TVアニメ「ONE PIECE」エッグヘッド編OP「あーーっす!」&ED「Dear sunrise」は進化し続けているから書けた楽曲! きただにひろし×大槻マキインタビュー

アニメ放送25周年を迎え、1月からエッグヘッド編がスタートしたTVアニメ「ONE PIECE」。その新オープニングテーマとエンディングテーマが話題を呼んでいる。

新オープニングテーマ「あーーっす!」を歌うのは、これまで幾度となく「ONE PIECE」のオープニングテーマを歌ってきた、きただにひろしさん。そして、新エンディングテーマ「Dear sunrise」を歌うのは大槻マキさん。作品のファンなら、2人の名前を聞いて熱いものがこみ上げてきたことだろう。きただにさんと大槻さんと言えば、25年前に初代のオープニングテーマ「ウィーアー!」とエンディングテーマ「memories」を歌っていたペアであり、25周年を迎えた今回、再び最強のタッグとして戻ってきたのだ。

アキバ総研では、そんな2人にインタビューを実施。各楽曲のことはもちろん、25周年で再び2人が主題歌を担当することへの想い、アニメのオープニング&エンディング映像のことなど、たっぷりとお話をうかがった。

オープニング映像は1000万回再生を突破! エンディングは“人数”も感慨深いです

――前回、「OVER THE TOP」できただにさんにインタビューしたのが2019年、そのときはTVアニメ「ONE PIECE」が20周年でした。そこから5年経ちましたね。

きただに あっという間ですよね。

――そして今回、初代のオープニングとエンディングを歌った2人が再び集結しました。

きただに アニメが25周年を迎えて、この2人が歌うのは熱いですよね。ここで来るんだ!と正直思いましたけど、この2人でできたことが嬉しかったです。

大槻 私も本当に嬉しかったです。

――そんな2人の楽曲が流れるアニメのオープニングとエンディングは、映像も素晴らしいですね。

きただに いやもう、東アニ(東映アニメーション)さんのがんばりがすごいですよね。コマ割りにしても描き方にしても、締め切り直前までかかったそうなんですよ。どれだけすごいのか考察しているYouTube動画や、スローで見たら結構ネタバレあるぞと言っている人もいますしね。しかも、公式YouTubeのオープニング映像がもう1000万回再生を超えているんですよ。1000万回再生!?ってなるじゃないですか。

大槻 何回も見ちゃいますもん。

きただに 海外からの反応もよく、全世界で受け入れたれたのがすごく嬉しいですし、それも相まって曲も聴いていただけて、25周年のいいスタートが切れたと思います。

――オープニング映像では、ルフィが歩いているところも感動的でした。

きただに そうなんですよ。(歴代の姿に合わせて)服が変わっていくのはグッときましたね。

大槻 好きな人じゃないと作れないですよね。

きただに 本当に。オープニングもエンディングも愛があふれています。

――エンディングの映像も泣きますよ。あんなのズルいです。

大槻 私も1月7日のオンエアで初めて見て、(ルフィの)背中から始まったときは、うわ〜!ってなりました。

――海を向く彼らがひとりずつ増えていくのって、最初の「memories」のエンディングと同じじゃないですか。

大槻 「memories」のときは5人だったのが、10人になったんだなと思って感慨深いです。

――しかも、曲調は「memories」をほうふつとさせます。

きただに ファンは絶対に心をつかまれましたよ。激アツですね。

大槻 本当にすごいです。



「あーーっす!」には複数の意味が! コーラス歌唱者とは驚きの再会!

――では、楽曲のことを詳しくお聞きしていきます。まずは、オープニングテーマ「あーーっす!」の印象や魅力について教えてください。

きただに 毎回そうですが、最初に聴いたときは「こうきたか!」と思いました。この楽曲も「ウィーアー!」からの、いわゆる3人トリオ(作詞:藤林聖子、作曲:田中公平、歌:きただにひろし)で作っています。3人が作る曲にはお決まりのパターンがあって、1番が終わったら楽器ソロのパートがあって、最後の最後にタイトルを叫ぶんです。今回も「All of us(あーーっす!)」って。

これまでの曲もそうなんですが「ワクワク感」はやっぱり大事にしつつ、きただにの声を生かす曲になっています。ただ、(田中さんは)いつもは転調しまくりな、いい意味で変態的な曲を書かれるのですが、今回はめちゃめちゃ(ギミックが)少ないと公平先生が言っていたんです。でも、譜面に起こしてみると、細かなことをいろいろやっているんですよね。「今回はスルメ曲を書いた」とおっしゃっていたように、転調が少ないのに何回聴いても飽きないというか、どんどんよくなってくるのが魅力です。

