今年で10周年!2014年春アニメ「魔法科高校の劣等生」「ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ」「ハイキュー!!」をプレイバック!【アニメ10年ひと昔】
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「十年ひと昔」と申しますが、アニメの世界で10年前は大昔のように感じることもあれば、今でもバリバリ現役のシリーズ作品がすでに放送されていたりという、微妙かつちょうどいい間合いの時間です。
魔法科高校の劣等生
佐島勤氏のライトノベルは連載から6年を経てアニメ化されました。
超能力に魔法という名が付いた近未来。強大な魔法力を持つエリートの妹・深雪と、これを守ろうとする劣等生の兄・達也は、魔法技能師を育成する高校に入学し、様々な事件に巻き込まれていきます。
本作を象徴するのは「さすおに」というネットスラングでしょう。深雪は作中でたびたび「さすがはお兄様です」と兄を褒め称えるため、略した「さすおに」が定型句としてネットスラング化しています。2017年のイベントで発表されたところによると、総回数は第1期26話で172回。1話あたり6.61回「さすがはお兄様です」が発せられた計算です。
この「さすおに」からは、人気の秘密が見えてきます。それは、「『魔法科高校の劣等生』は達也というヒーローの活躍を描く作品である」というコンセプトの明確さです。
達也は魔法力が低く、一族の中でも軽んじられる「劣等生」ではあるものの、実は希有な才能を持った超天才。幼少の頃から過酷な戦闘訓練を施された彼は非常に優秀な軍人で、常日頃から鍛錬を欠かさず戦略級の力の持ち主として恐れられます。まさに超人(原作では魔王やラスボスとも)ではあるものの、彼が願うのはただ深雪の幸せ。愛する深雪に危険が迫ろうものなら、冷たい怒りに燃えて冷酷に報復を行うのです。
超人揃いのエンタメ世界において、並の超人では超人たり得ないのですが、達也の超人ぶりは読者の想像を越えたものです。言い換えれば男の子が夢想する最強ヒーローを何周りも上回ったのが達也。こんな規格外の主人公が魔法や未来兵器が入り乱れる中で戦う学園+異能力ものですから、面白くならないわけがありません。まさにキャラクターから舞台設定までストレートにワクワクできるもののてんこ盛りであり、視聴者は達也の活躍に見惚れつつ、深雪とともに「さすがはお兄様です」と褒め称えるしかありません。つまり「さすおに」は、本作のコンセプトの明確さを示す最大の賛辞なわけです。
監督は「トランスフォーマー ギャラクシーフォース」「咲-Saki-」「境界線上のホライゾン」の小野学氏、キャラクターデザインは原作小説のイラストを手がけた石田可奈氏。第1期は2クール26話で放映され、2017年に劇場版が公開。2020年には第2期「来訪者編」、2021年末にスペシャル「追憶編」、2024年に第3期……とコンスタントなアニメ展開が続いています。アニメ第1期放映後の2014年10月には電撃系のキャラクターが集う格闘ゲーム「電撃文庫 FIGHTING CLIMAX」に参戦。同作はノベルゲームの同人格闘ゲーム化で有名なフランスパンが開発を担当しており、原作がWEB小説であったのとあわせて象徴的なできごとといえるでしょう。
ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ
「キャプテン・アメリカに超人ハルク、雷神ソーやアイアンマンといったマーベルコミックのキャラクターたちが一堂に会するアニメ」と聞けば海外作品を連想しますが、本作を制作したのは日本の東映アニメーション。2014年当時、日本人にはまだなじみが薄かったアメリカンコミック(アメコミ)のアニメを日本に紹介するという意欲的な作品です。
不思議な「ディスク」にヒーローやヴィラン(悪役)たちが封じられてしまった。キャプテン・アメリカをはじめとした世界最強のヒーロー集団「アベンジャーズ」も例外ではない。ディスクからヒーローを解放できる力を手に入れたアキラたち5人の少年少女は、アベンジャーズのメンバーとパートナーになり、事態を収拾すべく戦うのです。
