夏アニメ「僕の妻は感情がない」放送開始記念! 豊永利行(小杉タクマ役)×稲垣好(ミーナ役)インタビュー!
7月2日(火)よりTOKYO MX、MBS、BS朝日、AT-X、CBCにて順次放送がスタートするTVアニメ「僕の妻は感情がない」。
原作は「次にくるマンガ大賞2022」コミックス部門第6位入賞のほか、SNSを中心に話題となっている杉浦次郎先生の大人気漫画(「月刊コミックフラッパー」(KADOKAWA刊)にて好評連載中)。一人暮らし3年目の社畜サラリーマン「タクマ」と、<感情がない>家事ロボット「ミーナ」が織りなすハートフルストーリーだ。人間とロボットという2人がとあることから夫婦となり、一緒に過ごすことで、感情がないはずのミーナにもやがて――。
今回のアニメ化では、監督を「五等分の花嫁」「安達としまむら」など多数の演出を手掛けてきた吉村文宏氏、シリーズ構成を広田光毅氏、アニメーション制作を手塚プロダクションが担当する。
注目のアニメ放送を目前に控え、アキバ総研では豊永利行さん(小杉タクマ役)と稲垣 好さん(ミーナ役)にインタビュー。作品やキャラクターの魅力はもちろん、ロボットを演じることなど、声優としての技術的なことまでいろいろとお話をうかがった。
近未来のリアリティがありつつ、ミステリー要素も出てきます
――本作はおふたりが演じるタクマとミーナが織りなす物語ですが、まずは原作を読んだ印象を教えてください。
豊永 この作品はいわゆるオムニバスに近いストーリーですが、描かれている人物は一貫しているんです。ロボット(ミーナ)とタクマの「サ◯エさん」みたいな印象だったので(笑)、それを1クールのアニメでどう表現するんだろう? どこに主軸を置くんだろう? と気になりました。
稲垣 私は正直……最初少し怖いなと思ってしまいました。空気感がすごく独特で、機械的な冷たさを感じてしまって。ですが、読んでいくとミーナちゃんはとにかくかわいくて、タクマはリアルなサラリーマンかと思いきや、少しやばい人で(笑)。そのギャップがすごく面白かったです。人間とロボットだからこその会話の嚙み合わなさや温度差があるところに、ほのぼのします。最初は冷たさを感じていましたが、徐々に温かさを感じられる作品だなと思います。
ロボットはもう身近なものですし、将来人型のロボットが家にいたらこういう風になるのだろうなと現実味もすごくあるんです。原作のストーリーが進むとロボット反対派や受け入れ方についても描かれていて、自分の価値観が変わるかもしれないなとも思えましたね。
――実際に演じてみて、作品やキャラクターの印象に変化はありましたか?
豊永 演じてみてわかったのは、一番様子がおかしいのはミーナちゃんよりタクマだなと(笑)。僕が目指していたのはナチュラルな人間らしいタクマではありますが、ネジがどこか外れているところへの違和感も心地よく感じていただけたらうれしいです。そして、アニメを見終える頃には共感を抱いてもらえたらありがたいですね。
稲垣 私は、演じることによって原作で感じたほのぼのとした温かさをより実感できました。また、掛け合ううちに「このときのミーナちゃんはこういう気持ちだったのか」「タクマのこういうところはリアルでもするよね」といったこともわかってきて、すごく身近になりました。
――設定や物語が違うとはいえ、ロボットと一緒に暮らす作品は昔からいろいろありますよね。その中で本作独自の魅力や面白さはどう感じていますか?
