日本武道館に咲き誇った蒼き薔薇の新世界! 「BanG Dream! 7th☆LIVE「DAY1:Roselia“Hitze”」ライブレポート
「バンドリ!」のライブイベント「BanG Dream! 7th☆LIVE」が2019年2月21日〜23日、日本武道館にて開催された。ここでは21日に開催された「DAY1:Roselia“Hitze”」をレポートする。
「バンドリ!」はキャラクターを演じる声優自身がリアルガールズバンドとしてステージに立つコンセプトが特徴のコンテンツで、現在はアニメ「BanG Dream! 2nd Season」が放送中だ。初日、DAY1にはRoseliaの湊友希那役・相羽あいなさん(Vo.)、氷川紗夜役・工藤晴香さん(Gt.)、今井リサ役・中島由貴さん(Ba.)、宇田川あこ役・櫻川めぐさん(Dr.)、白金燐子役・志崎樺音さん(Key.)が出演した。
会場はアリーナ中央に可動式全周ステージを置き、客席をスタンド席まで360°フルオープンした設定。これは2017年8月21日にPoppin’Partyが出演した「BanG Dream! 4th☆LIVE Miracle PARTY 2017! at 日本武道館」とほぼ同じものだ。ドラムとキーボードが基本的に動けない性質上、ステージを回転させることで全ての方角の観客に演奏を見せられるこのステージ構成が最適解なのだろう。スタンド席からステージまでが驚くほど近く感じる。ステージは八角形のベースステージの上に三層の円形の可動ステージが乗る凝ったもので、バンドセットごと回転したり、センターステージがせり上がったりとギミックも多彩だ。ステージ縁のライトが点灯すると、全体が薔薇を象っているようにも見える。ステージ上空には8面のスクリーンが据えられ、どの角度の客席からも正面に映像演出を見ることができる。
ステージセンターに薔薇の聖堂めいたゲートがせり上がると、そこから新衣装をまとったRoseliaの5人が登場。それぞれの楽器(相羽さんは青薔薇のマイク)の前に立った5人は雰囲気たっぷりの決めポーズ。スティックを持った両手を身体に沿わせて中二っぽく決める櫻川さんの姿が抜群に絵になる。
オープニングナンバーは「BRAVE JEWEL」。演奏しながら面(おもて)を上げて武道館という会場を気持ちよさそうに見渡す中島さんのたたずまいがとてもリサ姉らしく、縦にロールした赤のエクステがビジュアル再現度を後押しする。やさしく奏でるブリッジでの志崎さんのキーボードの旋律が耳に心地いい。
「R」では円周ステージが回転を始める。印象的だったのが工藤さんのヘッドバンギングを交えたギタープレイ。今日の工藤さんの髪型はストレートの黒髪の毛先に、紗夜の髪色である淡い緑を入れた感じなのだが、ヘッドバンギングで髪がなびく感じはどこか優雅で、とても氷川紗夜らしく、Roseliaらしい。志崎さんのソロ歌唱パートには細く妖艶な響きがあった。
MCの第1声は相羽さんが湊友希那として発した「とうとう来たわね、武道館」。ここから緊張した様子のリサ、燐子を気遣うあこといったキャラクターをまとったトークが続く。今日のライブ本編のMCは、ほぼキャラクターモード。それもアニメ「BanG Dream! 2nd Season」や、スマホアプリ「バンドリ! ガールズバンドパーティ」の最新エピソードで描かれているような、ダークでクールな面だけでなく、やさしさや暖かさでつながった5人の絆を感じさせる言葉が紡がれる。ここからは演者の名前ベースでレポートしていくが、特に記載がなければキャラクターを演じながらのMCだと思ってほしい。
相羽さんの「私たちが頂点を目指す音楽、聴きたい?」の声とともにカバー曲「魂のルフラン」へ。マイクを持った相羽さんがステージの真ん中に移動すると、彼女が立つセンターステージが高みへとせり上がっていく。続いてはライブ初披露の「残酷な天使のテーゼ」、「新世紀エヴァンゲリオン」楽曲つながりだ。疾走感のあるバンドアレンジを少し高めのキーでさわやかに歌う姿は、仲間との絆を手に入れた「今」の湊友希那を想起させる。ステージを自由に歩きまわる相羽さんが中島さんにぴったりよりそっていくと、会場から歓声が上がった。サビの「残酷な天使のテーゼ」のフレーズにあこの表情がオーバーラップし、この2曲はあこが大好きな世界観だろうなと感じた。
前半の締めは「ONENESS」。 相羽がよりそってきたことで自分がカメラで抜かれていることに気づいた工藤さんが、コーラスの担当パートを歌うたびににこっと微笑む姿が印象的。工藤さんと中島さんが向かい合ってセッションプレイを見せると、ギターの青とベースの赤の鮮やかな色合いの対比がとても映えていた。