もともとアメコミは玩具とも縁が深いのですが(例えば2020年に邦訳版が出版された「マーベルスーパーヒーローズ シークレット・ウォーズ」は、もともと1984年にフィギュアとタイアップしたアメコミで、当時のシーンの雰囲気を垣間見ることができます)、本作の設定は前代未聞。メンコのようなディスク(バチ魂ディスク)を地面に叩きつけると、アベンジャーズをはじめとしたヒーローたちが出現するさまはまさにアメコミ+ポケモン+メンコ! 和洋のホビーが時代を越えて合体した感があります。
ヒーローたちがディスクから実体化するにはアキラたちがその場にいる必要があり、加えて時間もわずか5分ほどと限られています。そして、アキラたちはあくまでただの少年少女であり、ディスクの力がなければヴィランたちには立ち向かえません。こうした制限は、これまでのヒーローものとはひと味違った緊張感をもたらしており、マーベル好きにとっても見応えのある作品になっています。
アキラたちが、パートナーとなったヒーローたちと交流することで成長するのも見所の一つ。等身大の少年少女たちを導いてくれるのは世界最強のヒーローたちというわけで、まるで夢のようなシチュエーションです。そして、敵味方が戦場でディスクを叩きつけるとさまざまなヒーローとヴィランが現れて、夢のカードを実現してくれるというのは実に贅沢な設定です。
変化し続けるマーベルユニバースの最新設定を反映しているのもポイント。シリーズ構成のキング・リュウ氏は正体不明の「覆面脚本家」(本人Xのプロフィールより)ですが、解像度の高い脚本でマーベルファンたちを唸らせました。
本作は、普通の少年少女たちがアベンジャーズと交流するという図式からもマーベル世界への入門に向いています。5年後の2019年には映画「アベンジャーズ/エンドゲーム」で日本にもマーベルブームが巻き起こりましたが、本作が下支えしたところもあるのかも知れません。
ハイキュー!!
古舘春一氏が「週刊少年ジャンプ」に2012年から連載したバレーボール漫画が2年後の2014年春クールにアニメ化されました。
バレーを愛するものの恵まれない中学時代を過ごした日向翔陽は、かつて自分を負かした天才セッターの影山飛雄と烏野高校のバレー部で再会、反目しあいます。そんな中で合図なしに行う常識外れのコンビネーション「変人速攻」に開眼、日向と影山は晴れてバレー部の一員に。個性的なチームメイトたちとともに高みを目指して挑戦していくのです。
経験は不足しているが身体能力とコミュニケーション能力の高い日向と、優秀な選手ではあるものの向上心が高すぎて孤立した過去を持つ影山、正反対な2人が互いを認め合っていくさまはこれぞスポーツ漫画。チームを支える主将の澤村大地、温和だが時に辛辣な一面もある菅原孝支、見た目は厳ついが内面は繊細な東峰旭、圧倒的な存在感で皆を安心させる西谷夕、義理堅くメンタルの強い田中龍之介など個性的な仲間たちがドラマを作っていくところは、まさにチームスポーツの面白さです。
さらにライバル校にも濃いキャラクターたちがいて細かく心情が描かれているのですから、まさにキャラクターのるつぼ。対戦する両チームに推しがいて、どちらにも勝ってほしい、なんて贅沢な悩みすら味わえます。そして、本作を貫くのは、友情、努力、勝利という、少年マンガの王道。パワフルな演出とのあわせ技で、見る側も熱く燃えてくるのです。
アニメ版を制作したのは「ダイヤのA」「黒子のバスケ」「新テニスの王子様」「ボールルームへようこそ」「アオアシ」などスポーツアニメを多く手がけるProduction I.G。「おおきく振りかぶって」の野球作画で名を上げた満仲勧氏を監督に据える万全の体勢で臨み、リアルなバレー描写とスポーツアニメのカタルシス、ていねいな心理描写で高い評価を獲得しました。
2014年には天皇杯・皇后杯 全日本バレーボール選手権大会やV・プレミアリーグ、全日本バレーボール高等学校選手権大会といった実際のバレー大会とのコラボが行われ、バレーの魅力を広く周知。変わり種としては2022年に狩猟アクションゲーム「モンスターハンター」とのコラボカフェが行われ、同作の装備を身に付けた日向たちがファンを喜ばせています。2023年には日向と影山が「仙台観光特使」に就任し、仙台の体育館に記念モニュメントが設置されるなど、広く親しまれる作品になりました。
(文/箭本進一)
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