実はドラゴンボール空白地帯なのかもしれない中国の状況と 古参のオタクにとっては残念な中国の4月新作アニメ事情【中国オタクのアニメ事情】
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中国オタク事情に関するあれこれを紹介している百元籠羊と申します。
今回は中国の動画サイトで配信されている日本の4月の新作アニメに関する動向や、中国独自の状況にもなってきている中国のドラゴンボール事情などについて紹介させていただきます。
1月よりはよいものの期待作の続編の配信はやはり難しい?中国の4月新作アニメ
ここ数年の中国では娯楽分野に対する規制の強化で映像作品の配信も何かと難しくなっていることもあり、日本の新作アニメに関してもひと昔前のような日本での放映とほぼタイムラグなしに大量の作品が配信されていた状況は遠いものとなっています。
そんな状況ではありますが、4月の新作アニメに関しては直近のシーズンと比べれば比較的ましなものになっているそうで「怪獣8号」や「響け!ユーフォニアム3」など中国のオタク界隈でも注目が集まっていた作品の配信が始まっているそうですし、前シーズンから続いている「ダンジョン飯」なども引き続き好調を維持しています。
最も、過去に中国でも大人気になり現在も作品関連の話題を見かける「この素晴らしい世界に祝福を!」や「デート・ア・ライブ」、「狼と香辛料」といった作品の続編やリメイクの配信に関する情報はこの記事を書いている4月下旬の時点でも出ていないようですし、中国のオタクな方々からは「4月の新作の配信は中国の古参となる世代のオタクにとっては何かと残念に感じるラインアップ」などといった話も聞こえてきます。
特に「デート・ア・ライブ」はアニメの続編制作の理由として中国における人気の高さがありアニメ4期の際にはそのあたりの事情も強調されていた作品でした。しかし第5期の「デート・ア・ライブV」に関しては中国本土向けの配信は音沙汰なしのようです。さらに中国のネット上ではアニメ制作に関わった中国側の会社や部門の撤退、解散なども含むネガティブな情報が何かと流れてくるのでがっかりしているファンも少なくないとのことです。
それから新作アニメとは対照的に、劇場版アニメは4月3日から中国本土での上映が始まった「君たちはどう生きるか」が絶好調など、希望の持てるニュースも多く聞こえてきます。
中国本土における「君たちはどう生きるか」の興収は4月20日の時点で7億元(約150億円)を突破し、「THE FIRST SLAM DUNK」の6.6億元(約142億円)や「君の名は。」の5.8億元(約125億円)を超え、中国本土における日本映画の興収歴代1位「すずめの戸締り」の8億元(約173億円)に次ぐ数字をたたき出しているとのことです。
中国市場における「君たちはどう生きるか」の勢いについては、三連休となった4月4日~6日の清明節の休みに合わせた上映開始が何かとよかったという話もありますし、ほかにも中国のオタクな方からは、
中国映画市場における「君たちはどう生きるか」の好調に関しては、元々中国で宮崎駿作品が「失敗のない選択肢」になっていたことに加えて、中国国内での宣伝が日本と違い内容に関する情報が出ていてポスターなどが中国人好みのデザインになっていたのも大きいと思います。また中国ではこの作品が宮崎駿監督にとって実質的に最後の作品になるのでは?という考えもあるので「見ておかなければならない」と考えた人も少なくないでしょう
内容の評価に関してはまだ賛否両論あるようですし「これまでの宮崎駿作品の中で最も理解するのが難しい」といった評価も出ています。しかし宮崎駿監督の名声を考えればこの作品が中国国内の興収で上位に入るのは不思議ではありません。過去作品のリバイバル上映でさえ興収ランキングに入っているのですから
などといった話もありました。
実はドラゴンボール空白地帯なのかもしれない中国
中国でも大人気になった日本の作品の中で、「ドラゴンボール」は特によく知られている存在かと思います。先日、鳥山明先生の訃報が流れた際には中国国内でも大きなニュースとなり衝撃を受ける人が続出していました。
しかし中国における「ドラゴンボール」の人気に関しては、日本国内やほかの国・地域の人気と異なる部分もあるようです。
中国のオタクな方々の話によると、中国では「ドラゴンボール」の扱いに関して上の世代にとってはまさに「思い出の作品」になっていて、影響を受けたクリエイターも多いそうです。
しかし現在の中国のオタク界隈で活躍している層も含まれる下の世代にとっては、「作品の価値や作品関連のネタも知られている有名作品ではあるが特に思い入れはない」といった扱いになっているそうで、日本やほかの国・地域と比べると「ドラゴンボール」に対する思い入れが相対的に薄く、「世界的な人気の中である種の空白地帯になっているのかもしれない」といった指摘もありました。
こういった中国独自の事情の理由としてはまず人気になった時期や、作品が広まったメディアによる影響が考えられるそうです。