ここで5人は一度ステージを下りると、スクリーンには聖域をイメージした教会で撮影したムービーが映し出された。この映像はMV並みのクオリティの、本気で作りこんだもので、周りこむように5人を撮影する360°カメラや、5人の顔のアップをコマ撮りアニメのようにつないだ映像など、挑戦的な演出が目立った。それぞれの演技にも、櫻川さんは眼力強め、工藤さんは人形のように無機質な美しさを見せたりと個性が見える。アーティスティックな画作りは、Roselia Live「Vier」(2018年11月7日、品川ステラボール)で上映された、森の中の聖堂でピアノを奏でる志崎さんを描いた幻想的な映像を思い出す。独自の世界観を表現する手段としてムービーを作りこむのも、現体制のRoseliaのカラーなのかもしれない。彼女たちにしかできない素晴らしいアプローチだと思う。
映像のラスト、5人の唇が切れ切れにアルファベットを紡ぎ、連なって「Sanctuary」を綴る。その姿に見入っていると、いつの間にかスタンバイしていた5人が「Sanctuary」を奏で始めた。相羽さんのどこまでも伸びるハイトーンのしなやかな強さは圧倒的で、幾度もの衝突と葛藤を乗り越えた湊友希那とRoseliaが持つ輝くような絆を感じさせた。
「陽だまりロードナイト」は湊友希那から今井リサへの感謝を色濃く込めた楽曲だ。雲海の彼方に輝くあたたかな太陽と、会場一面の赤が5人を照らし出す。櫻川さんの「にかっ」と音がしそうな笑顔が眩しい。中島さんと相羽さんがおでこをくっつけるようにして、心からの笑顔をかわしあう姿はとても幸せな光景だった。歌い終えた中島さんは「照れくさいな。でも友希那と一緒に歌えてとっても楽しかったよ」。中島さんと相羽さんの関係性に意識がフォーカスされがちな楽曲だったが、個人的に印象に残ったのが志崎樺音さんの姿だった。強めの印象的なフレーズを奏でたあとに余韻を残すようにすっと右手を掲げる動きや、左手で演奏しながら右手を大きく振って会場のノリを先導する姿はただ演奏するだけでなく、ステージで燐子として全身で魅せる意識が感じられた。
会場の「色」が印象的だったのが「Determination Symphony」。直前の「陽だまりロードナイト」では赤一色だった客席が、さーっと紗夜の髪色のターコイズの色合いに変わっていく。この曲が(「バンドリ! ガールズバンドパーティ」内の)氷川姉妹中心のイベント「秋時雨に傘を」の楽曲だったことが由来だと思うが、相羽さんが「雨色に染めてくれたのね」、工藤さんが「日菜も喜ぶわね」と、客席の想いを受け止めたことをあくまでキャラクターとしての範囲でシンプルに伝えていたのが粋だった。
ここでステージでは、5人がRoseliaの結成当時を思い出すやりとりが始まった。それは朗読劇のようでも舞台のようでもあり、5人が生身でRoseliaを演じる姿だった。そして相羽さんが「全ての感謝を込めて、この曲を届けるわ」と語りかけて、「軌跡」へ。せり上がるセンターステージに立った相羽さんが愛情と感謝を込めて歌う。相羽さんがマイクを持たない手の小指をそっと立てていたことに、Roseliaとして過ごした時間へのさまざまな想いを感じた。1番で箱に腰かけて演奏していた中島さんと工藤さんが、2番ですっと立ち上がった姿も印象的だった。「今、こうしてここにいられること、本当に感謝してるわ。メンバーみんなも、ありがとう。これからも、よろしくね」。
「あなたたち、Roseliaに全てをかける覚悟はある?」のあおりからのメンバー紹介では、全員の(キャラクターの)名前のコールアンドレスポンスで、会場全体が声を揃えた。テンションが高まったところで続くナンバーは「BLACK SHOUT」! スクリーンにはキャラクターたちのMVと、リアルタイムの5人の演奏が並んで映し出され、カメラワークを揃えてシンクロさせていく。楽曲のテンションに合わせて円形ステージの回転も超高速だ。ソロパートで工藤さんがウィンクしたように見えたのだが、これが紗夜をまとっての表現だと思うと感慨深いものがある。そのままの勢いでなだれこんだ「LOUDER」では、ステージど真ん中で相羽さん、工藤さん、中島さんのフロントチームが背中を預け合う鮮烈な決めを見せた。ライブ本編を締めくくったのは、アニメ「BanG Dream! 2nd Season」エンディングテーマ「Safe and Sound」。「みんな一緒に歌って」の相羽さんの声に応えて、やさしいラララの歌声の大合唱が日本武道館を満たした。
