ハセガワ製、「クラッシャージョウ」ファイター1から考える“キャラクターモデルとスケールモデルの最適な距離感”【ホビー業界インサイド第44回】

2019年2月10日に行われた「ワンダーフェスティバル2019[冬]」で、ハセガワから劇場アニメ「クラッシャージョウ」(1983年)の主役メカ“ミネルバ”のプラモデル化が発表された。それに先立つ1月末から、主人公ジョウの搭乗機“ファイター1”が店頭に並んでいる。スケールは1/72。ハセガワが得意とする航空機模型では、お馴染みの国際スケールだ。
現在、車や飛行機、艦船などのスケールモデルと並行して、アニメ作品に登場するメカニックも積極的にプラモデル化しているハセガワ。同社はスケールモデルとキャラクターモデルの開発バランスをどのように考えているのだろう? 企画開発部・企画グループの国分智さん、同・開発グループの早川純さんにお話をうかがった。

「衝動買いして、すぐに接着剤なしで組める」ことがコンセプト


──このファイター1は、“クリエイターワークス”というブランドで発売されました。まず、クリエイターワークスとは、どのようなブランドなのでしょう?

国分 漫画やアニメ、ゲームなどの作品の中で模型化される機会に恵まれなかったキャラクター、あるいはハセガワとして模型にしたかったキャラクターを製品化するブランドです。クリエイターワークスとして最初に模型化したのは、松本零士先生のスペースウルフ(「宇宙海賊キャプテンハーロック」)でした。古い作品にかぎらず、「モーレツ宇宙海賊」の弁天丸、「ラストエグザイル-銀翼のファム-」のヴァンシップなども、クリエイターワークスでキット化しています。


──何か、選択基準はあるんでしょうか?

国分 ひとつには、模型化することで面白くなる、模型としてサマになるもの。それと、担当者の気持ち、「とにかくコレが好きだから」という熱量にも影響されます。それだけでなく、ご縁も大事です。どんなに模型化したいと思っていても、ご縁がなければ版権も降りませんので。

──すると、今回のファイター1のキット化には、国分さんの熱意も影響しているわけですね。どこがファイター1の魅力なのでしょう?

国分 やはり、河森正治さんの生み出すメカデザインの、独特のカタチやラインに惹かれます。私は「クラッシャージョウ」のメカニック全般が好きで、その中でもファイター1は主人公機ですから、そのポジションも含めて好きですね。


──このファイター1はスナップキットで接着剤不要ですが、この仕様も国分さんが決めたのですか?

国分 いえ、早川のほうから、「新しいことにトライしたい」と相談があったんです。

早川 スナップキットのほうがお客さんも作りやすいと思うので、接着剤不要を前提に嵌合(かんごう)などの設計を進めました。今回は“コアフレーム”という骨組みに外装を被せる構造になっていますが、最初は胴体内にケタを入れて、全体を組み上げる構造を考えていました。しかし設計の途中で、ケタを彫るのも大きなフレームを彫るのも金型に占める面積はたいして変わらない、と気がつきました。予算的にも問題ないとわかったので、大きなコアフレームにパチパチと外装を嵌めていくコンセプトにしたわけです。そのほうが、ひさびさにプラモデルを買う「クラッシャージョウ」ファンの人たちも楽しいだろう、と考えました。

──当時、「クラッシャージョウ」を見ていたファンというと、40~50代ですね。

早川 そうですね。価格は安くしたいとの話でしたので、キットと別に接着剤を買わなくても、衝動買いして家に帰って、すぐに組めるようにしたかったんです。


国分 私は細かな指示を出さずに、ほとんど早川に任せていたのですが、コアフレーム構造には驚きました。

早川 これより厚みのある機体形状だと、ちょっと難しくなってしまいます。平べったい機体だから、コアフレームにトライできたんです。

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