【これからはじめるTCG!】野球のおもしろさをTCGで完全再現! 第5回「プロ野球カードゲーム ドリームオーダー」【「TCGはじめて講座!」】
世界初のTCG(トレーディングカードゲーム)である「マジック:ザ・ギャザリング」が世に出てから約30年。数多くのタイトルが世に登場し、今もなお新作が発表され世界中で遊ばれ続けているTCGですが、子供の頃にちょっとだけ遊んだ、または実は一度も触ったことがないという方も多いのではないでしょうか?
そこでこの連載では人気のTCGを発売しているメーカーさんに突撃取材し、TCG初心者が今から始めても楽しめるゲームの魅力や、開発チームやスタッフさんにお聞きしたTCG業界のお話を体験レポート形式でお届けします。
5回目となる今回は本年4月に発売されたばかりの、国民的スポーツである野球をモチーフとしたタイトル「プロ野球カードゲーム ドリームオーダー(以下、ドリームオーダー)」をピックアップ。
前半は、開発チームの方からティーチングを受けつつ実際のデッキを使って遊んでみて、満を持してリリースされた「ドリームオーダー」が持つ魅力を体験してきました。
後半では、プロデューサーの小林さんに「ドリームオーダー」のリリースにまつわるお話から今後の展開、TCG業界を盛り上げていくためのアイデアやこれから「ドリームオーダー」を始めたい方へのメッセージをお聞きしました!
取材してきた人
ラビカ
新規TCGプレイヤーを増やすという使命を受けて、TCG界からやってきたデッキケースの妖精。新規プレイヤーが増えないととんでもないことになるため、今日もTCGの魅力を世界に広めるお手伝いをしている。
この体のままだとカードゲームをプレイできないので、取材中は生アバターの手を使ってプレイする。
TCGなのに、プレイ感覚はまさに野球!
ラビカ Oh Oh Wow Wow DeNAベイスターーーズ! こんにちはー、ラビカでーす!
ブシロード小林(以下、小林) こんにちは、ラビカちゃん。「プロ野球カードゲーム ドリームオーダー」のプロデューサー・小林伸斗です! さっき応援歌を歌ってたけど、ラビカちゃんは横浜DeNAベイスターズが好きなのかな?
ラビカ そうだよー! 1996年の大矢監督時代からのファンだから、今日は野球がモチーフの「ドリームオーダー」で遊べるって聞いてウキウキしてまーす!
小林 ラビカちゃん、結構年期入った野球ファンなんだねぇ。
「ドリームオーダー」とは
2024年4月20日にリリースされた、国民的スポーツである「野球」をモチーフにしたTCGタイトル。プレイヤーは野球チームの監督となり、選手のカードで構築したデッキを用いて対戦する。投手と打者の勝負がメインとなっており、手札の選手でサポートしながら3回表裏を戦い点数の高い方が勝ちとなる。野球のルールをうまく落とし込んだカード能力や、ヒットの結果をサイコロの目で決めるシステムが特徴的だ。
ラビカ 小林さんは野球好きなの?
小林 もちろんです。野球も好きですし、TCGも幼少期からたくさん遊んできたので今回の「ドリームオーダー」は自信をもって開発させていただいたタイトルになります。
ラビカ 小林さんやスタッフさんたちの愛が詰まったタイトルなんだねー。
小林 というわけで、こちらが4月20日に発売された「ドリームオーダー」のスタートデッキです!
ラビカ す、すごい! ホントに12球団分出てる……! これは圧巻の画だねぇ。
小林 今日はこちらのスタートデッキを使って遊んでみたいと思いますが、ラビカちゃんはどのチームを選びますか?
ラビカ ラビカはもちろんベイスターズ!
小林 では、こちらは福岡ソフトバンクホークスのスタートデッキを使いますね。ここからは、実際の流れに沿って説明しながら進めましょう。ちなみに、ラビカちゃんってその手でカード摑めるの?
ラビカ じゃーん、今回も生アバターを連れて来てるのよ。これならグローブだって着けられるから問題ないよ!
小林 な、なるほど……?
小林 ……では、気を取り直して。試合開始しましょう!
ラビカ はーい! プレイボール!