と、本編ではキャラクターをまとった、Roseliaそのもののパフォーマンスを見せた5人。アンコール映像は一転、素の彼女たちの楽しい一面を生かしたバラエティ要素にあふれた内容だ。今回上映された映像「Roselia キャラ設定を崩しちゃいけない!! 撮影現場」は、「BanG Dream! 5th☆LIVE Day2:Roselia -Ewigkeit-」(2018年5月13日、幕張メッセ国際展示場)で上映された「Roselia キャラ設定をくずしちゃいけない!! 格付けクイズ」から始まった「キャラくず」シリーズの第2弾だ。ライブ前半終わりの、教会をさまようRoseliaの幻想的なムービーを撮影する合間の休憩時間に、実はキャラを崩したらアウトカウントが加算されるバラエティ映像を収録していたという趣向だ。
前回の格付けクイズでは完敗だったことを受け、今回はガチでリベンジする気満々の相羽さん。しかし、「頂点へ?(工藤さん)」→「狂い咲け!(相羽さん)」を繰り返して友希那のキャラを確認するリズミカルなやり取りの中で、工藤さんが「この手を?(工藤さん)」→「離さない!(相羽さん)」と、Poppin’Partyの戸山香澄の(「ティアドロップス」の)定番フレーズを挟みこむ巧みな罠をかけると、またたく間にキャラ崩壊する相羽さんだ。ほかにも、牛込りみものまね対決が行なわれたり、櫻川さんが椅子にブーブークッションを仕掛けられたり、苦いドリンクを飲まされた中島さんが苦さに気づかなかったりと、見どころの多い内容だった。定番ネタの箱の中身当てクイズでは、硬くトゲトゲしたパイナップルをさわって「スイカ!」と言いきった志崎さんに会場からどよめきが起こった。最終結果は相羽さんがキャラ崩れ回数87回で圧倒的な弱さを見せつけたが、誰かのキャラが崩れて素が出た際の「相羽、中島、工藤、アウト〜」の音声にわざわざPoppin’Partyの愛美さんを起用したりと、バラエティ映像も本気で作りこむ姿勢が感じられた。
アンコールではライブTシャツに着替えた5人が「Re:birth day」を披露。「熱色スターマイン」では相羽さんが会場の光を一瞬の、一生忘れない花火になぞらえた。会場はその言葉通りに燃え上がるような光に包まれ、バンドリーマーがひとつになったリズムに武道館そのものが震えていた。
告知コーナーではRoseliaが2019年8月3日(DAY1 Flamme)と8月4日(DAY2 Wasser)、富士急ハイランド・コニファーフォレストでライブを開催することが発表され、会場は割れんばかりの歓声に包まれた。
「本日は本当に楽しくライブをすることができました。とても幸せでした、ありがとうございました」(志崎樺音)
「やっぱりRoseliaは限界を超えてからがスタート。これからも限界を超えていきましょう!」(櫻川めぐ)
「お客さんとの距離がすごく近くて、360°ってこういうことなんだってわかりました。最高の景色ほんとありがとう!」(中島由貴)
「Roseliaというバンドが始まって2年、こうして武道館のステージに立てて本当に楽しかったです。今年もいっぱいライブしたいね!」(工藤晴香)
「Roseliaとして日本武道館に立てて、ほんとにほんとに皆さまのおかげです。1分1秒をみんなとメンバーと大切に。待ってる人がいる限り、行きたいと思います!!」(相羽あいな)
手をつないだ5人が四方にていねいに礼をすると、「本日はまことに、ありがとうございました!」と肉声で感謝の一言。普通ならここで終わる、とてもきれいな締めだったのだが、退場する4人を相羽さんが「ちょっと待って!! やっぱり、このままじゃ終われないわ」と呼び止める。相羽さんは「あなたは燐子」「あなたはリサ」と言い含めてメンバーを元のポジションに送り出すと、「これからもRoseliaは進化し続ける」というメッセージとともに本当のラストナンバー「Neo-Aspect」を歌った。
あえて大団円の後にこのやりとりを持ってきた理由を考えたのだが、Roseliaとして友希那たちのキャラクターをまとってのライブとして本当に素晴らしい作品ができあがったからこそ、最後はもう一度友希那として、紗夜として、リサとして、あことして、燐子としてのパフォーマンスで締めくくりたかったのではないかと思う。明確で魅力的なコンセプトと、理想を目指すたゆまぬ努力。Roseliaというバンドはさらなる高みに到れると、確信できたライブだった。
(取材・文/中里キリ)
【セットリスト】
M01:BRAVE JEWEL
M02:R
M03:魂のルフラン
M04:残酷な天使のテーゼ
M05:ONENESS
M06:Sanctuary
M07:陽だまりロードナイト
M08:Determination Symphony
M09:軌跡
M10:BLACK SHOUT
M11:LOUDER
M12:Safe and Sound
-ENCORE-
EC01:Re:birth day
EC02:熱色スターマイン
EC03:Neo-Aspect
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