「ドラゴンボール」が大人気だった1990年代前半の中国は海賊版漫画の全盛期でもあり「ドラゴンボール」も主に海賊版漫画を通じて広まっていったようで、当時の中国で「ドラゴンボール」は最も売れる海賊版漫画のひとつだったそうです。
私はちょうどその時期から中国に留学していたのですが、当時はさまざまなところで「ドラゴンボール」の人気のすごさを実感しました。中国人のクラスメートが日本人の私に振ってくる日本関連の話題は「ドラゴンボール」に関する話がとても多く、ほかにも「ドラゴンボール」と鳥山明先生の人気の利用を企んだのか、まったく関係ない作品の海賊版が「作者:鳥山明」となっていたり「ドラゴンボール」と似たような中国語タイトルで売られていたりと、もともと違法な海賊版がさらに違法になっていたことなどが妙に記憶に残っています。
しかしアニメ版「ドラゴンボール」は当時の中国のテレビで放映されることはほぼなかったらしく、それが中国では特定の世代とそれ以外で作品に対する思い入れや人気の差が激しい、特定の世代以外に作品が広まっていない原因にもなっているようです。
当時の状況を知っている中国のオタクな方からは
昔は中国の子供が「ドラゴンボール」のアニメを見る機会はかなり少なかったと思います。たまに劇場版が中国のテレビで放映されたことはありますし、地域によっては香港のテレビ局で放映されていたのを見ることができましたが、アニメファンにとって共通の思い出になるようなものではありませんでした
アニメに関しては海賊版というルートもありましたが、海賊版ディスクは海賊版漫画に比べて割高で子供のお小遣いで買うのは困難でした。そもそも海賊版漫画も当時の子供にとってはけして安くなく、海賊版業者の売り方も高額でひどいものでした。中国のテレビでアニメが放映されなかった「ドラゴンボール」と中国でアニメが放映されて大人気になった「聖闘士星矢」や「SLAM DUNK」と比較すると、現代におけるファン層の広さやファンの熱量、話題性などに関して明確な差があります
などといった話もありました。
それに加えて、「ドラゴンボール」の原作終了後に製作されたアニメやゲームなどの作品が中国にはあまり入っていないというのも無視できない要素だそうです。
このあたりに関しては以前中国のオタクな方から
日本やほかの国で、ファンの熱を維持する燃料となっていたゲームなどの関連作品がなかった中国ではファン層の維持が困難でした。そして日本やほかの国と比べて「ドラゴンボール」は過去の作品という扱いになっていきました。こちらの感覚では今でも「ドラゴンボール」が日本の有力なIPとして世界中で大きな利益を生み出しているのが少し不思議に思われています
などといった話を聞いたこともあります。
またそれ以外にも近年の「ドラゴンボール」の新展開が中国のファンの好みからズレているというのも理由として考えられるそうです。
中国のオタクな方から聞いた話には
これはドラゴンボールに限った話ではありませんが、中国のファンには原作どおりの展開と作品設定の整合性を重視する人が多くいます。だから中国のドラゴンボールファンには近年の新展開による新しい設定やさらなるインフレを受け入れられない人が目立ちますし、「現在のドラゴンボール」に関して複雑な思いを抱いているファンも少なくないです
というのもありました。
以上のような中国のドラゴンボールファン事情は新作劇場版の興収などにも影響しているようで、近年中国国内で上映された「ドラゴンボール」の新作映画に関しても「見た人の評価は高い」といった話はあるものの興収的にはあまりうまくいっていないのが見て取れます。
このあたりに関して中国のオタクな方からは
近年の中国映画市場における日本のアニメ映画の興収は大まかなイメージで一千万元(約2億円)以下は失敗、三千万元(約6億円)はオタク向けなら失敗ではない、五千万元(約10億円)くらいからはヒット、一億元(約21億円)を超えたら大ヒットという感じだと思います。中国で評価が高い「ドラゴンボール超ブロリー」でも興収は約三千百万元(約6億7千万円)でした
中国のドラゴンボールファンは高齢化して新規ファンの追加もなく、新しい展開についていけない人も多いので、私は興収が三千万元を超えた「ドラゴンボール超ブロリー」はかなり健闘した方だと思っています。しかし同時期の日本アニメ映画の興収と比べると厳しい数字ですし中国に入ったほかの劇場版2作はどちらも興収一千万元台でしたから、ドラゴンボールが現在の中国国内市場で人気があると単純に言うことはできません
といった話もありました。
以上のような背景もあるので、「ドラゴンボール」は中国国内における知名度やイメージ自体は非常にいい作品ではあるものの、商業的な展開や若い世代に対するアピールなどに関しては考えて扱う必要のある作品になっているのかもしれませんね。
90年代から十数年中国の学校に通い「日本のアニメや漫画、オタク文化が好き」な中国人達と遭遇。以後中国にいつの間にか広まっちゃった日本のオタクコンテンツやオタク文化等に関する情報を発信するブログを運営中。
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