ハンパないワタル愛が込められたコラボ商品が登場! TVアニメ「魔神英雄伝ワタル」香水「STEP オードパルファム」>【コラボのゲンバ第4回】

アニメや声優などのサブカルチャーとさまざまな業界のコラボレーションが活発化する今日この頃、「おっ!やってくれるな」「何?そうきたか!」とファンの心を刺激してくる商品、コラボ企画が続々と登場している。そこで、アキバ総研的に気になる「コラボ」の企画現場にうかがい、企画の魅力やおもしろエピソード、苦労話などの制作裏話を、あれこれうかがっていこう!という連載が「コラボのゲンバ」だ。

第4回に登場するのは、TVアニメ「魔神英雄伝ワタル」をイメージした香水「STEP オードパルファム」。ネーミングを見ただけで、ワタルファンなら心を奪われる商品ではないだろうか。

今回お話を伺ったのは、あふれんばかりのワタル愛を披露してくれたフェアリーテイル株式会社 代表取締役の熊谷勇希さん。ワタルとの出会いからコラボ企画の経緯、香り・デザインなど商品作りのこだわり、今後の展開などについてたっぷりと語ってもらった。

—— まず最初に、フェアリーテイルという会社の事業内容を教えてください。

熊谷 自社の香水などを企画販売したり、化粧品の輸入販売を行なっています。製造販売業の許可を持っており。化粧品の成分を調べたり検査も含めて行なっている会社です。これまでも、コラボ商品はいくつか作って来ましたが、アニメとのコラボは初めてになります。

—— では早速ですが、今回のワタル香水の企画意図や、経緯についてうかがいたいと思います。ワタルが香水とコラボ!に驚いた“ワタル好き”の編集も同席いたしますので、作品に対する思い入れなども大いに語っていただければと思います。

熊谷 私が小学4年生の頃にワタルがTVで放送されていたのですが、大分の山奥に住んでいたこともあり、リアルタイムで観ることができなかったんです。都会に住んでいる友達から、「毎週観てるよ」って言われて悔しい思いをしていたのを今でもはっきり覚えています。本放送から3か月遅れでレンタルショップで借りられるようになってから観るというのが、当時のワタルとの向き合い方だったのですが、借りたい時に借りたい巻があるわけではないので、最終回を観た後に1話を観るなんてこともありました。自分の中でストーリーを結びつけるのが難しかったです(笑)。田舎だったので、プラモも売れ残りしか入手できないという状況でした。

—— 大変な思いをして観た作品ということなんですね。

熊谷 そういう意味でも思い入れがありますね。特別なアニメになったことは間違いありません。その後、「ワタル3」がラジオドラマとして放送されたんです。初めてリアルで聴ける! それが私がワタルにリアルに触れた作品になっていますね。

—— 観るだけでもひと苦労した作品である「ワタル」のどんな点に惹かれていたのですか?

熊谷 「ワタル」って、ロボット的な部分は男性に、ストーリーやキャラクター的な部分は女性に人気で、男女にファンがいる作品なんですよね。私は、魔神(マシン)ではなく、ストーリーやキャラクターに興味がありました。その後、「虎王伝説」という外伝小説が出たのですが、それが私が初めて最初から最後まで読んだ小説です。読み始めていた別の小説を放置し「虎王伝説」を読破しました(笑)。

—— 「ワタル」への強い思いがこの企画を生んだということですか?

熊谷 ここまでの話だと、そう感じますよね。でも、リアルタイムで「ワタル」を楽しめるようになり、中学になった頃にサッカーにもハマってしまって。アニメもサッカーも好きで、アニメに関わる学校に進もうか、サッカーを続けようか考えている頃にJリーグが始まってしまい、そちらに強く影響されてしまったんです。オタク心はサッカーに傾いてしまい、中学3年のときのラジオドラマ「ワタル4」が自身にとっての最後のワタルになりました。

—— 本格的ですね。そこからまたなぜ香水に? サッカーをやっていたから汗や匂いに敏感だったとかでしょうか?

熊谷 「モテるためにはどうしたらいいか」と考えながら、「Hot-Dog PRESS」を読んでいたときに「香水を使えばモテる」って思い込んでしまったんですね。当時、カルバンクラインの「CK-1」とか、ジバンシーの「ウルトラマリン」とかが流行っていた頃です。ちょうどその頃に訪れた海外の香水のショップで、日本の定価よりもとても安く購入できたので大量に買い込んで、いろいろな種類の香水を使うようになったのも香水にハマったきっかけでした。

—— そこで香水のお仕事につながるわけですね。ワタル香水の企画はどこから出てきたのですか? 「ワタル」に再び目を向けたきっかけがあったのでしょうか?

