アニメライターによる2019年冬アニメ中間レビュー【アニメコラム】

2019年1月スタートの新作TVアニメを中間レビュー。「コミック百合姫」連載の「私に天使が舞い降りた!」、「ヤングアニマル」連載の「上野さんは不器用」、実写映画化も決まった「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」、メディアミックスで人気の「明治東亰恋伽」、ボイストレーニングアニメ「真夜中のボイトレ男子」の5作品をピックアップしました。

私に天使が舞い降りた!

昼過ぎに二度寝から目覚めた主人公・星野みやこは、ベッドから抜け出して冷蔵庫へ向かい、前日浸けておいたフレンチトーストを漁り出す。外出する必要がない人間にとって、世界とは自室から冷蔵庫までだと示す鮮やかな導入部だが、みやこの活動範囲は、妹ひなたの同級生である小学5年生の少女・白咲花にひと目惚れしたことで、少しずつ広がっていく。
最初は自宅で過ごす場面しか描かれていないものの、第4話では家の庭でビニールプールを作り、花と一緒に近所のお祭りへ出発。さらに第6話ではみやこについて衝撃の事実が明かされ、これまででもっとも遠い場所へと向かう。この外への志向は、花に初めて出会ったとき、玄関の扉が大きく開かれていたことも無縁ではない。今後も彼女は外へ外へと足を運んでいくはずだ。
そもそもアニメにおいて「星野」という名を冠した主人公は、地球を飛び出し宇宙で活躍するものだと相場が決まっている。“みゃー姉”の領域はどこまで広がることが許されているのか。感謝の祈りを捧げながら見守りたい。



上野さんは不器用

中学校の科学部部長・上野さんが奇想天外な発明品を使って、心を寄せる後輩・田中に猛烈アピールを仕掛けていく15分アニメ。上野さんの発明品は、どんな汚水もきれいな水にする「ロッカくん」、絶対不可視の空間を生み出す「クマタンダー2号」、自分にそっくりなアンドロイドの「ウエノ13号」と、いずれも現代科学を超越した一級品だらけ。
そんなマッドサイエンティストの上野さんだが、第1話では濾過した自分の尿を飲ませようとするなど愛情表現も常軌を逸しており、なぜか体液にまつわるエピソードが目立つのが好印象だ。レンタルビデオ店ではマニアックの棚にジャンル分けされてしまう嗜好ながら、ポップな絵柄やハイテンションな芝居で、自然と楽しめる一作となっている。



かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~

世のエリートたちが集う名門校・秀知院学園を舞台に、生徒会副会長の四宮かぐやと会長の白銀御行が、相手を先に告白させるため頭脳戦を繰り広げるラブコメディ。2人のバトルは書記の藤原千花による予想外の行動でメチャクチャになってしまうが、アニメもそんな楽しいサプライズが詰め込まれている。
OPテーマはマーチンこと鈴木雅之が担当。ラヴソングの王様がラブコメの主題歌を歌い上げるというマリアージュに初っ端から驚かされる。本編では重厚な声色で頭脳戦を解説するナレーションや、意外性に富んだパロディとBGM、そしてファンタジックなEDアニメや特別EDなどが盛りだくさん。かぐやの決めゼリフ「お可愛いいこと……」も毎回テイストが異なっており、細部まで見逃せない。



明治東亰恋伽

現代の女子高生・綾月芽衣が明治時代の「東亰」にタイムスリップして歴史上の偉人たちに出会うラブストーリー。実在の人物をモチーフとしたキャラクターはもちろん、明治時代の文化も描かれているのがポイント。とくに食事のシーンが印象的で、みんなで牛鍋を突いたり、森鴎外が饅頭茶漬けをふるまったり、泉鏡花がアルコールランプであんぱんをあぶったりと、不思議と食べてみたくなってしまうほど。
注目は第6話「夢と情熱のエレキテル」。電気の大切さを歌い上げた挿入歌「エレキテルショー」は独特なリズム感で不思議な中毒性に引き込まれる。SDキャラになった芽衣のリズミカルな振り付けも心地よく、福沢諭吉が出資を決意するのも納得だ。



真夜中のボイトレ男子

ボイストレーニング界の帝王・森山帝が、ボイトレ用語を擬人化した男性キャラクターに特別なトレーニングを施すショートアニメ。立ち絵と数枚のイラストで構成するという、近年の5分枠でしばしば見られる手法を用いている。
森山帝のボイトレは、赤ちゃんになりきって産声を上げたり、高速で呼吸するドッグブレスを披露したり、尻に挟んだ割り箸を割ったりと非常にアグレッシブ。教育熱心な姿勢と艶かしいイラストが相まって、レッスン風景にはどこか妖しい雰囲気が漂っている。ボイトレが絶頂に達したときに発する「ボイスエクスタシー」の叫び声もだんだん病み付きになっていく。なお地上波ではテレビ神奈川にて放送中。多摩川を渡ってでも視聴しなければならない一作である。



(文・高橋克則)

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