小林 まず、じゃんけんで先攻後攻を決めます。先攻が1回表の打者側、後攻が投手側ですね。実際の野球と同じく、3アウトでチェンジになり攻守交替。これを3イニング繰り返して点数の高い方が勝ちとなります。
ラビカ そこは実際の野球と違って、9回じゃなくて3回制なんだね。よーし、それじゃあじゃんけんしてー……。
小林 ……はい、今回は私が先攻ですね。それでは、まずはオーダーデッキから「先発」と書かれた投手をベンチエリアに置き、野手を自分で決めた打順でベンチエリアに置いてください。
ラビカ 打順は自由なんだね。これは実際のチームの編成に沿うか、ゲーム的な強さを求めるか悩ましいところだ……!
小林 そして、シャッフルしたメインデッキを山札に置いたら、自分の先発投手の「先発」の横に書かれた数字の数だけ山札から引いてください。これが初期手札になります。
ラビカ あれ。ということは、誰を先発ピッチャーにするかによって初期手札の枚数が変わる、ってこと……?
小林 そうです。「ドリームオーダー」では手札のカードは自分の打者や投手をサポートするために消費していくので、初期手札の枚数は言わば先発ピッチャーの体力のようなものだと思ってください。
ラビカ なるほどー。デッキに入れたカードによって初期手札の枚数が変わるのはなかなか珍しいね!
小林 さて、まずはスタンバイフェイズですね。お互いの勝負する選手をメインエリアに置いてください。攻守が逆転しているので私は1番打者、ラピカちゃんは先発の東投手ですね。投手の場合はカード左下に書かれた「DP」の数字が、打者の場合は「AP」の数字が基礎ポイントとなります。この数値を比べて、打者のAPが投手のDP以上であれば打撃判定に移る、という流れです。通常であれば投手の方が、基礎ポイントが高いため、ここに次のプレイフェイズにて手札からサポートエリアに1~2枚のカードを出すことでポイントを強化することが可能です。ここに、相手がどのくらいの数値のサポートを出したのかという読み合いが発生するわけですね。
ラビカ この「ミート」と「強振」っていうのは?
小林 これは、打者側の打ち方を示すものです。「ミート」は打撃判定の際に堅実なヒットが出やすく、「強振」はアウトになりやすい代わりにホームランを狙うことができます。打者はお互いにサポートエリアにカードを裏向きに置き終わってからミートにするか強振にするかを宣言するため、投手側は相手がどちらを狙っているかを予測しながらサポートを配置しなければいけません。
ラビカ なるほど……。じゃあ、きっと最初だからこんなところかな……?
小林 私もサポートを置き終わりましたので、今回は「強振」でいきたいと思います。
ラビカ え。い、いきなり強振!? 読みが外れたなぁ……。
小林 サポートエリアのカードを表にしていきましょう。打者側は2+4で6ポイント、投手側はミート向けのカードだったためサポート失敗になり6ポイントのままです。同点の場合は打者の勝利となるため、打撃判定のためにサイコロを振ります。
ラビカ あっ! それ、もしかしてスマホ用のサポートアプリ?
小林 そうです。サポートアプリ「ドリームオーダー ゲームサポーター」では、打撃判定に必要なサイコロを振る機能や、スコアボードの点数計算、打順表の作成などができます。
ラビカ へー! ラビカ、よくトークンとかサイコロとか忘れてきちゃうタイプだから、スマホで完結してるのはうれしいかも!
小林 それでは、サイコロを振ってみましょう……あ。
ラビカ え。11、ってことは……。
小林 ……今回は強振なので、出た目が11ということは本塁打。つまりホームランですね……!
ラビカ ちょっとーーー! 1回表の初球から、1番打者が強振でホームランってどういうこと!?
小林 ま、まあ。点数が入ったときの説明がしやすくなるということで……。点数を取られてしまうと、投手側はボーナスで山札から点数分のカードを引けます。そしてサポートエリアのカードをレストエリアに置き、次の打者が出て再び勝負が始まります。
ラビカ 悔しいー……! こ、これ以上点を取られたくない。だから、ラビカはこのカードをサポートエリアに置くよ!
小林 では、私もサポートエリアにカードを置いたので、再び強振を宣言します。それではサポートエリアのカードをオープンしましょう。
ラビカ じゃーん! ラビカはさっき引いたばかりの、投手の東選手と同じカードでサポートするよ!
