことができなくて……。機会があれば、この2人をどこかでもっと描きたいですね。

千野 そうですね。限られた中ではどうしても仕方ないことですけど、15人いると当番回もひとり1回ぐらいになっちゃいますからね。

吉信 人数ということでは、キャラクターがめちゃくちゃ増えたので、ひとつの画面に何人もいるシーンはすごく大変でした。ファーストシーズンは、いっても「PathTLive5人」もしくは「4人+まるまる」という構図でしたが、セカンドシーズンではひとつのカットに15人いることもあって。いまはちょっと勘弁してくれ……、と思ったときもありました(笑)。

千野 色とかも被らないようにしないといけないし、いろいろ苦労は感じていましたね。3Dのデザインを見て、その色味は普通のアニメではしないよね、というところもありましたので。それはそれで新鮮でよかったですが。

――3DCGはキャラクターの頭身が2Dとは違っているのも、本作の特徴のひとつとなっています。どちらも魅力的ではありますが、その差異を埋めようとしたのか、逆に意識せずにやったのか、そのあたりについても教えてください。

千野 差異を埋めるというよりは、アリルズプロジェクト(主にYouTubeで活動しているAlleles Project/以下、アリルズ)もそうですが、そういうプロジェクトとして認識していました。3DもMV仕様とアニメ内での配信仕様がありますし、本読みの段階で「意図的に区別しているものなので(差異を埋めなくて)いいです」と言われていたんですよ。

吉信 そもそも、3Dモデルのままで作画はできないですから(笑)。

千野 そうそう。これを作画にしてください、と言われても困るし、逆もしかりで。とはいえ、最初は落としどころをどうするか、探りながらやっていた感じはあります。

中島 そうですね。「絆のアリル」は、作画(2D)と、3DのMV仕様と配信仕様、3種類の絵が混在する作品なんです。いろいろなことが同時に動いていたゆえに、よくもあり、悪くもありといった感じではありましたが、それぞれのよさを生かした描き方や表現の仕方はできたかなと思います。

吉信 各セクションが独立して作っていて、それを合体させるのは本当に大変でしたね。尺を決めるカッティングの段階で、どういうMVがくるのかわからないこともあったんですよ。配信のロームービーも、僕らの中では空白になったまま前後のアニメを作っていたので、不安は常にありました。

千野 3DCGを使ったアニメのときは、2Dの方が遅れがちになることも多いですが、この作品は3Dのほうが後からできてきたので、後から見ていい意味で驚くこともありましたね。

吉信 こんなすごいものが入るんだ!って。

ギリギリまでこだわった「mirAI wave!」は、怖かった事態も!?

――これだけ登場人物が増えると、やはりラストは悩んだのではないかと思います。ここはどのように考えて作られたのでしょうか?

吉信 いい感じに着地させること、それに尽きますね。どうやったら視聴者が気持ちよく最終話を迎えてくれるのか。そこはみんなで話し合いをして、アニメ業界では鉄板かもしれませんが、やっぱりファーストシーズンのオープニングが流れたら熱いよね、と。

千野 変にズレるのではなく、熱いものをちゃんと持ってこようとみんな考えていたから、うまく行ったかなと思います。それに、やっぱり曲の力が大きかったですよね。オープニングもそうですけど、どの曲を聴いても素晴らしくて。

駒屋 そうですね。先ほど言ったような心残りはありましたが、最終24話の終わり方はすごくきれいにいけました。ラストにファーストシーズンのオープニングテーマ「mirAI wave!」がかかって感情が盛り上がる感じにできたのは、すごくよかったと思います。

――皆さんが特に印象的だった曲や好きな曲を教えてください。

吉信 僕はセカンドシーズンのオープニングテーマ「Perfect World!!」ですね。抽象的な感覚にはなるのですが、“2期っぽい歌だな”と(笑)。ファーストシーズンの「mirAI wave!」はファーストシングル感があるというか、デビュー曲のような勢いがあるのに対して、「Perfect World!!」は“こなれ感”といいますか、ちょっと成長した子たちの雰囲気が出ている気がします。昔のアニメで、1期のオープニングはめちゃくちゃ勢いがあるけど、2期はしっとりした楽曲のことってあったじゃないですか。そういうのを思い出したんですよね。