レコーディングはトライでしたね。今回は最後に「G」の高さの音を出すという、今までやったことのないことに挑戦しています。トラップビートも僕はやったことがなかったですが、〈バチバチ no limit ここからが〉とちょっと今っぽいのも入れていて。やっぱり公平さんも藤林さんも僕も進化し続けているから書けた楽曲だと思います。

きただにひろしさん

――タイトルの「あーーっす!」は、歌詞を見ると「us」のアスですよね。これまで「ウィーアー!」など「ウィー(we)」だったから「us」なんだろうなと思いつつ、次へ向かう「明日」の意味も込められているのかなと思いました。

きただに そうですね。「ウィーアー!」があっての「あーーっす!」ですし、「Tomorrow」の「明日」もかかっていると思います。地球の「Earth」の意味もあると言っていました。タイトルは最初「All of us」にしたかったらしいんですけど、そこを藤林さんが「あーーっす!」にしたんです。この表記だと一発で覚えるじゃないですか。見たら忘れられない感じにするのがすごいですよね。

大槻 覚えますよね。最初にタイトルを聞いたときは、は? なんですって?と思いましたけど(笑)。

きただに 英語表記では「u」が多くなっているのも面白いです。タイトルの見た目からキャッチーですし、メロディもどこがサビかわからないぐらいキャッチーで、やっぱりいいトリオだなと思いましたね。

――フルで聴くと2番に入ってからいろいろと変化があって、すべてが飽きさせない作りになっていますね。

きただに そうなんです。たとえば、2番の〈常識に頭シェイクされたい〉の〈シェイク〉のところは、メロディではなく叫んでいますけど、ここはレコーディング現場で変わったんですよ。〈シェイク〉だから叫んだほうがいいんじゃない? って。

――「OVER THE TOP」のインタビューでも、レコーディングで変えた部分を話していましたね。

きただに そうそう。譜面上では、音符がない「✕」にしようと。現場で決まるパターンはよくあるんですよね。

大槻 上手というのも失礼ですけど、ここの叫びはきれいに決まっていて格好いいです。

――コーラスも印象的ですね。コーラスを担当した高橋あず美さんのゴスペルが入ることで、すごく荘厳というか厚みがすごくて。

きただに 彼女は公平先生が偶然見つけたんですよ。YouTubeでニューヨークの地下鉄のところで歌っているのを見て、「この子に歌ってもらいたい」とこっちから連絡を取ったんです。

――田中公平先生から突然連絡が来たらビビりますね(笑)。

大槻 本物? ほんとかな?って(笑)。

きただに しかも、本当に偶然なんですけど、彼女は僕が専門学校で教えていたときの生徒だったんです。卒業のときはいつも「業界で一緒にがんばろう!」と送り出すんですけど、本当に一緒になったなと。しかも「ONE PIECE」で。

大槻 25周年のこのタイミングでね。すごくないですか?

きただに 驚きました。でも、彼女のフェイクからのラストのサビが始まると、サビがもうひと盛り上がりするんですよ。あの転調のところとかめちゃくちゃ格好いいです。

大槻 最高です!

――大槻さんは「あーーっす!」を聴いていかがでしたか?

大槻 私、いち早く聴かせていただく機会があったんですよ。しかもダニー(きただに)さんの生歌で。それを聴いて「なんじゃこの曲は!」ってなりました。

きただに 両国でね。あれはレコーディングの前日でした。

大槻 いままでの感覚とは全く違う曲を出してきたな、どう受け止めたらいいんだろうって思うぐらい斬新な曲で。先ほど話していた〈バチバチ no limit ここからが〉のところとか、こんなに格好よく歌える人がいるんだ、自分だったらあんなに決められないと思いましたね。イベントでご一緒させていただくたびにすごいなと思っていたんですけど、「あーーっす!」でさらにダニーさんの格好よさが倍々になったといいますか。自分の曲よりも口ずさむ回数が多いぐらい、本当にスルメ曲だなと思います。

――いままでと違う感じもありつつ、やっぱり聴くと「ONE PIECE」の曲なんですよね。

きただに 歌詞に〈ONE PIECE〉って入っていますからね(笑)。「ウィーアー!」も「ウィーゴー!」も全部に入っているのが、逆にすごいです。タイトルをぶち込むのは、僕たちが子供の頃に見ていたアニソンのよさですし、日本が持つ素晴らしいアニソンを大事にしながら作り上げてきました。

ルフィたち麦わらの一味だけでなく、みんなも太陽のような笑顔の持ち主

――続いて、エンディングテーマ「Dear sunrise」についてお聞きします。大槻さんは作詞も担当されていますが、曲を聴いたときはいかがでしたか?

