自衛隊も全面協力! ロケハンでの収穫がガッツリ反映された「ガーリー・エアフォース」――小野勝巳監督、大河広行(メカニックデザイン)インタビュー

2019年1月より好評放送中のTVアニメ「ガーリー・エアフォース」。人類の前に現れた謎の敵性体「ザイ」に対抗すべく開発された「ドーター」と呼ばれる特殊兵器に搭乗するのは、少女の姿をした「アニマ」と呼ばれるものたち。

上海から日本に向かう船上で「ザイ」の襲撃に遭った高校生・鳴谷慧(なるたにけい)は、救援に来たアニマ、グリペンと出会う。人類の切り札であるアニマたちと慧の物語が、いま始まる――。

というストーリーが魅力の本作について、今回は小野勝巳監督(写真・左)とメカニックデザインを担当した大河広行さんに、それぞれの視点で作品の見どころをお聞きした!

「ガーリー・エアフォース」は戦闘機の入門書としてちょうどいい印象を受けました(小野)

――「ガーリー・エアフォース」という作品に最初に抱いた感想をお願いします。

小野 僕はもともと戦闘機について詳しくなかったので、入門書としてもちょうどいいな、と感じました。元々戦闘機ファンの人にも、僕みたいな初心者にも楽しんでいただけるような作品にしようと。

大河 作品の内容や雰囲気に関しては事前に知っていました。メカアクションに関してはリアルさというよりもスピード感を重視した描き方をしようと思いましたね。

――ドッグファイトシーンでこだわったところは?

小野 本作に登場する「アニマ」という少女たちは実在する戦闘機をベースに表現されているということで、リアルさもある程度は意識しつつ、敵として登場する「ザイ」の動きに負けないようにしないと、という思いはあります。ミサイルの動きが「あれは超絶軌道だ!」と、どうしてもクローズアップされてしまうかもしれませんが(笑)、そこはアニマたちが動かしているということで……。

大河 「戦闘機VS戦闘機」ではなく、本作における人間の科学力では想像できないような敵が相手なので、グリペンたちと「ザイ」の挙動の差というところにはかなり注意を払いましたね。「ザイ」に関しては、ただ翼が可変翼として動くだけでは面白くないので、機体自体が生き物のように動くというコンセプトにしました。グリペンたちが「ザイ」といつまでも同じ軌道で動いて戦うと嘘くさくなってしまうので、ミサイルの動き方で対抗させようというのがあったのですが、搭載できるミサイルの数がどうしても限られてしまうので、あまり撃ちまくってると後半に弾切れになってしまう……という、ある意味「縛り」があるので、そこは苦労しました。

それと、実は現在の戦闘機って、いわゆるSF作品で出てくる機体のような動きができちゃうくらいに進化しているんです。「グリペンたちはそれを超えるような動き方をしないとダメじゃないか?」……みたいなことを考えながら進めていきました。

――本作は石川県小松市が主な舞台ですが、ロケハンには行かれました?

小野 はい、とても貴重な体験をさせていただきました!

大河 僕も同行する予定だったのですが、体調不良で参加できなかったんですよね……残念(苦笑)。

小野 ここではちょっと書けないようなことも教えていただきました(笑)。あとは、小松の景観がわかるようにずっとビデオカメラを回していましたね。

大河 「ガーリー・エアフォース」の制作にあたり、自衛隊がすごく協力的で。詳細は言えませんが、搭乗時のコクピットで 慧やグリペンたちがどのような装備姿で座っているのかを描く際に、とても参考にさせていただいた情報もあります。OP主題歌を歌っているRun Girls, Run!のメンバーも「Break the Blue!!」のPVでイーグルに乗せてもらっていたし「すごくうらやましいぞ!」と思いました(笑)。

小野 フライトジャケットの着方も教えていただけましたし、収穫の多いロケハンでしたね。

――ちなみに、アニメ制作に際し原作者の夏海公司先生からはなにかお話はありました?

小野 夏海先生は本読みからずっといらっしゃったので、修正稿にそれが反映されて戻ってくる、という流れでやっていました。修正が入るのは大体キャラクターのセリフで、性格を色濃く反映した形になって返ってくることが多かったですね。



「ザイ」は生き物を意識した動きをコンセプトにして挙動を考えました(大河)

――本作は迫力の戦闘シーンに加え、「ボーイ・ミーツ・ガール」の物語という側面もあるかと思いますが、そちらに関してこだわった点は?