小林 おっ、これは「覚醒」というシステムですね。カード番号が同じカードが置かれているときは覚醒が発動し、サポートの数値ではなく基礎ポイントをそのまま加算します。つまり、東選手の基礎DPポイントは6なので、単純に2倍の数値となり6+6で12ポイントとなるわけです。今回はラビカちゃんが12ポイント、私が9ポイントとなるため投手が打者を打ち取りアウトになりました。そうしたら、守備側のプレイヤーは山札からアウトエリアに1枚カードを裏向きで置いてください。
ラビカ なるほど、こうやってアウトカウントを増やしていくんだねー。
小林 大まかにはこのようにゲームを進行していきます。そのほかにもカードによっては特殊能力があったり、投手を交代したりすることも可能ですが、そこは出てきたら随時説明するとしてこのまま進めていきましょうか。
ラビカ よーし、なんとしても勝つぞー……!
~20分後、3回裏ラビカの攻撃~
ラビカ た、たのむ! 強振で11か12出てくれー……! えいっ!
小林 サイコロの目は2と3なので、アウトですね。これでスリーアウトなので、1-0で私の勝ちになります!
ラビカ うわー、負けたぁー! 最初の失点を取り返せなかったよ……。でも、すっごくおもしろかった! プレイの感覚はまさに野球そのもので、打者と投手の駆け引きの楽しさがすごく再現されてたと思いました!
基本的なルールは野球のルールにのっとってるから、サポートに出すカードの読み合いとかピッチャー交代のタイミングとかが本当にリアルだったなー。
小林 まさに、監督の采配が光るところですね。野球を知らない方でももちろん楽しめるようにしていますが、野球を知っていれば実際の試合を監督の代わりに戦っていく興奮を感じられると思いますよ。
そのほかにも、今回はスタートデッキで遊んだのであまり話題に出ませんでしたが、デッキ構築の際にはコストなどの条件やルールもあるので、細かいルールの把握もあわせてぜひ一度公式サイトのプレイガイドも読んでみてくださいね。
ラビカ 自分だけのオールスターチームを作ったり、自分たちで縛りを作ったりして遊ぶのもおもしろそうだねー!
小林 大会やイベントのレギュレーションには「球団限定」や「オールスター限定」などがありますが、お友達同士でやるならデッキ構築の際の選手補強にルールを設けてみるのもおもしろい遊び方かもしれませんね。
ラビカ お友達と3デッキずつ持ち寄ってペナントレースをやったりするのも楽しいかもね! これは夢が広がるなぁ……!
小林 野球好きなプレイヤーさんはもちろん、TCG好きなプレイヤーさんも納得できるようにこだわって開発しましたので、ぜひいろいろな遊び方を試してみてください!
引き続きプロデューサーの小林さんにリリースにまつわる話と今後の展開について聞いてみたよ!
ブシロード プロデューサー小林伸斗さん、リリースにまつわる話と今後の展開について
ラビカ 今日はティーチングありがとうございました! 改めまして、4月20日にリリースされた「ドリームオーダー」ですが約2か月(取材日は6/27)がたった今のお気持ちを聞かせてください!
小林 2か月たちましたが、野球ファンの方で「ドリームオーダー」を知らない方はまだまだたくさんいらっしゃると思いますので、そういった層に訴求していきたいですね。ほかのTCGとはお客さんの層が少し違いますので、そういった部分にもやりがいを感じています。目指すところとして、プロ野球観戦中にCMが流れて野球ファンの間で認知が広まっていくような世界を作ることをひとつの野望としています。
ラビカ 「ドリームオーダー」より前にも野球をモチーフにしたTCGってあったと思うんだけど、なにか意識したことってある?
小林 過去にも他社さんから本格なTCGだけでなくアーケードのカードゲームなどでも野球モチーフのTCGは展開されていましたが、「ドリームオーダー」を開発するうえでは、何を主軸にゲームを作るのかを考えました。たとえば守備をどこまでゲームに反映させるか、走塁はどこまで反映させるかといったようなデフォルメの部分に関しては、過去の野球TCGを意識していました。
その中で、私の考える野球の最小単位が「打者と投手の対戦」であり、そこに付随した走塁までをひとつの流れとしてゲーム化することを決めました。ただ、守備の名手のような選手が活躍する場面もあるので、投手をバックアップするための守備力という形で「サポート」というシステムを入れて現実の野球の要素を再現していきました。その際に、過去の野球TCGでは守備をどのように取り入れていたのかという部分はとても研究した部分です。
ラビカ なるほどー。ちなみに、開発のときに苦労した点とか、印象的だったエピソードはある?