大槻 曲を先にいただいて、それを聴いて作詞をしたのですが、曲は「memories」をほうふつとさせるというか。その後の世界観、25年経ったいまの「memories」のアンサーソングのような雰囲気だなと感じました。「memories」のときは、実は「ONE PIECE」のことを全然知らずに詞を書いたんです。でも、今回は完全に知っている状態。

きただに 大ファンですからね。

大槻マキさん

――X(旧Twitter)のスペースで、「歌詞が出来上がるまで麦わらの一味のみんなの事だけしか考えてなかった」と話していましたね。

大槻 そうなんです。最初はルフィに対する25年分のラブレターにしようと思っていたんですけど、書いていくうちに麦わらの一味みんなのこともどんどん気になってきちゃって。ファン目線というか、ファンの人たちもきっとこういう気持ちなんだろうなと思いながら、すごくいい距離感で歌詞を書けたと思います。

曲がきてから最初に歌詞を提出するまで1週間いただいたのですが、その1週間はいろいろな誘いを断り、麦わらの一味のことしか考えていなかった期間でしたね。

――歌詞を読みながら聴いていると、ルフィたちのことを書いているのと同時に、これって「ONE PIECE」と一緒に育ってきた自分たちのような気もしました。

大槻 まさしくそのつもりです。そう感じて聴いていただけたのなら、この歌詞を書いてよかったなと思います。

――やっぱり、みんなで走ってきた感がありますからね。

大槻 みんなもルフィと同じように傷ついて、また起き上がって。サビの〈太陽のように笑うあなたへ〉は、よく「ルフィのことですか?」と聞かれるんですけど、「いやいや、君たちも落ち込んで元気になったら笑うでしょ?」って。みんながみんな、そういう笑顔の持ち主なんですよ。

――作曲は久下真音さんと金子麻友美さん。久下さんは編曲も担当しています。

大槻 アレンジは毎回試行錯誤するのですが、今回は「とにかくエモく」をテーマにみんなで作り上げた感じです。とにかくエモく行きましょうと(笑)。

きただに エモいですね。音数の少なさが逆にいいんですよ。

――きただにさんは「Dear sunrise」を聴いてどのように感じましたか?

きただに もうね、サビの頭でわしづかみですよ。〈太陽↓の↑ように〉と、「の」をあの音にするのがすごいなと思って。僕が作曲者だったら、普通に〈太陽の→ように〉とやると思うんです。でも、〈太陽↓の↑ように〉とすることで、“ため”が1個生まれるんですよ。ためが生まれて16ビートの裏になるので、ここでグッと来ましたね。

そして、〈大人になっても 忘れたくない〉でトップの音までいって、〈この(願いがとどくまで)〉で下がるじゃないですか。トップから下げることによって、忘れたくないと思いをグッと堪えている感じがさらに出るんですよ。ここもいいなと思いました。

大槻 ありがとうございます! 本当に細かく聴いていただいて、感動しています。

守りに入らず、自分自身を甘やかさないことが変わらない秘訣

――どちらも本当に25年が詰まった楽曲ですよね。そんな25年前の自分を振り返ると、どんなところに成長を感じますか?

きただに それはもう25年分、成長していると思います。「ウィーアー!」を聴くとやっぱり若くて、甘い部分やジャッジがあったんです。でも、そこから25年間さまざまなレコーディングをし、JAM Projectでもまれ、多くのパフォーマンスを経験して成長してきました。メンタルもそうですし、フィジカルもそうです。普通であれば55歳のおっさんが25年前と変わらずに「ウィーアー!」を歌えているのは、すごく成長できたからなのかなと思います。

――今回は「G」の高さまで挑戦していますし、喉もすごいですね。

きただに それに関しては、あえて過保護にしないほうがいいかな、と思うようになりました。守りに入った人間は弱くなっちゃいますから。あくまで持論ですけどね。

あと、ジンクスを作らないようにしています。もし「赤いパンツを履いていたとき」に、すごくいいライブができたとしますよね。そうすると「赤いパンツを忘れたとき」のひどさたるや……赤いパンツがないとわかったら、メンタルがやばくなってなにもできないと思うんですよ。

大槻 そのジンクスに依存しがちになりますからね。忘れたときはすごくショックだし、なにかのせいにしちゃうだろうし。本来なら、そんなの関係なく、いい歌が歌えるはずなのに。

きただに そうなんです。

――大槻さんは25年前を振り返っていかがですか?