小野 もちろん、慧とグリペンの絆が強くなっていくさまをメインで描きたいというのもありますが、慧の幼なじみである宋 明華(ソン・ミンホア)が彼との予定をすっぽかされてしまう、というシーンもほぼ毎回出てくるんです。「ザイ」との戦いが激しさを増すうえで、回を追うごとにどうしても彼女の存在感が薄れてしまうのですが、慧とグリペンの関係を描くうえで明華とのやりとりを見せることは慧の気持ちの変化を描くのに大事な部分なので、そこを配慮したというのもあります。

大河 影が薄いと言えば、後半でバイパーゼロがようやく活躍するシーンが出てくるんですが、あまりに不憫なのでOP映像にこそっと入れてもらったんです。グリペンたちとは所属が違うので、原作ファンや詳しい人には違和感があると思うのですが……(笑)。

――グリペンたちが搭乗する機体のデザインに関しては?

大河 原作に比べて細かい紋様を入れたのには理由があって。アニメーションだと彼女たちがすごく動くというのがありまして、「すごい速さで動き回ったとしても機体の向きなどがわかるようにするためには、見た目もわかりやすくしたほうがいいんじゃないか?」 ということで原案とは少し仕様を変えさせていただきました。

――アニマの少女たちの性格を機体に反映したというのはありますか?

大河 シリーズが始まる前に大まかな動きを3Dで表現してみる作業があるのですが、軽快に動くグリペンを標準として、イーグルは必要がないところでもクルクルと回ったり、ファントムは逆に少し抑えめな動きをさせる方向で確認しました。ちなみに「ザイ」は、ちょっとした姿勢変更のときでもしっぽや翼を振るような動きをしたり、生き物のような挙動を目指しました。第1話でもそれがわかるような動き方をしているので、ぜひ見返していただきたいです。

――声優陣の演技に関して、なにかレクチャーされたことは?

小野 慧役の逢坂良太さんには「耐G(重力)呼吸法」を実践していただきました。「全身に力を入れて! いましゃべって!」みたいな(笑)。その後、彼のほうで独自に色々調べてくれたみたいで「●●式と●●式があるみたいですよ」と逆に教えられてしまいました。声優さんのプロ意識を強く感じましたね。グリペン役の森嶋優花さんにも、感情の起伏が少ない彼女をうまく演じていただきました。

大河 特別技術研究室室長・八代通 遥役の乃村建次さんも抑えた感じでしゃべっていただいてすごくいい味が出てるな、と思います。航空機整備員・舟戸でひょうひょうとした演技を見せていただいた平井啓二さんもすごくいいな、と。みなさん、特にオペレーター役の方には難しい用語をしゃべっていただいて大変でしたでしょうけど(笑)。

EDに関しては「暗いコンテを描きたくない!」と僕の要望を通してもらいました(小野)

――聞いた話によると、グリペン(森嶋優花)、イーグル(大和田仁美)、ファントム(井澤詩織)が歌唱するEDテーマ「Colorful☆wing」の絵コンテ作りに関し、小野監督が特に気合を入れられたそうですね。

大河 監督の中では、「グリペンとイーグルとファントムをそろえて、いかに早く『ザイ』と戦う構図を作れるのか?」という目標があったみたいで。ご覧になっていただくとわかると思いますが、ビビッドな背景が特徴的なED映像の、色合いからなにから、監督の手でほぼでき上がってましたからね。

小野 いや~、本当に大変でした(笑)。実は、EDに関しては僕のほうから「かわいい感じでいこうよ」と提案させていただいたんです。物語も曲も全体的に重めなので、せめて、という想いがありまして。「暗いコンテは描きたくない!」って(笑)。

――そのほかに見どころはありますか?

大河 「音」にも注目していただきたいです。第4話以降ではグリペンたちが機銃を撃ち始めるのですが、同じ機銃でもグリペンはリボルバー形式の機関砲で、イーグルは回転機銃のバルカン砲なんです。そのあたりの細かいこだわりにも注目していただきたいですね。

小野 スタッフさんも細かい部分まですごく調べてくださっていて、すごくありがたいです。

――物語上でも、見どころがたくさんありそうですね。

小野 ファントムが登場し、グリペンたちとどのようにからんでいくのか? その人間模様、もといアニマ模様にも注目していただきたいですし、そもそも「ザイ」とはなにか?という核心部分にも迫っていくことになるかと思います。そのほか、ドッグファイトを含めた戦闘シーンやキャラクター同士の関係の変化などにもご注目いただきたいです。

大河 3Dアクションに関しても、クライマックスに向けて盛り上がっていただけるシーンがたくさんございますので、ぜひ最後までご覧ください!


(取材・文・写真/佐伯敦史)

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