小林 「ドリームオーダー」のプロジェクトは突発的に生まれました。新しいことをしていこうという会議の中で野球好きなスタッフが「そういえば、野球のTCGってあるんですか?」と発したことがきっかけで、確かに野球は攻守が分かれていて大分類と小分類のターン制が存在しているためTCGに落とし込みやすいということになり、そのまま話が進んでいったという形です。そこで、もともとカードゲーマーであり昔から野球好きだった私がプロデューサーとして抜てきされました。
ただ、プレイヤー層が普段のTCGユーザー層と違うだろうなという考えは当初からあったので、ルールを複雑にし過ぎては絶対に伝わらない、しかし簡単すぎてもすぐに飽きられてしまう、この2つのバランスを取っていくことは開発において大きなポイントだったと思っています。
そのバランスを打開したのは、サイコロというアイテムです。サイコロは、誰しも一度は見たことのあるなじみ深いアイテムで、大きな数字が出たら強いということは何となくイメージの付くものだと思います。サイコロの持つ運要素というのはTCGに慣れているプレイヤー、不慣れなプレイヤーを埋める手段になりえると考えました。
ラビカ サイコロで結果が決まるのって、なんだかTRPG(=テーブルトークRPG。会話のやり取りを主体としたアナログゲーム)みたいで楽しいよね!
小林 そうですね。開発するうえで根底にあったのは「遊べるトレーディングカード」というイメージです。トレカとして集めてもらう層も必要かと思っていますが、そのうえで遊べるという付加価値をつけたいと思っていました。ボードゲームのようなカードゲームにしたいとは思っていましたね。
もうひとつのポイントとして、野球をモチーフにしたゲームというのはゲームに勝ちたいということ以外にも自分のチームを勝たせたいという気持ちもあるのかなと思っていますので、淡々とゲームが進行するよりはコミュニケーションツールとして活用してほしいという考えもありました。そのため、ミートと強振のシステムや、カードのポイントを伝えあうような「宣言」という要素を取り入れました。プレイヤーがお互いに会話をしてリアクションを取れるようなゲームにしたかったので、そこは苦労した点ですね。
ただ、一番の壁は……「12球団」でした。各球団様の意見や意向をくむのに非常に苦労しました。TCGは近年ようやく一般認知が広がってきた業界かと思いますが、TCGを知らない方にTCGとはどういったものなのか、どんな層のプレイヤーに支持されているのかということを説明のためうかがわせていただきました。1か月半ですべての球団様を回らせていただいたかと思います。大変でしたが、もともと野球は好きなので仕事にするのはとても楽しいですし、今なお大きな壁を感じていますが開発してよかったという気持ちが大きいですね。
ラビカ 確かに、球団も選手もとっても多いもんね……。ちなみに、TCGにおけるコレクタブル要素で意識したポイントはある?
小林 「ドリームオーダー」では「戦術カード」という横向きのカードを用意しました。
小林 縦型の写真しか使えないと守備の名シーンの写真や選手が集まっているシーンなどが使いづらかったため、横向きのカードを用意したというのがほかのTCGと差別化していきたかった部分です。
また、加工の特殊なパラレルカードに選手のプレイシーン以外をあえて選択する、ということも行いました。ホームに帰ってきてガッツポーズをしていたり、投手が三振を取って喜んでいたり、ファンに手を振っているようなシーンを意図的にピックアップしています。選手のプレイシーンはよく使われるところですが、野球は一瞬一瞬にドラマがあるのでメモリアルなシーンを採用することで野球ファンの方も気付いていただけるのではないか、コレクターとして刺さる要素なのではないかと思っています。
ラビカ わかるー! 好きな選手の特徴的な仕草のシーンとかがカードになってたらうれしいもんね!