熊谷 Blu-ray BOXが出たのを知って買い、懐かしさを覚えました。そして、今だにストーリーに入り込める作品であることを再認識したんです。その後、たまたま仕事で行った池袋で入った居酒屋「ロボ基地」が、ワタルとのコラボをやっていて。アルコールのオーダーでコースターがもらえるものでした。コースターをコンプリートして、当たりのクリアファイルをゲットするぞとオタク心が急に戻ってきたんです。ちょうど、なんとなく香水の仕事に限界を感じていた時期だったのですが、その時に漠然とですが「ワタルの香水を作ってみようかな」って思ったんです。

—— まさに、ワタルが導いた企画という感じですね。

熊谷 「どうやって企画を持ち込めばいいのか」というところからのスタートでした。ただ、ワタルから20年近く離れていたこともあり、サンライズに企画を持ち込んだ際にいろいろとお話をさせていただく中で、「今年はワタル30周年だったんだ」と再認識するくらい、すっかり情報に疎くなってたんです。

キャラクターとのコラボは初めてなうえに、ワタルの最近の情報に詳しくなかったので、サンライズも「大丈夫か?」と思ったはずです。ですが、担当の方がとてもていねいでやさしかったおかげで、「香水を今まで使ったことのない人が、ワタルをきっかけに使ってくれるようになれば」という話をきっかけに、「試作品を作ってみよう」という流れにトントン拍子で進んでいきました。

—— そこから「STEP」が誕生するわけですね。香りを作るうえでこだわったことや、おもしろいエピソードはありますか? 

熊谷 勉強になったのは、香りの発想ですね。普段作る時には、どうしても売れているものからヒントを得ようとしちゃいます。しかし今回はワタルファンの声をまず聞いてみたいと思い、ツイッターでアカウントを作ってみました。そのフォロワーのひとりが秋葉原のメイドカフェで働いていて、「香水について話できたらいいな」なんて軽い気持ちでお店に行ってみたんです。そこで、この人かなという人を見つけたので話しかけました。

いきなり声をかけるのもどうかと思い、好きなアニメの話をしながら「ワタル」の話を出したら、目の色が変わって話が盛り上がったところで、「実は、香水を作ろうと思っているんです」と話してみました。ワタルは女性ファンが多いこと、当時私がイメージしていた香りではワタルファンは手にしないこと、デザインも万人向けでワタルファン向けではないとはっきりダメ出しされて、考え方を変えました。

—— ファンの声は参考になりますよね。それにしても、何か動くたびにおもしろいエピソードがありますね(笑)。

熊谷 そのカフェでワタルファンのメイドさんとお話ししていたら、近くの席にいた男性が、龍神丸の絵を描き出したりして。この方もファンなんだって思ってちょっとうれしかったです。裏でこっそりと「ワタルの香水なんて出しても売れない」ってメイドさんに言っていたようですが(笑)。

—— そんなオチまで。でも実際は売れたんですよね?

熊谷 反響はすごかったです。先行販売を開始した途端に、オーダーのお知らせ、リツイートや「いいね!」が鳴り止みませんでした。海外からもオーダーがあって手応えを感じましたし、実際に想像していた以上にたくさん売れました。

—— ファンの心をつかんだポイントはどこにあると思いますか?

熊谷 メッセージや店頭販売で直接コメントをいただくこともあるのですが、「ネーミングがいい」という声も多いです。「STEP」という商品名がファンの心に響いたようです。

—— 届けるべき人の心に届いたというわけですね。売れることは大事なことですが、そのほかコラボ商品を作ってよかったことはありますか。

熊谷 STEPがきっかけでほかのコラボ商品企画のお声がけをいただけるようになりました。ひとつ作って結果を出したという実績が強みになりましたし、自分にとってコラボ商品企画という新しい仕事をすることができるようにもなりました。まさにワタルは僕にとっても救世主です。今後もたくさん面白い商品をお披露目できる予定なので楽しみにしていてください。


※現在、ボディミストも発売中! こちらの商品名も、それぞれこだわりが感じられる!

救世主の心

ピュアピュアヒミコ

優しい海

風の約束

(取材・文/タナカシノブ)

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