豊永 ほかの作品だとSF色や非現実味の強い印象があって、そこに登場するロボットやアンドロイドは「すごく人間らしい」か「すごく機械らしい」ものが多い気がするんです。でも、ミーナちゃんはよりリアリティがあるというか、今で言うところのAlexaやGoogleのGeminiのようなレベルのロボット(AI)という印象です。ちょっと先のリアルな近未来が描かれているんです。
あと、お話の中に「ミーナちゃんがなんでこうなったのか」というミステリー要素も出てきます。「“人間の心”は数値化されるのか否か」といったことも訴えかけている気がしますし、奇跡ではないところもリアリティがあるなと思いました。そこもほかのロボットが出てくるアニメとはちょっと違いますよね。
稲垣 本当にリアリティがあってすごく親しみやすいので、「ありえなくないかも……」と想像しながら世界に入り込めると思います。豊永さんもおっしゃっていたミステリー要素が入ってくるところもおもしろくて、「自分だったらどうするだろう?」「どう思うだろう?」とロボットやAIに対する考え方に向き合える作品になっているのも新しいです。
“夫婦”という関係性も珍しいですよね。最初の無機質な状態から、夫婦として日常を淡々と過ごしながら徐々に絆が深まっていく様子が描かれていきます。心の機微も細かく描かれています。
2人の温度差がある作品だからこそ、演じる上での大変さと面白さがありました
――先ほどの話の中でも少し触れていましたが、タクマとミーナを演じる上で意識したことや難しかったところ、アフレコでのディレクションなどを教えてください。
豊永 この作品は“二人三脚感”がすごくあると思います。ミーナちゃんが無機質になりすぎないよう、絶妙なバランスで綱渡りするように稲垣さんがお芝居を構築されていたので、僕は“ぶっ飛ぶときはぶっ飛ぶ”といった人間らしい振れ幅をどこまで広げるか、もしくは狭めるか。その調整をするべきだと思ってアフレコに臨んでいました。特に振れ幅を広げてリアリズムから外れる瞬間は慎重にやりましたね。
そういうことを考えながらも、僕は感情の起伏をめちゃくちゃ作って楽しみながら演じていたので、稲垣さんのことを「大変そうだな〜」「感情を爆発させたいだろうな〜」って思いながら毎週見ていて(笑)。僕がそうやって投げた球を、稲垣さんは(ミーナちゃんとして)キャッチしなくちゃいけませんから。ただ、球を投げても毎回同じトーンでの返事しか来ないことに対して、タクマとしてはそれでいいんでしょうけど、豊永としては「反応が変わらない……どうしよう?」となることもあって、そこは難しくもあり楽しくもあったところですね。
稲垣 おっしゃられたとおりで、感情をどれだけ出すかの加減はすごく難しかったです。感情が全くないわけではないというか、冷たすぎてもいけなくて……。冷たすぎると、すぐに「今のはちょっと傷ついたな」「冷たすぎてちょっと怖かったな」とディレクションをいただいていました。
私も、会話のキャッチボールをすごく受け取りたいんです……受け取りたいのですが、そこはパツン!とシャットアウトしなければいけない。受けすぎてはいけないのがこんなに難しいのだと初めて気づきました。
また、技術的なことでは、ロボットということで“息継ぎの音を絶対に入れたくない”と思いました。ですが、一定の速さでずっと同じようにしゃべっていると、途中で苦しくなってきてしまって、最後の方は言葉が消えゆく感じになっちゃうんです。長セリフのシーンでは、リテイクを繰り返すことが結構ありましたね。
豊永 ミーナちゃんは長セリフが多いんだよね。
稲垣 そうなんですよ。新しい挑戦ということで、どこで切ったらいいか音響監督さんといろいろ話しながら、考えて演じるのはすごく楽しかったです。
役者心だけでなく技術職としての声優スキルも必要
――声優さんに話を聞くと「無機物をやりたい」「人間じゃないものを演じてみたかった」といったことも時折耳にしますが、稲垣さんもそういう希望は持っていましたか?
稲垣 ロボットの役はやってみたいと思っていました。ですが、アニメのロボットって結構デフォルメされているとか、感情の起伏が激しい役も多いと思うんです。ここまで無機質なのは本当に初めてだったので、やりたいと思ってはいたけれど、これはかなり大変だなと最初はすごくプレッシャーを感じましたね。
――ちなみに豊永さんは、無機物やロボットの役を演じた経験はありますか? 先輩からのアドバイスなどがありましたら……。
豊永 (ロボット役の経験が)あまりないんですよ。なので、アドバイスするようなことは何もないです(笑)。
稲垣 そんなぁ〜(笑)。
豊永 現場で稲垣さんがいろいろ考えてがんばっている姿を見て、大変だなって思いながら陰ながら応援していることしかできませんでした。ミーナちゃんって、いわゆるロボットではないじゃないですか。だからこそ、より難しいだろうなって。カーナビみたいな感じでもないし、悩んで、試行錯誤して、音響監督さんと微調整をして……お芝居でありつつ、綿密な計算が必要なプログラムを組んでやっているような印象を受けたんです。役者ごころも必要だけど、それ以上に技術職としての声優のスキルが必要だろうなと思いましたね。
稲垣 そうですね。でも、心の動きや思考はやっぱりロボットなので、ロボットだったらまずはこう考えるだろう、という順番で考えました。それはこのお仕事ではないとできない機会で、すごく面白かったです。
――ではロボット役に限らず、稲垣さんから役者の先輩である豊永さんに聞いてみたいことはありますか?
稲垣 たくさんありますが、役作りで最初に考えていることはなんですか?