小林 ほかのTCGでも原作を再現したようなシーンのカードはあったりしますが、野球だとこの選手はこういう動きするよねー、というような「あるある」を感じていただけやすいと思っています。たとえば、この根尾選手のカードなんかがそうですね。
小林 この、後ろを向いて手を広げるというのは野球好きなら知っているシーンなわけです。このカード画像は公開したときにとてもインプレッションが伸びましたし、選手ごとの醍醐味を感じさせるようなカードは反応がよかったです。
ラビカ 野球ファンは細かいポイントが好きな人が多いもんね。でも、「ドリームオーダー」ってズバリどんな層のプレイヤーをターゲットにしているの?
小林 正直な話、ほかのTCGとは違う層のプレイヤーさんに好きになってもらいたいと考えています。業界的にTCGというのは広いようでそんなに広くない、言ってしまえばおもちゃの一種なわけです。そんな中で業界的な広がりを考えるのであれば、新しい層を開拓していく必要があると感じています。昔からの野球カードコレクターだけどTCGをプレイしていないような年齢層の高い方が、小学生ぐらいのお子さんと一緒に家族でプレイするきっかけにしていただく、などですね。上は親世代、下は小学生ぐらいまでを新たなプレイヤーさんとして考えていますので、ゲームとしての難易度もできるだけそこに合わせていこうと思っています。
理想で言えばプロ野球ファンの女性などにも遊んでもらいたいので、ゲームに誘いやすい空間──たとえば野球のユニフォームを着て参加できるイベントなどを作って、今までのTCGにはいなかったような層にアプローチしていきたいと思っています。実際、まだリリースから2か月なので道半ばではありますが、狙った層に届き始めている手ごたえはあります。
ただ、そういった方々が友人を連れてくるにはもうひと押しが足りないのかなとも思っていますので、「ドリームオーダー」ならではの楽しい雰囲気や特別な体験をもっと発信していくべきかと思っているところです。たとえば雨が降っても野球ができる、というのも「ドリームオーダー」の楽しさのひとつだと思いますので。
ラビカ 「ドリームオーダー」だったら自分の好きなチームをたくさん勝たせてあげることだってできるもんね。
小林 そうですね。「ドリームオーダー」においてのプレイヤーの立場というのは、監督でありオーナーだと思っています。言わば「ドリームオーダー」は1,500円で球団が買えるんです。自分だけのオリジナル球団が1,500円で買えて、選手の補強が400円でできちゃうんです。球団を買う、補強をするといった球団運営を楽しんでもらいながら、試合では監督となって采配も楽しむことができます。
ところが、選手にはコストというパラメータがついていて、デッキ構築にはコスト上限というルールがあります。現実の球団でもスター選手ばかりでは資金に限界が来てしまいますので、そういった現実的な悩みも含めて楽しんでもらいたいと思っています。
ラビカ 選手も、若手時代とベテラン時代で能力やコストが変わってたらおもしろいねー! ちなみに、今後はどんな商品や展開を考えてるの?
小林 「ドリームオーダー」を開発していく意図のひとつに「いろんな野球選手を知ってもらいたい」というものがあります。なので、ひいき球団以外の選手をもっと知ってもらえるような展開にしていきたいと思っています。たとえば球団限定パックなどを展開していけば、2軍ではすごく活躍していないけどまだ調整中で大事に育てていきたい選手などにもスポットライトを当てることができるかもしれません。
優勝したチームをしっかり取り上げられるとファンとしても印象深いものになるかと思いますので、スケジュールなどのハードルはあるものの優勝記念パックなども考えていきたいところですね。あとは球団個別商品、侍ジャパン関連などもしっかり取り上げていきたいところです。
ラビカ すごい野球愛だなぁ……。ちなみに、過去の名選手とかはピックアップするの?
小林 もちろんOB選手なども商品化したいと思っていますが、過去の選手までさかのぼるととんでもない数の選手数になってしまいますのでそこは見極めつつ、反響のいいOB選手の入ったパック商品もやっていきたいと思っています。
ラビカ 野球ファンは喜びそうな要素がいっぱいだねー。そんな野球ファンに新規プレイヤーとしてプレイしてもらうために、「ドリームオーダー」ではどんなことを企画しているの?