千野 僕は「mirAI wave!」かな。実この曲より先に、最初に聴いたのはVICONICの曲だったんですよ。それを聴いて、どの路線でいくのか全くわからなくなってしまったんです(笑)。しかも、その次に来たのがBRT5の曲。VICONICもBRT5もすごくカッコよくて、完成したものを見たらこの曲でよかったと思いましたが、その2つがポンポンと来てとまどっていたところで「mirAI wave!」を聴いたときに「そうそう! これこれ!」となったんですよ。そういったことも含めて好きですね。

中島 「mirAI wave!」は、一番ギリギリまでこだわっていた曲なんです。音楽スタッフも含めて、1音1音細かく直していて。こっそり直していたのが後から判明するという、怖いこともありましたね。

千野 尺とか変わってないよな? がんばってくれるのはいいんだけど、尺が変わったんじゃ話にならんぞ!と(笑)。

中島 結果的には大丈夫だったんですけど、怖かったですね。そういう思い出もあって印象深いのは「mirAI wave!」です(笑)。

機会があればアニメの続きや、表現しきれなかったことを描きたい

――そのほか制作上の、印象的なエピソードがあればお聞かせください。

千野 キャラクターのことでいえば、もともと「この子は舌をペロッと出す」とか「よくウインクをする」とか、最初はいろいろと決めていたんです。でも、それを最後まで守ったのはリズだけなんじゃないかと思います(笑)。

吉信 確かに(笑)。作ったはいいけど、結局はあまり使われなかったことが多かったですよね。

こだわりとしては、最終話のラストカットは「CACANi」という自動中割ソフトを使用して、CGじゃないかと思うぐらいじわ〜っと動かしています。動検(動画検査)さんも含めた動画チームの職人技ですね。めちゃくちゃ地味なポイントで、視聴者はそこまで気にしていないと思いますけど、よりいいものにしたい一心で、みんなががんばってラストをきれいにしてくれました。

中島 最後のPathTLiveの衣装とか、クリエイター発信で決まったこともありました。佐々木さん(CGディレクター/CG監督の佐々木涼氏)から「中島さん、1個だけ遊びたいことがあるんです。ラストで印象を変えたいから、(衣装の)デザインを変更させてもらえませんか?」と言われて。クリエイターとしてやりたいことだから、とのことだったので、やりましょうと答えたのですが……おっ⁉ このデザイン見たことないぞ?っていうのがあがってきまして(笑)。

千野 え!?となりましたね。

吉信 ビックリしました。サーバーの中に、知らない衣装のミラクたちがいて「なにこれ? 最終話でデザインが変わるの?」って(笑)。

千野 なんだったら、白だけでなく黒い衣装のバージョンもありましたから。こっちからしたら、今から変えるなんて勘弁してくれよと(笑)。でも、みんながんばってくれました。

中島 今だからこうやって笑って話していますけど、当時は笑えなかったです。本当に現場の皆さんががんばってくださったおかげです。クリエイター主導ということでは、キズナアイの「LINX」の演出もそうですね。MVでハートマークが飛んでいますけど、それは「いいね」を表していたりします。彼女はYouTubeをキッカケに羽ばたいたのもあって、いいねや高評価ボタンを押されているのを演出として表現したかったですし、ラストの宇宙のシーンでハートが出てくるのも、全世界、全宇宙でみんなに愛されていますよって表現したかったそうです。そういうこだわりは、CGにもいろいろ入っていますね。

――ぜひ配信やBlu-rayで細部まで見返してもらいたいですね。では最後に、新たなアニメや企画を期待している人もいると思いますので、今後への希望や意気込みをお聞かせください。

駒屋 もともとは“シンギュラリティ”に関するお話も描きたいと思っていたのですが、話数や尺の関係もあってそこまでは描けなかったので、続編ではないとしてもなんらかの形で表現できる場があれば嬉しいです。

千野 僕もアニメの続きをやりたい気持ちはもちろんあります。また呼んでいただけたらこころよくがんばりたいです。

吉信 アニメはひと段落しましたが、アリルズの活動は続いていきますので、(配信などで)またアニメを見てもらえるように活動の幅を広げていただき、プロジェクト全体を応援してくれる人が増えたらいいなと思っています。

中島 この作品には「なりたい自分になる」や「どういう風に自分を表現するか」といったテーマがあり、アリルズという表現もあれば、アニメの中での3Dなどいろいろぜいたくに表現できたかなと思っています。でも、監督もおっしゃられたように、まだまだやりたいことはたくさんありますので、もう一度このチームでアニメを作れるようにがんばっていきたいなと思っています。ぜひぜひ今後も応援をよろしくお願いいたします。

(取材・文/千葉研一)

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