大槻 昔は「自分の歌い方はこれでいいのかな?」と手探りのまま歌っていたところがありました。でも、私の歌声が定着していき「聴けば一発で、マキちゃんが歌っているとわかる」と言っていただけるようになってから、自由に歌えるようになった感じがあります。なにかにとらわれることなく、それこそジンクスとかも作らずに。

ダニーさんがおっしゃっている「自分に甘くしない」というのは、いつもの自分でいることの大切さを一番大事にされていることだと思うんです。私もそうです。常に最高の状態というか、いつもの自分を保つことが一番大事だと思うようになりました。

きただに 常にいつもの状態でいるのって、なかなかできないですけどね。

大槻 それに、ダニーさんはきっとすごくストイックな生活をされていますよね。夜明け前に起きていますし。

きただに それは、おっさんだから早く目が覚めるだけで……(笑)。

大槻 食生活も気にされていて。

――Xに載せている料理とかすごいですよね。

大槻 本当にすごいです。しかもご自身で作られていて。めちゃくちゃ食べたいですよね。25年経ってもお隣でこれだけ現役で若々しくて、進化はしているけど(いい部分は)ずっと変わらないままな方がいるから、私も見習わないといけないなと思います。

「ONE PIECE」を通して世界中に行くことができ、多くの人とも出会えました

――最後に、これまで「ONE PIECE」に携わってきて、特に印象的だったことをお聞かせ下さい。

きただに 最初は「ONE PIECE」のことをなにもわからず、漫画も読んでいなかった2人が「ウィーアー!」と「memories」を歌っていましたが、今や「ONE PIECE」愛にあふれたファンの一員というか、「ONE PIECE」の一味になっています。

「ONE PIECE」がこれだけすごいアニメになったことで、世界中のいろいろなところに行くことができたのは、やはり印象的なことですね。それってネットのおかげもあると思うんです。海外に行っても、みんな曲を覚えていて大合唱になりますから。1月のLA(「BANDAI CARD GAMES Fest23-24 World Tour」でのステージ)でも「あーーっす!」を初めて歌わせていただいたのですが、みんな湧いてくれました。

大槻 「Dear sunrise」も初披露でした。

きただに やっぱり世界のイベントでの大合唱はすごいです。お客さんが万単位ですからね。イントロが流れたら、サッカーでゴールが決まったぐらいの歓声で。

大槻 ほんと湧き方が半端ないですよね。

きただに 僕が歌い出すと、みんなが一緒になって大声で歌うんです。1万人対1人なので、僕の声がかき消されるぐらいの勢いですよ。そういう体験をさせていただけているのが、本当に幸せだなと思います。

大槻 感動ですよね。私も「ONE PIECE」で歌った楽曲を通して、特にこの10年はどんどん海外の方からの認知度がすごくなりました。自分のYouTubeで歌った動画にも海外の方のコメントが多いんですよ。そのおかげで多くの場所で歌わせていただき、いろいろな方と仲良くなれました。それが大きなインパクトですね。

きただに 確かに、「ONE PIECE」を通していろいろな人と知り合えましたね。声優さんも含めて。尾田先生の家で毎年たこ焼きパーティーをやるんですけど、そこにおじゃまさせていただくと、有名人がいるから、写真撮っていいですか?ってなっちゃいます(笑)。

――いやいや、きただにさんも有名人ですから!(笑)

大槻 ダニーさんはともかく、私は顔が認知されていないのに「◯◯を歌っていた大槻です」と言うだけで、すぐ仲良くなれるんですよ。そこから話が弾んで、いろいろな人とお話ができます。

きただに それも「ONE PIECE」のおかげですね。みんな「ONE PIECE」愛にあれていて、繋がりも絆もすごく強いんです。25年間携わってきましたが、番組を通してこんなに声優さんと仲良くなれるのはなかなかないですね。イベントとかでもみんな“仲間”って感じで。

大槻 本当に10人の声優さんが“麦わらの一味”に見えちゃいますよね。

きただに そういう意味でも、「ONE PIECE」は自分の中で切っても切り離せない作品になっています。

大槻 私もそうですね。


(取材・文・撮影/千葉研一)




【CD情報】

■TVアニメ「ONE PIECE」オープニング主題歌 きただにひろし「あーーっす!」

発売日:2024年4月10日(水)
発売元:エイベックス・ピクチャーズ

・形態:CD+Blu-ray or DVD
・価格:2,200円(税込)

作詞:藤林聖子、作曲:田中公平による「ウィーアー!」の正統後継作「あーーっす!」含め4曲収録

<Blu-ray、DVD収録内容>
「ワンピース」主題歌歌唱曲、初のミュージックビデオを収録


■TVアニメ「ONE PIECE」エンディング主題歌 大槻マキ「Dear sunrise」

発売日:2024年4月10日(水)
発売元:エイベックス・ピクチャーズ

・形態:CD
・価格:1,650円(税込)

「Dear sunrise」含め4曲収録で2016年「Destiny」以来となるリリース。「memories」を彷彿とさせる25年の想いが詰まった楽曲。


©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

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