小林 やはり、TCG未経験の方が新たにプレイし始めるのはとてもハードルが高いと思っています。そのハードルを越えるためには、「一緒にやってくれる人がいる、同じレベルの人に出会える、行ったことのある場所でやる」という3つの要素が新たに興味を持っていただくきっかけになるのではないかと考えています。
「一緒にやってくれる人がいる」に関しては、野球観戦は意外とひとりではなく友人や家族などのグループで行くことが多いので、ここにはアプローチしやすいと思っています。「同じレベルの人に出会える」に関しては、ほかのTCGにおいて他プレイヤーとの経験レベルの差が原因で遠ざかってしまうというケースがありましたので、同じレベルの人を集めたり先輩が教えてくれたりするような空気感を持ったイベントを行っていきたいと思っています。
「行ったことのある場所でやる」をどう克服するかは、大きなポイントになるかと思っています。カードショップに限らず、どんなジャンルでも専門店というのは行ったことのない人にとってはなかなかハードルが高いんですよね。なので、専門店ではなくショッピングモールやコンビニなどで手軽に手に入れることができるようにしています。コンビニの流通もローソさんに絞って展開していますので、とりあえずローソンさんに行けば手に入るというような状態にしていきたいです。
このように、行ったことのある場所で買って、行ったことのある場所で体験してもらうのが最初のステップなのではないかと思っています。実際に購入してプレイを始めるまでのハードルをいかに下げてあげるか、いかに自分と同じレベルの人と会えるか、どうすれば友達を誘いやすいかといったポイントを意識して、今年の夏以降のイベントを企画しています。
ラビカ 野球ファンの行ったことのある場所といえば、野球場とか?
小林 野球場で大会をやるのもきっとおもしろいと思います。甲子園のような球場だけでなく、東京ドームシティや名選手のミュージアムなどの関連施設でもいいですよね。それに、マウンドで試合をやって、優勝したら胴上げまでできたら最高ですよね。もちろん、それらすべてを実現するのは難しいかもしれませんが、「ドリームオーダー」ならではの大会やイベントを企画していきたいです。
ラビカ じゃあ最後の質問! TCG業界全体がさらに新規ユーザーを増やして、さらに盛り上がっていくために大事なことって何だと思う?
小林 私がちょっと気になっているのは、各TCGをリリースしているメーカーさん単位ではなく業界単位で考えた方がいいのではないかということです。もちろん自社の
売上は大事ですが、業界としてどう動くべきかという点に置いてそれぞれのメーカーさんがもっと仲間意識を持ってもいいのではないかと思っています。
弊社ではもともと「ブシロード カードゲーム祭」という名前だったイベントを「カードゲーム祭」という名前に改め、イベント内で他社さんのTCGタイトルを取り扱うエリアを増やし、メーカーの垣根を越えてTCGを楽しめるイベントに変えました。これはもっと広がるべきだと思っていて、TCG業界全体で手を取っていく瞬間はこの先かならずやってくると思っています。今のユーザー層からさらに伸ばすには、業界全体で考えていく必要はあるはずです。
小さいところで言うと、お客さんが入りやすいカードショップ専門店があるといいと思っています。私自身がカードショップで働いていたということもありますが、どのショップさんも従業員がたくさんいるわけではないのでやれることは限られているのではないでしょうか。ただ、一部の法人さんではスタッフの育成に大変力を入れられているそうです。カードショップは販売だけでなく大会やイベントを開いたりもしますので、公式やショップのスタッフの対応によってプレイヤーさんの印象も変わってくると思います。細かい事ですが、そういったところから全体的に直していければいいのかと考えています。
ラビカ なるほど。業界全体が手を取ることと、スタッフさんたちもパワーアップしていくことが大切なんだね。それじゃあ、最後にユーザーの皆さんにコメントをどうぞ!
小林 昨今さまざまなTCGがある中で、「ドリームオーダー」は野球というものをまた別の角度で好きになってもらいたいという思いで作っています。これから「ドリームオーダー」を始める方には自分の推し球団をスポーツとして応援しつつ、カードでも新たな野球の形に触れてもらいたいと思っています。そして、それをきっかけに「ドリームオーダー」を含めたたくさんのTCGを遊んでいってほしいです。
(取材・文/吉田海、イラスト/愛來あゆ)
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