豊永 僕は自分が演じる役の前に、“作品の世界観”を知ろうとするかもしれないです。今回の作品のように原作がある場合は、「原作の先生が作品を通して伝えたいことはなんだろう?」と考えながら読んで、「こういうことを伝えたいのかな?」「それなら僕が演じる役どころで必要なことはこれかな」とロジカルに考えるというか。まずベースを考えてから人格を形成していくように役作りしていますね。
稲垣 作品の中での立場を理解してから、ということですか?
豊永 そうそう。それって僕がもともと舞台役者だからかもしれません。舞台を作るときはそういうチームワークでやっていきますから。声優の現場でもその作り方を引き継いでいるというか。
稲垣 そうなんですね!ありがとうございます!
この作品が教えてくれる生きる上で大事なこととは?
――本作のことに戻りまして、お互いが演じるキャラクターのことはどのように感じていますか?
豊永 この作品は、タクマが動き回っているように見えて、お話を動かしているのはミーナちゃんなんです。ミーナちゃんは自慢するときに少しだけ顎を上げる所作をするから、いい気分なんだとわかるんですよ。第1話でミーナちゃんが薄目になるシーンがあるのですが、 それ以降も結構ドヤる瞬間とかがあって。いわゆるロボット、AIが判断した反応なのにすごくかわいく見えるのは、ミーナちゃんの魅力だと思います。
人型ではあっても、人が想像し得ないリアクションを返してくるところもすごく魅力的ですよね。そこにプラスアルファして、ほかのロボットにはない考え方、発想を持っているので、僕もロボットに対する価値観が変わってなんかかわいいと思えるようになってきました。それだけの力がありますよ、ミーナちゃんには。
稲垣 タクマは、豊永さんが演じられると、本当に現実にいる社畜サラリーマンだなって思えるんですよ(笑)。
豊永 社畜サラリーマンの経験はないけどね(笑)。
稲垣 それに、ストーリーが進むと登場してくる(タクマの実家である)小杉家の人たちもすごく温かくて、タクマもそれを受け継いでいると感じます。愛を知っているといいますか、ミーナちゃんを愛する姿勢がひたむきで、真っすぐなところも素敵なんです。あと、意外と理解力が高いですよね。
豊永 そうかも。
稲垣 ミーナちゃんの行動って、私たちからしたら「今、なんでこんなことをしているんだろう?」と違和感が結構あるんです。でも、“タクマさま”はそれをすぐに察して、理解してあげる。だから、実はすごくモテる人の内面をしているんじゃないかな? と思ったんですが……気持ち悪さもちょっとあるじゃないですか(笑)。そのギャップが面白いですし、すごく人間味あふれる人だなって思います。
――そういったところも楽しみですね。では最後に、改めて本作の見どころとして、ひとつずつポイントをあげてもらえますか?
豊永 稲垣さんの言葉を拝借すると、「周りに気持ち悪いと思われる人間がいたっていいじゃない」ですね。それでも自分を貫いていくこと、自分の気持ちに正直に生きることが大事だとこの作品は教えてくれると思います。
稲垣 ミーナちゃんに関していえば、ミーナちゃんは各キャラへの対応が意外と違うんです。それぞれの関わり方が本当に面白いので、ぜひ注目していただきたいです。また、「かしこまりました」と幾度となく言っているのですが、徐々にちょっとずつ、場面によっても変えるように意識して演じました。微々たる変化ではあると思いますが、その違いをよく聞いていただけるとうれしいです。
(取材・文・撮影/千葉研一)
【作品情報】
■僕の妻は感情がない
<ストーリー>
社畜サラリーマンの小杉タクマは、家事をする暇がないため、家事ロボット「ミーナ」をリサイクルショップで購入する。タクマが「お嫁さんになってくれない?」と軽い気持ちで求婚したことをきっかけに、ミーナはプログラムにないはずの行動をとるようになる。自らの機能を駆使し、出来る限り「お嫁さん」であろうとするミーナ。タクマにもまた、夫としての自覚が芽生えていく――。
ミーナには本当に「感情がない」のか。人間とロボット、「夫婦未満の2人が夫婦の絆を築くまで」のハートフルストーリー!
<スタッフ情報>
原作:杉浦次郎 「僕の妻は感情がない」(MFコミックス フラッパーシリーズ/KADOKAWA刊)
監督:吉村文宏
シリーズ構成:広田光毅
キャラクターデザイン:ウクレレ善似郎
アニメーション制作:手塚プロダクション
製作・著作:製作委員会は感情がない
<キャスト情報>
小杉タクマ:豊永利行
ミーナ:稲垣 好
(c)2024 杉浦次郎/KADOKAWA/製作委員会は感情がない
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