異端審問官となって断罪せよ!「ジ・インクイジター」レビュー! 濃厚な世界観が魅力のアクションアドベンチャー

サクッと気軽に遊べるゲームも楽しいですが、どっぷりと世界観に浸れる“濃い”ゲームを遊びたくなるときもありますよね。今回ご紹介する「ジ・インクイジター」は、そんな需要にこたえる濃厚な世界観が魅力のタイトルです。

本作は、16世紀の異端審問を舞台にしたアクションアドベンチャーゲームです。タイトルにもなっている“Inquisitor”(インクイジター)とは、異端審問官を意味します。異端審問官というのは、中世の世界に存在した司法職であり、カトリックの教えに反する異端や他教を排除することを目的とした捜査員のこと。そんな異端審問官を取り扱う、一風変わったテーマの本作は、ポーランドの作家、ヤチェク・ピエカラ氏の書籍シリーズ「I, the Inquisitor」をベースに制作されたフィクション作品です。

舞台は16世紀のドイツ。主人公は、罪深き街、ケーニヒシュタインに派遣された審問官(インクイジター)のモーディマー・マダーディン。神の法を司り、異端を断罪する役目を担う彼は、この街に潜むというヴァンパイアの存在を調査することとなります。凱旋祭でにぎわう街で起こる殺人事件の謎を解くため、〈非=世界〉に潜入し、襲いかかる闇の力と戦いながら、不信仰者たちを断罪していくのでした……というのが、本作のストーリー。中世ドイツという舞台設定、ヴァンパイアが潜む街、街で起きる血塗られた殺人事件の謎……という、ダークファンタジー調の世界観は、この手のファンタジー作品が好きな方にはたまらないのではないでしょうか。

本作におけるプレイヤーの目的は、インクイジターであるマダーディンを操作して街に潜むヴァンパイアを探し出すこと。とはいえ、もちろんそんなに簡単にヴァンパイアが見つかるはずはありません。というわけで、プレイヤーはさまざまな場所へとおもむいて、ひと癖もふた癖もある人々から情報を集めていかなければなりません。

ゲームを開始してまず目を引くのは、舞台となる街・ケーニヒシュタインの作り込まれたビジュアル。お世辞にもきれいな街とはいいにくいケーニヒシュタインの古めかしい建物の作りや、地面や壁の汚れ感、暮らす人々の服装や顔立ちなど、どれもリアルな生活感がにじみでており、映画の世界に飛び込んだかのような臨場感を味わうことができます。この作り込まれた街の中を、異端審問官という特殊な役割を持つ者になって歩き回るというユニークな体験だけでもかなりワクワクしてしまいます。

アクションアドベンチャーである本作は、基本的に小さな目的を順番に達成していくことで物語を進めていくという作りになっています。しかし、街はなかなかに広く、ただやみくもに歩いていても次の目的地へはたどり着けません。そこで重要となるのがマダーディンの能力のひとつである「祈り」。マダーディンが祈りを捧げることで、次の目的地が可視化されるという仕組みになっているのです。
ゲーム的なシステムだけを考えれば、次の目的地の方角に常時マーカーやハイライトなどが表示されていればいいわけですが、本作はそこに「祈り」というワンアクションを挟むことによって、異端審問官という存在の神秘性や、特殊な世界観に深みが加わっています。この点は、プレイしていて非常に強いこだわりを感じるポイントでした。

本作で重要となる大きな要素は「選択」です。
街の人々と会話をする中で、プレイヤーの前には何度も選択肢が現れます。無礼な陰口をたたいた警備兵をとがめるか、見逃すか。私刑で魔女狩りを行った者の息子をさらし刑に処すか、慈悲をかけるか。盗みを働いたならず者に、死の制裁を与えるか、生かしておいてやるのか……。次々に登場する道徳心が試されるような選択肢は、その選択によってその後の会話や結末に影響を及ぼすため、プレイヤーは選択肢を前にじっくりと考え込んでしまうでしょう。非情な審問官に徹するか、それとも憐れみを持った審問官となるのかという、プレイヤーがキャラクターを演じるロールプレイ的な楽しさもあり、物語世界への高い没入感を体験できます。

主人公であるモーディマーの能力は、先述の「祈り」だけではありません。モーディマーは人々の魂があらわす〈非=世界〉という神秘的な世界に入り込む能力を持っています。この世界では、人々が無意識的に隠そうとしていた秘密を明らかにすることができるのですが、モーディマーをじゃまする厄介な存在も登場します。サーチライトのような光で照らしてくる「穢れ(けがれ)」や、モーディマーに襲いかかってくる影のような「穢れの仔(こ)」など、不気味な異形が行方をはばみ、プレイヤーは「祈り」などを駆使しながら敵から身を隠しつつ、「記憶の断片」を集めていかなければなりません。街でのアドベンチャーパートとは異なり、〈非=世界〉ではホラーテイストを感じさせるステルスアクションを体験できる作りとなっており、手に汗握るゲームプレイが楽しめます。

そのほかにも、ベンチに腰かけて、人々の噂話に耳を傾けながら捜査を進める「盗み聞き」や、探偵さながらに犯行現場の怪しい個所を調査して証拠を集める「調査」、はたまた弱・強攻撃やガード、パリィを駆使して敵をなぎ倒すアクション要素の「戦闘」、画面に表示されるボタンを時間切れになる前に入力したりタイミングよく入力する「QTE」などなど、バラエティ豊かな遊びの要素がたっぷり盛り込まれているのも本作の特徴です。これにより、移動や会話を繰り返す単調なアドベンチャーゲームではなく、プレイヤーを飽きさせない“体験型”のアドベンチャーゲームになっています。

異端審問という特殊なテーマに、ダークで引き込まれる濃厚な世界観と深みのある物語が組み合わさった「ジ・インクイジター」。小説や映画の世界に入り込んだような高い没入感は、実際にプレイして体験してみていただきたいポイント。本作の世界観やシステムにグッとくるものがあった方はぜひ、チェックしてみてください。



  • 【タイトル情報】
  • タイトル ジ・インクイジター
  • 対応機種 PlayStation 5、Windows 11 PC、Xbox Series X|S
  • 発売日 2024 年2月8日(木)
  • 価格 【PlayStation 5】
  • ・デラックスエディション(パッケージ版/ダウンロード版):7,700 円(税込)
  • ・通常版(ダウンロード専用): 6,160 円(税込)
  • 【Windows 11 PC、Xbox Series X|S】
  • ・デラックスエディション(ダウンロード専用): ストア表示価格
  • ・通常版(ダウンロード専用): ストア表示価格
  • ジャンル 断罪アドベンチャー
  • プレイ人数 オフライン 1 人
  • 言語仕様 字幕(日本語/英語) 音声(英語)
  • レーティングPlayStation 5(パッケージ/デジタル):CERO Z(18 才以上のみ対象) ※人体の分離欠損表現の修正・性的表現の一部変更や削除あり
  • Windows 11 PC、Xbox Series X|S:IARC 18+
  • 販売元 Kalypso Media Japan 株式会社
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百壁ネロ

百壁ネロ

ゲーム買いすぎちゃう系ライター。現在積みゲー300本以上。小説家でもあります。著作は「轟運探偵の超然たる事件簿 探偵全滅館殺人事件」(星海社)、「ゆびさき怪談 一四〇字の怖い話」(PHP研究所)など。
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